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hiro さんのレビュー一覧 

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     2014/04/09

    Colin VallonがECMサウンドの継承者であることを確信する傑作。
    Colin Vallonは、1980年スイス・ローザンヌ生まれのピアニスト。 当地のジャズスクールで学び、1999年に自己のトリオを結成。ヴォーカリストの伴奏などでキャリアを積み、2004年にトリオとしては初のアルバム「Les Ombres」をUnit Recordsからリリース。 以降も歌伴などを務めながら、2006年にこれもトリオ名義で「Ailleurs」をHatHut Recordsからリリースします。 その後も様々なミュージシャンと共演を重ねながら、2011年、Colin Vallon・Patrice Moret・ Samuel Rohrer名義で「Rruga」をECM Recordsから発表すると、たちまちのうちにジャズファンの間にその名前が浸透し、期待の新人として注目を集めることになります。 Manfred Eicherが新しい才能を見出そうとする際には、当然、ECMの伝統を守ってくれるようなミュージシャンを求めるでしょうし、選ばれたミュージシャンは、そんなEicherの期待に全力で応えようとするのだと思います。 2012年には、同じECMから、ヴォーカリストElina Duniの「Matan Malit」に、Colin Vallon(piano)、Patrice Moret(bass)、Norbert Pfammatter(drums)のメンバーで参加し、バックを務めます。 この「Le Vent」は、トリオとしてECMからの第2弾で、ベースのMoretはそのままですが、ドラムスはJulian Sartoriusに替わっています。 2013年4月にオスロのRainbow Studioで、Jan Erik Kongshaugの手により録音された、正にECMど真ん中の作品。 非常に抑制の効いたサウンド、熱気は意図的に排除され、淡く美しい音色で空間に描かれた絵画のような世界がここにはあります。 トータル60分は、煩雑な日常の雑音から、いっとき自分を隔離し、心の有り様を整理するには、丁度良い時間かもしれません。 12曲中、1曲目の「Juuichi」がベーシストMoretの作品で、以降10曲目までが、Vallonのオリジナル。11曲目、12曲目が3人のインプロビゼーションとなっています。 どれもが淡い水彩画の趣があり、強く訴えかけるテーマも4ビートも遂に登場しませんが、川の流れをただ眺め、ゆっくりと時間が過ぎていくのを楽しむような気分を味わうのも良いのでは? 特に私は、3人の音へのこだわりに関心をもちました。Moretは、ボーイング奏法を駆使し、奇妙とも感じるベース音を聴かせてくれますし(5曲目「Fade」など)、Pfammatterは、穏やかながら不規則なタイミングでピアニストに刺激を与えるドラミングを披露(7曲目「Le Quai」など)。そして、Vallonは、prepared pianoによるパーカッシブなピアノ音でアルバムに変化をもたらしています(10曲目「Rouge」など)。 エピローグともいえるラスト2曲「Styx」、「Coriolis」にその音へのこだわりが顕著に現れていると思います。

