シェーンベルク(1874-1951)

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CD 輸入盤

シェーンベルク:浄められた夜、シューベルト:弦楽五重奏曲 ハリウッド弦楽四重奏団、カート・レーハー、アルヴィン・ディンキン

シェーンベルク(1874-1951)

基本情報

ジャンル
:
カタログNo
:
SBT1031
組み枚数
:
1
レーベル
:
:
Europe
フォーマット
:
CD

ユーザーレビュー

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録音は古いが、演奏は最上級の「浄められた...

投稿日:2021/09/11 (土)

録音は古いが、演奏は最上級の「浄められた夜」だ。雑誌「グラモフォン」の1994年度歴史的非ボーカル部門で殿堂入りを果たしたCDでもある。ハリウッドSQについては、HMV&BOOKS onlineの「ハリウッド弦楽四重奏団の芸術(15CD)」のページで詳しく紹介されている。私はこのCDを聴くまで同団体のことは全く知らなかったが、この1枚を聴いただけでも、時代も国籍も超えて最高レベルの弦楽四重奏団だと感じた。この演奏は、「浄められた夜」Op.4の録音としては、厳密には史上最古ではない。シェーンベルク・センターの資料によると、Spencer Dyke String Quartetによる1924〜1925年の録音が最古であり、また、シェーンベルク自身の指揮による1928年の録音も一部公開されている。つまり、おそらく史上三度目の録音と思われるが、CDで聴けるものとしては最古である。 この「浄められた夜」が録音された経緯について、ライナーノートから翻訳してみる。 「ロサンゼルスに住んでいたシェーンベルクとの出会いの様子を、エレナー・スラットキン(ハリウッドSQのチェリスト)が『浄められた夜』の解釈を再現した際に、大変生き生きと回想した。 ミセス・スラットキンは語った。 【それは私たちを本当に驚かせたレコーディングでした。 作曲家にライナーノーツを書いてもらおうという希望は、私たちに試練を与えました。 シェーンベルクにライナーノーツを書かせるには、彼個人のために六重奏曲を演奏しなければなりませんでした。 彼は、私たちが彼の家に来るべきだと主張しました。 彼のために三重奏曲を演奏したことがあるクルト・レーアは(すべてが正しくなければ気が済まず、何らの批判もなく2小節たりとも演奏させないこだわり屋です)彼(シェーンベルク)は非常に気難しい男だと私たちに警告しました。 しかし、彼と対峙して演奏するしかありません。 それは気温が41度にもなる酷い日だったのに、家は完全に密閉されていて、すべての窓は閉まり、エアコンもありませんでした。 シェーンベルクは入って来て、スカーフとコートを畳むと、テーブルに座って、鋭い緑色の目で私たちを見ました。 彼がテーブルを叩いて私たちを止めて批判し始めたとき、私たちはまだほんの数小節しか演奏していませんでした。 夫(第一ヴァイオリンのスラットキン)は、最後まで演奏させていただけませんか?と最初に尋ね、そしてシェーンベルクが何か批判したければ、後で伺いますと伝えました。 それで、私たちは「浄められた夜」を演奏しました。演奏後に、床に文字通り6つの汗のプールがありました。 シェーンベルクは、最初は何も言わずに黙っていました。彼は私たちをじっと見て、それから彼は言いました。≪良かった、とても良かった…本当に、何も言うことはありません。≫ それから、シェーンベルク夫人が、バーボンとドーナツのトレイを持ってきました! シェーンベルクは、月曜日の朝にはライナーノーツを投函しましょう、と言ってくれました。 彼がレコーディングのためにライナーノーツを書いたのは、これが唯一のことでした。】 シェーンベルクはまた、室内楽の集まりで彼らと第二チェロを演奏したがっていた。(彼が1951 年 7 月に亡くなったときに、まだ彼からの招待状は届いていなかったが。) そして、シェーンベルクは、メッセージを書いた写真を彼らに送った。≪かくも繊細な美しさで私の「浄められた夜」を演奏してくれた、ハリウッド弦楽四重奏団に。≫ 1950年8月に2日間連続で作成された録音は、シェーンベルクがその価値を認めたものだった。これは、彼の後期ロマン派時代の傑作の魅力を完璧に伝えている。」(翻訳終わり) 私は「浄められた夜」の録音を五十種類は聴いているが、これほど素晴らしい演奏は稀だ。演奏技術の高さも、想像力豊かな解釈も、もっと後の時代の名演たちと比較してもなお勝っている。テンポは緩急豊かで説得力に富み、「そうきたか!なるほど、そのテンポによって、物語の情景が今まで聴いた以上に生き生きと聴こえてきた!」という箇所が少なくない。緊迫した場面のスピード感や旋律の切込みの鋭さは、現代の優れた四重奏団をも凌ぐほどだし、優しい旋律の歌わせ方は、優れた歌手が歌詞をつけて歌っているかのように雄弁だ。現代的な鋭いアンサンブルと、緩急豊かなロマンチシズムを兼ね備えており、例えて言うならトスカニーニとフルトヴェングラーのいいとこ取りの演奏なのだ。シェーンベルクは、1949年にオイゲン・レーナー(コーリッシュSQのヴィオラ奏者)に対して「演奏会のほとんどで、私は、クレンペラー氏や彼と同程度の人のなしうる僅かなことで、満足して来るほかはありませんでした。ただこれらの弦楽四重奏団(コーリッシュSQのこと)だけが、私が良いと言いうる唯一のものだったのです。」と述べている。自作の満足いく演奏を聴く機会が少なかったこの人にとって、ハリウッドSQの演奏が最晩年の慰めになったであろうということは、本当に心から喜ばしく思える。録音は古いが耳障りなノイズもなく、ヴァイオリンの音は輝かしく録れているし、質感の高い音でCD化されている。シェーンベルクの意図に最も近い「浄められた夜」として、是非とも聴くべき演奏であろう。 さて、このCDにはシューベルトの弦楽五重奏曲ハ長調 Op.163 D. 956(1951年録音)も収録されている。この録音も評価が高いものだ。グラモフォン・クラシック音楽ガイド2010年版は、この弦楽五重奏曲の演奏について「あまりにも完全な古典的な名演と称えうる。ゆっくりとした動きの静けさは、これほどかつてなく高貴で完璧なコントロールで伝えられたことはない。」と述べている。また、ペンギンガイド2011年版は「ハリウッドSQの1951年版シューベルトの魔法のクインテットは...他のすべてとは一線を画している。半世紀以上経った今でも、その新鮮さと詩の質、そして申し分のない自信に満ちた語り口は、これまでになく深く印象づけられるものだ...このディスクは完璧な芸術性の産物であり、非常に特別な存在であり続けている。」と述べている。私はこの曲をこの演奏で初めて聴いたので、他の演奏とは比べられないが、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の影響を受けつつも、シューベルトならでは死生観が現れた傑作と感じた。緩徐楽章は「天国的な長さ」を感じさせる。安らかな幸福感が同時に死への憧れや恐怖とも隣り合わせであるという、シューベルトの音楽の深さや怖さを、ハリウッドSQは驚くべき技術で描き出す。これは、まさに芸術の殿堂入りがふさわしい名録音であろう。音質も、この時代の一年の差は大きく、目の前で演奏しているように鮮明だ。評価はやむを得ず星5つとしたが、星10個でもよいくらいだ。

伊奈八 さん | 茨城県 | 不明

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