ピアノ・ソナタ全集 コルスティック(10CD)
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ゆあがり | 不明 | 不明 | 2014年03月22日
スタインウェイのDモデルを使用しているとのことだが、大ホール用のコンサートグランドを間近にマイクにおいて録音すればこうなるという、音は鮮明だが悪しき見本のような録音だ。音が克明に聞こえるというよりは本来は聞こえない音まで聞こえて音の洪水である。ピアノの弦がうなり声を上げ、低音は不快に感じるレベルにまでガツン・ズドーンと響く。 しかしながら、精緻で、時に巨大な構造物であるベートーヴェンのピアノソナタを顕微鏡で観察するようなこの録音は、ひょっとしたらコルスティックの意図したものなのかも知れない。演奏スタイルも即物的で、音の背後にあるものを探ることより、音の群れの中に身を投じることを聴き手に要求しているかのようである。ハンマークラヴィーアの第三楽章はその極端な表れだ。だとすればこういう録音にもそれなりの意味があることになる。いずれにしても、この曲群に味わいや形而上的なものを求める向きには薦められる全集ではない。極上の美人も、近寄ってルーペで皮膚の毛穴まで観察すれば別様に見えるであろう。そうしたミクロ的な観方も一興と考える度量がなければ、コルスティックの強靭なタッチも卓越したピアニズムも負の効果しか持たず、聴いていてもただ耳が疲れるだけのものでしかないのではなかろうか。6人の方が、このレビューに「共感」しています。
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