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     2014/04/08

    Spyros Manesisは、1978年ギリシャ・アテネの生まれのピアニスト。 2006年に録音されたピアノトリオ作品「Trioism」がマニアの間で話題となったようです。 現在は、ピアニスト・作曲家としての音楽活動の傍ら、現地のミュージックスクールで教鞭をとっているとのこと。 本作「Undelivered」は、ポルトガル・リスボンにて2011年3月に録音された、これもピアノトリオ作品ですが、リズムセクションは、Joao Hasselberg (b)、Kaspars Kurdeko (ds)に刷新されています。 ギリシャ出身のジャズピアニストという珍しさ、ジャケットに映し出された綺麗な情景に惹かれ、購入しましたが、これがなかなかの作品。 Manesisのピアノからは、gentlyと表現したいような穏やかさと、確かなテクニックに裏打ちされた探究心が感じられます。 4ビートでガンガン押してくるわけではないので、正統派?ジャズファンより、クラシックも好まれる女性向の作品といえるかもしれません。 曲は「On Green Dolphin Street」を除き、全てManesisのオリジナル。トータル44分ちょっとでコンパクトにまとめられています。 1曲目「Cold Inside」は、テーマ部とそのピアノの音色が若き日のKeith Jarrettを思わせます。高音部での煌びやかなメロディの連なりは、リスナーの心を掴むに十分なプレイ。 2曲目「Not Yet」は、クラシカル調でありながら、遊び心が感じられる曲。Manesisのちょっと外した弾き方が、逆に実力の証明か?ドラムソロも楽しげです。 3曲目「Amsterdam」は、広くヨーロッパ中をツアーしたManesisの思い出の曲でしょうか?切なげなテーマから、リリカルなピアノが曲を支配し、落ち着いた雰囲気が最後まで保たれます。 4曲目が唯一のスタンダード「On Green Dolphin Street」ですが、テーマが素直に演奏されることはなく、頻繁にリズムチェンジがはかられる中で、テーマは分解され、華やかなトリオの世界へと誘われていくことになります。アレンジ力で勝負しようとした曲。 5曲目「Falling」は、曲名通り、どこへ落ちていくような感覚に包まれる曲。 6曲目「The Pinwheel」は、逆に躍動感が。 Manesisは、特に高音部でそのテクニックを発揮するようです。 7曲目「 Undelivered 」は、力強いテーマから、ピアノの長いソロが続き、一呼吸置いて、リズム隊が合流してきます。その後のダイナミックな展開は、タイトルチューンにふさわしいと思います。 ラスト8曲目「Exodos」は、フリーな出だしから次第に熱を帯びた演奏へと変化していきます。列車が徐々にスピードをあげ、その車窓から暮れゆく茜色の空を眺めているような、ジャケットのイメージ通りの演奏です。

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     2014/04/06

    ECM 10枚目のアルバムである「Ballads(1967 年)」でPaul Bleyの虜になって以来、40年近い歳月が流れました。遂にライブを観ることは叶いませんでしたが、膨大な作品群からは、いつまでも変わらないBleyの本質を聴くことができると思います。
    Paul Bleyは、1932年、カナダ生まれのピアニスト。50年代に、Charles Parker との共演からスタートし、60年代はフリー・ジャズの真っ只中に身を置いたかと思うと、更なる革新を求めて、シンセサイザーやエレクトリック・ピアノにまで、手を伸ばしていくことになります。70年代には、自主レーベルの運営にも加担しますが、それほどの成功は収められなかったようです。
    しかし、作品はコンスタントに発表し続け、80年代以降も、Steeple Chase やJustin Time 、Soul Noteなどで水準の高い仕事を残しています。
    Bleyの音楽活動を語る上での、最重要レーベルは、やはりECMだと思います。これほど、ECM的なミュージシャンはいないと思うのに、リーダー作、ソロ作はこの「Play Blue - Oslo Concert」が11作目で、SteepleChaseでの17作より少ないことになります。
    しかし、ECMには、Bleyの長い音楽歴を物語るような、各年代における重要作品が残されており、ECMの諸作品なくしては、Bleyを語れないのも事実だと思います。
    さて、本作は、2008 年Oslo Jazz Festivalでのライブ音源で、2013年にJan Erik KongshaugとManfred Eicherの手によりミックスダウンされた作品。
    前作の「Solo in Mondsee」が、2001年録音なので、比較的新しい作品とはいえ、 Bleyの年齢を考えると、今後、これ以上のものを期待するのは難しいかもしれません。
    というのも、この時点で76歳とはとても思えないほどの、力強いパワーと豊かな表現力が、ここには感じられるからです。 曲は、アンコールの「Pent-Up House」を除いては、全てBleyのオリジナル、というかインプロビゼーション。 冒頭の「Far North」は、ライブの地Osloの印象を綴った曲でしょうか?故意に弾き急ぐように奏でられるピアノは、やがてポエジーを語るかのような繊細なタッチに。その後、跳ね返るような音と共に、自由にダイナミックに展開していくかと思うと、高音部のリリカルな音色が一瞬にして低音部の不協和音にとって代わり、終焉を迎えます。この、天国と地獄を行き来するようなピアノプレイこそが、 Bleyのいつまでも変わらない真髄なのだと思います。 続く「Way Down South Suite」は、組曲というだけあって、曲調に変化があります。穏やかに始まり、ゴスペル調に転じて力強く進んでいきますが、6分近くで突然の沈黙。そして、またスローな展開へと変化していきます。後半は、Bleyがピアノに合わせてハミングしているようで、この日の好調ぶりを感じることができます。曲は、突然の轟音と共に幕を閉じます。 Bleyの汗が飛び散るかのような熱演。 続いては「Flame」。冒頭の高音部を多用したフレーズに惹きつけられます。その後も、自由な展開ながら、親しみのあるフレーズが時折、顔を覗かせ、どこかKeith Jarrettのソロを思わせる部分も。穏やかな気分に浸っているうちに、曲は素早く表情を変え、唐突に終わります。この辺が、 Bleyの面目躍如といったところでしょうか? 美しさを強調したフレーズから始まる「Longer」の頃になると、観客はBleyの魔力に魅せられ、ただ聴き入るばかり。 Bleyは、観客を手玉に取るように、高音部で楽しげに遊びます。 曲が終わると、客席からは割れんばかりの拍手が。当地でのBleyの人気のほどが伺えます。 アンコールは、共演歴もあるSonny Rollinsの曲。愛らしいテーマから、ダークな感触を秘めた曲調に。自分の引き出しから取り出した曲想を巧みに織り交ぜ、自在に演奏しながら、力強いエンディングへと持ち込みます。場内には、更なるアンコールを求める拍手の渦がいつまでも続きます。

