SIGH川嶋氏がVENOMを語る 2!

2012年12月11日 (火)

Mirai Kawashima / SIGH
Mirai Kawashima / SIGH
< 〜Venom その2 : 実はメロデスの元祖でもある Venom、知られざる名盤 "Calm Before the Storm" 〜 >

SIGH川嶋氏がVENOMを語る!第1回はコチラ!

 今から四半世紀前の1987年、あの Venom が来日した。当時高校生だった私にとっては夢のような出来事。確かに Metallica が初来日するなど、スラッシュメタルは盛り上がりを見せていた。それにしても、まさか Venom が来日するとは。あの頃は海外アーティストの来日情報源は、新聞朝刊の社会面下の広告。今でも社会面には来日広告が出ているが、あの頃はそれで来日、そしてチケット発売日を知るというのが一般的であった。ところが Venom の場合は特殊で、何故か新聞告知される前に、音楽誌に来日情報が掲載されたのだ。まさか新聞告知を見逃したのではと焦り、慌ててプレイガイドに電話をかけたところ、幸いにもまだチケットの発売はされていないとのことだった。それからは朝起きて一番に社会面をチェック。ついに「ヴェノム」の名前を見つけたときの衝撃は、いまだ忘れられない。


Venom

 言うまでもないことだが、1987年にはインターネットなど普及していない。コンサートのチケットを買うためには、直接プレイガイドまで買いに行くか、プレイガイドに電話をかけるかのどちらか。当時チケットの発売開始はたいてい土曜日だったのだが、あの頃はまだ土曜日も普通に授業があった。というわけで、高校生に与えられた選択肢は一つ、電話のみ。発売開始時刻前から電話ボックスに陣取り、つながるまでひたすら電話をかけ続ける。(余談だが、当時からチケットをとるならば家からではなく、公衆電話からかけた方がつながりやすいという噂があったのだが、これは真実である。大量の電話が集中した場合、交換機がパンクしないように規制がかかるのだが、この場合公衆電話からコールは優先的に規制対象から外される仕組みになっているからだ。)そしてやっとのことで電話がつながっても、一回の電話で予約できるのは一公演のみ。運悪く Venom のチケット発売日は、 Helloween 初来日のそれとかぶっていた。当然というべきなのか、残念ながら私以外の友人たちは Helloween 優先を主張。しかも高校生の身、いつまでも授業をサボり続けるわけにもいかない。二回目の電話がつながるまで粘るのは不可能。ということで、 Helloween の予約をしたところでタイムアウト。どうせ土曜日は授業も昼まで、 Venom のチケットは、放課後直接プレイガイドに買いに行くことになった。友人たちは、 Venom なんて売り切れるわけないよと呑気なものだが、私にしたら大問題、もしチケットが売り切れ Venom を見逃すことになったら、と思うと気が気でない。やっと授業が終わり、祈る気持ちで一目散にプレイガイドへ。果たしてチケットは残っていた。ところが出てきたチケットの席を見てびっくり。前から2列目。どういうこと?同日朝一番でとった Helloween は、中野サンプラザ1Fの殆ど最後列。それに対し Venom は午後にとったのに前から2列目?それほどまでに売れていないのか。


Mantas

 まあ、そんなことはどうでもいい。私にとっては一番好きなバンド、そしてまさか生で見られるとは夢にも思っていなかったバンドを前から2列目で見られる。期待は無限に膨らむ。あのおなじみのイントロでライブは始まるのだろうか。1曲目はやはり "Too Loud for the Crowd" だろうか。だが当然チケットが売れず、来日中止になるかもしれないという不安はつきまとう。さらに大きな問題は、前年の Mantas の脱退。 Cronos、 Mantas、 Abaddon という3人組でこその Venom。その一人が欠ける。新編成はどうやらツインギターらしい。しかもジャズの素養があるギタリストとのこと。ジャズの素養があるのに Venom? むしろ何の素養もないほうがいいのでは?それでも前年にリリースされたライブアルバム "Eine Kleine Nachtmusik" を聞きながら、生の Venom とは一体どんなものなのだろうと夢想する日々を送った。

