DVD 輸入盤

交響曲全集 コンセルトヘボウ管弦楽団(11DVD)

マーラー(1860-1911)

基本情報

ジャンル
:
カタログNo
:
RCO12101
組み枚数
:
11
レーベル
:
Rco
:
Europe
フォーマット
:
DVD
その他
:
輸入盤

商品説明


超豪華! マーラー交響曲全曲ライヴ映像
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
マリス・ヤンソンス、ベルナルド・ハイティンク、ピエール・ブーレーズ、ロリン・マゼール、エリアフ・インバル、イヴァン・フィッシャー、ファビオ・ルイージ、ダニエレ・ガッティ、ダニエル・ハーディング
9人の指揮者達によるマーラー・イヤーのライヴ映像
特にインバルの第10番は驚異的な美しさ!


2年続きのマーラー・イヤーを記念し、2010年度と2011年度のシーズン(2009〜2011年)に連続で開催されたロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団によるマーラー交響曲全曲演奏会シリーズは、世界的な注目を集めたコンサートでした。

【コンセルトヘボウ管弦楽団のマーラー伝統】
マーラー自身が指揮をし、深い関係にあったコンセルトヘボウ管弦楽団にはマーラー演奏の特別な伝統があり、ここでもその本拠地での豊麗なサウンドをベースに、現代の9人のマーラー指揮者達がそれぞれの解釈を響かせ、その指揮ぶりを目で見ることができるのが嬉しい限り。

【名ホールでの演奏をHD画質と高音質で収録】
HD機器での収録だけに画質・音質共に高品質。繊細なソロから壮大なトゥッティまで余すところなく捉えているのは、すでに経験豊富な本拠地コンセルトヘボウのグローテ・ザール(大ホール)での収録という好条件も幸いしたものと思われます。(HMV)

【収録情報】

Disc 1 [60:00]
交響曲第1番ニ長調『巨人』

 ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団
 ダニエル・ハーディング(指揮)

 収録時期:2009年9月30日(ライヴ)
 収録場所:アムステルダム、コンセルトヘボウ

現代音楽からスタートし、現在ではピリオド演奏にも精を出す彼は、以前からマーラーを得意としており、実演ではかなりの数の公演を指揮しています。録音でも、ウィーン・フィルとの第10番、マーラー・チェンバー・オーケストラとの第4番がリリース済みでどちらも大きな話題となっていました。

Disc 2 [90:00]
交響曲第2番ハ短調『復活』

 リカルダ・メルベート(S)
 ベルナルダ・フィンク(Ms)
 オランダ放送合唱団(合唱指揮:セルソ・アントゥネス)
 ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団
 マリス・ヤンソンス(指揮)

 収録時期:2009年12月3日(ライヴ)
 収録場所:アムステルダム、コンセルトヘボウ

この映像のみ先にDVDとSACDのボーナス・ディスクでリリース済み。演奏は細部まで大切にしながらもスケール大きく全体を統率した立派なもので、すでに高い評価を得ています。

Disc 3 [103:00]
交響曲第3番ニ短調

 ベルナルダ・フィンク(Ms)
 オランダ放送合唱団女声合唱 セルソ・アントゥネス(合唱指揮)
 ブレダ・サクラメント合唱団少年合唱
 ラインモンド少年合唱団
 ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団
 マリス・ヤンソンス(指揮)

 収録時期:2010年2月3日&4日(ライヴ)
 収録場所:アムステルダム、コンセルトヘボウ

音声だけSACDで先にリリース済み。いろいろな楽器がまるでオケコンのように大活躍する作品だけに、名手揃いのコンセルトヘボウには適性の高い作品。SACDでの評価もきわめて高いものでした。

Disc 4 [61:00]
交響曲第4番ト長調

 ミア・パーション(S)
 ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団
 イヴァン・フィッシャー(指揮)

 収録時期:2010年4月22日&23日(ライヴ)
 収録場所:アムステルダム、コンセルトヘボウ

フィッシャー兄弟の弟、イヴァン(兄はハイドン全集やオペラで有名なアダム)は実演で数多くのマーラー・コンサートを指揮し、録音でもブダペスト祝祭管との第1番、第2番、第4番、第6番のSACDにより各国で高い評価を受けています。ここでは録音と同じくスウェーデンのミア・パーションを起用し、細部が繊細に息づく美しい演奏を聴かせています。

