【第5回】バイヤー寺町知秀のわくわくPOPSランド

2016年10月11日 (火)　08:00

HMV&BOOKS online - ロック

洋楽の森からオススメ作品をピックアップ
あの番組、覚えてますか？
このコーナーでは、わくわくせずにはいられない海外の良質POPSをお届けします！

寺町知秀（てらまちともひで）

1999年にHMV渋谷入社。HMV立川など7店舗で店長を務め、計13店舗の勤務を経て現在は本社にて洋楽バイヤーを担当。

【第5回】いつ聴くの？今でしょ。

　みなさん、こんにちは。わくわくポップスランド第5回目は、ボン・イヴェールのいわゆる最新作にして最高傑作なやつ、『22、ア・ミリオン』にズームイン。

　どこからどう切っても、完全無欠の名作ってあるじゃないですか。例えば、ジョニ・ミッチェル『ブルー』とか、マーヴィン・ゲイ『ホワッツ・ゴーイン・オン』とか。時代の空気を思いっきり吸いつつも、歌、メロディ、アレンジのミラクルな素晴らしさがあるからこそ、いつの時代もクラシックになりえるんですよね。だけど、その時代の空気というのはとても重要な要素なわけで。

　時代の空気を作品に落とし込める優れた音楽家は、カテゴリーに囚われないクロスオーバーな感覚を持っていて、ボン・イヴェール＝ジャスティーン・ヴァーノンも間違いなくそのひとり。カニエ・ウェスト、チャンス・ザ・ラッパー、ジェイムス・ブレイクと、今をときめく多様な才人たちとの共演を経てのこの新作は、フォーク、アンビエント、ノイズ／先鋭ビートを横断しつつ、キモである抜群のメロウネスがたっぷり詰まった、今まさに輝けるコンテンポラリー黄金ポップソングが溢れ出しています。もう、どこからどう切っても完全無欠の大名作。ステイ・ゴールドもんです。とにかく、今という時代の空気が充満しています。

　今月のもう1本は、Cap'n Jazz～Joan Of Ark～Owenのマイク・キンセラ率いるアメリカン・フットボール（以下アメフト）17年ぶりの新作。2年位前から再結成ライブを行なっていたので出るのかなと思っていましたが、出ました。いわゆる超待望なやつ。変わることのないまっすぐな歌心、それでいて空気感は微妙に今。確実に泣きます。アメフトと言えば、ポスト・ハードコア／ポスト・ロックの文脈で語られ、演奏的にも多分にその要素が濃いのですが、この煌びやかで凛とした感じをちっとも失っていないのには驚かされますね。しかし、サイコーなバンド名です、アメフト。それでは、また来月お会いしましょう。