くるり主宰レーベルナイト、速報!
Friday, August 24th 2007
「NOISE McCARTNEY RECORDS LABEL NIGHT Vol.5」
〜ゆーきゃん with his best friends/LUCKY LIPS Wレコ発〜
くるりファンのみならず、既に幅広い音楽ファンに認知されている彼らの主宰レーベル、「NOISE McCARTNEY RECORDS」。邦楽洋楽問わずに彼らがこよなく愛するバンドをコンスタントにリリースし続けているレーベル。その主催であるイベント、「NOISE McCARTNEY RECORDS LABEL NIGHT Vol.5 〜ゆーきゃん with his best friends/LUCKY LIPS Wレコ発〜」が8月16日(木)渋谷 O-nestにて行われた。
トップ・バッターで出演したのは、Colorama名義で出演のCarwyn Ellis。“え?誰?それ?”と思う人も多いはず。それもしょうがない。彼は、7月からはじまったくるりのツアー「ふれあいコンサート」から帯同するようになったサポート・ギター&キーボーディストなのだ。そんな彼がギター片手に弾き語りをはじめた。これがなかなかどうして。上手い。ギターもさることながら、唄も上手い。ちゃんとシンガーソングライターしているのだ。“コノギター ニジュウ ストリングス デスヨ。 many strings to tune. Difficult(だからチューニングするのがむずかしいんだよ)”と、12弦ギターを20弦と日本語で言い間違え、会場の笑をお茶目な部分も見せたりしながらも、彼が爪弾くギターの音色は繊細で。一貫して優しく紡がれる歌声もとてもメロウで。サビが日本語詩で作られた「OYASUMI BABY」なんて、ベッドルームで鳴り響くまさに子守唄。未だ作品をリリースしていない彼だが、会場内で手売りでCDを売っていて、そのCDの売れ行きは予想をはるかに超えているらしい。うん。納得だ。
「もっと前に来たらええやん」-----。Carwyn Ellisのライブ後のステージ転換中に、フロアで後ろ気味に遠慮して傍観していたオーディエンス達に向けていきなり喋りだしたのはLUCKY LIPSのヴォーカル、koba-yang。もうその時点から彼等の空気感が作り出されていたといっても過言ではない。そして1曲目の「blues」が鳴り響いた瞬間、まさにブルースが渋谷に鳴り響いた。それはkoba-yangの魂の叫びと共に鳴る、猛々しいブルースだ。耳につんざくギター。ぐいんぐいん腰に響くベース。フリーフォームぎりぎりのラインを走るドラムと共に疾走する彼等の演奏は唯我独尊。“圧巻”という言葉がここまで当てはまるバンドを久しぶりに体感した。くるりの岸田繁が惚れ込んで、彼等のアルバムを全面プロデュースしたのもわかる気がする。くるりの音楽性の根っこに秘められたもの-----京都ならではの土着的なブルース、アイリッシュ・トラッド、起伏がなくともじわじわと染み渡る8ビートロック…。それらを彼らも持っている。いや、くるりよりもはるか昔から彼らは持っていたといったほうがいいのかもしれない。だからこそ素晴らしいバンドであるのだと確信してしまった。
しかしそんな確信と共に、実は、物凄く違和感を感じてしまったのも否めない。いや、これは悪い意味ではない。彼等の演奏がヒートアップしていくにつれて、渋谷という、O-nestという空間で演奏している彼等の姿にとてつもない違和感を感じたのだ。京都のライブハウス「磔磔(たくたく)」で頻繁にライブを重ね、そこで育ち、LUCKY LIPSというバンドをビルドアップしてきた彼らにとって、東京は、渋谷はあまりにも喰い合わせが悪かった。そんな感情を抱いて思ったこと。僕らはやっぱりどうしたって東京を中心にモノを考えてしまうということだ。日本全国様々な地域から音楽は産まれ、そこで培われて、育ち、デカクなるためにほとんどのバンドが東京にやってくる。そして東京にやってきた時点で、眼に見えない、“スタイリッシュ”“洗練”という耳障りのよい音、当たり障りの無い環境に知らずとも気づかずとも迎合してしまっているということ。図らずとも、ほとんどのバンドが東京という全国区に当てはまる尺度によって、個々持ち合わせていたはずの土着的なオリジナリティをスポイルされてしまっているんだなぁと改めて強く実感した。LUCKY LIPSはどうあがいても京都のバンドであって、あの歴史ある独特な風情を醸し出している「磔磔」で見るライブの方が断然良いに決まっていると思ってしまったのだ。だから彼らをもっと知るには京都に行くべきだし、東京に安住し手をこまねいている場合じゃないとも思った。くるりが、このタイミングで「京都音楽博覧会」を開催するのも、そういう思いが込められていると勝手に思い込んでしまった。
