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本 北海道の大地から消えた鉄道風景 国鉄末期とJR懐かしの1500km MG BOOKS

北海道の大地から消えた鉄道風景 国鉄末期とJR懐かしの1500km MG BOOKS

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    ココパナ  |  北海道  |  不明  |  2021年04月16日

    北海道レールフォトライブラリィ所属し、45年に渡り鉄道写真を撮り続けている上田哲郎氏による写真集。全編カラーで175ページ。2012年発行。掲載項目は以下の通り。【道北】 天北線/興浜北線/羽幌線/美幸線/名寄本線/興浜南線/渚滑線/湧網線/深名線  【道東】 相生線/標津線/白糠線/士幌線/広尾線/池北線/北海道ちほく高原鉄道  【道央・道南】 幌内線/万字線/歌志内線/富内線/岩内線/胆振線/瀬棚線/松前線/登川支線(夕張線支線)/上砂川支線(函館本線支線)/手宮線  【車両でたどる北海道の国鉄動力近代化】 【もう見ることのできない鉄道風景】  ・・・以上の様に、国鉄再建法制定後に相次いで廃止されていった路線の風景、北海道で走行していた車両の写真紹介、ダイヤ改正などで消えていった列車の風景がまとめられている。私がこの写真集を見て、最初に感じたのは、羨望に近い。鉄道に乗るのが好きな私は、もし今これらの路線があったなら、おそらく2週間に1度は鉄道であちこち出掛けていたに違いない。もちろん、現在も時折出かけてはいるが、鉄道の路線がほとんど失われてしまった今、そのため、鉄道で目的地まで赴いたり、旅をしたりする上での制約が多くなり過ぎた。北海道では、恐ろしいほどの距離の路線が廃止されてしまった。総延長1,500km。私は別のところでも書いたのだけれど、地域の社会や経済を支える性格のものを、収支という目安だけで扱うというのは、かなり乱暴なものであったと感じている。全部残せ、と言うつもりは毛頭ないけれど、当時、廃止の目安とされた「輸送密度」という指標には、地域事情をほとんど反映しない行政の冷たさを感じざるをえない。これは人口における利用率ではなく、単純に利用者の数のみを背景とした指標であったため、元来人口密度の少ない北海道には不向きな指標であり、地元の人の多くが利用していても、その実情は反映されず、達成不可能な基準であった。そのため、利用の実態とは関係なく、次々と狙い撃つように路線が廃止となっていった。実際、私が乗った多くの路線では、時には通路まで一杯の利用者がいたのである。しかし、地域の人の多くが利用しても、地域の絶対的な人口がなければ、先の指標により「利用価値のない」「無用な」ものと見做された。現地の状況を知らない人が、まるで、我がことの利益に係る重大事のように「廃止すべき」という論調を掲げることもあった。紋別という町がある。町を通じる名寄線が廃止されたとき、この駅の一日の乗客数が800人。人口3万人の町の一駅で800人が列車に乗車していたのである。この比率は、当該年度の札幌市の人口と札幌駅の乗客数の比と大きく変わるものではない。紋別市の両隣の興部町、湧別町にいたっては、当時の人口:代表駅の1日利用者数比はさらに高まり、それぞれ6,600人:403人、1万7千人:686人である。つまり、当時札幌よりも、はるかに「日常的に鉄道を利用する人の割合」は高く、依存度が大きかったのである。当時もっともらしく囁かれた「現地の人が利用してない」は、現状を知らない都会に住んでいる人たちが、「輸送密度」という数字から誘因した勝手な妄想でしかなかった。本来、より熟慮を要する決め事であったと思うが、いまとなっては仕方ない。このような美しい写真集で、当時の様子を知るしかないわけだ。それにしても、本当に美しいロケーション、季節、時間帯の、見事な瞬間をとらえた写真だ。羽幌線幌延付近から見える利尻富士は、写真がなければ想像する他ないが、このように見えていたのだと実感する。同じ羽幌線の金駒内橋梁は、その遺構も近年撤去されてしまって寂しい限りであるが、写真を見ると、どれほど美しい車窓が展開していたが、一目で知れることとなる。他にも紅葉の糠平湖を行く士幌線、サンゴ草の海を行く湧網線、斜内山道の岬の突端をへばりつく様にまわる興浜北線など、どれも絶好の瞬間が捉えられている。冬の風景も美しい。北海道の風景は雪があってこそ、と私も時々思うが、写真撮影に不向きなコンディションが多く、なかなか良い写真は撮りにくいのだ。美幸線の終着駅、仁宇布の雪景色など、情緒に溢れている。その他、石勝線開通前の特急おおぞらや、滝里ダムが出来る前の根室線旧線など、どれも貴重な写真ばかり。景勝地が多く掲載されているため、北海道の写真集と銘じてもよいような内容となっています。

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