Mitsu the Beats Talkin'About Jazz

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2008年1月21日 (月)




GAGLEの一員、またはソロ・アーティストとしてワールドワイドな活躍をみせる、仙台在住のヒップホップ・トラックメイカー/DJ、Mitsu the Beats。

海外のヒップホップ・プロデューサーらに一歩も引けをとらない、世界水準の「掘りの深さ」を感じさせる、そのトラック・メイクやリミックス・ワークは、まさに国内随一。誰もが、「ジャズ」のフィーリングがたっぷりと染み込んだ、そのトラックに、彼の計り知れないジャズへの愛情を感じる取ることができるはず。

昨年末、東京・渋谷で開催されたDJイベントの為上京した、Mitsu the Beatsさんにお話を伺うことができ、ジャズへの様々な思いを語っていただきました。

まずは、その前編をお楽しみください。

  --DJ Mitsu the Beats--

GAGLEのサウンド職人/サイドMC、さらには、我が国が世界に誇るビートメーカーとして、日本のヒップホップ・シーンを牽引するDJ Mitsu the Beats。2003年のソロ・アルバム『New Awakening』では、主にジャズをテクスチャーにしたその独特な浮遊感を残すトラック、また、海外アーティストとの積極的なコラボレーションで、日本のみならず世界各国から高い評価を得る。

Gagle 『3 Peat』
GAGLE 『3 Peat』

その後も、様々なアーティストのリミックスを手掛けたり、ブルーノート65周年オフィシャルMix CD『Blue Impressions』、日本人としては初となるBBEレーベルのオフィシャルMix CD『BBE Sessions』、Stones Throwレーベルの10周年コンピ『Stones Throw Ten Years』の日本盤独自企画Mix CDを手掛けるなど、まさに八面六臂の大活躍。               

2007年には、GAGLEの3rdアルバム『3 Peat』をドロップ。今春には、これまでの「GAGLEサウンド」の集大成となるインスト・アルバム『New Found Facts』をリリース予定。

> Mitsu the Beats関連作品はこちら




-では、まずジャズを聴くようになったきっかけを教えて下さい。

「まず1つは、子供の頃に両親が車のカーステレオでジャズをよくかけていたりしてたので。聴こうかな、と思って聴いていたわけではなくて、自然と耳に入ってきて、何となく、あぁコレがジャズなんだなぁ、という認識で聴いていたのが最初でしたね」

-お父様が大のジャズ・ファンというのを伺ったのですが。   

「すごいコレクターというわけではなく、普通にジャズが好きでレコードとかを集めてて、よく家でもかかってはいましたね」

「でも、中学や、高校の初めの頃ぐらいまでは、ジャズというよりは、Bobby Caldwellや、あとはフツーに日本の歌謡曲なんかをよく聴いていましたね。で、高校ぐらいの時に、ヒップホップに出会ってからジャズを聴くようになりましたね。最初はネタとしてで。あ、これジャズからサンプリングしているんだ、って。家にもレコードあるじゃん、みたいな。調べていくうちに、家にあるレコードの中にも結構ネタがあったりして。そこからですね。ちゃんと聴きだすようになったのは」

-ジャズに興味を持ち始めて以降、最初に買ったジャズのアルバムは覚えていたりしますか?

「う〜ん、アルバムかぁ・・・、あまり覚えてないんですよ、最初何だったか。でも、基本のトコロを色々聴いていたような。父親がWes Montgomeryがすごい好きで、その辺のスタンダードのジャズの作品を、他のアルバムはどういう曲が入ってるんだろう、みたいな感じで確か買ってってましたね」

-最初は全くネタ云々ではなくて?