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     2014/03/31

    「Somewhere」は、2009年7月11日スイス、ルツェルンでのライヴ録音。ECMは、録音からリリースまでの期間が長いケースが多々あるのですが、この4年間のタイムラグは何を物語るのでしょうか?プロデューサーManfred Eicherの、もしくは、Keith Jarrett本人の気持ちが熟すのを待つ時間なのでしょうか? 冒頭は、Jarrettのピアノソロから、Miles Davisの「Solar」へ。「Solar」は、過去にも「Tribute」でBill Evansに捧げる曲として演奏されたことがあります。ピアノの音と共にJarrettの声が高く響くということは、演奏がのっている証拠のようで、曲も自在に展開していきます。 2曲目「 Stars Fell On Alabama」は、このトリオを聴き続けて良かったと実感できる素晴らしいバラード。 続く「Between the Devil and the Deep Blue Sea」は、軽快な曲調で、4ビートの良さを改めて思い知らされます。10年程前にこの目で観ることが出来たライブの様子を思い出しました。 4曲目「Somewhere/Everywhere」は、この日最大の山場でしょうか?先ず、「West Side Story」からの「Somewhere」。スローなバラードが切々と演奏されます。Gary Peacockの小川のせせらぎを思わせるベースソロは相変わらずの絶品。後半はJarrettのオリジナル「Everywhere」で、ゴスペル調の広がり、雄大なスケール感は、正にKeith Jarrettにしか表現できない世界。20分にもおよぶ熱演で、観客の興奮度も頂点に達したかのよう。 5曲目も「West Side Story」からの「Tonight」で、3人が堰を切ったようなスピード感あふれる演奏を披露。Jack DeJohnetteのドラムソロは「カッコいい」の一言。明快にくっきりと奏でられるお馴染みのテーマは、熱狂する観客へのサービスか? ラストの「I Thought About You」は、ラブソングをしんみりと奏でてくれます。特にPeacockの語りかけるようなベースソロが、グッと胸に迫ってきます。
    好きなミュージシャンの新作を聴く際の心持ちとして、変化を楽しむ(期待する)場合と、変わらないことを善しとする場合があると思います。 Keith Jarrett率いるStandards trioの新作に接する際は、やはり後者ということになるのでしょうか? 全世界のジャズファンを熱狂させた「Standards Vol.1」がリリースされたのが1983年なので、このジャズ史に名を刻むピアノトリオは、30年の長きにわたり、第一線で活躍し、傑作群を我々に届けてくれたことになります。 新たなリリースに関しては、その演奏内容が予定調和的だと片付けてしまう人もいると思います。しかし、私は、気の合う友達のいつまでも変わらない部分に惹かれるのと同じ感覚を、このトリオの作品に抱いてしまいます。
    揺るぎない信念のもとに演奏を続けるレジェンド達の、いつまでも変わらないことへの感謝を込めて、聴き込みたいと思います。

