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「TAO」 企画前夜:ゲスト→吉田豪 2

2008年10月2日 (木)

---  インタビューの醍醐味は、他では言ってない発言が聞けたりすることですよね?


吉田:それは大きいですね。下調べして、ある程度は、「あ、この話はたぶん、いつも話してるんだな」みたいなのが見えるじゃないですか?基本のネタっていうのが。そういう話題が出た時に、それをショートカット出来るかっていうのは、「あ、○○ですね?」の一言で、まとめられるんですよね。原稿で生かすにしても、文字数も要約出来た上に・・・っていう。「それ知ってるんだったら、さらに」っていうことで、一歩深めてくれるんで。

ターザン山本って男がいるんですけど、その人は、インタビューの時に知ってる話でも、「ええー、本当なの?」って言っちゃうんですけど、その受け身って完全に、マイナスなんですよね。それは、「相手はこの程度で大丈夫なんだ」ってことで聞かれる側は話しちゃうし、読んでる側も、「あ、こいつ、こんなことも知らないんだ」って思っちゃうんで、知ってることは、「知ってます。いい話ですよね」って否定しないで、肯定しながら進めるっていうやり方をしていけばね。


---  例えば、「元アイドル!」は、"こっちが勝手に自粛することなく、相手が話しづらい部分にどれだけ踏み込んでいけるのか"をテーマとされただけあって、普通だったら聞きづらいことを本当に、彼女達にばんばん質問されてますよね?(笑)。あれは、他のインタビュアーの方が聞いていないのか、吉田さんがインタビュアーとして聞いたから答えてくれたのか・・・。


吉田:うーん・・・元アイドル系の人に対するインタビューっていうのは、パターンがあるんだと思うんですよね。本当に"あの人は今"的な、「今何やってるんですか?」くらいしか聞かないものとか、あとは、いやらしい話であったりとか。そうじゃない部分っていうのは、そんなに聞かれてないってことなんだと思うんですよね。こっちも大人ですからね、「男の話は聞かない」とか、そのへんはちゃんと守って。人間性をどこまで出せるかなんで。でも、いい時代になったのか何なのか、そういう取材の原稿も、意外と通りますよ。「うわあ、これ大丈夫かな?」って思いながら、おそるおそるチェックに出したら、ほぼ"イキ"みたいな。自由な時代になってますよ(笑)。


---  普段と違った面を出してもらってうれしいっていう、気持ちもありますよね?


吉田:・・・ですかね。本当に、アイドル系の場合は特にそうみたいなんですけど、テープ起こしの人間が「他の人の起こしをしてびっくりした」って言ってて。その場でプロフィールを見て、「えー、○○なんだあー。何でえー?」みたいな(笑)。そんなノリが多いって聞いて。事前の下調べとかもしないしっていう。

特に、著書とかも出してないアイドル系の子とかの場合は、本当にそういう取材がメインだから、「ああ、こないだブログで書いてましたよね」の一言があるだけでたぶん、そこで信頼関係が築けるんですよ。「ああ、読んでくれてる」っていう。だから、"ブログを死ぬ気で見る"っていうのが、ルールですからね。あとは、"2ちゃん"の関連スレッドも全部見るくらいの勢いで。こういう批判がある人で・・・みたいな感じの前提で話すと、やりやすいですよ。


---  "ブログを死ぬ気で見る"?


吉田:ええ、死ぬ気で見ますね。そこに提示されているものは。でも、ものすっごい量書いてる人とかだと、途中で力尽きることも、多々ありますけどね。もう、くらくらしますよ、本当に(笑)。「取材まであと何分・・・寝られるかどうか・・・1〜2時間仮眠しようかな」みたいな状態で、すごいつまんないブログ見てる時のこのむなしさ、みたいな(笑)。「また食べ物、また食べ物・・・人となりが全然出てない!」っていう(笑)。


---  (笑)。事務所の所属アーティストは、ブログを書かされてるところもあるんですよね?


