Yorimichi All Stars @HMV ONLINE 192
Monday, August 25th 2008
7月25日号(191 ISSUE)からWEBにお引越しした、「HMV」フリーマガジン「the music & movie master」の人気コーナー、「よりみちAll Stars」!!引越し第2弾となる今回、登場してくれたのは、郷ひろみさんです!!彼が選んでくれたおすすめ10選とともにお楽しみ下さいませ!!
ヒロミさんに『よりみち』という言葉は似合わないかもしれないですね。
それが無駄なのか無駄じゃないか。それで『よりみち』の持つ意味は大きく変わってくると思います。
『よりみち』と『無駄』、確かに密接な関係にありそうですね。
無駄な時間を過ごすことがよりみちなのか、無駄じゃないと思って何か視点を変えて行動することがよりみちなのか。どちらにしても、本筋から離れていることには違いないけど、その時に無駄に思えることでも何年か後に、あれは必要なよりみちだったなと気付くことはあると思います。
ヒロミさんは芸能活動を休止して3年間ニューヨークへ行かれましたよね。
勿論、目的があってニューヨークへ行ったんだけど、今となってはすごく大切なよりみちをしたのかもしれないね。
よりみちって、本当はすごく勇気が必要なことかもしれないですね。
人間は、時に、あえて遠回りをするということも必要だから、そういう意味では勇気は必要かも知れないね。今在る現状を打破するために、何かを変えようとする気持ちは人生においてすごく尊いことだと思うから。けれど単なる散歩気分のよりみちもリフレッシュという点では良いことだと思うよ。だって、毎日毎日当たり前のことばかりやってたら飽きてしまうでしょ。セルフコントロールというか、誰にもリフレッシュやリラクゼーションは必要だから。
けれどよりみちには罠なんかもありますし。
女性にしてみたら、変な男にひっかかったなんてこともあるしね(笑)。それはきっと苦い経験だけど、それを貴重な経験としてその人の中に刻み込めれば、きっと同じ過ちは繰り返さないでしょ。
ボロボロになる前に気付くことが必要ですけど。
そうだね、恋愛は人格さえ変えてしまうこともあるから。けれど恋愛で逞しくなるということもあるから。どんな場面でも自分を見失ってはいけないよ。
さっき『無駄』について話されましたけど、もう少し聞かせてください。
僕ね、あまり人目というものが気にならないんですよ。だから人から見て無駄と思えることでも、自分にとって必要なことだと思えばとことん追求する。たとえそれが本当に無駄になって失敗したとしても、やがて貴重な経験として僕の中に入っていくのであれば、一概に無駄ではないような気がする。
無駄とは経験のひとつである、と。
たとえば嫌なことがあったときに、これはやっぱりしてはいけなかったんだということを確認できる人は、無駄がちゃんと活かされるんですよ。なぜかって、問題を抽出するわけだから。それをしない人って、何も気付かずそのまま見過ごしていくわけだから。同じ経験をした人によって、無駄が無駄じゃなくなる人がいるということですよ。
哲学ですね。いつ頃からそう思うようになったんですか?
人間はひとつひとつ気付いていくものだから、どの時期って聞かれても難しいよね。20代に経験したことが30代になって確かなものになったとか、40代になって理解できたりとか、経験ってすぐに答えが出るものじゃないから難しい。
ヒロミさんにとって背中を追いかけるような人っているんですか?
人と比較したり、人を追いかけることはしないけど、ちょっとした憧れを抱いた人はいました。
どんな人だったんですか?
僕が30代のときに「こんな60代っているんだ」と思ったことがあるんですよ。
シンプルですが説得力がありますね。
空手の師範でね、すごく凛としているんですよ。肉体もそうなんだけど、結局カラダを鍛えるということは精神も強くなるじゃないですか。自分よりも30歳も年上の人が、肉体も精神も研ぎすまされていることに一種の憧れを覚えましたね。
男が男に惚れる、みたいなことですよね。
それに近いかも。ただ同性同士って外面から入っていくことはないじゃない。内面を知ることによって、その人の価値を感じ、そして惚れていく。逆に内面からしか惚れないでしょ。それは女性も同じことで、誰かが「ものすごい可愛い子紹介するから」って、連れてきたら「…えっ? ちがうっ!」ってこともあるでしょ?(笑)
なんで同意求めるんですか?
