定刻18時30分。「Start Me Up」のSEを背に、「ストーンズとフェイセズとRCと村八分が大好きなこのバンド!」という越谷さんのイントロダクションで登場した、THE BEGGARSの弟分として間もなくデビューするというVESSEの「退屈天国」のイントロがレイジーに掻き鳴らされ、「TOKYOを照らせ!ストーンズ・ナイト!!」が開宴!
サイケデリック・ストーンズを十二分に意識させる覚醒的なギター・サウンドと、村八分のチャー坊を想い起こさせるヴォーカル、JUNのパフォーマンスで強烈なインパクトを残したVESSE。「2000光年のかなたに」、「Child of The Moon」といったストーンズ・カヴァーも圧巻でした。
続いて2組目は、自殺、コックサッカーズ、WAX等の活動で知られるジョージ(vo,g)、同じくWAX、北澤組を渡り歩いた小山耕太郎(vo,g)らによる藻の月(MO NO TSUKI)。ガッシャガシャなトリプル・ギター・サウンドに塗れた、切れ味鋭い「悪魔を憐れむ歌」でスタート。オリジナルを1曲挟み、ラストは「Satisfaction」。こちらも轟音上等のアブない仕上がりで、ストーンズが”東京ロッカーズ界隈”に与えた計り知れない影響をも伺い知ることができました。やっぱりロックには猥雑さがないとね。
ここで、ドラムのセッティング時間を利用した「ストーンズ・グッズ・プレゼント抽選大会」へ。「ア・ビガー・バン ワールド・ツアー」時のバックステージ・パス、ストーンズの国内ファンクラブ会報誌「STONE PEOPLE」の貴重なバックナンバー、越谷さんが監修を務めたキースの”完全攻略”本『キース・リチャーズ・ファイル』、日本人唯一のストーンズ・オフィシャル・カメラマンとしても有名な有賀幹夫さんの写真集『ザ・ローリング・ストーンズ LIVE ALBUM 1990−2006』といった豪華なプレゼントが、次々とほろ酔いのストーンズ・フリーク達の手に。『キース・リチャーズ・ファイル』、『ザ・ローリング・ストーンズ LIVE ALBUM 1990−2006』は、共にストーンズ・ファンであればいつでも手元に置いておきたい、データベース的にもレアリティ的にも恐ろしく内容の濃い1冊。まだ入手されていない方は、この機会に是非どうぞ。
初台にキースを見た
しばしのブレイクに続いて登場は、和製ニューヨーク・ドールズとの呼び声も高い70年代伝説のグラム・ロック・バンド、Rougeのギタリストでもあったオスこと尾塩雅一率いるPyano(ピアノ)。紅一点ヴォーカル、アズサの脇でギブソン・レスポールを掻きむしるオス。いやはや、さすがの存在感です。と言いますか、アタマのてっぺんから足の先、そして生き様までが、キースそのもの!まだ見ぬX-pensive Winos日本公演を観ているかのような感覚に襲われたのは、きっとボクだけじゃなかったはず。誰もが「初台にキースを見た!」と大興奮の一幕でした。75年、加藤和彦のプロデュースでリリースされたRouge唯一のアルバム『The Best of』、それから、Rouge解散後に結成されたScrew Bonkersのライヴ・アルバム(「Brown Sugar」のカヴァー演ってます!)は、若いお兄さん方必聴ですぜ。
2回目のブレイクは、『シャイン・ア・ライト』をまだ観ていない方は特にお待ちかねのDVD上映会。『シャイン・ア・ライト』、つまり最新ツアーにおける演目と、同時リリースの『レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー』に収められている81年USツアー時の同演目の比較というお題目の中、「Start Me Up」が爆音で上映されました。それにしても、真っ黄色のスパッツを穿き、スタジアム中をかけずり回る81年のミックは、ブッ飛んでいますよね、色んな意味で。たしか、この曲のプロモーション・ビデオもレオタードみたいなピッチピチの服を着て、エアロビまがいのダンスを踊っていましたよね。それを中学生ぐらいの頃に初めて観て、うかつにも「ミック・ジャガーって気持ちわりぃな・・・」って口走ってしまったことを思い出してしまいました。
オーディエンス同様、興奮冷めやらないご様子の越谷さんのMCで登場したのは、ストーンズのバック・コーラスや、ロニー・ウッドのバンドのメイン・ヴォーカルなどでおなじみのバナード・ファーラーと一緒に「Happy」のレゲエ・ヴァージョンをレコーディングしたばかりという日本人ミュージシャン、石塚勉(g,vo)。「普通のおじさんですからね(笑)」という越谷さんの紹介と共に、日本のストーンズ・ファンの前に初登場。聞けば、グレゴリー・アイザックスなんかともレコーディングをしているという、海外のレゲエ畑では名の知れたお人だそうで、小学校5年生の時に初めて聴いた『Black And Blue』収録「Cherry Oh Baby」の衝撃が今でも忘れられず、ストーンズをレゲエ・サイドから長年追っかけているのだそうです(打ち上げの時には、色々と楽しいお話ありがとうございました!)。その「Happy」のレゲエ・ヴァージョン・・・あ、気持ちいいヴァイブス。かなり好きです。
・・・そしてサプライズ・ゲストは?!
