HMVインタビュー: James Holden
2006年4月11日 (火)
注目のJames Holdenが新Mix CDを完成各方面から注目度の高まっている<Border Community>主宰、James Holdenが<Regist>からMix CDをリリースします。
1999年、19歳という若さで発表したシングル"Horizons"()がプログレッシヴ・ハウスシーンを中心に数多くのDJによってプレイされ大ヒットを記録。 各方面から一躍注目を集め、Sashaのアルバム『Airdrawndagger』にも収録曲"Bloodlock"の共同プロデューサーとして参加。
2003年に自身のレーベル<Border Community>を設立。"A Break In The Clouds"というヒットを作り出し、New OrderからBritney Spears、Black Strobe( "Nazi Trance Fuck Off! - James Holden remix")、System 7( "Planet 7 - James Holden Remix")まで幅広くリミックスに引っ張りだこと、今最も注目を集める存在のひとりであるJames Holden。
Mix作品としては3枚目となる『At The Control』の発売を記念し、注目のJames Holdenにインタビューしました。
<Border Community>から発表されるNathan Fakeのデビュー作『Drowning In A Sea Of Love』とあわせてチェックしてください。
Interview with James Holden
○今回の『At The Control』の収録曲はどのような基準で選びましたか?また、普段のDJプレイもこのようなスタイルでしょうか?
James Holden(以下JH):選曲の基準は、まず自分が好きなトラックということだね。自分のレコードバックの中や、あと地下にあるレコードコレクションから探して、最新のリリースだけにこだわらず、以前から好きな作品も含めてどうしたらおもしろく、興味のあるMixが仕上がるか模索してできた作品なんだ。このミックスCDは、トラックをどこでミックスするかという点では、自分のDJスタイルだし、音の本質的な部分は普段のプレイと同じだと言えるけど、もっと家でプレイしたようなDJスタイルであって、普段DJをする際のセレクションではないね。ベッドルームや車の中で聞くためのCDだね。実はミックスCDは、あんまり聞かない方なんだ。それは自分が好きなミックスCDって本当に数える位しかなくて、10分程度聞いていると、飽きてしまうものが多いからなんだ。DJというのは、全く異なる2つのトラックのサウンドをミックスするんだけど、大切なのは一番適切な箇所からミックスがされるように、十分考慮しなくてはならないと思うんだ。
○「DJミックスCDが好きではない」というあなたの発言を目にしたことがありますが、それはなぜですか?
JH:それは普段クラブでプレイしていてうまくいったとしても、必ずしもそのプレイが家で聞いていても楽しめる作品だとは限らないと僕は思うからだろうね。もちろん音楽は大好きだけど、そのせいかDJに対してもすごくこだわってしまうんだ。だからクラブに行ってもレギュラーのDJでとてもリスぺクトできるDJもいるけど、DJって容易に見当違いな誤ったセットをする時も多いから、聞いていてすごく不快に思うものも本当に多いんだ。
○あなた自身の音楽についてお聞きします。あなたの音楽は一般的なクラブミュージックに比べより感情的であると思います。その点ご自身ではどう思われますか?
JH:それは僕の音楽のバックグラウンドに反映されているかもしれないね。それと音楽に対する捉え方もあるかもしれない。作品が出来て、聞き返してみて満足いく作品でなければもちろんリリースしないし。音楽のジャンルには違うソウル/感情が込められているから、例えばエモーショナルなトランスをクリエイトしようとか、ジャンルを指定して音楽制作に取り組むことはないんだ。音楽制作にとって重要なことは、その中にクリエイティビティがあるかどうかということだね。
○『At The Control』にはLucky PierreとMalcolm Middletonの楽曲が収録されていますが、Arab Strapはお好きですか?また、彼らのサウンドが持つ美しさや感傷的な部分が、あなたのサウンドと共通するという見方は出来ますか?
JH:Arab Strapのセカンドシングルを多分最初に聞いたのだけど、それ以来ずっと気に入っていて、その後ソロに移った後の活動にもとても注目していたんだ。 Malcolm Middletonのライブはここ10年のあいだ、ずっと最高のショーだとロンドンではみんな言っているし、彼は本当に素晴らしいスターなんだ。パフォーマンスも最高だし、歌もパーフェクトで歌詞もとっても胸に響くんだ。Arab Strapの音に対してのアプローチの仕方や、方向性は異なっているけど、音の中にあるソウルは共通といえるだろうね。
(*画像はMalocolm Middltonによる新作『Into The Woods』)
○あなたのサウンドにはテクノやハウス、その他多くのサウンドからの影響が見え、そうした理由からかあなたのサウンドは特定のジャンルを飛び超えて幅広い層から支持されていると思います。『At The Control』にも所謂「ダンスミュージック」ではない楽曲も多く収録されていますが、あなたはどのように音楽を聴いてきましたか?