 そして迎えた当日。結果から言ってしまえば最低だった。あれから25年が経つが、あれほどがっかりしたライブは後にも先にもあれ一回。期待が大きすぎたせいもあるのだろう。だがそれだけではない。おなじみのイントロもなくいきなりライブはスタート。しかし何の曲かわからない。 Venom の曲ならイントロ1秒で当てる自信があったのだが、どうしてもわからない。前から2列目というのは視覚的には確かに良い席だが、スピーカーが近すぎるせいで飛び出してくる大音量は耐えられないほど。そしてギターは最早何を演奏しているのかすらわからないほど割れ切っている。(80年代のメタルのライブは、今よりもずっと音が大きかった気がするのだが、いつの間にか大音量に慣れてしまっただけだろうか?)サビが来ればわかるのではないか、という期待もむなしく、結局曲が終わるまでわからずじまい。2曲目は何か知ってる曲だったような記憶があるのだが、何だったのかもう覚えていない。その後も知ってる曲、知らない曲がほぼ交互に続き、馴染みの曲であっても音が悪すぎて、判別に1分くらいかかる始末。どんどん気持ちは冷めていった。そしてとどめはラストの Witching Hour 。最後くらいはきちんと締めてくれという願いもむなしく、ローディか何かのオッサンにヴォーカルをとらせるという最悪の結末。日本のファンをバカにしているとしか思えない。それとも他国でも同じようなことをしていたのだろうか。確かに入りは悪かった。渋谷公会堂の2階は完全な空席、1階も後方は空いていたように記憶している。それで Venom は真面目にやる気を喪失してしまったのだろうか。いずれにせよ、高校生にとって心酔するバンドに裏切られたショックは大きかった。


Venom(4人編成期のライブ)

 それにしてもライブのオープニングナンバー、そして途中しばしば演奏された、聴いたこともない数々の楽曲は何だったのか。それはまもなく判明する。Venom 5枚目のアルバム、 "Calm Before the Storm"。実はこの来日公演、まだリリースされてもいない "Calm Before the Storm" ツアーの一環だったのである。当時レコード屋でリリース延期の告知を見た記憶があるので、おそらく元々のプランとしては、ツアー前にアルバムは出るはずだったのだろう。それが何らかの理由で延期、果たしてセットリストの半分近くは誰も知らないという不幸な状況になってしまったのだ。バンドとしてはニューアルバムをサポートするための大事なツアー。今でこそヴェテランバンドがニューアルバムをリリースしても、ツアーで演奏するのは初期の有名曲ばかりということも珍しくない。だが当時は違った。Venom 自身もニューアルバムを売る気満々、初期のクラシックだけを聞かせるライブなど、初めから望むべくもなかったのである。インターネットもない時代、高校生にはそんなことを予測する術はなかったのだが。

 念のため Setlist.fm をチェックしてみたところ、この公演のセットリストが載っていた。

01. Black Xmas
02.Die Hard
03. Black Metal
04. The Chanting of the Priests
05. The Seven Gates of Hell
06. Buried Alive
07. Calm Before the Storm
08. Teacher's Pet
09. Fire
10. Welcome to Hell
11. Warhead
12. At War With Satan
13. Krackin' Up
14. Deadline
15. Nightmare
16. Gypsy
17. Muscle
18. Witching Hour

 何と18曲中8曲が "Calm Before the Storm" から。このアルバムは11曲入りなので、殆どの曲が披露されたと言っても過言ではない。改めてセットリストを見返してみると、2〜7あたりの流れは悪くないものの、13、14、16、17という終盤が新曲ラッシュというのはライブの構成として最悪。さらに驚いたのは、大阪ではアンコールが Witching Hour ではなく東京では演奏されていない Bloodlust になっている。代わりに Witching Hour が演奏されていない。Witching Hour 無しの Venom のライブなんてありえるだろうか?そう、そして25年ぶりに思い出した。あの時、一番驚き、一番腹が立ったのは、Countess Bathory が演奏されなかったこと。Countess Bathroy と言えば Venom 代表曲ベスト3に入るだろう。それをカットしてまでニューアルバムをプロモートしたかったのだろうか。(前年にあたる86年12月のブラジル公演では、このラインナップで Countess Bathory も演奏している。つまりやろうと思えばやれたはず。)


