命日に捧ぐ櫻井哲夫のジャコ愛

2013年9月18日 (水)

櫻井哲夫がジャコ・モデルで弾きまくるトリビュート。「あの曲」が、若手＆ベテラン日米メンバーで。ゲストに渡辺香津美。櫻井解説掲載。先着でポストカード。

1987年、35歳という早すぎる死を遂げて、四半世紀以上が経過した。ジャコ・パストリアスはその間、そして今もなお、驚異のベース・テクニック、躍動するグルーヴ、そして天性の作曲能力など、並外れた独創性により、多くのミュージシャンやリスナーに大きな影響を与え続けてきた。

カシオペアで一気にその名を知らしめ、日本を代表するベーシストとしてフュージョン・シーンの歴史を作ってきた櫻井哲夫も、ジャコに多大なる影響を受けた一人である。そんな彼が、敬愛するジャコの音楽を現在に蘇らせるべく、2009年9月21日の命日から「ジャコ・パストリアス・トリビュート・ライヴ」をスタート。自身のライフワークとして、素晴らしいメンバーと繰り広げるJacoのレパートリーを、バンドサウンドで楽しませてきた。

その「ジャコ・パストリアス・トリビュート・ライヴ」が、遂にスタジオ録音CDとしてジャコの命日である9月21日に発売される。メンバーは、本多俊之(sax）、新澤健一郎（key）、菰口雄矢(g)、ジーン・ジャクソン(dsr)という、若手とベテラン、そして日米入り混じった、いずれもトッププレイヤーで構成されており、ジャコの名曲やジャコが好んで演奏していた曲などをプレイ。

選曲を始め、アルバムのアドヴァイザーとして、日本のジャコ第一人者である元アドリブ誌編集長・松下佳男氏を起用。

「櫻井はジャコがベーシストたちに残した真のメッセージ“自分固有のスタイル”を発見せよ、ということを充分に理解していると思う。模倣しなければいけないのはフレーズやサウンドではなく、音楽に偉大な足跡を残したジャコの“魂”や“信念”なのだ。ジャコ精神に敬意を表する今回のアルバム「IT'S A JACO TIME！／櫻井哲夫JACOトリビュート・バンド」は、ジャコの遺産を現在に伝えるための櫻井流の最良のアプローチだと思う。

選曲に関しては、櫻井がそれまでとりあげた曲は極力除き、作曲者としてのジャコの素晴らしさを示す曲も選ぶことになった。ジャケットにはジャコの名前と写真を使用する許諾をジャコの管理会社から得た。ジャコのT-シャツを作り、それを着てジャケットを作るというアイディアにもOKが出た。写真は、１９７８年６月、ジャコがウェザー・リポートで初来日した時のもの。ホテルのラウンジでインタビュー後、ジャコは自分の部屋へいってベースを見せたいといいだし、フレットレスに改造した１９６２年製フェンダー・ジャズベースを詳しく説明してくれた。こうした構図はそう撮れるものではなく、僕は夢中にシャッターを押していた。僕が撮影したジャコの思い出に残る１枚だ。」

松下佳男

櫻井哲夫による楽曲解説

選曲、曲順は、僕の思い入れで録音前に決めました。アレンジも全く白紙でしたが、この時、自分の中では作品はある意味、完成していました。

1 INVITATION

ゲストにお迎えした渡辺香津美さんをフィーチャーするのに相応しい曲として、JACOの作曲ではありませんが、オリジナルよりもテンポも速くアグレッシブで強烈なインパクトのあるアレンジのJACOバージョンを、今回の１曲目に、取り上げました。とにかく早いので、ベースとドラムは大変です！ジャコの定番フレーズに乗って、サックスとギターのソロが大活躍。ベースソロも加え、イントロとエンディングを今泉さんにアレンジしてもらい、ソロが長い原曲よりも構成を簡潔にしてコンパクトにまとめました。

2 LIBERTY CITY

ジャコの曲の中でも特にハッピーな曲。ビッグバンドアレンジが印象的な曲ですが、５名のジャコトリビュートバンド、勢揃いでメンバー全員がのびのび活躍しています。グルーブやリフのフレーズは原曲に近いですが、オリジナルのベーシックな構成アレンジを基に、ベースのリフとアコピを核にして全員の聞き所のバランスをとってみました。歪みのワウワウギターソロが、ワイルドに炸裂！オリジナルとの変化を付けています。ピアノソロもご機嫌！

