【ライブレポ】安藤裕子 6/16 バンドツアー LIVE 2015「あなたが寝てる間に」追加公演

Wednesday, July 1st 2015

前半はライブハウスならではのセット！

本人も楽しみにしていたと語るライブハウス公演。演奏もライブハウス仕様となっており、のっけから体にずっしりと響いてくるような音圧が印象的だ。
ライブ前半はアルバム『あなたが寝てる間に』から「森のくまさん」「大人計画」「RARA-RO」「Live And Let Die」と比較的勢いのある楽曲が続き、そのバンド然としたサウンドにオーディエンスからも「かっこいい！」の声があがった。

一転、次に演奏されたのは「うしろゆびさされ組」のカバー。実は安藤裕子、一昨年より声優の豊崎愛生アコガレを公言しており、先のツアーでは、安藤裕子アイドル化コーナーを設けるなど徐々にファンの知る所に。かくして「うしろゆびさされ組」ではファンがヒカリング（このコーナーの為に制作された光物グッズ）を振るという、アイドルイベントさながらの事態となった。この実に楽しいカバーは7/29発売のシングル『360°（ぜんほうい）サラウンド』のカップリングとして収録される。

スキマスイッチ提供新曲の初披露！

そして「ロマンチック」をはさみ本日のハイライト。
新曲「360°（ぜんほうい）サラウンド」の初披露。

この曲はデビュー日が全く同じだというスキマスイッチによる書き下ろし楽曲。安藤裕子の「スキマスイッチがスキマスイッチのために描くスキマスイッチの代表曲みたいな曲をくれ」との少々強引なオーダーにスキマスイッチが応える形で完成している。実を言うと、その情報をキャッチした時、僕は少し懐疑的な気持ちを抱いた。なぜなら、安藤裕子のポップスは、ある種の影を含んだ切実に胸に迫るようなポップス、一方でスキマスイッチのポップスは、真っ直ぐ前に力強く進んでいくようなポップス。同じポップスとはいえ、その実は同種のものではないように感じていたからだ。しかし、楽曲を聴いて、その疑念は全くの杞憂だという事がわかった。

「360°（ぜんほうい）サラウンド」は紛れもなくスキマスイッチ楽曲である。と同時に安藤裕子の楽曲だった。

夏らしい爽やかな楽曲の中で確かに含まれる切なくて感傷的なエッセンス。つまり、安藤裕子が歌う事で、既にその楽曲の中には安藤裕子が息づいている。スキマスイッチ楽曲を歌う事で、かえって安藤裕子という個性の強さが際立った印象だった。

美しく幻想的 安藤裕子の世界に引き込まれた後半戦

ここで一旦バンドメンバーがステージから掃け、以前から交流があり、先輩であるCharaのアドバイスで、しかもCharaに借りたセミアコのギターで「黒い車」の弾き語りを披露。演奏は実にたどたどしかったわけだが、ファンにとっては、安藤裕子の練習風景をかいまみれたような貴重な一幕となった。さらにご飯時にお腹をすかしてライブに来たオーディエンスのためにステージから「あめ」が振る舞われる場面も。いい意味で緊張感のないアットホームな時間が流れた。

次の楽曲「飛翔」のイントロ、鍵盤の音が聴こえると、その雰囲気もがらりと変わる。ここからはしっとりタイム。切実に胸に迫るような楽曲が並ぶ。「レガート」「73%の恋人」「海原の月」。つい先ほどまで安藤裕子が見せる一幕一幕に笑顔で観覧していたオーディエンスも、じっくりと聴き入っている印象だった。

特に圧巻だったのが本編最後の2曲「世界をかえるつもりはない」「聖者の行進」。
熱量は最高潮にまで達し、楽曲の後半は、本人の意思とは別の何かに突き動かされているかのような名演だった。本人も力を使い果たしたような足取りでステージを後にし、本編は終了した。

盛大なアンコールに迎えられ再登場した安藤裕子。
「みなさんの顔が良く見えたし、（オーディエンスの中に巻き起こる見えない）渦みたいなものもひしひしと伝わってきて楽しかったです。」との発言から、このライブハウス公演を楽しんだ様子が伺えた。

アンコールは「鬼」「都会の空を烏が舞う」の2曲。
アルバム『あなたが寝てる間に』でもラストを飾った「都会の空を烏が舞う」もまた素晴らしい名演で、心を奪われた。青い光に包まれて、歌う安藤裕子は美しく幻想的。間奏ではバレエを舞い、そのステージには一層神秘的なものを感じた。

多様に広がる安藤裕子の世界を堪能

この日僕が驚かされたのは安藤裕子の表現の幅の広さだ。
オーディエンスは、バンド然とした演奏に興奮し、アイドル然とした演出に笑顔を見せ、ねぇやん気質なMCに笑わされ、胸に迫る歌に感動の涙する。一つのライブに様々な表情があるのだ。
今年1月にリリースされたアルバム『あなたが寝てる間に』にもその片鱗は見られたが、次のシングル「360°（ぜんほうい）サラウンド」で、その幅はさらに広がった印象だ。
果たして次のアルバムでは、また新しい安藤裕子が見られるのかもしれない。安藤裕子の今後を期待させる素晴らしいライブだった。

＜360°思いのままに視点を変えられる不思議なPV＞