Venom


廃盤
 それほどまでに Venom が売る気満々だった "Calm Before the Storm"、結果としては商業的にも音楽的評価的にも惨敗だった。そしてその評価は21世紀になった今日でも変わっていないようである。だがこれ、本当にそんなに悪いアルバムだろうか? Venom がメジャーを意識し、方向転換を図ったのは間違いない。前回も書いたが、Metallica、Slayer など、自分たちから影響を受けて出てきた後輩が、次々とメジャーになっていくのを意識せずにはいられなかっただろう。不仲が原因と言われる Mantas の離脱。そして( Venom にしては)テクニカルなギタリスト2人の加入。これは商業的見地からすると明らかにおかしい。本気で商業的に成功しようと思ったのならば、一番にクビを言い渡されるべきは、(一般的な意味で)とてもまともにドラミングができるとは言えない Abaddon だろう。いずれにせよ Venom は、85年という大事な時期に "Possessed" という中途半端なアルバムで犯した大失敗を挽回しようと、大きく舵を切った。それもポップな方向に。2本になったギターが哀愁漂うメロディをハモるだけでなく、Cronos のダミ声ヴォーカルにまでハーモニーが。そしてそれがまた美しい。どんなに世間的評価が低かろうが、このアルバムは傑作だ。そもそも Venom は NWOBHM の文脈で出てきたバンド。美しいハーモニーに哀愁のメロディ。
まさに NWOBHM ではないか。そしてそこは Venom、美しいだけではなく激しさも備えている。つまりこれ、メロディックデスメタルのプロトタイプ、メロディックスラッシュメタルなのだ。それもそのはず、ツインギターの片割れ、Mike Hickey は、Michael Amott 脱退後の Caracass でギターを弾いていたあの人。メロデス好きはもちろん、ScorpionsThin Lizzy などが好きな人にも是非聞いてもらいたい。( Cronos は後に "Bad Reputation" のカバーをやっているので、Thin Lizzy が大好きなのは間違いない。) "Under a Spell" や "The Chanting of the Priests" のような美しさと激しさを兼ね備えた楽曲は、今でこそ当たり前となっている手法だが、それを87年の時点ですでに完成させている Venom のセンスの凄さ。何故このアルバムが成功しなかったのか。あまりに時代の先を行き過ぎていたのだろうか。だとしたら、何故今もって評価は変わらないのか。まったく理解ができない。確かに捨て曲も散見される。B面、というか後半失速気味なのも認める。しかし少なくとも "Under a Spell"、"The Chanting of the Priests"、"Calm Before the Storm"の3曲は、Venom の最初の2枚を聞いて何が良いのかさっぱりわからないと思った人にこそ、聞いてもらいたい。


Cronos


廃盤
 その後、 Cronos はギタリスト2人を引き連れ Venom を脱退、その名も "Cronos" というバンド(ソロプロジェクト?)をスタート。 "Dancing in the Fire"(90年) と "Rock'n'Roll Disease"(93年) のオリジナルアルバム2枚を残したのみだが、"Calm Before the Storm" の路線は、Cronos 抜きの Venom ではなく、こちらの "Cronos" の方に引き継がれた。この2枚のアルバムも、残念ながらあまり話題になることはないが、 "Calm Before the Storm" が気に入ったのなら、是非とも聴いてみて欲しい。

 もし "Calm Before the Storm" が、ツアーの前にリリースされていたら、日本公演の印象も少しは変わっていただろうか。今回、当時の Venom のツアー記録を調べていて気づいたのだが、日本公演(87年10月)の前が86年12月のブラジル。そして日本公演後の次のライブが何と2年後の89年12月(この時点で Cronos と新ギタリスト2人は脱退済み)。つまりこのセットリストは日本のみ、というよりもそもそも "Calm Before the Storm" をサポートするツアーというのは、欧米では一切行われておらず、日本の3か所のみ、そして東京公演はあのラインナップでのラストライブだったのだ。ということは最悪な印象しかなかったあのライブも、実は非常にレアなものだったと言えるのである。あの公演を録音したテープは存在するのだろうか。もしあるのならば、是非今の冷静な耳で是非聞き直してみたい。

川嶋未来/SIGH
https://twitter.com/sighmirai
http://twitter.com/sighjapan

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