【インタビュー】ABBATH

2019年06月28日 (金) 22:00

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Immortalからの電撃脱退も記憶に新しいアバス。自身の名を冠したバンドがセカンド・アルバム『アウトストライダー』をリリースするということで、いろいろと話を聞いてみた。強烈な個性を持つアバスは、インタビュアー泣かせ。質問をはぐらかし、訳のわからないことをまくしたてることも珍しくない。しかし、Skype越しに現れたアバスはノーメイクであり、とても落ち着いた様子。今回は非常に真面目に質問に答えてくれた。やはりメイクをすると人格が変わるのだろうか。

川嶋未来(以下、川嶋):アバス名義としては2枚目となる『アウトストライダー』がリリースになります。前作と比べてどのような仕上がりになっているでしょう。

アバス:これが2枚目のアルバムで、方向性としてはだいぶ違ったものになっていると思うよ。特にプロダクションがね。今回はアンドレ・キルケソラと一緒に仕事をするという幸運に恵まれた。彼とは長い友達で、Immortal時代にもサウンドエンジニアをやってもらったことがあるんだ。クリスティアンサンドにあるDub Studioというところでレコーディングしたんだよ。いつものように、今回もプリプロダクションをやったし、サイモン・ダンカスターに歌詞を書いてもらった。アバスでは彼に歌詞を書いてもらっているのだけど、彼と仕事をするのはとても素晴らしいことだ。(前作と違って)今回はImmortalのアルバムを作る予定もなかったからね(笑)。それにリード・ギタリストのラウデは、ファースト・アルバムのレコーディング終盤に加入したので、今回は彼も製作の早い段階から関わることができた。彼は素晴らしいよ。プリプロダクションをやって、それをアンドレに送ってという感じだったので、前作よりもより十分に準備ができたね。アンドレに、「ギターサウンドが気に入ってるメタルのアルバムは何?」って聞かれたから、「Metallicaの『Ride the Lightning』のギターサウンドはとても好きだ」と答えた。そしたら彼は『Ride the Lightning』の周波数の特徴を調べてくれてね。だから、今回のアルバムは『Ride the Lightning』と同じ周波数になっているはずさ。面白いプロセスだったよ。初期段階に、サイモンとコンセプトも考えてね。最初にサイモンが書いたのは、「ブリッジ・オブ・スパズム」の歌詞だった。いきなりに完璧に書き上げてきて。俺も色々とリフのアイデアなどがバラバラとあって、それを最後に一気に形にしていった。激烈な作業だったよ。とても楽しかったけど。

川嶋未来(以下、川嶋):今回は80年代初頭色が強いように感じたのですが、意図的なものですか。

アバス:ある程度ね。それが俺が一番好きな音楽だから。メタルのルーツをもっと感じられるものになっていると思う。今回は、Immortalのアルバムを作ろうという意図はなかったからね。彼らの最新作のタイトル、『Northern Chaos Gods』を決めたのは、俺なんだよ。俺のファーストに入っていた「Ashes of the Damned」が、元々は「Northern Chaos Gods」だったんだよ。響きが似てるだろ?俺はメタルが大好きで、今回はベースの音もデカくしたかったし、ラウデがリード・ギターを入れたら、まさに「ワオ!」っていう仕上がりになって。アルバムの仕上がりはとても気に入ってるよ。チームとして、とてもうまくやれたと思う。俺が設計図を考えて、そこから作業をしていったのだけど、仕上がりは俺の予想を超えたものになったよ。出来にはとても誇りを持っている。ミアがバンドに加わったのも良かった。彼女のベースは素晴らしいし、ウクリはフィンランドのドラマーで、まだ25歳なのに素晴らしいドラミングをしてくれた。俺の息子と同じ年なんだよ(笑)。とても楽しいレコーディングだった。大きなドラマも混乱もなくて(笑)。集中してできたよ。リフのアイデアはたくさんあってさ、もうすでにあと2枚分くらいある。「サイズワインダー」のオープニングとメインのリフは、Immortal用に書いてあったものだけど。この曲のリフは、『All Shall Fall』用に書かれたものだったんだ。とても良い仕上がりになったと思う。このアルバムは、リフもギターソロも歌詞もドラムも、みんな素晴らしいよ。

川嶋未来(以下、川嶋):女性メンバーの起用は初めてですよね。

アバス:ミアにはその資格があるよ。彼女のアバスでのステージ・デビューは、インドだったんだ(笑)。バンガロール・オープン・エアー。Wackenの関係者もいたから、おそらくWackenもスポンサーになってるんだと思うよ。オーディエンスも素晴らしかったし、音も良かった。サインニング・セッションも素晴らしかった。ステージもプロダクションもね。バンガロールは素晴らしい場所だったよ。往復52時間もかかったけど、パーフェクトだった。ミアはミラノ出身で、実は元妻の友人なんだ。キング(オブ・ヘル)がバンドを辞めたあとに、最初に電話をしてきたのが彼女だった。彼女は俺の作る音楽の大ファンで、とても一生懸命だしルックスも良い。彼女は最高だよ。獣みたいにプレイするし。