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     2014/03/31

    Vijay Iyerは、1971年ニューヨーク生まれのインド系アメリカ人。今年初頭にハーバード大学の音楽教授に就任したとのこと。
    トリオ作品「Historicity (2009年)」が、 Grammy賞のBest Instrumental JazzAlbumにノミネートされました。その後も、ACTレーベルからコンスタントに作品を発表。先進的なミュージシャンとして知名度を上げてきました。
    今回は、ECMから、Manfred Eicherのプロデュースにより、String quartetを従えての「Mutations (2014年)」をリリース。
    ECMの作品には、冒頭に5秒ほどの沈黙(silence)が置かれているのですが、本作も、沈黙がどこまでも続くと思うほど密やかに始まります。
    1曲目のピアノソロは、明確なテーマもなく、ほぼ即興的に展開していくのですが、7分以上という長さを感じさせないのは、 Iyerの演奏能力の高さを証明するものだと思います。2曲目は、ピアノとエレクトロニクスの多重録音か?いい感じになったところで終わってしまうのが残念。
    3曲目からは、String quartetが加わった「Mutation」という組曲が10のパートに分かれて演奏されます。
    「Mutation」とは、「変異、転換」というほどの意味でしょうか?それぞれに「Air」「Rise」「Canon」「Chain」などといったサブタイトルがつけられています。
    「Air」はSteve Reich的なミニマリズムを感じる曲で、ストリングスが割と心地よく流れていきます。
    「Rise」はタイトル通り、ストリングスが上昇していきますが、快感というよりアバンギャルドな印象を受けます。
    続く「Canon」は、ピアノとストリングスが互いの距離を測りながら、時に交わり、時に離れつつ進んでいくような曲。ほど良い緊迫感もあります。
    両者は最後まで交わらないまま、その距離は「Chain」にも引き継がれ、一定のリズムを反復するストリングスに、ピアノは着かず離れずの位置を守っています。これは、前衛的なタンゴのようにも聴こえる曲。
    「Automata」は、正に現代音楽の世界。自由に舞うストリングスが抽象絵画を描くかのように響きます。そして、どこからか異音が。エレクトロニクス音でしょうか?
    「Waves」は、繊細なストリングスを背景に、ピアノがキラキラと輝くように始まり、ホッとさせてくれますが、次第に暗い森の奥に迷い込んでしまったような不安な心持ちにさせられる曲。
    続く「Kernel」で、リスナーは更に森の奥へと誘い込まれます。曲の後半でピアノが強いパッセージを送りだすとストリングスもそれに答えていきます。アバンギャルドな展開はどこまで続くのでしょうか?
    「Descent」は、ストリングスがグイグイと前進していく曲。私くらいの歳のオジサンは、伊福部 昭の「ゴジラのテーマ」を想起してしまいます。
    「Time」は、この組曲のエピローグで、静かなピアノソロに、弦楽器の胴を叩くような音が添えられます。
    ラスト13曲目の「When We‘re Gone」もスローなピアノソロ。最終部でスケールを感じさせる展開に。
    この「Mutations」は、Eicher、そして熟達したファンからすれば、 ECM本シリーズからリリースされて違和感ないのかもしれませんが、ジャズとは言えない作品ですし、ECM を聴きなれた方でも距離を置いてしまうかもしれません。
    しかし、全体を通して、 EicherがIyerのクセを封じ込め、彼のアカデミックな部分をうまく掬い上げたという印象を強く抱きます。

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     2014/03/12

    1953年スロヴェニア生まれのドラマー、マルチ・パーカッショニスト Zlatko Kaucic。
    多くの方が初めて耳にする名前だと思いますが、このKaucicがリーダーのトリオ作品「December Soul(2013年)」を購入された方は、ECMからの諸作品で知られるピアニスト Stefano Battagliaが参加していることがその理由で、たぶんECMを好んで聴かれる方であると思います。更に、ベースのPaolino dalla Portaが、イタリアの人気トランぺッターPaolo Fresu率いるDevil Quartetのメンバーであることを知った時、このアルバムを手にして良かったと思われるに違いありません。
    内容の出来不出来に関係なく、意中のミュージシャンが参加しているだけで、そのアルバムを手放せなくなることもあるのでは?といいますのは、この「December Soul」、かなり自由度が高い演奏が繰り広げられており、Paul BleyやSteve Lacyとも共演歴があるというKaucicの経歴が物語るような作品に仕上がっているため、如何なECMファンといえども、賛否が分かれるのではと思うからです。9曲中、ドラマーでありリーダーのKaucic作品が6曲、他の3曲(.Jacob #1〜#3)は3人のインプロビゼーションとなっています。60年代を思わせるキツめの曲もあれば、美的センスを追求した曲もあり、3人が持てる演奏力を自由に展開する中で、やはりベストトラックはラストの「Julijske Barve」でしょうか?14分という長さを感じさせないのは、過剰な緊張感を強いることなく、かといって散漫にならない、3人の演奏テクニックによるものだと思います。

