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『あんにょん由美香』 公開記念! 「TAO」 番外編 :ゲスト→松江哲明監督 6 

Wednesday, July 29th 2009

--- それを今伺って、冨永(昌敬)監督の『シャーリーの好色人生と転落人生』が浮かびますね。冨永さんの作品も大好きなんですけど、女の子をすごくきれいにかわいく撮られますよね?『シャーリー』では、平沢里菜子さんとか瀬戸夏実さんが特に・・・。


直井:そうですね、冨永さん、それはすごい・・・。


松江:女の子きれいですよね、確かに。


直井:『パンドラの匣』(10月10日(土)よりテアトル新宿他にて全国順次公開予定)も・・・。


--- 川上未映子さんのお尻を・・・(笑)。


直井:そうそう(笑)。お尻ばっかり撮ってね。


--- 狙ってますよね(笑)。


直井:エロいですよね(笑)。完全に狙って撮ってますよね。何か床を拭くシーンをやたら多いんですよね(笑)。一切誰も脱いでないのに、何か妙にエロいんですよね、仲里依紗さんもね。たぶん冨永さん、若尾文子のつもりで演出してると思うんですけどね(笑)。


松江:冨永さん、確かにそうですね。僕も前確かね、そんな話しを「エクス・ポ」のイベントで・・・(「エクス・ポナイトVOL.1」で対談された内容が「Spotted701」のVol.6に載ってます)女の子の話しして・・・「松江さん、僕のことシネフィルだから嫌いでしょ?」みたいな話しして(笑)。「いや、冨永さんは思われてるだけだから(笑)冨永さんはちゃんと女の子撮ってるから、僕はそこ信用してるよ」って(笑)。『コンナオトナノオンナノコ』っていう映画で、女の子すっごいかわいかったじゃないですか?


--- かわいかったですね。


松江:やっぱり、そこをちゃんと撮る人は信用出来ますよね。山下(敦弘)くんもね、女の子撮るの上手い、かわいい。あと、最近だと沖田(修一)さんね。


直井:沖田くんは何て言うか、かわいい子じゃないものを・・・由紀さおりとか(笑)。


松江:うん。由紀さおりでもかわいい(笑)。


直井:おじさんとかもね。


松江:おじさんもかわいい。


直井:今度『南極料理人』(8月8日(土)テアトル新宿にて先行ロードショー。8月22日(土)全国ロードショー)も出てるのおっさんばっかりなんですけど、みんなかわいい。キャラクター化されててね。


松江:絶対、堺雅人なんかかわいいに決まってんじゃん、沖田さんが演出したら(笑)。


直井:(笑)。沖田さんの今までの作品の中で、一番好きですね。あとはちゃんとね、フードコーディネーターが入ってるから(『かもめ食堂』などの飯島奈美さんと榑谷孝子さんが担当されてます)、食べ物がすっごいおいしそうですよ。(8月下旬発売予定の「Spotted701/Vol.11」では、『南極料理人』公開記念・初の「食」特集を予定されているそうです)


松江:沖田さんはね、かわいい。かわいいというか、人をかわいく撮るのが天才的に上手い!


直井:チャーミングにね。


松江:そう。「この人、おじさんを撮るのが上手いのかな」って思ったんだけど、違うんですよ。『後楽園の母』っていうこの間出た“MUSIC ON TV!”のドラマでDVDになったやつなんですけど・・・。由紀さおりがすっげえかわいい。


--- 由紀さおりさん・・・そんなに?(笑)。


直井:かわいい(笑)。由紀さおりがひたすら東海の田舎で・・・。


松江:何かね、ジェットコースター乗ったりとか、後楽園で(笑)。


直井:そうそうそう。バンドのメンバーとスタジオ入ってみたりとか、古本屋やってみたり、バイトやってみたりとか、いろいろ冒険するんですけど(笑)。


松江:あとは、城定(秀夫)さんね。


直井:城定さんね。


松江:城定さんはね、やっぱりすっごい上手い。AV女優がオリジナルの映画とかに出てるのを観ると、がっかりな方が多いじゃないですか?やっぱり、普段から脱いでる人が脱ぎ惜しみして、延々芝居観てるのとかを観ると、もう早送り・・・みたいになっちゃうんですけど、エッチシーンもAVほどやってるわけじゃないし。結局ね、オリジナルのエロVシネって、「じゃあ、何が見せたいの?」ってやっぱり、監督が作りたいものを作ってるのかっていう。でも、作りたいものが作れない状況じゃないですか?「1日で日が落ちる前に1本撮って下さい」みたいな、「60分を」っていう世界ですから。その中で城定さんはもう、「脱がなくても全然いい」みたいな、すごいかわいらしい顔を・・・また別のね、ドキュメンタリーでさらけ出す・・・AVってある意味、ドキュメンタリーですから。「ドキュメンタリーで顔をさらけ出してる人をお芝居付けて、新しい顔を出す」っていうのは、すごい演出家だと思いますよ。『あんにょん由美香』の予告編も、そういうのもあって、城定さんに作って頂きたかったんですよね。自分の中ではもう出し切っちゃってたので、「城定さんだったら、また新しい見え方を出して下さるんじゃないかな」って思って。そしたら、ああいういい予告編をね。


