Die Zauberflote : Steier, Constantinos Carydis / Vienna Philharmonic, Goerne, M.Peter, Shagimurotava, C.Karg, Plachetka, Nazarova, etc (2018 Stereo)(2DVD)
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村井 翔 | 愛知県 | 不明 | 12/September/2019
序曲の間に見せられるのは20世紀初頭、第一次大戦前あたりのブルジョワ家庭の夕食風景。ここにオペラの主要人物が既に顔を揃えている。ザラストロ(いかにも旧世代の家父長らしい父親、食事の間に家を出て行ってしまう)、夜の女王(それを見てヒステリーを起こすお母さん、夫婦仲は険悪そうだ)、三人の侍女(この家のメイドさん達)、パパゲーノ(血のついた前掛けをつけた肉屋)、パパゲーナ(その伴侶)、モノスタトス(父親を訪ねてきた御用聞き?)、そしてパミーナは食堂にかかっている、おじいさんの伴侶だった人の若き日の肖像画として表象される。そしてオペラ本編は食事が終わってベッドに入った三人の孫たち(オペラ内でも彼らのパートを歌う)におじいさんが語るメルヒェンとして展開してゆく。おじいさん役のブランダウアーは2003年チューリッヒでの『後宮』でも素晴らしいセリム・パシャだったが、一段と渋くなって実に素敵。したがって、オリジナルの台詞はほぼ全廃。ザラストロの露骨な人種差別発言など、今となっては扱いにくい元の台詞をやめて、見通しのよい視点から物語を語り直そうという意図かと思ったが、必ずしもそうではない。確かにモノスタトスはもはや全く黒人ではないが、演出家は夜の女王のみならず、怪しげなサーカス団長といった風のザラストロに対しても十分に批判的。特にエンディングで啓蒙主義=ザラストロの暴力性を痛烈に暴いてみせるので、テレビ中継の行われた初日には夏のザルツでは珍しい盛大なブーを浴びたが、アメリカ生まれの女性演出家、スタイアーの意気や大いに良し。ただ一つ、2018年が第一次大戦終戦百周年であることが意識されていたのだとしても、火と水の試練がありきたりな第一次大戦映像の投影になってしまったのだけは残念。 カリディスの指揮が圧巻の出来だ。ベルリン・フィル・デビューの演奏会(2019年6月)でも素晴らしいモーツァルトを聴かせているが、HIPスタイルでウィーン・フィルを存分に引き回して実に痛快。歌手陣ではまずカルクを誉めよう。情愛細やかな、しかし現代的な自立した女性像を描いていて、歴代パミーナの中でも屈指の演唱。シャギムラトヴァはコンディション万全でなかったかもしれないが(初日はドタキャン)、さすがに現在の第一人者。デセイの演技力と比べたりしなければ、まずは満足できる夜の女王だ。ペーターは生硬ではあるが、おもちゃの兵隊風に作られたキャラにうまくはまっている。ブラチェトカは鈍重なタイプで、私の好みのパパゲーノではないが、まあ及第点か。ゲルネのザラストロは問題作。まず声から言って、無理な配役だ。ザラストロ名物の超低音はひどくわざとらしく響くが、モーツァルトはこの人物をからかうために超低域で歌わせたのだという説も唱えられている。そう考えれば、なかなか面白い配役。演技としては半ば悪役風に演じられているのも納得。4 people agree with this review
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