ラストは、ゆーきゃんwith his best friends。LUCKY LIPSの怒涛のブールース・ロックに打ちのめされた後登場した彼らの演奏は、その反動もあってか、聴き手により深遠に、より繊細に響き渡る演奏。一瞬にしてオーディエンスの心を静かにたおやかに虜にしていった。触れた瞬間に壊れ崩れ落ちそうなウイスパー・ボイス。それが彼のオリジナリティであり、その声に僕らは耳を奪われがちだが、このライブで発見したことがある。何故に、「with his best friends」というようにバックバンドに名を付けて演奏をしているのか?ということだ。それは全楽曲の演奏に言えることで、まったくもって音に無駄が無い。まったくもってこれ以上足しようが無い音楽なのだ。打楽器、弦楽器、鍵盤楽器、管楽器、そして声帯。全ての音に意味があり、全ての音が鳴らずとも、その間にさえも音が潜む演奏力。アルバムを聴いた時点で納得はして感じていたことなのだが、ライブ演奏でもここまで突きつけられるとは予想だにしなかった。
ライブの中盤、「連続して4曲やるので、座ってもいいし、なにしてもいいので聴いて下さい」------というゆーきゃんの言葉に甘えて座って見た。そしてステージに浮かび上がる、ゆーきゃんの佇まいを見ながら。はたまた煌くミラーボールを見ながら。時として、眼をつぶり音だけを噛み締めながら。聴いた。届いた。どんなスタイルで聴こうが彼等の音はぶれない。これだけ説得力のある音楽はそうはない。アグレッシブではないライブであるにもかかわらず、心の中に湧き出る感情の起伏はとてつもなく揺り動かされていた。とくに、その名も「エンディングテーマ」によるライブ最後のクライマックスの絶頂感。あのカタルシスを味わえる瞬間を演出できるバンドはそうはいない。「ゆーきゃん×岸田繁(くるり)対談 」でくるりの岸田繁が語っていたことは本当だった。場によってもっと激しく、エモーションをたぎらせるライブをやることもあるとのことだが、この曲のアウトロ部分の最大限の盛り上がりを感じただけで、“すげえバンドだぞ”と思わずにはいられなかった。これまたやはり、京都で見てみたいと思っってしまった。東京でも彼主催のボロフェスタなるライブがあるが、それ以上のものを彼らは京都という地で表現せしめるのだろうと思うのだ。
全てのアクトが終わって、フロアが明るくなってから思ったことがある。世間では様々なアーティストが様々な形で活動し、このくるりのように自主レーベルを立ち上げているアーティストも多数いる。でもその自主レーベルという立ち位置とはなんぞや?ということ。立ち上げて、維持し、何がしのアーティストを紹介していく意味といものはなんぞや?ということをこのイベントで噛み締めることができた。レーベルなんて作ろうと思えばいくらでも作れる。しかし、彼らが何故「NOISE McCARTNEY RECORDS」を立ち上げたのか?それは、ちゃんとした必然的な裏づけがあるのだ。京都人として、日本人として、自分たちの音楽に確信を持ち、その確信から見た本物の音楽を伝えんとする意志。それが本当でなければいけないし、それが本当であるからこそ、このイベントに出演したアーティスト全てが素晴らしい演奏を繰り広げることが出来たのではなかろうかと。(HMV 保坂壮彦)
SET LIST |
Colorama(Carwyn Ellis) |
1.THE SOUND 2.RESTLESS 3.INEVITABLE 4.NOW IS NEVERMORE |
LUCKY LIPS |
1.blues 2.そして朝がくる 3.明日の声 4.Cry Cry 5.君がいた夜 6.カラー |
ゆーきゃん |
1.プリズム 2.ラプソディ 3.真冬のうさぎ 4.春を待つ 5.月曜日 6.詩月 |
今後のスケジュール |
1)LUCKY LIPS
8/28 (火) 京都磔磔
Lucky Lips ONE BAND LIVE!!!
open 18:00 / start 19:00
adv 1600/door 1800 (with one drink)
Total Info http://luckylips.info
2)ゆーきゃん
ゆーきゃんが主催メンバーとして関わっている「ボロフェスタ」の開催が決定!今年の日程は10月6日(土),7日(日),8日(月・祝)の三日間。クラブメトロでは夜の部も行います。
さらに八月にはプレイベント「八月ボロフェスタ」、東京でのプレイベント「東京ボロフェスタ」も開催されます。
詳しくはこちらで。
Information:Borofesta HP

