Yorimichi All Stars @HMV ONLINE
2008年7月25日 (金)
「HMV」フリーマガジン「the music & movie master」の人気コーナー、「よりみちAll Stars」が7月25日号(191 ISSUE)からWEBにお引越しです!!今まで誌面でしか楽しめなかった、人気コーナーをより多くの人に味わって頂きたいと思っております!! そこで、記念すべき初!WEBページ掲載の第1回に登場してくれたのは、森山未來さん!!
役者で在り続けるために必要な客観的視点。それをも俯瞰する引いた視点。
役者とは演ずる自分をどう視るかによって演技の幅や厚みがでるものらしい。
舞台に立ちながら模索する日々。立ちどまり、叫び、沈黙する。
それを単なる「悩み」と懐に収めてしまうのはあまりにも味気ない。
森山未來はあえてそれを「よりみち」と称した。
タイトル 『未来』/主演 森山未來/演出なし/本音100%
「よりみち」を役者の肥やしにする平成ニッポンの一匹狼が
繊細かつ無防備な言葉をつなぎ、思いを綴った。
未來さん、近頃よりみちしていますか?
よりみちだらけっすね。どの道もほんとにこの道を進みたいと思った道なのかって確かめながら歩いてるんだけど、どこにも漠然とした自分がいるだけで、いつも“もう一回自分を見直そう”って思ってばかりです。
それはきっとエブリタイム・アイ・アム主役って思いがあるからじゃないですか?
もちろんです(笑)
よりみちしてもきっとそこは王道なんですよ。
そうです。だからそこで自分がどう立たなきゃいけないか、立ちたいかって思っているところで…
そうなると主役である自分を俯瞰することも大切ですね。
以前は自分が演じている姿を、自分の中の主観と客観という目線で確認してたんですが、最近はちゃんと映像を確認しながら役を作っていくというようになりましたね。
何か特別な瞬間があったんですか?
なんなんやろ…きっと不安なんですよね。今ある自分だけじゃなにかが足りないって思ってて、それを探すためにもちゃんとした映像として引いた画を見ようと思ったんかんもしれないですね。
引くことによって今までの自分との距離はできると思うけど、そうするとパワーとか判断のスピードみたいなものは…
遅くなります。もちろんそれを理解しつつ目の前にあるものに対してピントを合わせていくことが必要なんですよ。具体的には説明できませんが、“ここだったら気持ちいい”っていう瞬間を獲得することは役者にとっては大きなことだから。
よりみちをすればするほど役者としての本質に触れることができるのかもしれないですね。
やっぱ同じ道を行くにしても、歩くのとバイクで抜けるのとクルマで走るのとでは違うじゃないですか。そういうことも実は大切なよりみちなんだと思います。
なにか答えを欲しがってますか?
それはいっぱいありますね。難題をいっぱい出されるんですけど、それに対して答えがなかなか見つからない。見つけようとすると余計に疑問が湧いて網の目のように絡まってなにも視えなくなるときがある。逆になんでもない酒飲んでる時とかに「あ、こういうことか!」ってなることもある。
野生の雄としての本能がそうさせてるのかもしれないですね。未來さんって、すごく野生な一面を持ってると思うんですよ。
あると思います。
攻める気持ちを持つがゆえに守りにも厚みをつけるというか。野生の雄の掟って要は種族保存のために繁殖するわけですよね。それがつまり守りであり、守るために敵を攻撃するみたいな、そんなものを未來さんから感じます。
昔、「森山未來はコンサバだ」って知り合いの役者に言われたときはカチンときましたけどね。コンサバの意味もわからんかったんですけど(笑)
コンサバは「保守的」というだけの解釈じゃないですよね。
主観と客観の間にある視点みたいなものかもしれない。
自分の悩みの中に人を連れ込んでしまう人ですね。
そうですか(笑)じゃいっしょに悩んでください(笑)
良いですよ。よりみち楽しみたいし。
僕、15歳の時にあるライターさんに“芝居ってなんですか?”って聞かれて四字熟語で答えてくださいって言われたんです。そんなこと考えたことなかったから思いつきで『現実逃避』って書いたんですよ。
キましたねー。すごく森山未來っぽいですよ。
でも、僕は僕でもがき逃避しながらもやってるんですよ。その役柄を演じるにあたり、自分の引き出しから出したものを膨らませた言葉で表現するしかないわけで。いろんなものを要求されて引き出しの中がパンパンになって、もう少し引き出しを増やさなきゃってなる頃には、自分なりに役者としての幅が広がっていってるのかな、なんて不安混じりに思いながら。
現実よりもさらに過酷な非現実に逃避しているような気がします。
あれ?逃避じゃないのかな?
