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明星アヴィシャイの慧眼キラリ☆

Tuesday, July 24th 2012

アヴィシャイ・コーエン&ニタイ・ハーシュコヴィッツ
左から)アヴィシャイ・コーエン、ニタイ・ハーシュコヴィッツ


アヴィシャイの慧眼キラリ☆
イスラエルから俊英ピアニストがまたひとり世界へ


 昨今のニューヨーク=イスラエル・シーン、その活況ぶりを見るにつけ、彼らのクリエイティヴィティはまだまだ底を付くことを知らずというべきか。今年に入っても、オマー・アヴィタル(サード・ワールド・ラブ)シャイ・マエストロらの素晴らしい作品が続々と届けられているのは、皆さんよくご存知のところだろう。去る6月にはアーロン・ゴールドバーグとのトリオでオマーが来日。さらに、9月開催の「東京JAZZ2012」には、オズ・ノイギラッド・ヘクセルマン、イスラエルが誇る新旧二人のヴァーチュオーゾが出演と、その盛り上がりはいまにも沸点に達しそうな勢いと言っても過言ではない。

 となると、やはり”真打ち登場”を期待するのは至極当然のこと。真打ち、つまり、イスラエル⇒ニューヨーク上京組のアニキ的存在(あるいはアイコン)にして、今や押しも押されぬ現代ジャズ・オーソリティとして日夜世界中を飛び回るアヴィシャイ・コーエン、そのニュープロダクツの登場を心待ちにするということ。そして届けられた、アヴィシャイのおよそ1年ぶりとなる新録アルバム『デュエンデ〜聖霊』インターナショナル盤は、すでに5月に仏EMIよりリリースされているのだが、今回リリースされるこちらのHQCD国内盤には、ボーナス・トラックとしてエリントン・ナンバー「テイク・ザ・コルトレーン」が収録されているということで、おいそれとは見逃せない内容となっている。

 さて、まず目を惹くのは、ピアノとの「デュオ」という録音形態。そして、共演相手となるピアニストの存在。少なくとも2008年の『Gently Disturbed』から昨年の『七つの海』に至るフロウを知る方々にとっては、この「若手無名ピアニストとのデュオ録音」というスタイル、多少なりとも驚きだったに違いない。自身のRazDazレーベル設立以降、この十年における諸作にデュオ録音そのものが数えるほどしかないアヴィシャイ。そんな彼がここへ来て何故デュオ・アルバムを制作したのか? その答えは、アヴィシャイに「彼のタッチにハートを盗まれた」 とまで言わしめたピアニスト、ニタイ・ハーシュコヴィッツの存在にあったのだ。

 その名を訊いてピンと来ない方も多いだろう。24歳のニタイは、2009年あたりからダニエル・ザミールとの活動で頭角を現し、昨年からアヴィシャイ・トリオのレギュラー・ピアニストの座に就いてはいるものの、今現在も母国イスラエルのジャズ・コミュニティを主な活動の場にしていることもあって、名前自体はまだ全国区にはなっていない。俗に言う”駆け出し”ではあるが、その天賦の才をイチ早く見抜いたのが言うまでもなくアヴィシャイであり、ある種狂信的なまでのそのベタ惚れぶりは、前任ピアニスト、シャイ・マエストロ(祝・リーダー・デビュー☆)が軽いヤキモチを焼きそうなぐらいに相当なものがあると、そう感じずにはいられない。  


収録曲

  • 01. サイン
  • 02. クリス・クロス
  • 03. 4ヴァース〜連続
  • 04. スーフ
  • 05. オール・オブ・ユー
  • 06. セントラル・パーク・ウェスト
  • 07. アンズ・チューン
  • 08. 静寂
  • 09. まだ見ぬ君へのバラード
  • 10. テイク・ザ・コルトレーン * 日本盤ボーナストラック

アヴィシャイ・コーエン(b, p on M-9) / ニタイ・ハーシュコヴィッツ(p)
2012年2〜3月 スウェーデン・ヨーテボリ、ニレント・スタジオにて録音
エンジニア:ラーシュ・ニルソン




 ブラッド・メルドーを思い起こさせるんだ」。そう目を細めるアヴィシャイがまず注目したのは、二タイの新鮮で柔らかいタッチ。アクがない分「古典的なデュオ・フォーマットに打ってつけ」と見たかどうか定かではないが、兎も角も清水のようなその淀みのなさに感心しきりだったことは確かだろう。どの曲に耳を向けても、アヴィシャイのベースは心地良さげに水浴びを愉しんでいるかのようだ。

 本国内盤に寄稿された杉田宏樹氏のライナーによると、もうひとつのキーとしては「ニタイの古典音楽に対する理解の深さ。解釈の上手さ」(アヴィシャイ)があるようだ。それゆえに、ここに収録されたコール・ポーターの「オール・オブ・ユー」に代表されるスタンダード・ナンバーとアヴィシャイは再び向き合うことを決意したのだ。それだけの説得力がニタイの演奏にあったということになるのだが、それにしてもこれだけの若さで、チック・コリアほか様々な巨匠と共演を重ねてきた”ご意見番”をアッという間に骨抜きにするとは、実に末恐ろしいピアニストだ。


左から) ニタイ・ハーシュコヴィッツ、アヴィシャイ・コーエン
左から)ニタイ・ハーシュコヴィッツ、アヴィシャイ・コーエン


 オープナー「サイン」の美しい音の連なり。ニタイのピアニズムに心ゆくまで浸ってほしい。重厚なボーイングから一転、弾力あるピチカートでしなやかなリズムを付箋のように貼り付けるアヴィシャイ。悦びが溢れ返るような瞬間だ。セロニアス・モンク円熟の銘品「クリス・クロス」には、イスラエル・ジャズ・シーンの「第1世代」と「第3世代」が互いに手を取りながら歩を進めるような微笑ましさが。アレンジの面白さもたっぷりと味わえる。

