河瀨直美監督最新作！『七夜待』

2009年3月6日 (金)

舞台は、故郷・奈良からアジア・タイへ。

デビュー作でカンヌ・カメラドールを受賞した『萌の朱雀』から10年。『殯の森』でカンヌ・グランプリ受賞後･･･河瀨直美監督最新作！

河瀨監督本人が「トライだった」と語る本作は、これまで一貫して映画の舞台にしていた生まれ故郷"奈良"から初めて、異国の"タイ"に舞台を移し、タイ、日本、フランスという多国籍の俳優とスタッフ、異なる言語と文化が混在する中、撮影された。

『右側に気をつけろ』（87）のジャン＝リュック・ゴダール作品や、アルノー・デプレシャン監督の『魂を救え！』などを手掛け、国際的に活躍するキャロリーヌ・シャンプティエを撮影監督に、フランスの名優・グレゴワール・コランを迎えた本作は、言語や文化の壁を乗り越えた一体感によって完成し、異国の地で七つの夜を体験した1人の女性が、自分の中にある滞りを流していく様を瑞々しく伸びやかに、スクリーンに映し出す。

朝一枚のメモ

河瀨監督から主演の長谷川京子に、毎朝のメイク時に渡される1枚のメモ。それは、その日1日に撮影する"行動"だけが記され、それ以外の台詞や相手とのやり取りなどは、自分自身で演じていく。

タイ人の母親と4歳の息子（実際の親子）。タイ人タクシードライバー。袈裟を着たゲイのフランス人。それぞれは自分の行動しか知らされず、異国の俳優たちは言語が異なるだけでなく、お互いの関係性やこのあと起きる物語も知らされず、朝、渡された1枚のメモだけで、相手と対峙する。

言語によるコミュニケーションが取れないため、相手とのことも聞けない、自分のことも伝えられないという現場の状況をそのまま物語にしていく、河瀨監督の独特の演出方法は、演技なのか、本当なのかの判別がつかないリアクションと俳優同士のリアルな触れ合いを生み出した。

タイ古式マッサージ

初めて海外・タイを舞台に選んだ理由の一つが、河瀨監督自身が触れた現地で日常的に行なわれている古式マッサージである。2人ヨガのような形式で、重力を利用しながらお互いに自分の体重をかけあい、筋を伸ばしていく古式マッサージは、からだを本来の力強さに導く要素があるとされている。本作では、ゆったりと美しいリズムで映し出されるマッサージの動きが、物語により添い、幻想的で心地よい世界に誘っている。

5月20日リリース！

STORY

辿り着いた混沌としたタイの森の中。一人の女性が古式マッサージに触れ、癒されながら新しい自分に出会う物語。

七夜待

彩子、30歳。彼女は日本を旅立ち、タイに降り立った。しかし、ホテルに向かうはずのタクシーが辿り着いたのは、混沌とした森の中。そこで彼女が出会ったのは、タイ人の母子とひとりのフランス人。言葉が通じない、相手が何者なのかも分からない。癒されるはずの場所で、タイの湿気だけがまとわりつき、コミュニケーションがとれないもどかしさから、心と体で衝突する日々。不安と混乱の中、苛立つ彩子は、タイの古式マッサージに触れる。