直井:何か、やさしいですよね。


松江:うん。


直井:世界がすごく、幸福な感じが。


--- 『あんにょん由美香』は、松江さんがクリエイターとして尊敬されたりとか、先輩と思われている方がたくさん集まって形になってるんですよね。


松江:そうですね。それはたぶん、僕だけの力ではないですね。正直、本当にやっぱり、由美香さんの力ですね。何かね、呼ぶんですよね、由美香さん。何なんですかね(笑)。やっぱりね、それがないドキュメンタリーってだめですよ、カメラ回して何も起きないのは。やっぱり、演出して、なおかつ何かこう・・・呼ぶというか、ドキュメンタリーの神様がね、「お前、ちょっとあそこに偶然行って来て」みたいな。「松江が回してるからフレームの中入ってやれよ」みたいなことを起こしてくれるんですよ。


直井:シナリオに書いてないのに、入江(浩治)さんとキム(・ウォンボギ)さんが同じような表情だったりとか。


松江:そうそうそう、そうそうそう。


直井:行くまでどうなるかなんて分かんないですからね。


松江:「いや、僕ら何も覚えてないです」とか「話し使えないですよ」とかみなさん言うんだけど、出てくる、出てくる(笑)・・・こう、ターニングポイントが(笑)。


直井:「子供が生まれて俳優をあきらめた」っていう2人に「出来すぎだろ」っていう話しが出来てきたりとか(笑)。


松江:でもやっぱりそれは、呼ぶんですよね。だから結局、いい作品になるかどうかっていうのは正直、演出しきれない部分があるじゃないですか?だから結構、勘だったりするんですよ。何となく「いけるんじゃないかな」っていう。だから、そこの勘を信じるのプラス、そういう偶然をいかに呼び込むか。で、それのコツは分からないです。


直井:分からないですよね(笑)。


松江:分からないです(笑)。それ分かったら僕、映画撮らないで他の仕事をしています。


直井:(笑)。


松江:でも、カメラを回すと何か起きるって信じたり、あとはね・・・被写体がああいう表情でしゃべってくれると自然とそうなるのかなって言う気もしますね。


--- 入江さんとは、中野の北口のルノアールで取材されてますよね?


松江:そうですね、ルノアールです(笑)。


--- わたし、あの近くのLIFEによく買い物に行くので、「あ!」って思って・・・(笑)。


松江:そうですか(笑)。目の前ですね。


--- あの時点での入江さんのそっけなさがおもしろかったんですけど、最後は全然違う感じになりましたね。


松江:そうそう。でね、あれも中野の公園なんですよ。青梅街道と環七の交差点のところにある・・・高円寺寄りですね。


--- 『純子』のカメラマンの柳田さんも・・・。


松江:あれも、中野の杉山公園の交差点の・・・。


--- ほぼ、あのあたりで撮影されてるんですね。


松江:そうなんですよね。それで、あのBARが中野富士見町なんですよ。中野通りを下北方面にずーっと下ってって、途中にモスバーガーがあるんですけど、その入ったところに「ドルフィン」っていうBARがあって。僕も住んでるのが東中野で、すっごい近所で撮ったんですよね、あれは。近所から北海道(笑)・・・韓国、沖縄と・・・。


--- 入江さんがいいタイミングで、「由美香さんが亡くならなければ、この映画はなかった」っておっしゃいますよね?


松江:最後にね。だんだん芝居し出す・・・芝居というか、セリフになるんですよね。不思議なことに、ドキュメンタリーっておもしろいのが・・・別に入江さんはセリフを言おうと思ってるんじゃないんですよ。でも、入江さんがやっていく中で「何か言おう」っていう風になっていくのか、もしくはしゃべりながらテンション上がって、「いやあ、由美香さんあって・・・」って、言っちゃうんですよ。


