Tangents

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    hiro  |  愛知県  |  不明  |  2017年08月24日

    Gary Peacock(1935年〜)は、ジャズ史にその名を刻まれるベーシスト。 Paul Bley、Bill Evans、Keith Jarrett、菊地雅章など錚々たるミュージシャン達と共演を重ねてきたヴァーチュオーソーであり、高い精神性の持ち主であることは多くのジャズファンの知るところだと思います。 ECMからのリーダー作「Now This(2015年)」に続くこの「Tangents」は、2016年5月、スイス・ルガーノでの録音。80歳を超えたPeacockによる、正にいぶし銀の魅力溢れるアルバムであり、スピリチュアルな気配さえ感じ取ることができる傑作です。 メンバーは、「Now This」同様、Peacock(ベース)、 Marc Copland(ピアノ)、Joey Baron(ドラムス)。 Copland(1948年〜)は、Peacockとトリオやデュオでの共演歴があり、今回も息の合ったプレイを聴かせてくれます。 そして、Baron(1955年〜)は、大先輩を仰ぐような、控えめながらも的確なサポートにより、このトリオの要の役割を果たしています。 全11曲、約53分。比較的短い曲もあり、絵画に例えれば、重厚な油絵というより、何枚もの精緻な素描を目にするイメージを抱きました。 テーマがクッキリと際立ち、いかにもPeacockらしい、瞑想するかのような雰囲気が漂う「Contact」からアルバムはスタート。 ちょっとPaul Bleyを思わせるピアノの響きから始まる2曲目「December Greenwings」。深みのある演奏で、中間部での、Peacockのよく歌うベースを飾り立てるCoplandのピアノが鮮やか。 Peacockがリードし、この3人にしては珍しく、4ビートでスピード感溢れる展開を聴かせてくれる3曲目「Tempei Tempo」。 4曲目「Cauldron」は、自由度の高い演奏で、Coplandが奏でるピアノの音がキラキラと輝くかのよう。 しんみりとした曲調で、切々と語るピアノと、力強いベースの絡みが素晴らしい5曲目「Spartacus」。 6曲目「Empty Forest」は、3人によるインプロヴィゼーション。Coplandは自由に歩を進め、Peacockが追いかけていくイメージで、ピアノがとりわけ美しく響き渡ります。 7曲目「Blue In Green」は、もちろんMiles Davisの「Kind of Blue」に収録された名曲。しっとりとしたムードで奏でられるピアノを背景に、ベースが流暢に語り出します。Baronは、2人のプレイを見守るようにほど良いアクセントを加えていく。5分にも満たないところが残念で、この美しさに飾られた演奏を、もっと聴きたい気がしました。 8曲目「Rumblin’」は、軽快な曲調で、年齢を感じさせないPeacockのランニング・ベースに刺激を受けたのか、Coplandも溌剌とプレイ。 どっしりとしたベースを引き立てるようにピアノが奏でられていく9曲目「Talkin’ Blues」。ピアノは徐々に前面に現れ、そこにドラムスも加わって、バランスの良いトリオ演奏が繰り広げられます。 10曲目「In And Out」は、3分弱のベースとドラムスによるデュオ。 ラスト「Tangents」は、1曲目同様、Peacockの精神世界が反映されたような曲調で、Coplandの深みのあるピアノの響きが、このトリオの真髄を味あわせてくれます。そして、Peacockの力強いベースに、次作への期待が膨らみました。 全体に地味な印象を受ける作品かもしれませんが、二度三度と聴くうちに、ジャケット通りの枯れた味わいと、深みのある世界に心を揺さぶられる方が多いと思います。

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