【全曲解説】TONERICO『Valkyrie Notes』

2024年03月27日 (水) 21:00

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全曲解説テキスト by Jill(Vn) 星野 沙織(Vn)


1. jinXnij

[Official MV]TONERICO(Jill & Saori Hoshino)『jinXnij』

自身もヴァイオリニストである岩嵜壮志氏作曲ということで、ヴァイオリンという楽器の魅力を様々な面から余すところなく効果的に感じられる楽曲になっている。
例えば重音を駆使しているサビのフレーズや、音域に関しても低音で囁くようにうたう部分から狂ったようにヒステリックな高音フレーズまで効果的に使っていたり、ソロ部分ではギターのアーミング奏法のような印象を与える高音部分での重音のスライドなど(難易度が高い)。
またサウンドプロデュースを手掛けてくれたTom-H@ck氏の特色である、耽美で背徳感のある重厚なサウンドと絡み合う2つのヴァイオリンの旋律が鮮烈な印象を与える、本作『Valkyrie Notes』のリードシングルに位置付けられる一曲。
(Jill)


2. The Gate of Valhalla

星野沙織さんのご学友でもある、作編曲家・キーボーディストのMao氏作曲の楽曲。
ご自身による「インストの楽曲でありながらも実際に口ずさめる親しみやすいメロディにしたかった」の言葉通り、
王道感のあるロックチューンながら一聴しただけですぐに馴染むような、Mao氏らしさの感じられるストレートかつ印象的なメロディで構成されている。
Gt.仁耶、Ba.森田悠介による躍動感あふれるプレイもこの曲に更に奥深さ・疾走感を与えている。
(Jill)


3. Absolute Terror

言わずと知れた唯一無二のギタリスト、岡聡志氏作曲。
プログレッシブ要素の非常に強い、今作の中でも異色の楽曲となっている。
予想を裏切るようでいて緻密に計算された複雑な和音による音の重なりや変拍子、
ダイナミックな展開で聴く(弾く)たびに違う表情で魅せてくれる。

ちなみにこの曲の中盤にあるソロは私Jillが作ったのだが、楽曲の特性を鑑み
ソロ部分の後にあるリードフレーズの上下をひっくり返したり音を後ろから読むなどの対位法的手法を採った。
個人的に通常とは異なるシステマチックな方法で作ったもので大変気に入っている。
(Jill)


4. Claws in The Mist

沙織さんがsoLiにて共に活動しているギタリストISAO氏による楽曲。
同じフレーズを2つのヴァイオリンが交互に繰り返し演奏していく部分が非常に象徴的で、
Jill・沙織2人の音色や演奏表現の特徴が最も顕著に分かりやすいかたちで表れている楽曲といえる。
2人の演奏の違いや、逆に意図的にアンサンブルを寄せている部分などを探りながら聴いても楽しめるだろう。
上記の繰り返しのミニマルな雰囲気から、サビで壮大な世界観へと展開していくさまも印象的に表現されている。
(Jill)


5. 十六夜-IZAYOI-

この曲はストーリーがついているので、その情景を思い浮かべながら聴いていただけると嬉しく思います。
名家の姫君が、恋仲である武士の訃報を従者から教えられます。その事実をどうしても信じられない姫君は、いてもたってもいられずに馬を駆り戦場へひた走ります。頭上には十六夜の月が煌々と光り、遥か向こうには戦火の火の粉と薄墨のような煙がゆらめいています。蹄の音と鼓動がやけに大きく聞こえ、草の焼ける匂いでいやに喉が渇くのでした。姫君は戦いながら恋人を探します。必ず生きていると信じているのです。
(星野沙織)


6. Chateau des trompe-l'oeil

私Jillの所属するUnlucky Morpheusでも頻繁に共演している、摩天楼オペラのギタリスト優介氏による楽曲。
ギターのチューニングやフレーズからも感じられるように、今作の中でも最もモダンなメタル的要素の強い楽曲の一つ。
今作中この曲のみ、沙織さんのパートではドロップチューニングが必要となる。(ヴァイオリンの最低音G→F#)
例えば随所に散りばめられているスライドを多用したフレーズなど、凄腕リードギタリストの優介氏作曲ということでリードギター的なフレーズ感が感じられる。

中盤のヴァイオリンソロ前半が私Jillで自作のものだが、ヴィヴァルディの「四季」(冬)よりほんの僅かに引用している。
(Jill)


7. Afterburn

火の粉がちらちらと舞っているようなAメロのフレーズや、4分打ちの勇ましさとは打って変わってサビは哀惜に満ちたメロディと、色々な表情をはらんでいる楽曲です。争いの後には何が残るのか、という思いを込めてタイトルを付けさせていただきました。
(星野沙織)


8. The Winged Archer

だいぶ前に、ライブにて即興で演奏した曲があったのですがそのスケッチを2台用に清書したものがこの楽曲です。よりダンサブルにアレンジしていただいたので、ライブでは是非飛んだりタオル回したりなど盛り上がっていただけたら嬉しいです。
(星野沙織)


9. Yggdrasill

神官2人の詠唱によって、世界樹(ユグドラシル)が現世に顕現される、というようなイメージで作りました。詠唱は互いに紡がれ、時に否定され、反芻され、拡大や縮小を繰り返しながら膨張し、ラストのサビで完成します。世界樹は世界そのものであり、世界樹の前では命はすべて平等です。ラストにはコーラスが入っているので、慣れてきたら口ずさんでいただけたら嬉しいです。
(星野沙織)


10. Waltzing Hinge

こちらもストーリー仕立てとなっております。
何気なく通りかかった空き地に、いつの間に建てられたのかボロボロのサーカス小屋がありました。くすみ痛んだ入口の布をめくると、舞台には2人の人形「蝶番の姉妹」がいます。姉妹はヴァイオリンを弾き始め、周りの団員もアコーディオンやトランペットで囃し立てます。時間も忘れて聴き入っているうちに、夢の世界に引きずりこまれたことに気がついた時にはもう遅く、そこから出る術はありません。あなたもサーカス一味として、終わりのないパレードを繰り返し続けるのです。
(星野沙織)


TONERICO『Valkyrie Notes』

GENRE:SYMPHONIC METAL, GOTHIC METAL
清く激しく麗しく、TONERICOが織りなす耽美な音楽世界
Unlucky MorpheusのJill、soLiの星野沙織のツイン・ヴァイオリン・ユニット、TONERICOによる1stアルバム。ヴァイオリニストを擁するロック・バンドも多く存在し、ロックとヴァイオリンの相性の良さは知ってるつもりだったが。高いスキルと特異なキャリア、独創的なセンスを持つふたりが織りなすTONERICOの音楽世界は唯一無二。優雅で美しい音楽が非日常へ誘ってくれるクラシックの要素と、激しくパワフルな音楽が気持ちを高揚させてくれるロックの要素の両方を併せ持つ今作収録の楽曲たち。リード曲「jinXnij」のサウンド・プロデュースを手掛けたTom-H@ckをはじめとした、豪華アーティスト陣が作曲、演奏した色鮮やかな楽曲たちもふたりの魅力を最大限に引き出す、贅沢すぎる1枚だ。
フジジュン【ライター推薦】


Valkyrie Notes

CD

Valkyrie Notes

TONERICO

価格(税込) : ¥3,300

発売日: 2024年03月20日


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