Disc 5 [76:00]
交響曲第5番嬰ハ短調

 ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団
 ダニエレ・ガッティ(指揮)

 収録時期:2010年6月25日(ライヴ)
 収録場所:アムステルダム、コンセルトヘボウ

実演では各国で精力的にマーラー作品を指揮するガッティは、録音ではロイヤル・フィルと第4番と第5番をCDリリース済み。濃密に細部を描きあげドラマティックな展開を志向するガッティのスタイルには、ソロもトゥッティも表情豊かなコンセルトヘボウ管弦楽団のサウンドは最適なものです。

Disc 6 [97:00]
交響曲第6番イ短調『悲劇的』

 ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団
 ロリン・マゼール(指揮)

 収録時期:2010年10月20日(ライヴ)
 収録場所:アムステルダム、コンセルトヘボウ

早くからマーラーに取り組んで世に紹介してきたマーラー指揮者の大御所マゼールは、1982年に録音したウィーン・フィルとの第6番でもたっぷり時間をかけて複雑な味わいを醸し出していました。ここでもその解釈傾向は同じですが、さらに細部をえぐるようになり、盛り上げ方も大スケールになっています。

Disc 7 [80:00]
交響曲第7番ホ短調『夜の歌』

 ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団
 ピエール・ブーレーズ(指揮)

 収録時期:2011年1月20日&21日(ライヴ)
 収録場所:アムステルダム、コンセルトヘボウ

ブーレーズは実演でも録音でもマーラーを多くとりあげており、独自の冷静な視点による解析的演奏を展開、クリーヴランド管弦楽団との第7番のCDでも高解像度な演奏により、各動機が密接に絡み合うさまを丹念に描出し、新鮮な驚きを与えてくれたものでした。それから16年を経た今回の演奏でもほぼ同じ解釈で一貫、結果としてオケの味わいの違いを楽しめる仕上がりとなっています。

Disc 8 [87:00]
交響曲第8番変ホ長調『千人の交響曲』

 クリスティーン・ブルワー(ソプラノ1:罪深き女)
 カミラ・ニルンド(ソプラノ2:贖罪の女)
 マリア・エスパダ(ソプラノ3:栄光の聖母)
 ステファニー・ブライス(アルト1:サマリアの女)
 藤村実穂子(アルト2:エジプトのマリア)
 ロバート・ディーン・スミス(テノール:マリア崇拝の博士)
 トンミ・ハカラ(バリトン:法悦の神父)
 ステファン・コチャン(バス:瞑想の神父)
 バイエルン放送合唱団
 ラトビア国立アカデミー合唱団
 オランダ放送合唱団
 オランダ国立少年合唱団
 オランダ国立児童合唱団
 ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団
 マリス・ヤンソンス(指揮)

 収録時期:2011年3月4日&6日(ライヴ)
 収録場所:アムステルダム、コンセルトヘボウ

オランダの3つの合唱団に加え、ヤンソンスのもうひとつの本拠地からバイエルン放送合唱団、ヤンソンスの祖国からラトヴィア国立アカデミー合唱団が招かれて歌っています。ソリスト8人は、アメリカのクリスティーン・ブルワー、フィンランドのカミラ・ニルンド、スペインのマリア・エスパダ、アメリカのステファニー・ブライス、日本の藤村実穂子、アメリカのロバート・ディーン・スミス、フィンランドのトンミ・ハカラ、スロヴァキアのステファン・コチャンの5ヶ国の歌手ということで、合唱と合わせると、オランダ、ドイツ、ラトヴィア、アメリカ、フィンランド、スペイン、日本、スロヴァキアの計8ヶ国の人々による交響曲第8番の演奏と言うことになります。演奏は交響曲第2番と同じく、大人数による広大なダイナミック・レンジを持つ作品を巧みな統率で捌いた見事なもの。ちなみにヤンソンスの第8番のソフトはこれが初めてです。

Disc 9 [93:00]
交響曲第9番ニ長調

 ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団
 ベルナルド・ハイティンク(指揮)

 収録時期:2011年5月13日&15日(ライヴ)
 収録場所:アムステルダム、コンセルトヘボウ

ハイティンクの第9番といえば、この公演の半年後、急病のヤンソンスの代役として急遽出演したバイエルン放送響との演奏では速めのテンポが話題になっていましたが、こちらはハイティンクらしい落ち着いたテンポで、なめらかな起伏の美しい演奏を聴かせてくれています。

