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Kanamechari さんのレビュー一覧 

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     2010/04/29

    毎日聴いています。今まで生きてきて、ここまで入れ込んだ歌があったろうか、というぐらい。僕にしてみれば、まるで奇跡と言っていいくらいの出会い。
    まず僕は彼女の不真面目なファンだったことを告白しなければならない。ドラマのタイアップ曲としてかつてヒットした「微熱」を聴きたくて「googledygook」をレンタルしたが、ヒット曲しか理解できずそのまま聴かないままにしてた。それから5年、twitterを始めたばかりの僕は偶然つぶやきの中で、9年ぶりに彼女がソロ活動を再開したことを知る。2月19日は奇しくも僕の誕生日。何故か、聴かねばと衝動が僕を突き動かした…。
    タイトルが示す通り、このアルバムは川本真琴が描く音楽の世界だ。まるで“音楽のテーマパーク”。アコースティックで手作り感を大切にしたバンドサウンドの中に、彼女が入念に練った言葉の“アトラクション”が仕込んである。
    1曲目「音楽の世界へようこそ」。いきなりタイトル曲から始まる、川本真琴からの招待。音楽は詳しくないが、例えばクラシックで言えば、組曲の序曲のよう。しかしあくまでもシンプルに、川本さんのピアノ、タンバリン、ベース、ドラムスという最小限の構成。気になるのは、唐突に出てくるのは“今すぐ何処ででもあおうよ…”という言葉。音楽の世界のもう戻れない旅路に出た川本真琴、孤独かもしれない道。でも音楽の世界でなら何処にいても会えるよ。iPodがなくてもメロディ口ずさむだけで。
    2曲目「何処にある?」初期のころは出会う人みんな、ばっさばっさと斬りつけていた彼女。いまは一見コミカルにさえ聞こえる歌から、だまし討ち。もっと怖い。ほんとに生きてるかって。
    3曲目「夜の生態系」全体的に極力生々しさをおさえた感じの今作、唯一色っぽい歌。真夜中の遊園地を素直に楽しもう。
    4曲目「アイラブユー」あえて曖昧、イメージをしぼらない歌詞が多くの人のそれぞれの感情の投影を誘う。“アイラブユーって聞こえる”もしかしてこれはファンへのラブレターかも。淡々と、歌い上げず、感傷的にもならない声がいつの間にか僕の頭にしみ込んでる。
    5曲目「石の生活」穏やかでひそやかな歌がいちいち、ちくちく突き刺さる。石のように生きたい?いやいや生きたくない?ボブディラン? 転がる石にこけはむさない。いわずもがなだけど
    6曲目「鳥」これは一種の合図。これから別の世界にいきますよっていう。これに続く4曲、川本真琴は時間や、場所を超えた世界つまりは自然や人の記憶に迷い込む。
    7曲目「ウグイスー」ウグイスの鳴き声に、誰もいないはずなのに友達の笑顔を見た気がする。鳥の声に競うよう彼女はさえずるように、ささやくように歌う。
    8曲目「クローゼット」どこかで会う人。会うはずのひとが本当の恋人でしょうか?時空をこえて、クローゼットは追憶への扉。
    9曲目「縄文」彼女は蛾や甲虫の模様から、ついに縄文まで時間を遡って行きます。川本真琴自身もギターを担当したこの曲は、ちょっと懐かしいブリテリッシュロック風。先達への尊敬を込めているのでしょうか。
    10曲目「へんね」レゲエ風の後うちリズム。また古い民謡の労働歌にも聞こえます。“仕事 家庭 友人 ご飯”に悩まされてる現代人への皮肉。
    11曲目「海」土を掘るいかにも労働の音にかわって、潮騒が聞こえてきます。ようやくまた元の世界に。
    12曲目「ポンタゴ」ポンタゴは川本さんの2匹の愛猫の名前だそうです。
    13曲目「マギーズファームへようこそ」マギーズファームは川本さんの実家のある福井に実在するカフェだそうです。きっと彼女はいつも仲間とそこで盛り上がってるのでしょう。まるでカフェのCMソングのように楽しく。
    14曲目「小鳥の歌」うるさい子供もいないという歌詞で一挙に現実に引き戻されます。でも彼女のときはなったものは何でしょう。はじめましてベイビィ。
    さてこのアルバムを聴いて浮かんだのは「コンセプトアルバム」という言葉。前回のソロ/フルアルバムから9年。このアルバムの曲が初めて録音されたのは2003年だそうですが、それから数えても7年。長い間に渡って作り直されていながら、すべての曲に統一感が有ります。コンセプトアルバムという言葉、最近はあまり聴かないですが、ある方のブログに詳しい説明が有ります http://fifties-graffiti.way-nifty.com/blog/2010/02/post-b06d.html 
    この方の感想も是非読んでください。
    ある楽器の奏者は歌うときもその楽器を理想としたように歌う。たとえばバイオリンの奏者はなめらかに、ピアノの奏者は一音一音はっきりと。こんな言葉を前に聴いたことが有ります。さすがピアノの奏者、川本さんはピアノを弾くように歌います。例えば初期のヒット曲「桜」。ピアノのフレーズをそのまま言葉にしたような「できないできないできない…」が印象的でした。高校、大学と音楽中心の教育を受けた川本さん、その人が敢えて構えて“音楽の世界にようこそ”と始めるこのアルバムはポップ/ロックミュージックに改めて真っ正面からがっぷり四つに組んで作った超力作。その真剣な態度がひしひしと伝わる素晴らしいできです。

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