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    宗仲 克己  |  東京都  |  不明  |  2024年03月28日

     教授が71歳の誕生日にリリースしたアルバム『12』は、あまりにも美しい、すさまじいドキュメントである。シンセサイザーとピアノの音色が、美しく静謐な空間を創り出す。「時間」の概念についての思惟が、「音」となって無限の空間に広がっていく。聴き手は、その空間に身を委ね、感性が研ぎ澄まされていく。収録された12曲中で最長の第7曲『20220214』の演奏時間は9分を超えるが、私は長さをまったく感じない。繰り返し大きく押し寄せる音の紆濤りにつつまれる。心地よい瞑想の世界を揺蕩っているうちに、文字どおり、あっという間に時間が過ぎる。時間の感覚が無くなるというのが正しいだろう。教授は、「時間の疑わしさ」について、「時間は言ってみれば脳が作り出すイリュージョン」と語っている。教授が創り出す 『Magic』に、まさしく魅了されているのだ。私はこのアルバムを何度も繰り返し聴いている。教授が奏でる音たちに深く癒されながらも、大きすぎる非在と喪失に激しく苛まれ続けている。  日本のメディアは、坂本龍一を「世界的音楽家」としての枠に押し込めている。坂本龍一は、世界が認める超一流の音楽家であると同時に、思想家であり、信念に基づく活動家(Activist)である。彼は、権威主義と拝金主義を批判し、「生命」と「自由」を人間の最高の価値とする。「2001.09.11」をうけて出版した『非戦』の監修と、自身の論考『報復しないのが真の勇気』、『NO NUKES』 『MORE TREES』の活動など、一貫して非戦・反核・環境保護を訴え、実践してきた。「核や原子力と人間は共存できない。」「樹々は万人に、開発は既得権者らだけに恩恵をもたらす。」「忖度すること、権力に阿ることは恥ずべきこと。」 これらの言明は、叡智に満ちた卓見である。現在の日本は、商業的な「成功」に価値をおく人々のほとんどが、空気を読み、社会的な発言を避けている。権力への順応主義者(Conformista)が跋扈し、民主主義が未成熟である。そんな「あいまいな」日本社会において、坂本龍一は傑出した存在である。心ある多くの人々が彼を熱く尊敬する所以だ。坂本龍一は未来に希望の光を照らす存在であり続ける。

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