いや、だからさ、男の子は女の子の外面を見るだろうけど、女の子は内面を見て「可愛いでしょ」って言うの。それが同性から見た可愛さ。
さらっと厳しいこと言いますね。
いや、一般的な見解ですよ(笑)
ヒロミさんって、毎日トレーニングして学習して、自分をいじめ抜いてるというストイックな印象があるんですが、逃げ出してしまおうと思うことはないんですか?
ないよ。僕が目指してるものは、僕以外に誰もできないから。
それが苦痛になることは?
それもないね。確かに辛いときはあるけれど、僕には自分がクリアしなければならないステージがあるから、自分が怠ければそこから遠ざかってしまうわけですよ。それに対して確かに肉体的にも精神的にも苦しいことはあるけれど、じゃ「嫌なのか?」と自分に問いかけると、そうでもない。「苦しいこと=嫌なこと」ではないんですよ。不思議に思われるかも知れないけど、それが僕の生き方なんですよ。
自分に対して客観性を持っていられるのでしょうか?
確かに僕らのような仕事をしている人は、人からどう見られているのかということを思うことも大切だと思うよ。
今回のツアーでも完璧にスピードメーター振り切っているじゃないですか。そんな100%超えた中でも冷静な客観的視点というものはあるんですか?
持ちたくはないけど、きっとあるんでしょうね。ソロシンガーとして15歳でデビューして、それからずっとステージで鍛えられてきたから。そしてやがて僕自身にステージの全責任がかかってくるようになった。そうなるとどこかに冷静な自分を置かなければならないようになってくるんです。音響のこと、ライティングのこと、そして自分のこと、それをひとつひとつ組み合わせてはじめてステージが出来上がるわけで。何かあったらどうなるんだろうって、客観的に観ている僕はいますね。
すごく緊張感を大切にされていますね。
オーディエンスは僕の一挙手一投足を見ているわけだから。ひとつとして見逃さないわけだから。もちろん常に見られているという意識は持っているけど、見られているからというよりは、見られていなくてもそういう意識は持ち続けているつもりです。そうすればライヴがあるからとかテレビで歌うからとか、いちいち自分を変える必要がないじゃないですか。
確かにそうですが、それもまたかなりシンドイですよね。
僕ね、好きじゃないんですよ。人から見られてるから何かをするのって。なぜって、そこにウソがあるから。ウソを持つことがいちばん嫌なんですよ。
一言一言、グサッと入ります。
僕にとって一番怖いのは、誰にも見られていない時なんですよ。誰かに見られていないからといって自堕落な生活していても、神様や先祖が見ていたり…そして、自分自身が見ている。だから、もう一切見られているという意識を封印して、いつだって僕は僕のままで居続けられるようにしているだけ。確かにステージは特別な場所だけど、決して特別な僕を演じているわけじゃないということですよ。
やっぱひろみさんに『よりみち』は無縁だったかなぁ?
いや、僕の中ではよりみちだらけですよ。今日も本当に素敵な『よりみち』をさせていただきました。せっかくだからライヴ観てってくださいよ。『よりみち』気分で(笑)
良い話いっぱい聞かせていただいたので、必ず泣きますけど…。

よりみち編集者・栗山圭介の『郷ひろみ評』![]()
夜更かしを避け早朝からあらゆるエクササイズで肉体をいじめカラダ中に大量の酸素を運搬する。彼にとっては20年以上も続けているあたりまえの日常である。そんな日常の答えはステージの上で表れ、彼自身が待ち望んでいた50代に眩いばかりの輝きを添えている。そこにいるだけで、あなたは郷ひろみである。あなたの代わりは誰もいない。10代からずっと続いている『郷ひろみ』を変えることも変わることも許されない。過ぎゆく時間と時代の中で、郷ひろみは郷ひろみであり続け、郷ひろみを超えてきた。郷ひろみさん、あなたほど郷ひろみの大変さを感じている人はいないでしょう。たまには郷ひろみから解放さあせてあげたいけれど、それでは郷ひろみじゃないんでしょうね。ただ、できることならば、いや、できないことなど甚だ承知ですが、ステージの上で輝き続ける郷ひろみを、あなたに客席から観せてあげたい。
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郷ひろみ。歌手。’72年『男の子女の子』で歌手デビュー後、たちまち日本アイドル界の頂点に。以来、数々の大ヒット曲を送り出し続ける、知らない人がいない国民的スター。本年も最新シングル『君だけを feat.童子-T』、アルバム『place to be』をひっさげ全国60公演ツアーをこなすなど、ノリにのっている。 郷ひろみ オフィシャル・ウェブサイト |
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(Photographer/Pey Inada Yorimichi Editor/Keisuke Kuriyama)
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