Disc 10 [92:00]
『大地の歌』
交響詩『葬礼』

 アンナ・ラーション(Ms)
 ロバート・ディーン・スミス(T)
 ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団
 ファビオ・ルイージ(指揮)

 収録時期:2011年5月18日&20日(ライヴ)
 収録場所:アムステルダム、コンセルトヘボウ

オペラとシンフォニーの両方に力を入れるルイージはマーラーを好んで指揮しており、実演のほかレコーディングにも積極的に取り組み、『大地の歌』についてもシェーンベルク版の録音がありました。今回は通常版の演奏で、ソリストにアンナ・ラーションとロバート・ディーン・スミスというマーラー経験豊富な歌手を起用して大きな成果を収めています。室内楽的な音楽も多用されるこの作品と、各パートがよく聴きあうコンセルトヘボウ管の相性は良く、これまでにも、シューリヒト、ベイヌム、ヨッフム、ハイティンク、ショルティと数多くのCDで注目を浴びていただけに、今回の映像作品の登場は歓迎されるところです。
 交響詩『葬礼』は、交響曲第2番第1楽章の原型で、大筋は似ているものの細部ではけっこう違いの見られる作品として近年注目度が上がり、すでにブーレーズ、セーゲルスタム、ツェンダー、リッケンバッハー、若杉弘、ウンガー、ロペス=コボス、シャイー、パーヴォ・ヤルヴィと数多くの録音がおこなわ、マーラー好きのあいだでは市民権を得た印象です。今回は、ルイージが『大地の歌』の後にこの作品をとりあげ、シャイー盤以来10年ぶりとなるコンセルトヘボウ・サウンドで若きマーラーの書いた音楽を味わうことができます。

Disc 11 [77:00]
交響曲第10番嬰ヘ長調(クック版全曲)

 ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団
 エリアフ・インバル(指揮)

 収録時期:2011年6月30日(ライヴ)
 収録場所:アムステルダム、コンセルトヘボウ

デリック・クック補筆完成版による全曲ヴァージョンで、DENON録音から19年ぶりの演奏。深化したインバルの解釈に応えるコンセルトヘボウ管弦楽団の芳醇なサウンドがなにより素晴らしく、第1楽章では耽美的な弦と深々とした金管が織りな陶酔的な美しさが絶品。名手揃いの木管セクションの豊かな表情に支えられた室内楽的な細部も実に魅力的です。インバルの解釈は、DENON盤に較べて第1楽章から第4楽章までが若干遅めのテンポ設定で濃厚さを増し、第5楽章では逆に1分ほど速い設定で演奏にメリハリをつけ、クック版の特徴でもある薄味な印象を解消、全体に非常にバランス良く情報量の多いエモーショナルな演奏に仕上げることに成功しています。コンセルトヘボウ管弦楽団初となる10番全曲ヴァージョンのソフトは、オケの実力を改めて示す凄い内容となりました。(HMV)

 収録時間:916分
 カラーNTSC 16 : 9 / Region All
 音声:LPCM ステレオ / ドルビー・デジタル5.0

総合評価

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ものすごくいい演奏ばかりです。特にヤンソ...

投稿日:2021/03/03 (水)

ものすごくいい演奏ばかりです。特にヤンソンスの8番が素晴らしい。もちろん他の演奏も素晴らしい。 演奏後のスタンディングオベーションが多いですが、これはオランダの聴衆がそういう習慣なのかと疑うくらいスタンディングオベーションが多いです。それくらい素晴らしい演奏だったからかなということだと思います。 ヤンソンスの8番は別売りしていますが、これだけでもとても見る価値ある演奏です。少し高いけど、素晴らしい演奏ばかりなので、十分値打ちのあるものでした。 ハイティンクの映像だけ他の映像と質感が違うのですが、引き込まれる素晴らしい演奏です。

よし さん | 不明 | 不明

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特定の指揮者ではなく個性的な指揮者たちに...

投稿日:2019/12/21 (土)

特定の指揮者ではなく個性的な指揮者たちによるコンセルトヘボウのマーラーが楽しい。 評論家気取りで演奏評を延々と書ける知識はないが、大地の歌のアンナ・ラーションが素晴らしい。 星4にした若干の不満は歌詞が無いことと、9番の画質が悪く第1楽章で瞬間的に音が途切れること。

びーぐる さん | 神奈川県 | 不明

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コンセルトヘボウのエリアフ・インバル マ...

