トップ > アニメ > 書籍 > 堀越耕平 > 僕のヒーローアカデミア 27 ジャンプコミックス

堀越耕平

本 僕のヒーローアカデミア 27 ジャンプコミックス

僕のヒーローアカデミア 27 ジャンプコミックス

商品ユーザレビュー

  • ★★★★★ 
    (1 件)
  • ★★★★☆ 
    (0 件)
  • ★★★☆☆ 
    (0 件)
  • ★★☆☆☆ 
    (0 件)
  • ★☆☆☆☆ 
    (0 件)

レビューを書いてみませんか?

レビューを書く

検索結果:1件中1件から1件まで表示

  • ★★★★★ 

    大湖  |  東京都  |  不明  |  2021年04月10日

    この作品を「少年漫画」として見た時、何が正解で何が間違いなのかを語る口を自分は持たない。それは自分よりもう20歳ほど若い人たちに委ねたい。少年漫画の有るべき形、をいい歳した大人が語ることほど、少年たちにとって滑稽なことは無いだろう。  それでも時々、この作品を読んでいて、「この作品を学生の時分に読んでいたとしたら、今ほど身につまされるような思いにはならなかっただろうに」と考えてしまう。少なくとも、この作品に滲む人間という生き物のままならなさがたまらなく愛おしく思えるのは、平々凡々ながら30年以上の歳月を生きてきた自分の人生あってこそだと。  今巻に描かれるヒーロー側の仕掛けた大規模作戦は、“正々堂々”などという言葉からは懸け離れたものだ。数にモノを言わせた、不意打ちによる一網打尽。一方的な状況にあるいは応戦し、あるいは逃げ惑うヴィランたち。積年の研究成果を悉く破壊されるドクターの描写は、あくまで滑稽に描かれてはいるものの気の毒にさえ思えてしまうほどである。そして何と言ってもトゥワイスとホークスの対峙。鋭い眼光以外、表情の一切を描かれないホークスの描写に象徴的なように、今巻は過剰なまでに、ヒーロー側の非情を演出した巻であった。アンパンチが暴力と非難され、プリキュアの肉弾戦が封印される時代にあって、ヒーロー側の暴力的な行為をオブラートに包むことなく、むしろヴィランにとってはこんなに酷いことなんだと言わんばかりに強調して描く。暴力に頼らず、話し合えばわかりあえる筈、という道は、トゥワイスとホークスの会話で丁寧に丁寧に塗りつぶしていく。自責の念に駆られながらも最期の瞬間まで仲間を守る一人のヴィランの姿が、読了後も脳裏に焼き付いて離れない。それがこの27巻であった。  言うまでも無いことだが、こうした描写の数々は、ただ格好良いヒーローたちの活躍を伝えたいだけならば避けるべきである。ヴィランが他者や社会を脅かす存在であること自体は間違いなく、同情の余地などない。それでもこの作品は、ただただヒーローであることを理由にヒーローを善しとはせず、ただただヴィランであることを理由にヴィランを悪とはしない。この作品に描かれているのは、ヒーローと呼ばれる「人間」と、ヴィランと呼ばれる「人間」。そこに同等で同質の「人間」という生き物がいることを描いているだけだ。  自身の情に殉じたトゥワイスであったが、彼と対峙したホークスもまた、「ヴィランと対峙するヒーロー」である以前に、一人の人間であるが故に、情を捨て去ることなど出来はしなかった。ホークスの中に、トゥワイスをヴィランだと認識する“理”だけがあったのなら、どんなにか事は簡単だっただろう。トゥワイスを自分と同じ人間だと見てしまう“情”の存在が無かったのなら。  若い時分には、大人になれば理と情はコントロールできるようになり、痛みも後悔も減っていくものだと漠然と思っていた。非合理を憎み、失敗を嫌った。そういうものではないのだと知った今でも、人間という生き物のままならなさに時に辟易してしまう。それが不思議と、この作品の登場人物たちに触れていると、人間という生き物のままならなさがたまらなく愛おしく思えてしまう。中心となるのは学生の登場人物たちだが、大人の人物たちもまた、失敗と痛みと後悔を重ねていく。今巻はとりわけ大人たちの様相が味わい深い巻であった。

    0人の方が、このレビューに「共感」しています。

    このレビューに 共感する

検索結果:1件中1件から1件まで表示