直井:キムさんもね、「役者はカメラの前にいるのが一番だ」とかってね(笑)。


松江:「そんないいこと言っちゃうんだ」ってね(笑)。何かね、みんななるんですよね。普段からああいうこと言う人じゃないですよ?でもね、カメラが回るとそうなるんですよね。でもね、それがドキュメンタリーなんだなって、僕は思いますね。何かね、人生のセリフの瞬間をね、撮るんですよ。浅草キッドの「男の星座」って本で、浅草キッドがプロレス風に解説をして、エガ(江頭2:50)ちゃんの名言とか、梶原一騎魂みたいな本があるんですよ。僕も好きなんで、梶原一騎。


--- 松江さんが関わられているドキュメンタリーというジャンルというか・・・については、どういう風にお考えですか?今までのお話しでいろいろお聞かせ頂いてるんですが。


松江:今、ドキュメンタリーをジャンルっておっしゃったんですけど、ドキュメンタリーはジャンルではなくて、手法ですね。要するに、ある被写体とか・・・例えばですけど、「こういう物語を作りたい」っていう気持ちは僕にもあるんですよ。物語というか、この『純子』自体がそうじゃないですか?「由美香さんを追っかけて何か撮りたい」っていう。で、その時に、僕にとって作る上でのベストの手法がドキュメンタリーなんですよね。だから、僕のドキュメンタリーの定義っていうのは、現実を素材にした物語なんですよ。結局、物語にしたいんですよね。で、それをフィクションでセットを作って役者がメイクをして衣装を着て演出をして、「用意スタート」でやるのではなくて、「そういう流れになって欲しいな」って思いながら裏切られたりっていうのを膨大な時間をかけて、素材を集めて、物語にするのが僕のドキュメンタリーの定義なんですよね。

だからそれがどういう結果になるか、それは撮らないと分かんないんですよ。コメディになるのか、ラブストーリーになるのか。ドキュメンタリー=現実をそのまま撮ってるとか真実だっていうのは、そういう面もあるけど、「僕が面白いと思うのはそういうところだけではないですよ」っていう。要するにさっきも言ってる、お芝居をしちゃう瞬間だったりとか、嘘なのか本当なのか分からない・・・というか、むしろ、嘘から出てくる本当だとか、そういうダイナミックというか、現場で起こってる臨場感を出しやすいのはやっぱり、劇映画だと難しいじゃないですか?やっぱり、セリフっぽいこと言うとセリフになっちゃうし、そうではないんですよね。何かこう、共犯関係を被写体と結んで、被写体がつい出ちゃったみたいな。そういう演出しきれない部分が自分が撮ってて、すごい大事にしてるところだし、僕がドキュメンタリーをやっててたまらなくおもしろいのはそういうところですね。それは実は、現場で気付かない場合も多いんですよ。素材を見直して編集した時に見えてくるものだったりするので。

だから、そう・・・さっきも言ったように、猫を何気なく撮ってたら、ラストシーンであの猫を使って、「あ!」って気付いて、「こういう風に変えよう」っていう風になったように、作ってる間に完璧にコントロール出来るかっていうと、ドキュメンタリーは出来ないので、一番気を付けてるのは、カメラを回しながら、「いいものが撮れた」って思ったりするじゃないですか?そういう時が気を付けますね。実はいい言葉とかいいものっていうのは、その被写体が何かねえ・・・予兆を出してるのがあるんですよ。


--- 予兆・・・。


松江:うん、予兆を。例えば、そういうことを言う雰囲気というか、そこまではっきりセリフっぽく言わなくても、近い言葉を事前に言ってたりっていうのが撮ってる時気付かなくても、後で気付くことっていうのがあるんですよね。だから、現場で「いいな」って思ったものは大事にするんですけど、その予兆を探して、そっちの素材を撮った方がフリになるじゃないですか?もしくは、それで十分語り切れてて、現場で「すごい大事だな」って思ったのは、実はカット出来るかもしれないんですよね。それはおもしろいですね、ドキュメンタリーやってて。自分でも気付かない何かというか。だから、結構ずっと回してるんですよ、僕は。ドキュメンタリーを撮ってる時は。


--- 今回も、結構回されてるんですか?


松江:回しましたね、5〜60時間は。でも、『あんにょん由美香』が特別長く回したってこともなくて、僕の中ではだいたい、いつもの作品と同じくらいですね。


--- いろいろお話しを伺うと、改めてもう1回、観たくなりますね。


松江:ポレポレ(東中野)で観ると、また違うと思いますね。あと、試写の雰囲気と一般のお客さんの雰囲気とか、ポレポレのスクリーンとの距離感っていうのもまた違うと思うので。


直井:でも、試写で笑いが起きるってめずらしいですよね。


松江:めずらしいですよね。


直井:だいだいこう・・・雰囲気怖い感じがありますけどね。でも今回は、みんなリラックスして見てくれた感じがありますね。


『あんにょん由美香』 予告編はこちらから!







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