JH:全ての音楽から影響を受けたと言ってもいいかもね。小さい頃は常に両親が好きなクラシックを聞いて育ったし、僕はロックやエキスペリメンタル、ジャングルやレイヴ、さらにテクノ等ダンスミュージックを好んで聞いていたんだ。あとは僕の親しい友人がLo-Fiとかパンク、ハードコアを聞いていたからそこからまた影響を受けたのも事実だね。音楽制作を始めた頃は、Mogwaiにクラブでも受け入れられるサウンドを加えたような音を目指していたんだ。<Border Commmunity>が目標としていることは、1つのジャンルにこだわらず『音楽』と括ることで、素晴らしい作品をリリースし続ければ全ての人達にアピールできると信じているんだ。
○特に影響を受けたアルバムを3枚教えてください。
JH: 最も影響を受けたアルバムは、
まず、Plastikmanの『Consumed』(左写真)か『Sheet One』だね。『Consumed』はトータル1時間程のアルバムだけど、ドラムマシーンや303、それにストリングスといった3つのサウンドだけから構成されていて、特徴のあるメロディーやドラムが含まれているわけではないのに、どんどん引き込まれてしまうんだ。ドラッグをとっていた訳ではないのに、すごく閉所恐怖症に陥ったような、激しい衝撃を受けたんだ。このアルバムによって、型にはまらず、これだけシンプルな構成でも素晴らしいサウンドをクリエイトできるということを自覚したんだ。
次は、Mogwaiの『Young Team』(左写真)だね。最新アルバム(『Mr. Beast』)もよかったけど、やっぱりこの『Young Team』が一番よかったね。
最後は16歳の頃友人がくれた『Trance Europe Express』(左写真)というコンピレーションかな。このコンピにはOrbitalやCJ Bolland、Cosmic BabyやSpooky等のトラックが収録されていて、自分が若かったというのもあるけど、ダンスミュージックにはこれだけ多様なリズム、サウンドがあることを知ったという点で、とても興味深いアルバムだね。
(*残念ながらこちらは現在取り扱いはありません)
○<Border Community>からまもなく発売になるNathan Fakeのアルバム『Drowning In A Sea Of Love』はどういった作品ですか?レーベルオーナーとして推薦のコメントをお願いします。
JH:どういった作品かを説明するのは難しい質問だね。Nathanはロックのアーティストでそこにエレクトロニックサウンドを導入しているんだ。あと、エモーショナルでトリッピーでさらにサイケデリックな要素も含んでいるね。『Drowning In A Sea Of Love』は夏に聞くのに適したアルバムだと思うよ。夏の夜外に出て、草原とかを歩きながら聞いてもらえると、とてもいいんじゃないかな。Nathan本人はとてもおもしろくて人なつっこい、ややシャイなパーソナリティを持っているアーティストだね。あと彼は異様に鳥に詳しいんだ。鳥の名前はもちろん、どの鳥が何を食べるのかさえ知ってるんだよ。あと、たまに当たり前のことに関して無知な時もあって、彼がどんな人物かって表現するならば、アーティストとしては天才と言ってもいいけど、それに矛盾してすごくばかでもあるんだ。
<Border Community>から発売となるNathan Fakeのデビューアルバム『Drowning In A Sea Of Love』。
Nathan Fakeのインタビューはこちら
○最後に、日本のリスナーへなにかメッセージをお願いします。
JH:Nathan Fakeのアルバムが3月20日(国内盤3月17日)にリリースされます。その後は「LFP」という新人アーティストのシングルEPがリリースされる。彼らのトラックはNathan Fakeのアルバムにも収録されているからチェックしてほしい。それから僕のMix CDがリリースされて、さらにその次には僕のシングルがリリースされる。あと、4月に来日することがきまったんだ。4月21日にはWomb、22日は大阪Triangleでプレイする予定だよ。すごく楽しみにしているんだ。特にWombはすごくいい噂を聞いているからね。
○どうもありがとうございました。今後とも期待しております。
協力 : Cisco / Soundscape
James Holden/At The Control
<Regist>からのリリース。今作ではMassive AttackからDeath In Vegas、AfxにFenneszとお気に入り楽曲を中心にセレクト。もちろんNathan Fake、Petterという<Border Community>勢の楽曲も収録。テクノからミニマル、エレクトロニカからプログレッシヴサウンドまで幅広い内容に。
Nathan Fake デビューアルバム完成
Nathan Fake/Drowning In A Sea Of Love
Nathan Fakeのデビュー作が<Border Community>から。多くのMix CDなどにも収録されてきた"Sky Was Pink"などを含むこの初アルバム。いわゆるクラブミュージックというよりは断然静謐であり、きらきらとしたサウンドがとても美しく、たとえばそれはMy Bloody ValentineやBords Of Canadaの作品にあるような世界観を形成している。とても繊細な作品。
*国内盤のみステッカー封入
⇒発売記念インタビュー
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