【特集】Akira Kosemura 『MANON』 vol.2
Tuesday, May 29th 2012
【メール対談】小瀬村 晶 × キミホ・ハルバート （pt.2）
キミホ そして今回電子音の曲も数曲ありますね。
流れを変えたり、作品のアクセントにもなっている【Walls of Uncertainty】や【Nightmare】は以前から晶さんがストックで作られていた曲からインスピレーションを頂いて出来上がりましたね。こんな晶さんの側面も皆さんに聞いて欲しいなぁと思っていたので、それがうまく作品とマッチして良かったです。
特に【Nightmare】はお気に入り。本当に舞台の上で恐怖を感じて、演じることが出来たと思います。
晶さんは気がつきましたか？曲には人の声なども入れてもらったのですが、本番はなんとそこの場面に出てくる子供たちも自然と不気味な笑い声を出したんです。完全に音楽に影響され、作品にのめり込んでいましたね。
小瀬村 ありましたね。覚えていますよ！
僕も【Nightmare】のシーンは特にお気に入りで、なにより衝撃的でした。こういってはなんですが、音楽云々というより、全体の演出・振付のなかでも一際、素晴らしいシーンだったと思います。
本番で曲に合わせて不気味な笑い声を上げている子供たちをみて、【Prologue】の時と同様に、より舞台が生々しく思えてぞくぞくしました。とても素晴らしいアイディアだなぁと。
それにあの、出演者が下手から列になって上手に消えていく演出には、本当に鳥肌が立ちました。（文章にしてしまうと滑稽ですが、これには本当に度肝を抜かれました。）
そういえば、子供たちで思い出したので余談ですが、初日の楽屋入りした際に、子供たちが楽屋でストレッチをしながら皆で【Amiens】の曲のメロディを口ずさんでいたんです。それを聴いたときに、実はちょっと感動してしまいました。頑張って作って良かったなぁって。。（笑）
キミホ 【Lies and Betrayal】も【Playground of Justice】も踊りならではの曲だと思います。
作品の内容が暗い分、全体を暗くしても実は大切なところが生きてこなくなってしまうので、逆に明るいリズムのあるものを頼んだところ、この二曲が生まれました。晶さんとしてはどんな風景を浮かべながら作ったのですか？
小瀬村 【Lies and Betrayal】は、場面がいまでいうところの、ちょうどカジノのような場所だったのと、そこでうごめく様々な人物の想いがあったので、ちょっと妖艶なイメージに、さらにカジノ特有の大胆さというか、派手なイメージを付け加えて作りました。
実際に本番で、女性のダンサーが妖艶なイメージで踊っていたので、ああ、そのままだなぁと思いましたよ。
【Playground of Justice】は、【Innocent Children】と同じように、広場で皆で踊れるイメージで作りましたが、今回は乞食の子供たちの踊りがメインではなかったので、そこから少しあどけなさを除くようなイメージで作りました。この曲は最後に段々と壊れていくアレンジになっていますが、そこに至るまでの音楽は、情景の音楽だったので、【Amiens】と同じような心持ちで、風景を想像して取り組みました。
キミホ そして【Vision of a Dream】。
晶さん自身、この曲をとても気に入っているとおっしゃっていましたね。
私の大好きな弦楽器の音楽でした。
私は作品を作る時に最後には希望を持てるものを作りたいと思っています。だから自然とこの曲が落ち着きました。ずっと聞いていられる曲ですよね。
小瀬村 いつまでも繰り返して聴いていられるような、少し光の差した安堵の曲ですよね。
この舞台のラスト。マノンが息絶えた後で、デ・グリューが嘆き苦しむ場面。
でもその最後に、ほんの少しかもしれないけれど、光が見える。マノンの魂に後押しされるように（あるいは背負うようにして）デ・グリューが生きていこうとする。その深い愛情が、希望の光に変わっていく。
そういった意味では、この曲はマノンに捧げるレクイエムであると同時に、一度は生きる希望を失いかけたデ・グリューが、マノンの愛に包まれてもう一度生きることを決意する、そのための希望の光で在って欲しい、そんな想いを馳せてしまう曲でもあります。
この物語は実際のところ、バッド・エンディングだと思いますが、キミホさんが目指した舞台【MANON】には、そういった、かすかに差し込む希望の光を見せて終わっている。その想いがきっと、この音楽に繋がっていったのではないかなぁと思います。
キミホ ここに書いていない曲もいろんな想いがあるのですが、それはみなさんに想像してもらいたいので、これぐらいにしようかと思うのですが...
