作曲家・指揮者としてのチェリビダッケの真価を遺憾なく堪能できる掛け替えのないチェリビダッケ音楽の傑作である。シューマンの子どもの情景とサンサーンスの動物の謝肉祭を連想させるような、大自然の中にのびのびと子どもが駆け回り動物と共に戯れているような生き生きとした情景が色彩感豊かに描かれている。また、ブルックナーの交響曲を連想させるような、こころの深奥と音楽の真実に通じるような深遠な世界も表現されている。終曲となる13曲目の「これでおしまい」は、始まりの1曲目のダカーポになっている。商業主義を戒め、指揮者としての生業を営んでいく上でやむを得なかった放送用の録音と、(CD化のためではない)オーケストラの公演記録としての録音は必要最低限度において認めつつも、音楽という真実を伝えたいがためにCD化という方法を一貫して避け続けたチェリビダッケらしく(ドキュメンタリー映画監督のご子息による説得で、LD化は晩年におこなっているものの)、生前にCDとして世に出したものは、このCDのみであった。しかもオーケストラと共に版権と謝礼を辞して売り上げはすべてユニセフのものとしている。