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     2014/03/02

    「Kin (←→)」のメンバーは、Pat Metheny (Guitar)、Chris Potter (Sax)、Antonio Sanchez (Drums)、Ben Williams(Bass)に、Pianoを始め様々な楽器をこなすGiulio Carmassiを加えた5人。現代最高のJazz Bandと呼べるかもしれません。1曲目の「On Day One」は、ECMへの最終作であり、現在の成功へとつながるPatの最重要作「First Circle」の「Yolanda, You Learn」をどことなく思い起こさせる展開。 複雑な構成で、ChrisのSaxが入るあたりでラテン風のリズムとなり、躍動感が溢れます。2曲目の「Rise Up」は、スパニッシュ風のアコースティックギター、そして手拍子から始まり、 Saxが大きくフィーチャーされています。 Saxは、奏者の呼吸を感じ取ることができる楽器であり、一時期のPat Metheny groupの特徴であった、朗々と歌い上げられるVoiceの役割をも担っているように感じます。ここでのSanchezのDrumsにも圧倒されっぱなしで、12分近い曲をあっという間に聴き終えてしまいます。3曲目の「Adagia」は落ち着いたGuitar (Baritone guitarでしょうか?)の響きにSaxが絡み、徐々に盛り上がっていく曲。4曲目の「Sign of the Season」はドラマチックな展開で、 Patがかつてよく手掛けていたサントラの趣が・・・。5曲目の「Kin (←→)」で初めてJazz Quintetらしい演奏を聴くことができます。実力派のミュージシャンが集結しただけあって、他の追随を許さない完璧な仕上がり。 タイトルの (←→) とは、拡張、拡大という意味でしょうか?ここまで、聴き進んで、私は、これが新しいPat Metheny groupであると強く感じました。 6曲目の「Born」は、 ChrisのSaxに、 PatのGuitarが寄り添うような、しっとりとした曲調で、世界中でこの2人にしか表現できない素晴らしい演奏だと思います。7曲目「Genealogy 」は、 PatのOrnette Coleman好きを垣間見ることができる短い曲。8曲目の「 We Go On 」は、どっしりした曲調で、奏者たちの大人ぶりがうかがえる作品。9曲目「Kqu」でアルバムは静かに幕を閉じますが、アルバム全体を通して、1曲、1曲の粒立ちがクッキリとしており、 Pat、準主役級のChris、そしてリズムセクションの3人が一体となった、スケールの大きいサウンドが展開されていると感じました。常に水準以上の作品をコンスタントに発表し続け、更なる高みを目指し前進し続けるPat Metheny は、偉大な音楽家になりつつあるのだと思います。

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     2014/02/09

    Norma Winstoneは、その高度で器楽的な歌唱力により、アンサンブルにおけるひとつ楽器のように我々の耳に届けられてきたと思います。John Taylor(piano、ちなみに元夫)、Kenny Wheeler(trumpet)とのバンド「Azimuth」は、その典型でした。ECMでは、リーダー作も発表しており、これで4作目となるのが「Dance Without Answer」です。1作目のみJohn Taylor(piano)、 Tony Coe(clarinet,、tenor sax)が伴奏を務めていましたが、以降はGlauco Venier (piano)、Klaus Gesing (bass clarinet、soprano sax)の固定メンバー。 このアルバムでは、ヴォーカリストとしての実力が遺憾なく発揮されており、メロディを語りかけるかのような艶のある ヴォイスを堪能することができます(1941年生まれとは驚異的)。演奏面では、 ドイツ出身のKlaus Gesingの貢献度が高いと思います。吐息が感じられるくらいにNormaとぴったり寄り添うbass clarinet、そしてsoprano saxは歌うかのようであり、男女のデュエットのようにも聴こえます。収録曲は3人のオリジナルに加えて、 Caetano Velosoの名唱 で知られる「Cucurrucu Paloma」や、Tom Waits、Ralph Towner、そしてなんとMadonnaの作品なども取り上げられています。ポピュラーな楽曲にも目を向け、ジャズシンガーとしての自己に立ち戻った作品と言えるのでは?