「でも、Wesに最初ネタが入っていて、じゃあ、他のアルバムにも入ってるのかなぁ、って感じで、ネタで探してたのは間違いないですね。Bob Jamesとか、CTIのものとか、聴き易いトコロをまずはみたいな」


Wes Montgomery / A Day In The Life
>Wes Montgomery 『A Day In The Life』

1967年6月A&Mに録音された後期ウェス・モンゴメリーのヒット・アルバムは、
クリード・テイラーのA&M/CTIの記念すべき第1号作品でもある。ジャズとタバコを
こよなく愛したウェスらしい、「シケモク」ジャケがなんとも言えぬ哀愁を漂わせる。
メロウなオリジナル曲「Angel」は、Show Biz & AG「Next Level」ネタに使用された。



Bob James / One
>Bob James 『One』

クラシック音楽の有名曲ムソルグスキー「はげ山の一夜」を見事なオーケストレーション
で料理してみせた、Bob JamesのCTIからのデビュー作(74年)。
Grover Washington Jr.(ss)、Gary King(b)、Steve Gadd(ds)といった兵達が
大挙参加し、Bobの心地良いフェンダー・ローズ・プレイを強力に援護。当時の「クロス
オーヴァー」サウンドを代表する1枚となった。「Nautilus」はサンプリング・クラシック。



-その聴き始めた頃に、最もジャズを意識させたヒップホップの楽曲は何だったのでしょうか?

「特に誰々が使っていたのが、というのはあまりないんですけど、92〜3年頃に、Original Flavorなんかがジャズを使っていたのには、ヒップホップとジャズってカッコイイなぁ、っていうのはありましたね」

-Roland Kirkネタの曲(「Can I Get Open」)あたりとか?

「そうです。そうです。Roland Kirkだと、あの左右対称でサックス吹いているジャケのアルバム(『Left & Right』)。あの辺りのものですね」

DJ Mitsu The Beats

-そういったネタとしてのジャズと、あくまでリスニングとしてのジャズは、趣味や趣向はかなり違ってきますか?

「そうですね。どんどん掘るようになってきてからは、サンプリング・ネタにしてもやっぱりお金をそんなに使えないんで、(レアなものではなく)フツーに手に入るようなジャズしか買えないっていう部分もあって。あとは、ファイル・レコードに入って、気仙さん(現GAGLEマネージャー / Jazzy Sport Productions)とか、マサヤ・ファンタジスタ(Breakthrough / Jazzy Sport Productions)とかに出会ってからは、色々なコレクションを聴かせてもらって、こういうのもある、こういうのもある、みたいに調べていくうちにどんどん深くなってきて。それは、別にネタじゃなくて、単純に楽曲の良さであったりして。」

「それまで、ずっと思っていたジャズっていうのは、すごくスタンダード的なもので。展開にしても、きちっとテーマがあって、その後にアドリブの部分があってみたいな。でも、聴いていくうちに、もっとヒップホップ寄りのフュージョンだったり、カッコイイのがいっぱいあるんだ、というのは分かってきて、リスニングの部分に関しては広がっていきましたね」


Roland Kirk / Left & Right
>Roland Kirk 『Left & Right』

20分にも及ぶ組曲大作「Expansions」は、めまぐるしく曲想が変化してゆくスリリング
な一大叙事詩に。ハープにアリス・コルトレーン、バリトン・サックスにペッパー・アダムス
が参加。アリスによって、物憂げなハープの調べが爪弾かれる「Black Mystery Has Been Revealed」は、Original FlavorやArrested Developmentネタとしても有
名なキラー・ブレイクを搭載。



-ジャズをサンプリングしてトラック制作をする際、何か特別なこだわりや考えなどはありますか?

「いや、特にはないですね。ジャズを使う割合も減ってきて、今は半分ぐらいかなぁ。昔は、ジャズしか知らなくて、あまり他のレコードを持っていなかったんですよ。でも最近は、もっと色々な音楽のいいフレーズがいっぱいあるし。きれいなメロディをサンプリングするために、昔はジャズを買ってたと思うんですけど。色んなピアノを調べたりとか。そういう事に対して少し飽きてしまったというか・・・。それでは行き詰るところが多くて。皆が好きだと言ってくれるような、そういうフレーズが入ったトラックや楽曲は、いくらでも作れると思うんですよ。だから、今は違う方向にアタマが行っている感じですね。変な音が一音入っていたら、それだけで曲作りたい、みたいな」


-クラブ・プレイでジャズをかける際に、注意している点や工夫している点はありますか?