3 THREE VIEWS OF A SECRET

ジャコの美しい名曲です。原曲は、ミディアム・ジャズ・ワルツです。ライブでも同じムードでサックスの曲として演奏していましたが、今回は、ドラムとベースで曲中のビート感をしっかりと出して、オルガンサウンドで元気なミディアム・ロック・ワルツにしました。また、イントロ・エンディングをベースメロに、曲中のギター＆サックスのメロディーが美しいです。曲のピークの豪快なドラムソロから、ベースソロへの展開が良い感じ。ギターソロは伸びやかにかつブルージーに歌っています。

4 USED TO BE A CHA CHA

ジャコの１枚目のソロアルバムに収録された難曲。オリジナルのベースラインは、あまりに素晴らしく、お気に入りジャコラインの一つなので、キープ。新澤君のアイデアで、ベーシックなチャチャのグルーブを織り交ぜてみたら、バッチリハマりました。ギターのアプローチもナイス！ピアノと、ドラムのアプローチのブレンドがとてもユニーク。また、印象的な早いメロディーは、ベースもユニゾンで参加。メロディーの順番も変えて、大胆に構成を変えています。二つのグルーブが、この曲の展開を面白くしています。ベースソロはハーフビートのチャチャグルーブで大人っぽく色っぽく。倍転のグルーブに戻って、ピアノもサックスも大暴れ！

5 PALLADIUM

ジャコの素晴らしさの一つに、パーカッシブなグルーブのベースラインを演奏し続けて、難解な曲もダンサブルな躍動感で包み込んでしまう魅力が有ります。この曲は、ウェインの曲ですが、そんなベースラインの魅力が大好きで、今回の新レパートリーとして選びました。80年代ニューヨークに良く行っていた頃、好きだったPALLADIUMという巨大DISCOのラテンパーティーを思い出して、ダンサブルに仕上げました。ベースラインに絡むソンゴのドラムと、オルガン、ギターのカッティングが、絶妙なグルーブを作り、サックスのメロディーとユニークなシンセソロを支えます。ファンキーなギターソロも超ダンサブル。

6 LAS OLAS

ここから３曲はバンドはお休みで、櫻井ソロコーナー。ジャコがフローラプリムに提供したこの曲は、僕のフェイバリットソング。演奏するのは初めてですが、去年セルジオメンデスバンドで歌っていたコーラスのケイティーのボーカルが素晴らしかったので、彼女の歌とベースのデュオで完成させたいと思いました。オリジナルは、歌を聴いてもフェイクが多くてメロディーラインが分かりづらいので、メロディーを自分なりにシンプルに解釈して彼女に教えて、アドリブ・スキャットとメリハリを付け、リズム、ハーモニーをベースライン１本で支えられるように作りました。お気に入りのテイクができました。リズムと、ストリングスパッドで、背景を演出しています。

7 PORTRAIT OF TRACY

ジャコの代表曲の一つ。ハーモニクス奏法で完結した名曲です。以前、『PLAY JACO』というCDでもアレンジしましたが、今回は別のコンセプトでアレンジをしてみました。基本はオリジナルの演奏ですが、今回はリズムアレンジで変拍子を無くし、中間にある5/4拍子のソロパート以外をストレートに、4/4拍子だけに作り替えました。ハーモニクスの原曲パートはワーウィックの５弦を使用して、ジャコサウンドのフレットレスベースで、別にメロディーと5/4拍子のベース・ソロを加えてみました。シンセパートも、ディレイを効かしたシンセとエレピ、ストリングスでサウンドカラーを拡げて活躍しています。ベースソロの後に4/4に戻る寸前に一瞬全てミュートしたのは、エンジニアの木村さんのナイスアイディアです。

8 CONTINUUM

これもベースソロ曲として完成していて、随分前からいつか演奏したいと思っていました。アレンジをずっと考えていましたが、全然閃かず時間だけが過ぎて行く日々が続きました。そんなある日、突然アフリカのバタドラムが聴こえて来て、景色が見えました。アフリカドラムとカリンバが有れば大丈夫と確信しましたが、カリンバの録音中に、今泉さんが、三つ割のパターンを思いつき、よりライブなリズムの絡み合いが生まれ、面白さが増しました。アフリカの集落でセッションしているような空気を感じてもらえたら嬉しいです。