そんなユルめな「Happy」に続いては、THE BEGGARSのキース・ハマによるオリジナル仕様の「Happy」。ロニー・テイラー・ジョーンズのスライドもその名の通り、ミック・テイラーとロニーのちょうどおいしいところどりのようなプレイで大満足!ここで3組目のゲストが登場。ROCKAMENCOなどでの活動でも知られるIchiro(g)、さらには、元Twist〜Hound Dogの鮫島秀樹(b)というThe Sonsの2人を交えたブルース・セッション、「Key To The Highway」へ突入。労働の後のブルースとビールほど体に沁みるものはありません!立て続けに「Around And Around」と・・・ここはエル・モカンボか!?
ひとしきり、ブルース/R&Rタイムを満喫した後にご登場は、沖縄出身のジャズ・フルート奏者、西仲美咲。なんでも大のストーンズ・フリークらしく、2003年の大阪公演はアリーナ最前列で観たというツワモノ。ここでは、THE BEGGARSと共に「Ruby Tuesday」、「無情の世界」の2曲を披露。ブライアンがフルート、リコーダーを担当した前者に、ロンドン・バッハ合唱団によるコーラス・イントロが付いた後者。ジャズやクラシック界隈でも数多カヴァーされていて、最近ではティム・リースのヴァージョンなんかも有名なのではないでしょうか。ちなみに、「無情の世界」という邦題(原題は「You Can't Always Get What You Want」)の名付け親は越谷さんなんですよ。この2曲で少しクール・ダウンしたところへVESSEのJUNらが再びステージに上がり、怒涛の「Brown Sugar」へとなだれ込み、いよいよ宴はクライマックスに向かってトップ・ギアに!
ホットなR&Bシンガー、kimikaがこぶしを効かせた「Angie」を高らかに歌い上げた後、ジョージがステージに呼ばれ「Gimme Shelter」のイントロが。リサ・フィッシャー、サラ・ダッシュに負けずとも劣らずのkimikaの太い歌声がジャガリコに絡みつく。完全にkimikaの独壇場でした。間髪入れず、オスを交えての「It's Only Rock'n'Roll」から、Ichiro&鮫島秀樹を含む出演者全員による大盛り上がり大会の「Satisfaction」へ。と、ここで鮫島が「友達が遊びに来ているので紹介します。一緒にジャムりましょう」。なんと!元Street Slidersのハリーが客席を縫ってステージへ!おおおっ!!最後の最後にこんなサプライズが味わえるとは!「うへぇ、ハリー、かっこいいなぁ・・・」としばし見とれながらも、最後は「ハリー!ハリー!」と半狂乱でその名をコール。この夜の「Satisfaction」は生涯忘れることができないものになるでしょう!
「Walkin The Dog」、「You Gotta Move」といったハリーのルーツであるブルース/リズム&ブルース楽曲のカヴァーを収録した2ndソロ・アルバム。ライヴでは定番だったものの、カヴァー曲をアルバムに収録するのは初の試み。日本ロック史上最も重要な“声”の持ち主、ハリー。彼の歌声は、聴く者全ての魂を今も揺さぶり続ける。