「昔はよくネタをかけていたんですけど。ネタふりして、次の(ネタを使用した)曲に繋げる感じで。ネタ→ヒップホップ、ヒップホップ→ネタみたいなことをずっとやっていたんですが、そういうのはやめるようにしました。盛り上がらないから(笑)。これは、自己満足だけだなぁ、みたいな。だから、今はかけるとしたら、ちゃんとビートが立ってて、1つの曲としてかけれるジャズじゃないとかけないようにしてますね。それか、皆が本当に好きな曲のネタで、たとえビートが入ってなくても、反応できる曲だったらかけます」

DJ Mitsu The Beats

「最近、2004年か2005年ぐらいのBlast誌をたまたま見る機会があって、そこに自分が選んだ「ジャズの15選」みたいな企画が載っていたんですよ。盤選は、まぁまぁいいんですけど、喋ってる内容とかが、全然ダメなんですよ(笑)。もう全然知識ないなぁ、みたいな。若いな、っていう。今は、その時の「分かってない」度が「分かる」っていうか。自分で今どのくらいの知識があるのかなぁ、みたいなところは分かるようになりましたね」

-単純に、その頃と今では主体として聴いているものが違う感じでしょうか?

「違いますねぇ。でも、今でも全然かけるものとかも入っていたし、ブレイクは今でも好きなんですけど。もっと広がってますね。その頃は、ジャズの中だけからブレイクを探して、一部グルーヴィーなロックもありましたけど、かけていたんですよ。でも今は、7インチも混ぜるし、ファンクもソウルもレゲエも全部かけるんで。しかも、それがバラバラになるんじゃなくて、自分の好きな感じで統一されて。だから、DJプレイに関しては、前よりは良くなっているなという感じはします」

-そういった部分を含めて、やはりJazzy Sportクルーとの交流は大きかったのでしょうか?

「それは絶対ありますね。あとは、Jazzy Sportを中心としたつながりでもあるんですけど、色々な(レコード屋の)バイヤーさんとすごい仲良くなったというのがありますね。例えば、沖縄のSuper Slickの山下さんだったり、新宿のUniversoundsだったり。今一番、自分にいい音楽を教えてくれるのが、福島のLittle Birdっていうレコード屋さんで。そこは、ほんっとにスゴイですよ。相場より全然安く売ってくれるし、滅多に入らないものをちゃんと入れてくれるんですよ。そのおかげで、相当自分の周りにも(レコードが)集まってきたっていうのはありますね。」

「2〜3年前よりは、人とのつながりが確実に増えて。あと、Jazzy Sportの中に、Dubby Sportっていうレゲエがすごいやつがいて、そいつから直接レコードを仕入れてもらって、売ってもらったりとか。そういう意味で、環境が良くなったっていうのが大きいですね」

「いい音楽を「卸し」てくれるという点で、失敗を生まないというか、チョイスが広くなりすぎなくなるというか。結構、枝分かれはしてるけど、一個一個が太いんで。ボクが好きそうなやつ、例えばローズ(フェンダー・ローズ・ピアノ)の音が入ってたら、「これローズ入ってるよ」ってすぐ持ってきてくれたりとか。そういうのは、以前とは違うかなっていう感じですね」

-作品やDJプレイで、そういったつながりや広がりの成果を還元できると。

「そうですね。前は、DJプレイとサンプリングする曲って、完全に分かれてたんですよ。でも、今は結構混ざってますね。6〜7割ぐらいは一緒だと思います。曲自体がものすごくいいっていうものは、当然かけれるし、そういうのをサンプリングにも使ってます」


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