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     2014/02/08

    もともとは、ロバート・フリップがBootleg(ライブの盗み録りが多く、非合法でアーティストには一切支払いなし)の横行に業を煮やして立ち上げたと思われるキング・クリムゾン・コレクターズ・クラブ。1998年から販売開始され、本国のイギリスでは通販のみのコレクターズアイテムだったらしいのですが、ライブで、更に熱く本領を発揮するバンドの貴重な記録として、ファンにはたまらない作品群(既に40作品以上)になっています。さて、今回、4作品がドドッと発売されました。この「Live At The Pier Nyc 」は1982年8月2日ニューヨークでの録音です。音質に当たり外れがあるコレクターズ・クラブですが、本作は正式にライブ盤として発表可能なほど音質も演奏内容も優れたものと断言できます。時期としては、「 Beat 」を発表した直後であり、メンバーは傑作と謳われた「Discipline 」から「 Three of a Perfect Pair 」へと続く、ロバート・フリップ、エイドリアン・ブリュー、トニー・レヴィン、ビル・ブルーフォードの4人。このメンバーの結束力が最高の状態に高まっていた時期のようで、複雑な楽曲を難なくこなす彼らの演奏能力には圧倒されます。「クリムゾン・キングの宮殿 」からファンを続けている方々、特に「太陽と戦慄 」の緊張感、前衛性に人生を狂わされてしまった方々は、物足りなさも感じると思います。そんなファンのために演奏されるラストの「Larks’ Tongues in Aspic, Part U」が、やはり最大の聴きどころ。しかし、このメンバーでの傑作「Elephant Talk」がこのライブの山場だと思います。私には、メンバーが胸を張って演奏している姿が目に浮かぶようです。

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     2014/02/02

    ECMを代表するギタリストJohn AbercrombieとRalph Townerの共演作「Sargasso Sea」は、 1976年の録音。その5年後に録音されたのが、本作「Five Years Later」です。1980年代はFusionの台頭が著しく、この名手たちもその波に押されたのか、と思わせるようなところがあります。特に前半は、電気的に増幅された音が覆いかぶさり、いつもの2人ではないような印象が・・・。しかし、徐々に本来の姿を取り戻していくような構成で、ともにAcoustic Guitarで語り合う名演「The Juggler’s Etude」やAbercrombieのElectric GuitarとTownerのAcoustic Guitarがせめぎ合うかのような「Bumabia」は、やはりこの2人にしか表現できない豊かな音楽世界を形成しています。それにしても、お2人のポートレイトが若い!!。

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     2014/01/30

    jazzファンのみならず、広く音楽ファンにその名を知られたピアニスト Keith Jarrett作曲の「Ritual」を、指揮者として有名なDennis Russell Davies(ECMではGiya Kancheli、Arvo Partなどの作品を録音しています)が演奏した1977年の作品。なるほど、Keithらしさを感じさせる曲調です。Keithはもちろんimprovisationを得意とする演奏家であるわけですが、その即興パートも記譜できるのでしょうか?。だとしたら、キースのガツンとくる感触はありませんが、上品なアドリブの香りが漂うようなピアノソロを、このアルバムでは楽しむことが出来ると思います。また、キース独特の唸り声?がない分、classical musicとして聴くこともできるのでは?。といいますか、プロデューサー Manfred Eicherの意図は、キースの作品をclassicalなものとして、音楽を愛する者たちに聴かせることにあったのではと思える節があります。全体に奇を衒うことなくスムースに流れていく構成で、32分ちょっとという簡潔さも、曲の印象を際立たせていると思います。