いや、逃避でしょ。といっても現実を見つめ直すための算段。
結果的にはね。そういうことを繰り返していけば、いつか自分自身のまんまで堂々と立てるような日が来るかもしれない。以前、行定監督に「映画は日記みたいなもんだから、その時の森山未來というものがそこに切り取られてあるだけ。アルバムとしてめくるだけだ」って言われたんですが、そういうものも含めて、どうよりみちできるかというのは課題ですね。
じゃ今日のことは未來さんのアルバムに貼りつけておいてくださいね。
現実逃避しながら考えます(笑)
ところで音楽の話聞いてませんでしたけど。
音楽好きですよ。今は劇団☆新感線の舞台の関係でハードロックばっか聴いてます。俺が絶対に聴かなかったジャンルなのにiPodにはハードロックばかり。
あまり遠い存在には思えないですけど。
そうですか。じゃ仕事とはいえハードロックを聴くことは必然だったのかもしれないですね。
そもそもなんで新感線=ハードロックなんですか?
っていうか彼らの存在そのものがハードロックなんです(笑)
なんとなくわかるような、でもわからないような。
やっぱり客を盛り上げらせるためにはマストな音楽でしょ。演出効果的にも感情をわーっと高ぶらせて、「俺たちの舞台は祭りなんだ!」みたいな。
舞台と客席を繋ぐパイプとしての役割もあると。
そうですね。けど理屈じゃないですね、「血」みたいなものじゃないですか。
いやぁ急にヒートアップしてきましたね。
Perfumeも聴きますけどね(笑)
よりみち編集部評
烈しさとは、叫びや肉体を駆使した表現の出口に与えられる称号ではなく、まして怒りや興奮などという感情の高ぶりのことを指すものでもない…彼の場合は…。森山未來は烈しい。いつも沸騰している。けれどどこか涼しい。矛盾だらけで不思議だらけのこの役者をそのまま皿に乗せようなど言語道断。映画や舞台において誰かが森山未來の名を吐いただけで、彼は自分の座る皿を壊して土に戻し、その煮えたぎるような血で練り上げて新しい皿をこしらえる。用意されたものではなく用意した場所に構えた彼は「役者」という孤独に入る。よりみちだらけの役者人生だが、そうすることでしか自分を鍛えることができないと俯瞰する根っからの役者。映像から伝わるものとはまったく違う狂気にも似たオーラが、日本の舞台と、そして映画を変えてくれると期待しないわけにはいかないのである。
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![]() ![]() 森山未來。俳優。1984年兵庫県生まれ。5歳からダンスを始め、多数の舞台に出演。その後もドラマ、舞台と多岐にわたり活躍するなか、映画『世界の中心で、愛をさけぶ』であらゆる賞を総嘗にし話題に。近年では、自身が主演するダンスライブの演出を自ら手がけるなど俳優業以外にも活躍の場を拡げている。SHINKANSEN☆RX『五右衛門ロック』(公演中)、映画『百万円と苦虫女』(公開中)のほか、ミュージカル『RENT』(11月〜日比谷シアタークリエほか)、『20世紀少年』(堤幸彦監督/8月公開)などへの出演が控えている。 森山未來 オフィシャル・ウェブサイト |
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(Photographer/Pey Inada Yorimichi Editor/Keisuke Kuriyama)
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