THE OFFSPRINGのあの日、あの時 16
2012年12月14日 (金)
「今かよっ!」と突っ込まれること必至だとは思うけど、あえて書こう(笑)。たぶん前作『RISE AND FALL, RAGE AND GRACE』(2008年)のときの再来日公演を観たときからだったような気がする。連載前回の最後に書いたけど、あのときのライヴは本当に楽しくて思いっ切り満喫した。終演後、公演会場となった東京・新木場STUDIO COASTからの帰路についている最中、一緒に観戦したスタッフ2人とずっとTHE OFFSPRINGとそのときのライヴの話ばかりをして大いに盛り上がった。そのときの再来日公演を観たときから、と書いたのは、あのときのバンドのライヴ・パフォーマンスは明らかに、それまでのそれとはヴァイブっていうか、放っているベクトルっていうかが違う、と直感したからだ。名楽曲が次から次へとまるで打ち出の小槌のごとく繰り出され、感激雨あられ状態となるのは変わらずいつものこと。その点は別にして、ライヴの性格が異なるっていうか…なのだ。
連載第4回に書いたけど、彼らのライヴを初めて観たのはもう、18年以上も前のこと。あの頃の彼らはとにかく尖がっていて、スピーディーなパンク・ロック・チューンをこれでもかこれでもかと言わんばかりに連発/連打しては、ガッツリ観客たちを掴んでいた。当時デクスター・ホーランド(vo,g)、ヌードルズ(g)、グレッグ・K(b,vo)の平均年齢は30歳。若い、と言うよりバンドとして“脂”が乗り出した頃で、かつ3枚目『SMASH』('94年)が超ウルトラ大ヒットしていた時期だっただけに、そういうふうなライヴのあり方の方がむしろ自然だった、と言える。その彼らが4枚目『IXNAY ON THE HOMBRE』('97年)、5枚目『AMERICANA』('98年)と作品を重ねていくに従いさらにビッグな存在となり、アリーナ級の会場を使用し、それまで以上の大観衆を相手にライヴをやるようになった。改めて言うまでもなく、彼らは“根っからのパンク・ロッカーたち”だ。ちっちゃい、もしくは中規模クラスの会場でライヴをやり、汗まみれになりつつ数百〜数千人の観客たちと一体化し、ひとつの空間をシェアし合うことを“生命線”としてきた根っ子、背景を持つ。それだけに余計、素のパンク・ロック・バンドが大会場にて大観衆と対峙しながらエンタテイメントを意図した演出性伴うパフォーマンスの必要性に直面した。それは連載第8回、第9回あたりを改めて読んでいただければわかると思う。このときのデクスターの発言からは、エンタテイメント性をどうやってそれまでの自分たちのライヴに取り入れ、自分たちならではの、それでいて新たな領域に踏み込んでいくかを真剣かつ慎重に考えているフシが窺える。
で、話は冒頭に記したことに戻る。しごく簡単に言えば、彼らは自分たちのライヴはどうあるべきか、ということを熟慮する“ある種の一線”を超え、完全に乗り切ったんだと思う。歳を重ね、ライヴに年輪が刻まれたこともあるだろう。『RISE AND FALL, RAGE AND GRACE』での再来日公演は「スンゲぇ!」「かっけー!」というより、むしろ彼らのプレイのソツのなさやステージ運びの妙に「うわー、上手いな〜!」と口を突くことが何回もあった。“ライヴとはなんぞや”を熟知し、体得し、観客のツボを突いて突いて突きまくりつつ何度もクライマックスを作り出していった。それはPUNKSPRING 2012でも、9枚目『DAYS GO BY』発売後の単独公演でもそうだった。さすがである。ある意味、若かりし頃グイグイ“速球派”で押していたピッチャーが、歳をとり、いろいろと試行錯誤した結果、見事なまでに緩急自在の“技巧派”に生まれ変わった、っていうのに近いかもしれない。
ご存知のとおり、THE OFFSPRINGはこれまでに2度サマソニに出演している。しかし、PUNKSPRINGには今春のが初参戦だった。3月31日開催の東京公演、そしてその後の滞在で多くのことがあった。東京公演ではコ・ヘッドラインとして出たSUM 41が予定の持ち時間をけっこうオーバーしたため、THE OFFSPRINGの出番が遅れた。そして熱演中にあまりの盛り上がりからステージ前のバリケードが崩れかかったことから補修のため数十分間の演奏中断を余儀なくされた。これが原因で、当初2曲披露する予定だった新曲を1曲削らざるを得ず、「The Future Is Now」のみ演った。翌4月1日には大阪公演で、1日置いて3日に名古屋でALL TIME LOWとジョイント公演をやり、東京に戻り、4日に東京・恵比寿の某高級ホテルの一室でデクスター、ヌードルズ、グレッグの3人はそれぞれ個別に取材を受けている。
このとき自分は担当じゃなく、GrindHouse magazineの編集長である権田アスカ嬢がデクスターとヌードルズ各々に30分ずつ話を聞いている。とてもラッキーなことに、その直前に取材待機部屋で新曲「Turning Into You」「Days Go By」「Cruising California(Bumpin' In My Trunk)」「Secrets From The Underground」を聴くことができた。しかもラジカセでバンドが持参してきたCDRをプレイバックして、という実にオールドスクールな方法でだ(笑)。この新曲群はまさに“録りたてホヤホヤ”のものだった。取材で話してくれたのを横で聞いていたのだけど、彼らは来日する前々日に『DAYS GO BY』のレコーディングを終えた。そして、その翌日に身支度をし、飛行機に乗って日本に向かったのだ。デクスターもヌードルズも「ホントにギリギリだったんだよ」と笑っていた。取材終了後の夜、レコード会社の地下にあるスタジオに場所を移し、ファンや音楽メディア、CDショップ関係者たちを交えての小規模な新曲試聴会が催された。この場にデクスター、ヌードルズ、グレッグ3人が登場し、冒頭デクスターが挨拶した。たった数日間のうちにライヴに取材、そして試聴会を経験したことで、一気に『DAYS GO BY』の発売が近づいていることを実感させられたわけだけど、実はこの時点ではまだ、正式な発売日はセットされていなかった。担当者が苦笑しながら「6月中か、それとも少し7月にズレ込むのかっていう状況で…。もうすぐ決定すると思うんですけど」と言った…。
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■■■ 有島博志プロフィール ■■■
80年代中盤よりフリーランスのロックジャーナリストとして活動。積極的な海外での取材や体験をもとにメタル、グランジ/オルタナティヴ・ロック、メロディック・パンク・ロックなどをいち早く日本に紹介した、いわゆるモダン/ラウドロック・シーンの立役者のひとり。2000年にGrindHouseを立ち上げ、ロック誌GrindHouse magazineを筆頭にラジオ、USEN、TVとさまざまなメディアを用い、今もっとも熱い音楽を発信し続けている。
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