シェーンベルク(1874-1951)

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CD 輸入盤

Piano Works: Henck

シェーンベルク(1874-1951)

基本情報

ジャンル
:
カタログNo
:
WER6268
組み枚数
:
1
レーベル
:
:
Germany
フォーマット
:
CD

ユーザーレビュー

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ドイツの現代音楽のピアニスト、ヘルベルト...

投稿日:2022/01/16 (日)

ドイツの現代音楽のピアニスト、ヘルベルト・ヘンクによる、血の通ったシェーンベルク作品集だ。 シェーンベルクの作品番号付きピアノ曲のコンプリートに加えて、ピアノ曲の断片も18曲収録しているアルバムだ。 作品番号付きのピアノ曲は、3つのピアノ曲op.11、6つの小品op.19、5つのピアノ曲op.23、ピアノ組曲op.25、ピアノ曲op.33abである。 ヘンクの演奏は、実に魅力に富んでいる。 3つのピアノ曲op.11は、シェーンベルクの作品の中でも陰気な方だと思うが、ヘンクが作品に向けるまなざしはフラットで温かい。聴く人を激しさで脅かそうとか、技術だけで聞かせようとかいう偏りがない。ストーリーを感じさせる緩急や強弱と、聴き易い適度な軽快さ、ピアノ曲としての響きの美しさを持っている。暗い筈のop.11を聴いていてなんだか楽しい気持ちになってくる。 欝な内容の作品であっても、それをきちんと芸術的に仕上げるのは、明るく健全で強い精神である。ヘンクの演奏は、暗い作品の背後にある、そうした明るい精神を感じさせてくれる。 6つの小品op.19は、短いということもあり、演奏会でもよく取り上げられるが、説得力がある演奏が為されているのだろうか?このヘンクの演奏は、1曲1曲が、曲に込められた物語や、気持ちの変化を豊かに感じさせてくれる。この曲が、管弦楽のための5つの小品op.16の第2曲と同様、シェーンベルクの寂しい一面を表している曲であることがよく分かった。 5つのピアノ曲op.23は、シェーンベルクのピアノ曲の中でも、難解な方だろう。曲想があまりにもどんどん変化していってしまうからだ。ヘンクの演奏は、全体的に軽やかな調子にまとめつつ、変化していく曲想の句読点、ポリフォニックに展開する断片の呼応関係、1曲の中における起承転結などが実によく整理されており、破格に分かりやすい。一旦解体された瓦礫の山から、再び何かを構築しようと立ち上がる、人間の創造的な意志を感じる音楽だ。 ピアノ組曲op.25は、シェーンベルクのピアノ曲の中では親しみ易い方だろうが、技術的には非常に難しい曲だろう。ヘンクは全体的に速いテンポで弾いている。ミュゼットのラストではミスタッチがあるが、ここはどんなピアニストでも難しいところなので、むしろ編集なしで弾いている証拠に残したと考えられる。しかし、このピアノ組曲に関しては、技巧に傾いた演奏となったために、曲の持つ奇妙なユーモアや倒錯の面白さを弾き逃した印象があり、惜しい感じがする。 ピアノ曲op.33aとピアノ曲op.33bは、本来は別々の曲だという捉えなのか、ヘンクはプログラムでわざわざ分けている。 私の感想ではop.33aの方は速いテンポで一気呵成に弾き過ぎている感じがする。中庸のテンポで噛んで含めるように弾いているop.33bの方が面白い。 メカニックな技巧よりも、人間味のある読解力の方にヘンクの魅力が発揮されるように感じる。 トラック22からトラック39は多くのピアノ曲の断片を年代順に弾いたものだ。 ロマンチックな作風からスタートして、次第に現代的になっていくというシェーンベルクの作風の変化を辿ることができる。 ヘンクの録音は1994年だが、2年後の1996年にはピ・シェン・チェンが、断片も番号付きの立派な作品も、すべて年代順に並べて弾くというユニークなアルバムを作っている。 全てのピアノ曲が一つの大きな物語のようになっていて面白い企画だ。それとて、ヘンクの先駆があったからこそできたことであろう。 私的には惜しい演奏もあるが、取っ付きにくいシェーンベルクのピアノ曲と聞き手の距離を縮めてくれる、大変良いアルバムだと思う。ヘンクのCDはこれ1枚しか持っていないが、イタリアのブルーノ・カニーノと同様、現代曲を人間味豊かに弾ける優れたピアニストだと感じた。ヘンクの他のCDも聴いてみたくなった。

伊奈八 さん | 茨城県 | 不明

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