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     2014/01/28

    Yeahwon Shinのファーストアルバムです。Bossa Nova曲集ですが、原曲がかなりアレンジされており、Yeahwon Shinの無垢で囁くようなvoiceが活かされたコンテンポラリーなプロダクションになっています。Antonio Carlos Jobimの「Chovendo Na Roseira」(「バラに降る雨」という素敵な邦題)から、雰囲気よく始まりますが、その曲と分かるのはしばらく聴きすすんでから。この曲を聴くと、Elis Reginaの名唱(Elis & Tom に収録)が思い浮かびます。やはり、 Jobimの曲が多く、涙なしには聴けない「Dindi 」も取り上げられています。Yeahwon Shinは歌唱力があるというより、原曲を自分の世界に取り込んで、上手く表現できる歌手だと思います。昨夜の疲れを癒すため、ちょっとお昼寝したくなるような午後の陽だまりの中で聴くと、効果があるのでは?脇を固めるのは、Kevin Hays(piano)、Jeff Ballard(drums)、Ben Street(bass)とjazz界の強者達。そして、なんとブラジルの天才音楽家 Egberto Gismontiがラストの曲に参加しています。そういえば、このジャケット、Bossa Novaの名盤Wanda Saの「Vagamente」をかなり意識していますね。プロデュースはECMからの「Lua ya」と同じSun Chungという方。この方が、 ECMデビューを後押ししたのだと思います。紙ケースのジャケットが感じいいし、ブックレットのフォトも素敵な作品。そして、軍配は、やはりECMの方に上がるようです。

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     2014/01/26

    日本で女性ギタリストと言えば、村治佳織さんが有名ですが、このギターソロ「En otra parte」の主人公、ハンガリー出身のZsofia Borosさんもなかなかの美形で、欧米ではかなりの人気を博しているではと思います。実は、ライナーノーツを見ずに聴き始めるのが常であり、聴き終えてからZsofiaさんが女性であると知りました。そういえば、密やかで繊細な演奏は女性ならではの表現力ですし、時に気高ささえ感じられます。彼女にとって、これがECMデビュー作。10人もの作者の11曲を演奏しているのですが、この選曲にはプロデューサーManfred Eicherの意向も反映されているのだと思います。ECMのギタリスト代表格のRalph Townerの作品も収録されていますし。アルゼンチンのギタリストQuique Sinesiの「Cielo abierto」では、パーカッシブな力強い演奏を聴くことができ、このアルバムは、Zsofia Borosの繊細さだけでなく、女の強さも感じさせる素晴らしい作品に仕上がっていると思います。

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     2014/01/25

    Piano Trioといっても、 Carla Bley(piano)、Andy Sheppard(saxophones)、Steve Swallow(bass )というECMらしい編成の「Trios」。しっとりとしたメロディに導かれて、静かに始まる1曲目から引き込まれます。曲は全てCarla Bleyのオリジナル。5曲中、3曲が三部構成となっており、曲調の変化も楽しめる構成となっています。全体に、pianoよりもsaxが強調されている感じで、 Carlaの原曲の良さがふくよかなsaxにより際立っていると思います。また、Steve SwallowはContrabassでなく、electric bass(5弦)を弾いているので、3曲目の4ビートや5曲目のサンバ風のパートでは、bassという楽器の重さより、心地よい軽みのような感覚が味わえます。夜更けまで語り合うことができる、成熟した男女に似合うような、大人による大人のためのアルバムだと思います。ご存じの通り、 Carla Bleyは、Paul Bleyの奥様だったのですが、旦那さんの友人でありベーシストのGary Peacockと深い関係に陥りまして、また旦那の方は、 Garyの奥様Annette Peacockと同じような関係に。そして、現在のCarlaのパートナーはPaul とも共演歴が長い、このアルバムのベーシストSteve Swallowです。恋の強者たちだからこその作品かもしれません。

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     2014/01/16

    スイングしない(4ビートでない)といいますか、温度感が低いといいますか、とにかく、醒めた感じのピアノトリオを好んで聴く理由は、それを私がjazzとしてではなく、ambient(環境音楽)の一種としてとらえているからかもしれません。
    このTageは、Sebastian Zawadzki(piano)をリーダーとするポーランド出身の若者3人が、情熱をぶつけるというより、夜の底で青白い炎をメラメラと燃やしているような演奏を展開する作品。この傾向ですと、どうしてもPaul Bleyを思い出してしまいます。そういえば、ドラムスもBarry Altschulみたいなソロを叩いていますね。
    好き嫌いはあると思いますが、これも素敵な音楽です。

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