川嶋未来(以下、川嶋):クレジットを見ると、バリトン・ギターやツィターなど、ブラック・メタルでは珍しいも使われているようですが。

アバス:ラウデはギター・フリークで、あらゆる弦楽器を集めているんだよ。膨大な量のコレクションを所有してる。世界中のね。「カーム・イン・アイア(オブ・ハリケーン)」のイントロでは、ジミー・ペイジが使ってるみたいなたくさん弦が付いている楽器を使った。彼はとてもギターもうまいし、彼が加入してくれたことはとても幸運なことさ。

川嶋未来(以下、川嶋):タイトルの『アウトストライダー』とは、どのような意味なのでしょう。

アバス:これもサイモンが考えたのだけど、孤独で天国からも地獄からも追放される奴みたいな感じの意味さ。

川嶋未来(以下、川嶋):Bathoryのカバーも収録されています。

アバス:クオーソンは俺のヒーローの一人だし、クオーソンがなければImmortalもアバスもなかった。俺はMotorheadも大好きだし。スピードフリークだから(笑)。とにかく速い音楽が好きだったんだ。『Blood Fire Death』も当時大好だったのだけど、「A Fine Day to Die」みたいな曲ではなくて、速いのがやりたかった。それにこの曲は、歌詞もまさに俺にぴったりだろ?“Mirror, mirror on the wall, who’s the fastest of ‘em all”(=鏡よ鏡、一番速いのは誰だい)って。それで俺が鏡に向かっていうのさ、「俺がいちばん速い!」って(笑)。ラウデに、もしこれに何か良いリード・ギターをつけ加えられるなら、これをカバーしようって提案してね。結果としてBathoryへの素晴らしいトリビュートになったと思うよ。

川嶋未来(以下、川嶋):Bathoryはどの時期のアルバムがお好きですか。

アバス:そうだな、やっぱり『Blood Fire Death』か『Under the Sign of the Black Mark』かな。だけど、例えば「アウトストライダー」あたりでは、『Hammerheart』からの影響も聞こえると思うよ。俺にとってクオーソンは神だし、彼こそがアウトストライダーだと思うね。君はどのあたりが好き?

川嶋未来(以下、川嶋):もちろん3rdもですが、ファースト、セカンドあたりも大好きです。

アバス:俺も初期も好きだよ。最初にBathoryを聞いたのは、友達が貸してくれた『Scandinavian Metal Attack』だったし。「何だこれ、Motorheadじゃないか!」って思った。ヴォーカルもとても暗くてミステリアスで、凄く魅かれたし、今でも魅かれ続けてるよ。

川嶋未来(以下、川嶋):そもそもの音楽との出会いはどのようなものだったのですか。

アバス:最初に音楽を聴いたのは5歳くらいだったかな。両親は音楽を聴くタイプではなかったのだけど、カセットプレイヤーは家にあってね。子守をしてくれていた女性が4本組のコンピレーション・カセットを持っていて、エルヴィスやジェリー・リー・ルイスなどが入っていた。それで初めて聴いた曲の中の1つ、これは今聴いても鳥肌が立つのだけど、”I found my thrill on Blueberry Hill”(ファッツ・ドミノの「Blueberry Hill」を歌い出す)。これが最初に聞いた曲で、今でもこれを聴くと40年前に戻ったみたいに感じるよ(笑)。

川嶋未来(以下、川嶋):では、ヘヴィメタルにはどのようにハマったのでしょう。

アバス:もともとベルゲンから数時間のところに住んでいて、8歳か9歳の頃、ベルゲンに引っ越したんだ。厳密にはベルゲンの郊外なのだけど。そこで新しい友達、クラスメートに出会ってね。その前からKISSは知っていたけど。82年くらいだったかな、『The Number of the Beast』、『Creatures of the Night』,『Scream for Vengeance』あたりから聴き始めたんだ。もちろん『Bark at the Moon』とかも。

川嶋未来(以下、川嶋):そこからスラッシュへと入っていったのですか。

アバス:スラッシュは84年か85年あたり。85年だったかな。友達が色々なバンドを録音したカセットをくれてね。当時俺の家にはレコードプレイヤーがなかったんだ。その友達がイギリスに行ってレコードを買ってきてね。それで初めて聞いたスラッシュの曲は、Slayerの「Praise of Death」だった。『Hell Awaits』に入ってるやつ。だから、俺はMetallicaよりも先にSlayerを聴いたんだ(笑)。同じ頃、Manowarとかも好きになって。『Scandinavian Metal Attack』でBathoryを聴いた少し後に、同じ友達が『Speed Kills』を手にいれて。

