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交響組曲 《オッフェンバキアーナ》 全曲
マニュエル・ロザンタール自作自演!
ラヴェルとブーランジェに師事した作曲家&指揮者のマニュエル・ロザンタールが、大成功したバレエ音楽《パリの喜び》(1938)の15年後に完成した、同じくオッフェンバックによる交響組曲が《オッフェンバキアーナ》(1953)。
交響組曲といっても実際にはオッフェンバックの有名なオペレッタの中のヒット・ナンバーに、きらびやかなオーケストレーションをほどこして次々につなげてゆくというもので、基本的な方針は《パリの喜び》とほぼ同じ。 違うのは、《パリの喜び》がバレエ音楽だったのに対し、《オッフェンバキアーナ》は演奏会用のオーケストラ作品という点で、踊るための音楽だった前者に較べ、さらに華麗に、さらにダイナミックに進化していっそう聴きごたえのある仕上がりを見せているのがポイントです。特に管楽器や打楽器の活躍は見逃せません(ちなみに、取り上げられている作品は、《青ひげ》《山賊》《鼓手長の娘》《ファヴァール夫人》《キャロット王》《ジェロルスタン女大公殿下》《ヴェル=ヴェル》《パリの生活》の8曲です)。
とはいえ、《ホフマンの舟歌》が入っていないせいか、この作品の演奏頻度は意外なほど少なく、CD化されている録音も、ロザンタール自身による抜粋盤、カリヴァンによる全曲盤があったくらいで、《パリの喜び》の盛況ぶりに較べるとさびしい限り。
快活で時に哀愁を帯びた名旋律を交えながらどんどん盛り上がる楽しいオッフェンバック音楽のエッセンス抽出、という点では、どちらの作品もその精神の根の部分は同じなのですが、オッフェンバックの快活さをより巧みに引き出しえ得ているという点では、《オッフェンバキアーナ》の方が上と言えるのではないでしょうか。
そうした背景を考えると、今回、初演されて間もない頃のロザンタール指揮パリ・オペラ座管弦楽団による全曲ステレオ録音が、完全な形で、しかも96kHz/24bitリマスターで音質改善されて登場するのは非常に喜ばしいことです。しかも豪華なカタログ付きの廉価盤という大盤振る舞いな設定。このアルバムにかけるアコール・レーベルの意気込みが十分に伝わる素晴らしい企画です。
なお、アルバム冒頭には《オッフェンバキアーナ》序曲のモノラル別録音がおまけとして収録されており、演奏の比較ができるのも楽しいところです。