吉田:書かされてるっていうか、何だろうなあ・・・基本的に波風立てたくないっていうか、下手なこと書いたら怒られるっていう危機感がすごいあるんですよね。だから、「あんまり自分のこと、書いちゃいけないんじゃないか」とか「弱ってる」とか書いちゃいけないんじゃないかとか考えて、過剰に「元気!」みたいなことをアピールして空っぽになっちゃうんですよね(笑)。弱ってる時は、「弱ってる」って出してくれって、毎回言ってますもん。変に悩んじゃってるんですよね。「歌もわたし、下手だから」とか。「何言ってんだ!下手な方がおもしろいんだ」っていう(笑)。「歌上手い奴なんて、アイドルである必要がない」みたいな。毎回そういう、「いいんだよ!」っていうような、"夜回り先生"みたいなことをやって回ってるんですよね(笑)。


---  (笑)。あと、他のインタビュアーの方がどんな質問をして、どのような雰囲気でされているのかってわからないし、すごく気になります。


吉田:僕もそんなにわからないですね。新人時代に何回か、同行したくらいで。受ける側になって、わかりますけどね。「ああ、たまにこういう人いるんだ」っていう。「吉田さんはええっとぉー、何やってる人ぉー?」みたいな(笑)。「ああ・・・いろいろやらせて頂いております」って言いながら、「ああ、この段階からか」って(笑)。


---  自分から取材のオファーをしたにも関わらず?(笑)。


吉田:ええ(笑)。新聞関係とか、そんなノリ、ありますね。


---  そういう場合は、どう対処されるんですか?(笑)


吉田:それはもう、おもしろがるんですよ(笑)。あとで言いふらすのを前提に。その場では一切怒らないで、「すごかったよー、こないだの取材」って(笑)。僕は得なんですよね。コラム書いてたりとか、ラジオとかもやってるので(レギュラー仕事一覧!は、こちらより)全てネタに出来るから、鬱憤は溜まらないんですよね。ひどい目に遭ってても、「今、おもしろいことになってます」っていうのが、常にあるんで。

たまに、リリーさんの仕事に同行したりとかすると、リリーさんのお付きの人的な感じで見られてたのか、相手の視界に入らないこととかがあって。リリーさんと誰かの対談で、あの時は、おでん屋か何かで取材したのかな?・・・で、2人には箸が出てるんだけど、僕にだけ、箸もドリンクもないみたいな。そういう時はこう常に、襟を正す感じで、「調子に乗ってたな。がんばろう」みたいな(笑)。


---  (笑)。リリーさんへは、師匠と崇められているんですよね?


吉田:本当にペーペーの時に、一番よくしてくれた人で。付き合いはものすごい長い、15年くらいですからね。


---  この間、タワレコに「ロックンロールタイムズ」をもらいに行ったら、「すみません・・・もうないです。あれ、すぐなくなっちゃうんですよ」って言われちゃいました(笑)。


吉田:他社に?(笑)


---  ええ、他社に(笑)。実物を見たこともないんですけど、結構お金かかってるんですよね?


吉田:あれ、作りよすぎますからね。ものすごくいい紙使って、ちゃんとやってますよ。


---  その他の情報源として、古本収集をされているんですよね?"ブックオフ"にも通われて・・・。


吉田:"ブックオフ"は行きますね、基本ですよ。マスコミの人間では好きだって公言する人は少ないんですけど、僕は出かければ必ず、そこの街のブックオフには行き、地方取材の時でも必ず行きます。だから情報源は古本+ネットもあるし、雑誌とかの過去の記事もあるし、あとは口コミもあるし・・・相当、立体的になりはしますよね。


---  そういうものである程度、こちら側が調べていってお話しすると、いろいろお話ししてくれるものですか?