川嶋未来(以下、川嶋):あれは凄いオムニバスでしたね。

アバス:あれは凄かった。

川嶋未来(以下、川嶋):その後はデス・メタルですか。

アバス:デス・メタルと言えばPossessedだよ!「Pentagram」は最高だった。でもアルバムとして最初に聴いたのは、『Beyond the Gates』だった。今でも大好きなアルバムさ。これはデモナスと飲みながらよく聴いたものさ。(思いっきり歌い出す)”Mutants from the battle, Survivors of the blast, Lightning fills the sky, Today will be the last”(「No Will to Live」。『Beyond the Gates』収録)。ジェフ・ベセーラは大好きなヴォーカリストの一人さ。ジェフ・ベセーラとかMartin van Drunenとか。Pestilenceも大好きだった。

川嶋未来(以下、川嶋):「Pentagram」は『Speed Kills』に入ってましたよね。

アバス:そう。あとBulldozerとかが入ってたよね。

川嶋未来(以下、川嶋):そう言えばPossessedのニュー・アルバムは聴きましたか。

アバス:1曲だけ聴いたけど、最高だったよ!

川嶋未来(以下、川嶋):復活作には期待しないようにしているのですが、あれはとても良い作品ですよね。

アバス:あれはいいね。以前Wackenでジェフ・ベセーラに会ってさ。感激のあまりひれ伏しちゃって(笑)。そしたらジェフは「立ち上がってくれ、我が友よ」なんていう調子で、とてもクール・ガイだった。あの時はSadistic Intentがバックを務めていて。最高だったよ。

川嶋未来(以下、川嶋):ではブラック・メタルとの出会いはどのようなものだったのでしょう。

アバス:俺にとってもブラック・メタルは、やっぱりVenomのアルバム・タイトルだったし、今でもそうさ(笑)。(また歌い出す)”Lay down your souls to the Gods Rock’n Roll! Wow, wow, Black Metal!”。早い時期にEuronymousとコンタクトしてね。ブラック・メタル・サークルとかさ、とてもエキサイティングだったよ。アンチ・トレンドみたいな感じも最高だったし。とにかくエキサイティングだった。殺人みたいなことに発展するまではね。

川嶋未来(以下、川嶋):やはり行き過ぎてしまったと感じましたか。

アバス:明らかに行き過ぎだよ。ヴァーグとユーロニモスは友人同士だと思ってたんだけどね。あんなことになるなんて、予想もしなかった。とても劇的だったし、クールなことじゃなかった。今考えても全くクールなじゃいよ。俺にとっては音楽がすべてで、ああいう過激な行動ではなかった。あまりにも行き過ぎさ。

川嶋未来(以下、川嶋):ユーロニモスの事件を知ったときのことを覚えていますか。

アバス:覚えているよ。ちょうどうちで、母親とデモナスもいて、テレビを見ていたら、ニュースで事件のことをやっていたんだ。ものすごくショックだった。ユーロニモスとはわずか1週間くらい前に電話で話したばかりだったし。ショックだったね。スウェーデンの奴に殺されたなんていう噂もあったけど、俺は誰がやったのか、まったくわからなかった。とにかくショックで、今でもやっぱりショックだよ。

川嶋未来(以下、川嶋):みんな犯人が誰なのか、見当もつかなかったのでしょうか。

アバス:少なくとも俺はわからなかったね。

川嶋未来(以下、川嶋):お気に入りのメタルのアルバム、トップ3を教えてください。

アバス:トップ3か。メタルで。やっぱり『Overkill』。それからKissの『Creature of the Night』。あとはおそらく『Blood Fire Death』かな。

川嶋未来(以下、川嶋):ところで昨年のImmortalのニュー・アルバムは聞きましたか。

アバス:何曲か聞いたよ。悪くなかった。俺だったら違う仕上がりにしたと思うけど、悪くはなかったよ。

川嶋未来(以下、川嶋):では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

アバス:また日本に行くのが待ちきれないよ。前回日本に行った時も、最高だった。ラウドパークも素晴らしいフェスティヴァルだったし。楽しかった。日本でビッグになりたくないやつなんていないよ。ビッグ・イン・ジャパン!キッスは77年に武道館でショウをやってるよね。食べ物も最高だった(笑)。とにかく早くまた行きたい。コンニチワ!「コンニチワ」は「Thank you」だよね?

川嶋未来(以下、川嶋):いえ、「Hello」です。

アバス:あ、そうか、コンニチワ!

川嶋未来(以下、川嶋):「Thank you」は「ありがとう」です。

アバス:そうだ、アリガトウ。

川嶋未来(以下、川嶋):具体的な来日の話はあるのでしょうか。

アバス:この夏はStonehengeフェスティヴァルに出て、10月からObituaryと一緒にアメリカを回る。それから来年1月、2月はヨーロッパ・ツアー。おそらく1349と一緒にね。日本、オーストラリア、ニュージランドのツアーの交渉もしているはずだよ。まだ決まっていないと思うけど。待ちきれないね。

文・取材 川嶋未来




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