9 RIVER PEOPLE

バンドメンバー再登場。オリジナルは、とても印象的なベースラインで崩しづらいので、思い切ってスラップ奏法でラインも大胆に変えて、一発もののジャムセッション曲のようになるように狙いました。オリジナルのコード進行が面白いので、一発ものスラップでもひと味もふた味も違います。エレピとギターのバッキングも絶妙。息の長いメロのバックで、俊之君と木村さんのアイデアでラジオボイスの違うキーのギターとサックスの掛け合いも入れて面白くなりました。GENEのドラムアプローチが味わい深いファンク感を作っています。ベースとドラムの絡みシーンも作って楽しさ倍増！シンセソロもユニーク。後半のギターとサックスの掛け合いもエスカレートします。最後は、ジャコのトリッキーなベースラインでエンド。

10 HAVONA

WEATHER REPORTの名盤HEAVY WEATHERの最後に収録されたこの曲は、10代の一時期、一番好きだった曲。早過ぎて全く弾けませんでしたが、今回は思い切って、オリジナルよりも更に早くしてみました。リズムも早いサンバではなく、早回しのジェイムスブラウンのようにして、元気度を増してみました。メロディー最後に毎回出てくるキメも、原曲と変えたかったのですが、俊之君と、菰口君のアイデアでバリエーションが豊かになりました。全員のソロがエネルギッシュに繰り広げられています。最後は超元気になって終了です！

2013/8/31 櫻井哲夫

【櫻井哲夫JACOトリビュート・バンド】
櫻井哲夫（B, Prog）
本多俊之（Sax）：M-1～5,9,10
菰口雄矢（G）：M-2～5,9,10
新澤健一郎（Key）：M-1～5,9,10
Gene Jackson（Dr）：M-1～5,9,10

◆Additional Musician：M-1,6～8：今泉タイキ（Synth）
◆Guest musicians：M-1：渡辺香津美（G）、M-6：ケイティー・ハンプトン（Vo）

HMVオンラインオリジナル特典

【先着購入特典オリジナル・ポストカード】

櫻井哲夫の『It's A Jaco Time!』をHMVオンラインでお買い上げのお客様に、先着にてHMVオリジナル・ポストカードをプレゼント。
(左画像がポストカードの絵柄となります)

数に限りがあります。予定数に到達次第、プレゼントは終了になります。

Live Information

櫻井哲夫 Birthday “NEW LIVE”

【出演】櫻井哲夫(b)、菰口雄矢(g)、AYAKI(key)、山本真央樹(Drums)

櫻井哲夫 Birthday “NEW LIVE”は、久しぶりに櫻井哲夫の『オリジナルバンドサウンド』を”ニュースタイル”でお届けします。メンバーは、若手ナンバーワンの実力派ミュージシャン。この素晴らしいミュージシャンとのスーパーセッションをお楽しみください。

【日程】2013/11/6（水）
【会場】名古屋Blue Note（名古屋市中区錦3-22-20 ダイテックサカエＢ2Ｆ）
【問合せ】 052-961-6311 (http://www.nagoya-bluenote.com/)
【時間】 1st show 開場/17:30　開演/18:30 ,　 2nd show 開場/20:30　開演/21:15
【料金】￥6,300（税込）/ メンバーズ会員特別価格：￥5,000 ※1会員につき同伴者1名まで有効
【発売】メンバーズクラブ会員先行販売：10/8(火) 11:00～一般ユーザ販売：10/15(火) 11:00～

【日程】2013/11/7（木）
【会場】大阪ミスターケリーズ (大阪市北区曽根崎新地２－４－１ホテルビスタプレミオ堂島１Ｆ)
【問合せ】TEL:06-6342-5821（http://www.misterkellys.co.jp/index.html）
【時間】18:00開場　/ 1st 19:30開演, 2nd 21:00開演
【料金】￥5,800(税込)２ステージ入替えなし

【日程】2013/11/13（水）
【会場】六本木 STB139スイートベイジル (http://stb139.co.jp/)
【問合せ】TEL;03-5474-0139（受付時間　月曜～土曜日　11:00a.m.～8:00p.m.）
【時間】18:00開場　/19:30開演
【料金】全席自由￥5,500(税込・飲食費別)
【発売】9/22（日）プレイガイド(ローソンチケット)・・・Lコード：75540　9/24（火）STB139

詳細は公式サイトのLive Informationをご覧ください。
http://www.tetsuosakurai.com/liveinfo.html