佐野和宏について。

Monday, February 25th 2008

佐野和宏って、どんな人？

本名：佐野和宏　（さのかずひろ）

1956年生まれ。明治大学在学中に石井聰亙監督、松井良彦監督らと出会い、『錆びた缶空』(79)、『豚鶏心中』(81)、『狂い咲きサンダーロード』(80)に出演した。

その後、渡辺護、小水一男らの作品への出演を切っ掛けに、ピンク映画に関るようになる。

以降、2本の自主映画『ミミズの唄』(82)、『ドライフラワー』(86)を監督しながら、俳優としても活動。中でも松井良彦監督の『追悼のざわめき』(88年)は、印象深い。

その後、脚本作を経て、89年『監禁･ワイセツな前戯』で商業監督デビュー。脚本、監督、出演を自ら手掛ける制作スタイルと、力強くも哀愁に満ちた作風で注目を集める。佐藤寿保、サトウトシキ、瀬々敬久らと共に、“ピンク四天王”と呼ばれ、多くの映画ファンの支持を得る。俳優としての出演作は、100本をゆうに越えている。

故・寺山修司氏に脚本段階で、「映画になったら事件だね」と言わしめた、インディペンデント映画の極北『追悼のざわめき』。その松井良彦監督の最新作『どこに行くの？』が、3月1日(土)より公開される。

実に、22年ぶりの新作となる今作の公開のタイミングで、松井監督にお話を伺うことが出来た。一貫して、疎外されている人間を描く監督の、新作のテーマは、同性愛。

性的トラウマを抱えた男性が、ニューハーフとして生きる男性を愛するという物語。ここでの佐野和宏氏は、ホモの刑事を演じている。

この新作を含め、監督は、『錆びた缶空』『豚鶏心中』『追悼のざわめき』と、彼を連続で起用している。監督は、彼を「色気がある」と言う。「黒澤(明)さんが、山崎(努)さんをすごく色気がある人だと言ってて。それは、仲代さんにも、三船さんにも言っている。同じように、僕にとっての色気がある俳優は、佐野くんなんだよね」とお話してくれた。

そんな、松井良彦脚本・監督作品『追悼のざわめき』で彼は、マネキンを愛する男性を怪演。マネキン女性"菜穂子"との子供を宿すために彼は、若い女性たちの惨殺事件を続けて行く･･･。その被害者たちは、下腹部を切り裂かれ、その生殖器が持ち去られていた。また、生まれてくる2人の間の子供を夢見て、汚い労働にも励む姿は、残酷という言葉さえも凌ぎ、ただただ圧倒的に、胸を様々な感情で締め付けさせる。

対象がどうであれ、愛することの素晴らしさ、一生懸命であることへの美しさを謳ったこの作品は、彼の存在なしでは、語れない。そして、全裸で"菜穂子"とダンスを踊る、廃墟ビルの屋上のシーンは、目を疑うほど、ひどく美しい。マネキンである女性が、生身の人間のように、あるいはそれ以上に、生きているかのような錯覚にも襲われた。

人間誰しも、性癖があり、コンプレックスがあり、不器用である・・・。

見てはいけないものを見てしまったような、聖なる領域への、この桃源郷のような風景は、観ること、体験した人でなければ、味わうことが出来ない。偏見があるこの世の中、22年経った今、改めて観ても、深く心を打つ、究極の愛の物語。デジタル・リマスター版のDVD化を機に、上田現氏の繊細な音楽が新たに加えられた。

瀬々敬久脚本・監督作品『アナーキー×イン×じゃぱんすけ』で彼は、ミニストップの店員役で出演。下元史朗氏、諏訪太朗氏との、男3人のコンビネーションは、最高に情けなくて、人間くさい。

彼が卓球に勤しむ姿には、思わず笑みがこぼれてしまったし、関係を持った女性が誘拐した子供を、一人で育てていくシーンの連続には、あまりにも一生懸命で、切なささえも覚える。どうしようもない中に滲み出ているやさしさが、いつまでも余韻として残った。

続く、『トーキョー×エロティカ』も、瀬々敬久脚本・監督によるもの。まるで夢のように、あるいは頭の片隅で起こっているかのような現実を、時間軸の中で浮遊しているような、イメージの断続。

個人的に、キャストが、着ぐるみや被り物をして、出演していたりする映像などに目がない♡ので、(例えば、デイヴィッド・リンチ監督の『インランド・エンパイア』や映像ユニット生意気の、アニマル写真などのように･･･)ピンクのウサギちゃんの着ぐるみを着て、彼が登場した時には、堪らない気持ちになってしまった。

ウサギちゃんの頭を取って、露になった彼の姿や表情は、白髪頭に蒼白い顔で、真っ赤に血走った目、紺色のマニキュアで塗られた爪に、右耳にだけ揺れているピアス・・・。このワンシーンだけで、完全に持っていかれてしまったほどやはり、彼の圧倒的な存在感は、稀有。

「ねえ、生まれる前の時間と死んだ後の時間って、どっちが長いと思う？」

『監禁・ワイセツな前戯』で商業監督デビューし、脚本・監督・出演を自ら手掛ける制作スタイルで注目を集め、佐藤寿保氏、サトウトシキ氏、瀬々敬久氏らとともに、"ピンク四天王"と呼ばれている彼。俳優としては、100本を越える作品に出演している、映画に愛され続けている男。

そんな、佐野和宏について。

『追悼のざわめき』から22年ぶりの新作！松井良彦監督『どこに行くの？』が3月1日（土）　ユーロスペースにて、レイトショー！

初日3月1日（土）、松井良彦監督、柏原収史、あんず、佐野和宏、長澤奈央ほかによる舞台挨拶を予定！

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