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本 消散軌道風景 Vol.3 イカロスムック

消散軌道風景 Vol.3 イカロスムック

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    ココパナ  |  北海道  |  不明  |  2021年04月12日

    廃線跡の実地調査、古い資料や写真の紹介により、いまはなき「鉄道」を対象に「考古学」をする雑誌、消散軌道風景の第3巻。投稿日現在、続編にあたるものが「廃線系鉄道考古学」にタイトルを変えてその第1巻が出版されているので、本シリーズ計4巻相当が刊行されている形。本巻の目次は以下の通り。 みなと街「横浜」 廃線跡と鉄道スポットめぐり  2 消散軌道風景 カラーダイジェスト  10 首都圏廃線めぐり&本誌連載、特集 検索マップ  18 【特集】 知られざる軍都 赤羽周辺の失われし鉄路を求めて 軍用鉄道が多かった北区とその周辺の廃線跡を探る(後編)  20 chapter01 上信電鉄ふたつの小さな廃線  角田 聡  26 chapter02 奥多摩湖ロープウェイ(川野ロープウェイ)  中澤 亮  28 chapter03 日立電鉄・日立電鉄線  名取信一  31 chapter04 山梨県林務部 豊岡林用軌道(豊岡林道)  平沼義之  37 chapter05 東武鉄道根古屋線  岡本憲之  46 chapter06 小田急電鉄向ヶ丘遊園モノレール線  岡本憲之  48 Column 向ヶ丘遊園地と豆電車  岡本憲之  51 Column ロッキード式モノレールについて  和田亮二  52 chapter07 中神引込線  岡本憲之  54 chapter08 日立セメント太平田鉱山索道  榊 充嗣・竹内 豊  56 chapter09 旧・長野原線 長野原〜太子間  角田 聡・岡本憲之  60 chapter10 相模線(寒川支線)  名取信一  64 chapter11 西武鉄道安比奈線  竹内 昭  67 Column 昭和30年前後の安比奈貨物駅  渡辺一策  72 chapter12 東京都水道局小河内線  榊 充嗣  73 chapter13 下高井戸連絡線  団 鬼鉄  79 産業用鉄道カタログ&パンフレット 〔第3回〕 東芝の産業ロコ  83 chapter14 木根宿森林軌道(中之条営林署)  平沼義之  89 chapter15 葛生の鉱山鉄道 〔中編〕  岡本憲之  96 Column 線路の幅=軌間について  岡本憲之  100 chapter16 都電38系統(水神森〜南砂町二)   岡本憲之  102 chapter17 思い出の汽車会社  岡本憲之・武藤直樹  108 街角探訪 鉄道プラスα 第三回  山口雅人  112 chapter18 ナローゲージの保存車 第二回 秋田・山形・福島・補足宮城県編  日本ナローゲージ研究所  116 巻末特別付録 国鉄 高島貨物線 配線図  122 A4変形版という大きめのサイズを用いており、地図など細かいものを引用に耐えるものとなっている。巻頭の「カラーダイジェスト」以外、白黒印刷なのが残念だが、内容はとても興味深いものばかりだ。 本巻は「首都圏 廃線めぐり」がサブタイトルとなっており、ターゲットは関東および山梨県の鉄道に絞られている。 そして、本巻では、廃道・廃線の現地踏査及び資料調査に関して詳細をまとめた有名サイトを管理し、積極的に情報発信を行っている平沼義之氏が2編を執筆しており、一つの目玉と言えるものになっている。いずれも、相当の調査力と体力を必要とするレポートにちがいない。本巻では紙面の制約もあって、かなりコンパクトにまとまっている。とはいえ、その内容は興味深い。特に山梨県林務部が管轄した豊岡林用軌道の報告が凄い。実地調査であきらかになった路線構造は、インクラインを重ねて、急勾配で高尾根を越えるという衝撃的なものである。紹介文中で、かつて西裕之氏が山梨県林務部のことを「やることが違うと感心してしまった」とコメントしていたことが引用されている、その形容はこのインクラインの遺構にもそのままあてはまるだろう。ここまでして当該地から木材を搬出しなければならなかったのか!と驚きあきれるほどの内容である。平沼氏は、地形図上に、支線も含めてその軌道のおよその全体像をあきらかにしてくれている。その図を見るだけでも、当巻には価値があると言って良いだろう。 もう一遍の平沼氏の報告は、群馬県から新潟県境に接近した木根宿森林軌道に関する調査である。こちらも相当厳しい現地調査だったことが良く伝わってくるが、過去の事象との関連性を適宜引き出しながら、歴史に思いを至らせるロマンとともに語られるその内容は、工学的にも歴史的にも深い味わいを感じさせるもので、読み手にさまざまな感慨をいだかせてくれるに相違ないものに違いない。 以上の平沼氏の2編の報告が最大の読みどころと思うが、もちろん他の記事も素晴らしいものばかりだ。 日立セメントの太平田鉱山索道は、国内で最後まで活躍した鉱物搬送用の索道であり、そのダイナミックな姿が豊富な写真で紹介されるのはありがたい。 西武鉄道安比奈線は、1925年に川越市内に敷設された3.2kmの砂利線であったが1963年に運行休止、その後、長くそのままだったが2017年に正式に廃止となった。本巻では、きわめて珍しいと思われる安比奈線の貨物列車の写真が紹介されているほか、その歴史が詳細にまとめられている。本報告は、現況の写真も含めて貴重な資料となっている。 東京都水道局がダム建設のため敷設した小河内線は、ダム建設という目的にふさわしい狭隘急峻な土地に線路があった。全長6.7kmにもかかわらず、道中には多くの橋梁や隧道が存在した。現在、その場所の多くは、公的管理地のため、現況の調査はきわめて難しいが、当巻では、資料写真等が掲載されており、その鉄道敷設環境の険しさに嘆息させられる。運用可能な状態で軌道を残しておけば、安全面に手を加えることで、観光用に供すころも十分可能だったのではないか、と思わず考えてしまうのは、鉄道フアンの性だろうか。

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