 コロコロとよく転がるピアノは、その柔らかい表情を微妙に変えながらベースと付かず離れずの絶妙な関係を保つ。「タッチの瑞々しさ」という点ではベストテイクとも言えそうな、アヴィシャイのオリジナルとなる「スーフ」。作者特有の楽想に依るところが大きいのだろうが、前任シャイ時代の”残り香”をうっすら感じさせてくれるのも嬉しいところ。

 「キーとなる」と前述した唯一のスタンダード「オール・オブ・ユー」では、肉感的なベース・ソロを交えながら互いに調和と丁々発止を繰り返す。エンディングの展開はどうやらアドリブのようだ。得も言われぬメロウネスが五臓六腑にしみわたる。続くジョン・コルトレーンの秋の夜長アンセム「セントラル・パーク・ウェスト」での両者しっとりとした語り口にもうっとりだ。欧州円舞曲に”かの地風味”をスパイスとして加えたかのような「アンズ・チューン」、アンニュイな「静寂」も然り。この4曲の流れは意図したものなのだろうか。総じて、繭の中にいるようなフンワリとした心地を味わわせてくれる。

 インター盤ではオーラスとなる「まだ見ぬ君へのバラード」は、アヴィシャイのソロ・ピアノによる子守唄(?)。若き相棒に触発されたか、心のヒダを弄りまくる優しくソウルフルな旋律を紡ぎ上げる。デューク・エリントン&ジョン・コルトレーン共演録からは、「イン・ア・センチメンタル・ムード」をチョイスせずに敢えての「テイク・ザ・コルトレーン」、といったところだろうか。見事なまでに息の合ったフィニッシュの着地が、本セッションの全てを物語っているようだ。 

 全10曲、ランニングタイムはわずか37分強なのだが、聴き終えた後には、実際に経過した時間以上の、セッションの中身の濃さを窺わせる充実感というものがそこはかとなく漂っている。

 「無名だろうが若かろうが、素晴らしいものは素晴らしいんだ。むしろ俺の方が感化されちまったぐれえだからな」と笑顔を押し殺しながらそう漏らすアヴィシャイの姿が目に浮かぶ。才人にはやはり慧眼、人の能力を鋭く見抜く力というものがあるようだ。かくして、ニタイ・ハーシュコヴィッツが世界へ羽ばたくお膳立てが整った。




アヴィシャイ・コーエン プロフィール


Avishai Cohen 1970年4月20日イスラエル生まれ。イスラエルを拠点に活躍し、インターナショナル・ジャズ・シーンにおいて最も才能のあるニュー・スターとして広く認められるカリスマ的アーティスト。世界中にファンを持つ。ミズーリ州セント・ルイスでも過ごし、グリニッジ・ヴィレッジのジャズクラブやブロンクスでジャズを学ぶ。1997年から2003年までチック・コリアのベーシストとして活躍。チック・コリアに”天才”と言われる。コーエンはジャズとワールド・ミュージックを自在に行き来し、歌、エレクトリック・ベース、ダブル・ベース、ピアノを操る。彼のユニークな演奏スタイルは彼の作曲と演奏するすべての楽器から明らかになる。「私はいつも、楽器に頓着せずに音楽作りのエッセンスに溺れてきた。言葉の裏に隠れたことを出来るだけ多く知りたいんだ」。

2009年のブルーノート移籍第1作目『Aurora』は、アヴィシャイの11作目となるスタジオ録音アルバム。27カ国で発売され、2年間にも及ぶ世界ツアーを行なった。

アヴィシャイ・コーエンがブルーノート・レーベルからのヴォーカル・アルバムに先がけ、自らが設立したレーベル(Razdaz Recordz)からリリースした『覚醒/Gently Disturbed』。コーエンは、トリオアルバムとしては最新作となるあの究極のアルバムを、2003年の『Lyla』ではじめてレコーディングして以来の大のお気に入り曲「Structure in Emotion」で締めくくり、いわば音楽の饗宴と呼ぶべきものに仕立て上げている。コーエンの音楽は、感情の奔流、構成力のある曲、親しみやすい構造、突然の驚き、予想外のスタイル、メロディアスで穏やかながら一触即発の危うさを秘めている。感情の自然な発露を抑制することで、リスナーに届く前にエネルギーが失速するのを避けているのだ。エルサレムに生まれ、現在テルアビブに居を構え、ここ10年、世界屈指の人気ジャズプレイヤーとなっているコーエンは、2011年の『七つの海/Seven Seas』においてアーティスティックな頂点をめざした。2012年、ニタイ・ハーシュコヴィッツとのピアノ・デュオ・アルバム『デュエンデ〜聖霊』をリリースした。






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* Point ratios listed below are the case
for Bronze / Gold / Platinum Stage.  

ボーナストラック収録の日本盤HQCD

Duende

CD

Duende

Avishai Cohen (Bassist)

Price (tax incl.): ¥2,619
Member Price
(tax incl.): ¥2,410

Release Date:25/July/2012

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輸入盤はマルチバイでさらにお得!

Duende

CD Import

Duende

Avishai Cohen (Bassist)

Price (tax incl.): ¥2,200
Member Price
(tax incl.): ¥1,914

Release Date:21/May/2012

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『Seven Seas』 『Aurora』 セットで

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