投稿日:2013/11/26 (火)

コンセルトヘボウのエリアフ・インバル マーラー第10番 クック版全曲演奏会  インバルのファンなので、コンセルトヘボウでのマーラーの10番については動画サイトを通じて既にその演奏に接していた。マーラーの生誕150年、没後100年記念の全曲演奏会、その大トリが件の10番である。2009年から2011年にかけて番号順に9人の指揮者によって演奏され、現役首席指揮者のヤンソンスのみ2番、3番、8番の独唱と合唱付き交響曲を3曲指揮、ヨーロッパでも非常に注目されたツィクルスである。元首席のハイティンクも9番を指揮、6番のマゼール、7番のブーレーズもマーラー演奏のビッグ・ネームである。因みに、2011年6月30日、この10番演奏時のインバルの肩書は、東京都響プリンシパルの他、チェコフィル首席、ベネツィアのフェニーチェ歌劇場音楽監督、フランクフルトのHR交響楽団名誉指揮者である。 インバルは現役最高のマーラー指揮者、故に、このツィクルスの指揮者陣に名を連ねても何ら不思議ではない。しかし、インバルはコンセルトヘボウの常連指揮者ではなく、同じクラスのベルリンフィル、ウィーンフィルの常連でさえない。ネット上の記事によると、インバルは、2002年8月のプロムスで、コンセルトヘボウとマーラーの3番を演奏、また2011年11月にはバイエルン放送響を指揮、いずれも急病でキャンセルしたシャイーの代役とのこと。6月のこの10番も、元首席のシャイーの代役扱いと見做して相違あるまい。 本シリーズHMVのセールスポイントに「特にインバルの第10番は驚異的な美しさ」と謳われている。どなたかのレビューにも、インバルの10番はこのシリーズの「白眉」で、この1枚だけでも購入の価値アリとあったが、1番から順番に聴いてみて、まったくその通りだと思った。同じホール、同じオーケストラ、同じ録音環境での比較ゆえに異論の余地はない。 映像を見れば一目瞭然だが、インバルとオーケストラが、最高のマーラー演奏という目標に向かって、渾身のエネルギーを傾注して突き進む姿は、それだけでも感動ものだった。実際、他の10曲の演奏との比較で、インバル指揮の10番のみ、全く別次元のサウンドが奏でられており、コンセルトヘボウの常連で耳の肥えた聴き手なら、なぜインバルが首席指揮者にならなかったのか、訝しく思ったのではあるまいか。バーンスタインとベルリンフィルのマーラー9番は、一期一会的な名演として音楽史に残るが、このインバルとの演奏も、後にそのように評されるのかもしれない。少なくとも、奏者と聴衆の胸には深く刻まれたことだろう。インバルが首席指揮者として、コンセルトヘボウを自分のオーケストラとして鍛え上げたら、一体どのような演奏が可能なのだろうか?と想像が掻き立てられた。 1楽章のアダージョの他は未完成、一部のマーラーファンでさえ、クック版での全曲演奏には首を傾げたくなるオーケストレーション。マーラー自身の筆が最も希薄なはずの補筆完成版スコアによる10番の全曲演奏が、シリーズ随一の、最も濃密で感動的なマーラーになるとは!しかも代役扱いのインバルの手で! 随所での木管・金管のソロはどれも極めて魅力的だったが、全曲を通じて弦楽器、とりわけバイオリンの音が水際立ち、絹の質感と称えられた90年前後のあのフランクフルトHR交響楽団の演奏が甦ったようだった。すべての奏者が正しい音程に細心の注意を払いつつ指揮者の要求に応えた結果だろう。コンセルトヘボウで、コンセルトヘボウオーケストラが、インバル・サウンドを奏でた記念碑的演奏会だった。 1936年イェルサレム生まれのインバルは、イスラエルでの青年時代、陸軍とユースの合同オーケストラを率いてオランダを訪問、パリ音楽院留学時には、ヒルフェルスムで、フランコ・フェラーラの指揮セミナーの受講生だった。そして1963年のカンテッリ指揮者コンクール優勝後は、メジャーレーベルのフィリップスに在籍して、ドビュッシーの海と前奏曲をコンセルトヘボウオーケストラと録音していた。インバルによれば、長いリハーサルの後、迂闊にも休憩を入れてしまい、ディレクターに叱られたのだとか。このオーケストラの金管楽器は、くたくたに疲れた時に最高の音を出すのだから。 75歳、老境にさしかかったインバルが、思い出のオランダで、全身全霊を傾けて紡ぎ出した究極のマーラー。