--- このBEST盤も1枚目2枚目それぞれにストーリーがあると思いますが。
DISC1の1曲目の『のうぜんかつら』にしても、そんなに勿体つけてもしょうがないというか。
なんやかんやいっても一番有名で、かといって、自分達にとって音楽的に何か大きな変化のあった曲ではなくて。
だから勿体つけて後ろのほうに入れるっていう感覚はなくて、むしろみんなに知ってもらったこの曲で1曲目が飾られ、そこから安藤裕子という音の世界が広がる感じにしたくて。
そして最後は、『隣人に光が差すとき』『聖者の行進』という流れ。『Middle Tempo Magic』というアルバムの最後の曲順でもあるんだけど、
この流れが今の自分のLIVEの形として定着していて、本編の終わりに『隣人に光が差すとき』をうたって、最後に『聖者の行進』をうたって終わるっていう形がすごくバンドを育てたし、お客さんもその形を知ってくれていて、その終わりにすごく意味がある。つまり今までの安藤裕子って言う出来上がった形をそこで終えるというね。
そうして終えた後に、ここから変わっていろんな事がスタートしていくっていう意味で『はじま
りの唄』という曲が最後にいるんです。
そこまでがDISC1のストーリーで、DISC2は『六月十三日、強い雨。』って言う曲が一番最後に入ってるんだけど、これは『chronicle』というアルバムにおいては1曲目の曲なの。
その『chronicle』というアルバムの中でずっと言っていたのが、「はじまりが終わりで、終わりが始まり」っていう事で、『六月十三日、強い雨。』っていうのはある意味、終焉の曲で、それを『chronicle』では頭に持ってきたんだけど、BEST盤のDISC2では閉じている形で完結させているっていうストーリーはある。
--- DISC1と2で、曲調も、違って思える部分もあると思いますが。
そこにあまり意図はないかな。DISC1はいわばシングルとかリード曲が中心で、ゆったりした曲、いい曲然としたものが多いし、DISC2はそれよりはもうちょっと天邪鬼な部分が含まれている・・・っていうのは選び終わって今のわたしの感想で、選ぶときはそういう事考えてないんですよ。今見るとそういう事もあるのかもしれないなと思いますけど。
でも、
聴いた人が何かを感じるっていうのがすごく大事だと思う。
--- 確かにそう。1から10まで全部説明しちゃう音楽ってすごくありふれていると思うんだけど、安藤裕子の音楽って言うのはそれを最後まで説明せず、リスナーの想像に委ねるっていう魅力があるように思います。
自分もね、何かの思いの曲を創ろうとか、何かを言おうとは曲の中では思ってなくて、自分があまりそこを掴んでないかも。言いたいことがないの。
--- そうでしょうか?
言いたい事はないの。頭の中には。だけど、漏れ出る感情みたいなものがあるわけ。それが何なのか自分でもよく解ってないんだけど・・・
--- なるほど。
いつも思うんだけど、取材を受けているときは取材モードの自分がいて、それは音楽を創ってい
る自分じゃないの。自分の代わりにしゃべる官房長官みたいな。
すごく私のことを解ったつもりで話すし、客観的に彼女はこういうところがあるなと判断してしゃべるけど、やっぱりちょっと自分とは違う。音楽に関しても、一定距離があって、曲が出来た流れとかは知っているけれど、本心みたいなものとか、その曲の持ってる本当の意味みたいなところは、歌い重ねないと解らなくて・・・
LIVEで初めて、「この曲こうなんだ」って解って歌いながら号泣したりすることもあって。
本当は知らない事だらけなんですよ。
--- そうやって歌い重ねる事で知っていく部分っていうのは、気持ちいい瞬間だったりするんですか?
そうですね。それはすごく感じます。自分ひとりで、曲を創っている最中に思っている事、感覚よりも、実際に
レコーディングでミュージシャンと一緒に歌い始める瞬間とか、LIVEで人前で歌った瞬間っていう方が、曲の本当のところを感じる事があって、それは非常に、毎度毎度驚かされるところではある。
--- LIVEにおいては、そういうのが自分の中で醍醐味であったり?
そうですね。LIVEはやっぱり、いつも自分の中では大きい意味があって・・・
なんかね、届きたいラインがあるわけ。そこに届くと、うまく表現できないけど・・・とっても爽快なわけ。
--- その届きたいラインっていうのは言葉で表現できます?
それはね。ちょっと難しいなぁ。要は音っていうのは波動なんだけど、舞台に立ってると、バンドのメンバーが鳴らす打点みたいな音の波があって、
それは波のリズムが一緒じゃないと飛べないわけ。みんなの心がばらつくと、外見には同じに聴こえても。それが同じ波動でくると、すごく持ち上がるの。ぶわって!身体が。
そして私の声も昇る。逆に私の声が昇ることでバンドをひっぱることもあって。それは相互作用なんでどっちとも言えないんだけど。さらにお客さんが加わると、
お客さんの思いとか波動みたいなものが、「ぞわっと」集まる瞬間があって。そうすると、それも「ぞわっと」すごい高いところまでいくし。
--- 「ぞわっと」いいですね!自分もリスナーとして、LIVEで会場全体が同じところを向いているような一体感というのをすごく感じる事があって、それはうまく言葉で言い表せなかった事だけど、その「ぞわっと」っていうのはすごくしっくりきます!
そう、その「ぞわっと」いうところの、それでどこまで上に昇れるのかっていうところ、もしくはみんなをひっぱっていけるのかっていうのは毎回毎回LIVEでは考えてる。
だから、
LIVEに来てくれたお客さんに、本当の「ぞわっと」をプレゼントできたかどうかっていうことはやっぱりずごく考えたりする。
--- そうやっていろんな思いを持ってLIVEをしていると思うんだけど。単純にLIVEは好きですか?
好きですね。反面すごく怖い部分もあるし、肉体的にきついところもあるけど、やっぱり好きだなぁ。
LIVEがあるから、自分も成長とかを体感しながら次へ次へと思うところもあるから。
さらに続きます