吉田:でも2パターンあって、たまにものすごい警戒されることもありますよ(笑)。「こいつ、俺に何する気?」みたいな(笑)。「そこまで知って、何、何?あれも知ってるわけ?」みたいな感じで、急激に警戒を強める人が1割いかないですけど、まあ本当に、数パーセントいますね。急激にシャッター閉じていく感じの。きのうも比較的、そうだったなあ・・・。


---  きのうは、どなたを?


吉田川ア麻世さんの取材で・・・。


---  川ア麻世さん!(笑)


吉田:前にカイヤさんを取材して・・・すんごくいい人だったんですよ。お母さんが亡くなった日だったんですよね、取材した日が。お母さんが亡くなって、会見やって、その後・・・っていう(笑)。直前まで泣いてるの、テレビで見てて。「取材キャンセルしていいのに・・・」っていうような状態で来て、「テレビとかでやってるあの恐妻ネタとか、全てギミックで、わたしは暴力も嫌いで・・・」みたいな話しをいっぱい聞かされて。「おそろしいな、芸能界」って思って。

きのうの川ア麻世さんに関しては、非常に公式見解というか、こうね、当たり障りのない話・・・「両親を大切にしよう」とか「感謝の気持ちを持つ」とか、そういう話をされて、「ああ、カイヤ派だな、俺」みたいな(笑)。


---  (笑)。当たり障りのない話は、あんまりおもしろくないですか?インタビューし甲斐がないというか。


吉田:うーん、何だろう・・・キレイごとを言う人っていうのが、本当にたまにいるんですよ。「この機会に、自分のいいとこ出しておこう」みたいな。急激に萎えていきますよね、やっぱりね(笑)。バンドの方とかにたまにいるんですよ。結構、女遊び激しい人に、いろいろ情報を掴んだ上で取材に行って、「モテたんじゃないですか?」って言ったら、「いや、全然、全然。僕は本当にね、純粋に音楽が好きだから、そういうことには興味がなくて」って(笑)。


---  こっちはもう知ってるのに(笑)。


吉田:知ってるのに(笑)。「だから僕、今でも独身ですよ」って言うんですけど、「結婚してるのも知ってるのになあ」って(笑)。そういうことをね、ぬけぬけと・・・な人がいるんですよね、たまに。突っ込んでも崩れない場合は、もうしょうがないですからね。その場合、僕は単行本、"不掲載"にするとか、そういう手しかないですからね。「掲載に値するクオリティーに達しませんでした」っていう。


---  この業界で、例えばですけど・・・先ほどのカイヤさんのように、実際には"怖い"っていうイメージで売ってるのに、本当はそうじゃないって方が、つい本音を出しちゃった瞬間っていうのもやっぱり、おもしろいですよね?


吉田:ですね。そういうのをどんどん拾いたいですよね。そういう場合、どう転んでもたのしいじゃないですか?原稿としておもしろくなんなくても、まあ、トークショーのネタにはなるみたいな感じで。例えば、的場浩司さん取材しに行ったら、全然こう、やんちゃな話、一切しないんですよね。一人称がわたしで(笑)。「わたしは本当に、そういう世界とは別で、もう真面目に・・・」みたいなことを言われて、がっかりはするんですよ、すごく。がっかりはするんだけど、ネタにはなるっていう(笑)。過去の話しに触れても、全然拾ってくれなかったですからね。


---  取材したことが原稿になるか、トークショーのネタになるかっていう判断は・・・。


吉田:まあ、どっちにもなりますけどね。あまりにひどい場合は僕、クレジットが変わるんですよね。文:吉田豪じゃなくて、聞き手:吉田豪になることが、年に1回くらいあるんですよ(笑)。アイドルよりも、意外と男子に多いんですけど、ものすごい大幅な直しとかが入って。聞き手の発言まで直されたりとかで・・・そうなると変えちゃいますね(笑)。


---  質問まで変えられちゃったら、内容全然変わってきちゃいますもんね(笑)。


吉田:そうなんですよ。そこ変えられちゃうこと、たまにあるんですよ。聞いてない質問してたりして(笑)。






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