【追悼】 野坂昭如

2015年12月14日 (月)


野坂昭如さんが亡くなった。。「この世はもうおわってしまった」のである。1980年生まれの私は、氏がブラウン管越しに異様なオーラと熱量で「世直し」していた時代も、コミカルなステップを踏みつつ、CMで絶唱していた時代も知らない。もちろん、参議院議員時代も衆院選に出馬後、トラブルに見舞われ、落選した時代も。ジブリアニメの『火垂るの墓』で戦争の酷さ、虚しさを泣きながら観て、ショックを覚えた世代である。その後、現在はと言えば、氏の「鬱と躁」のMCから引用させて頂けば、すっかり「非バージン」となり、世間的には大人の年齢なわけだが、明らかにシュールなこの2015年に氏を失ったのであれば、遺して下さった痛快な歌を、文章を、反芻しながら、間違っているものには「NO!」と声を上げ続けなければいけない。「超極致的」、社内の諸先輩方から追悼文を頂いた(今後も更新予定)。2011年の作詞・作曲家・桜井順さんのインタビューも再掲させて頂きつつ、氏の追悼とさせて頂きたい。「野坂歌大全I〜桜井順を唄う」を聴きながら。

長澤レミ(ローソンHMVエンタテイメント)


私の魂を揺さぶりつづけた野坂昭如

野坂さん、ホントにありがとうございました 私と野坂昭如氏の作品との初めての邂逅は「おもちゃのチャチャチャ」でした。

私が小さい頃、彼が作詞したこの曲の『なまりの兵隊トテチテタ』というフレーズが気に入り、よく口にしていたと以前母から訊いたことがあります。 大人になってから、ときに奇天烈な文化人として、ときにサブカル方面で神格化される彼と「おもちゃのチャチャチャ」の屈託のない歌詞とのギャップに違和感を覚えました。 違和感はその後も続きましたが、子供おもちゃに「なまり」はつかわないこと、「トテチテタ」が進軍ラッパの吹き方だと知った時、これまでの違和感が私の腹の中にオチちた気がしました。

私の魂を揺さぶりつづけた野坂昭如。
あなたの作品とロックな精神は間違いなく私の身体の一部に刻み込まれています。
ありがとうございました。どうぞ安らかにおやすみください。


一瀬カヲル (ローソンHMVエンタテイメント)






『酎友無双』のさらっとした寂しさは大好きでした

あのですね 野坂さん、直接お訊きしたいこと色々ありましたが 私にとって初めての野坂さん体験は、某ウィスキーのCMで「そッ、そッ、ソックラテスかプラトンか〜」と歌い踊るオジサンでした。酒で早死にした親父が歌っていた記憶があり、そのせいか野坂さんと私の親父が少しだけ被る気もして、親しみを覚えていました。

それでも、作家としての活動を追い始めたのは随分あとになってから。アニメで観るよりも辛かった『火垂るの墓』原作の淡々とした残酷さ。『エロ事師』たちのひょうひょうとしながら闇を感じる文章。また滝田ゆうさんによる漫画化『怨歌劇場』も素晴らしく、中でも『酎友無双』のさらっとした寂しさは大好きでした。そして歌手としても『マリリン・モンロー・ノー・リターン』を始め、『通せば天国』ほかのキワドい歌など、数々の名曲・名唱で楽しませて頂きました。

野坂さん、ありがとうございました。こちらに残して頂いたものは私たちが大切に引き継いでいきます。天国ではお酒を楽しく召し上がってください。大島渚さんとは、どうか適度にやりあっていただいて。


久保アキラ (ローソンHMVエンタテイメント)



今日家に帰ったら『不浄理の唄』をひっぱり出してきて聴き、
追悼したいと思います

それも叶わぬ夢となってしまいましたが、でも実は 子供のころからジブリ観てましたという30代以下の方には野坂氏といえば『火垂るの墓』の印象が強いでしょうが、現在46歳の私には、小学生で観た(気がする)ソ・ソ・ソクラテスかプラトンか、の70年代TVCM、80年代の参院選出馬、『朝まで生テレビ』出演や、そこでの共演者・大島渚監督を祝う会での乱闘騒ぎ、遡って知った小説『エロ事師たち』や「マリリン・モンロー・ノーリターン」の唄、トリックスター的イメージがあります。そのほか「おもちゃのチャチャチャ」の作詞に、話題になった62年の本『プレイボーイ入門』や各種エッセイ、雑誌『面白半分』編集長時代の 「四畳半襖の下張」裁判などなど。

放送作家・直木賞作家・歌手・作詞家・タレント・政治家とメディアを縦横にわたり歩く多芸さ、サービス精神旺盛(根はマジメ)な活動はここには書ききれないですね。今日家に帰ったら73年「ワイセツリサイタル」の模様を収めたライヴ盤『不浄理の唄』をひっぱり出してきて聴き、追悼したいと思います。野坂さんのご冥福をお祈りいたします。


牧本マナブ (ローソンHMVエンタテイメント)



写真提供:三上e正

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