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許光俊 「無類の音響に翻弄される被征服感〜ムラヴィンスキー1972年ライヴ」

2006年4月23日 (日)

連載 許光俊の言いたい放題 第24回

「無類の音響に翻弄される被征服感〜ムラヴィンスキー1972年ライヴ」


 ムラヴィンスキーの1972年ライヴについて、そろそろ書かなくちゃなと思っていたら、輸入元から「すみません、ちょっと待ってください」と言われた。品薄なので、注文がたくさん来ると困ってしまうのだそうだ。ご同慶の至りと言うしかない。

 ムラヴィンスキーが売れるのも無理はない。この前もドイツの某都市で某人気指揮者と某人気オーケストラのブルックナーを聴いたが、チェリビダッケもヴァントも知っている耳にとっては、水準が違いすぎて、腹も立たなかった。単にでかい音、単に静かな音が出てくるだけ。もとから大した才能がないのだから、高レベルを期待しようという気なんか起きない。でも、こういう人ばかりなんだ、今のクラシックの世界って。三流指揮者の芋洗い状態。あ、インバルとベルティーニは別ですよ。彼らがドイツのオーケストラを指揮すると、「そう、コレ! これがオーケストラというものだよ!」と納得できる演奏になるときがある。でも、なかなかCDを作っちゃくれません。いつもいつも同じレパートリーじゃんと思いつつも、ムラヴィンスキーのCDを聴いているほうがいい、となるのも道理ではないか。

 で、問題の1972年ライヴについて。
 音質が向上している点についてはくどくど言わなくてもいいだろう。結果として、今まで以上に、ムラヴィンスキー指揮するレニングラード・フィルがまきちらす無類の音響に翻弄される被征服感を楽しめる。
 今度のアルバムで一番気に入ったのは、ワーグナー「タンホイザー」から抜いてきたヴェーヌスベルクの音楽。これはすごいぞ。青年中年大喜びの官能的ネットリ演奏ではないが、思いの外弦楽器が柔らかい響きを出している。レニングラード・フィルはこんなふわふわした音も出せたのだ。まるでドビュッシーみたいな絶妙の弱音は陶酔的。かと思いきや、切れ味抜群の、渦巻く音響の乱舞も登場する。硬軟両極端をきわめた音楽に恍惚とする13分だ。これは危ない。こんなものを知ったら、聴くものがなくなっちゃう。
 「ジークフリートの葬送行進曲」ではまさに心臓をえぐるような低弦が聴けるし、ソヴィエトならではのワイルドなトランペットも脳天をつんざく。「ラインへの旅」で次々に音が沸騰していくような、あるいはグイグイ力ずくで迫ってくるような様子も壮観だ。とはいえ感情的には全然ウェットじゃないのはいつも通りだ。
 ベートーヴェンの交響曲第4番は、アルトゥスから出ている日本ライヴだってもちろん悪くないけれど、私はこちらのほうが好きである。もっとシャープで、張りつめている。
 それより驚きは第5番のフィナーレ。音がぐんとよくなって、印象が変わった。音楽が火の玉になって飛んでくる。ものすごい力強さで疾駆する。他の誰とも違う演奏だ。ソナタ形式の論理性ではなくて、音の塊自体で圧倒するような演奏。この温度の高さは異常。
 チャイコフスキーの「フランチェスカ・ダ・リミニ」はムラヴィンスキーがすごすぎて、他の演奏家で聴く気がしない曲だ。さすがのスヴェトラーノフ先生も、この曲では足下にも及ばない。金管楽器も打楽器も、もはやサディスティックとまで言いたくなる衝撃力。それとともに得体の知れぬ不気味さが怖い。
 と、聴いていると、足がコンサートホールに向かない。あまりよくないなとは思いながらも。
 でも、このCDのあとで、腑抜けた現代の演奏を聴いていられるとしたら、それはあまりにも鈍感というものではなかろうか。鈍感のほうが幸福だとは思うけどさ。

(きょみつとし 音楽評論家、慶応大学助教授) 


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