フランクフルトのHR交響楽団との録音で、初めて10番のフィナーレを聴いたとき、赤い夕焼けに染まる黄昏の景色が浮かんで来たが、この演奏でもまったく同じ光景が目に浮かんだ。マーラーのツィクルスでは9番、大地の歌、10番をひとつの纏まりとして聴くことが出来る。10番のアダージョは、精神的には、9番アダージョや大地の歌の告別と同一の世界をなすものだが、2楽章のスケルツォ以降、曲想は一変し、ショスタコーヴィチが旧ソ連の体制下で強いられたような副業としてのメロドラマ、BGM的映画音楽と化し、それは終楽章のアダージョで最も顕著となる。しかも、赤い夕陽の景色は、マーラー自身の人生の黄昏であると同時に、クラシック音楽の黄昏、そしてさらに、この演奏においては、インバルの指揮者人生の黄昏とも重なり合うものである。そのような意味においても、この10番の映像は、将来、彼の業績を回顧するための貴重な資料となり得るものだろう。HR響の他、イタリアのトリノRAI響、フランス国立放送フィル、N響等、各国の公共放送のオーケストラとの演奏を数多く行ってきたインバルゆえに、相当数の放送用映像が残されたと推察されるが、今回の企画のような形で、彼のマーラー指揮者としての到達点が記録されたことを、ファンのひとりとして心から嬉しく思う次第でもある。 マーラーに限らず、初稿譜のブルックナーであれ、ベートーヴェンであれ、インバルの指揮者としての姿勢は、徹頭徹尾、楽譜の最適なリアライゼーションにある。最も楽譜を読み解く能力に長け、最も優れた耳でオーケストラを調律し、音符一つひとつに固有なテンポを与えて、実際の音としての音楽を創造する。こうして紡ぎ出される音楽は、生き生きとして瑞々しい歌に満ち溢れ、老いてなお、その音楽は若々しい。 皮肉なことに、イスラエルでインバルを見出し、外国での勉強をアドバイスし、奨学金の手配までして、プロの指揮者へと後押ししたバーンスタインは、究極の興行家・エンターテイナーであり、翻訳家・インタープリターに徹したインバルとは対極の人であった。バーンスタインは、ウィーンフィルとのマーラー5番、9番の演奏・収録に合わせたインタビューで「マーラーを聴いていると自分の音楽のように感じるので手を加える」と公言していた。つまり、バーンスタインのマーラーは、ジャズピアノの即興アレンジのように、精確には、バーンスタイン編曲のマーラーなのだ! コンセルトヘボウとの本シリーズで、最も聴衆受けしたのは、ガッティ指揮の5番だったと思われるが、バーンスタイン張りの編曲著しい演奏で、楽譜にはない恣意的な休止符が何か所も挿入され、自然な音楽の流れが随所で寸断された醜悪な演奏だった。インバル以外では、9番のハイティンクの演奏が秀逸だった。オーケストラを完全に制御して鳴らしている様子がはっきりと見てとれた。どれほど歴史のある優れたオーケストラであろうが、指揮者に十分制御されないままのオーケストラは、原石状態のダイヤモンドと大差ない。それはコンセルトヘボウといえども決して例外ではない。このツィクルスは、そのことを見事に実証するものである。現役首席のヤンソンスについては、3番は素晴らしかったが、2番は弛緩の連続で、2番を十分理解出来ずに演奏している感が否めなかった。この企画がインバル&コンセルトヘボウオーケストラによるマーラーツィクルスであったならどんなに素晴らしかっただろうか!本シリーズ、全11ディスクを視聴・鑑賞した率直な感想である。

ひとみ さん | 不明 | 不明

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人物・団体紹介

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マーラー(1860-1911)

1860年:オーストリア領ボヘミア、イーグラウ近郊のカリシュト村で、グスタフ・マーラー誕生。 1875年:ウィーン楽友協会音楽院に入学。 1877年:ウィーン大学にてアントン・ブルックナーの対位法の講義を受講。 1883年:カッセル王立劇場の副指揮者に就任。 1885年:『さすらう若人の歌』を完成。プラハのドイツ劇場の

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