いろんな事を勝手に書いてしまいましたが、晶さん、今回の挑戦はどうでしたか？
もちろん私にも大きな挑戦でした。人と人、おまけに２人のアーティスト。違うバックグラウンド。ぶつかったり、寄り添ったり、感激したり。でも本番後にお互いに確認し合えた「よかったですね。」
こうやって繋がりがまた出来て、私は嬉しいです。
本当にありがとうございました。
キミホ・ハルバート
小瀬村 もっともっとたくさん書きたいことはありますよね。いまこうやって思い返しながら書いていて、僕もやっぱり、本番後に燃焼し切ったキミホさんと笑顔で分かち合えたこと、それがすべてだったと思います。
とても素晴らしく、そして貴重な体験になりました。
携われたことをとても光栄に、そして心から感謝しています。
ありがとうございました。
小瀬村 晶
Akira Kosemura 『MANON』 [2012年05月23日 発売]
風の様に天真爛漫で、終いには自分が巻き起こす竜巻に巻き込まれ死を迎えるマノンと、彼女との出会いから運命に翻弄されつつもマノンを愛し続けるデ・グリュー。二人の壮絶な恋愛劇を、時に美しく、時に儚く、そして時に残酷に、運命に翻弄される二人の人生に呼応するように書き下ろされた音楽からは「生きることへの喜びと、生き抜くことへの困難さ」という、現代にも通じる普遍的なテーマへと重なっていく。
前作のオリジナル・アルバム『how my heart sings』は、自身のピアノ演奏に重きを置いた飾らない演奏によるシンプルで美しいピアノ・アルバムだったのに対して、今作では、演奏家に白澤 美佳（ヴァイオリン）、人見 遼（チェロ）、良原リエ（アコーディオン）、三沢 泉（マリンバ・パーカッション）、高坂 宗輝（ギター）、荒木 真（フルート）、Shaylee（ボーカル）を招き、様々な顔を持った楽曲アレンジを施している。さらには、ギミックの効いた電子音楽や、ノイズ・ミュージックなど、これまでの小瀬村 晶作品では見受けられなかった作風も大胆に散りばめられており、オリジナル・アルバムとはまたひと味もふた味も違った、職人としての側面も垣間みれる充実の作品に仕上がった。
舞台作品のサウンドトラックでありながら、一音楽作品として非常にエキサイティングな聴覚体験が続く全80分、19曲を完全収録。
Disc-1 収録曲
- 01. Prologue [試聴]
- 02. Amiens [試聴]
- 03. Innocent Children [試聴]
- 04. Depth of Sorrow [試聴]
- 05. First Love （Light Dance） [試聴]
- 06. Alone for the First Time [試聴]
- 07. Invasion of the Dark [試聴]
- 08. Holy Place & Manon [試聴]
- 09. Promise [試聴]
- 10. Lies and Betrayal [試聴]
- 11. The Lines in Between [試聴]
- 12. Silence to Capture [試聴]
Disc-2 収録曲
[関連リンク]
Akira Kosemura オフィシャルサイト
[関連リンク]
Kimiho Hulbert オフィシャルサイト
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【特集 第1回目はコチラから】Akira Kosemura 『MANON』 vol.1
小瀬村 晶の新作にして初の劇伴盤2枚組の超大作アルバム『MANON』特集。まずはキミホ・ハルバート演出の舞台『MANON』を映像と共に紐解く。
その他オススメ情報はコチラから！
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『細い糸に縋るように』バックナンバーはコチラから
2009年8月よりスタートしたAkira Kosemuraによる月イチ連載コラム『細い糸に縋るように』。
これまでの連載記事をコチラで一覧表示致します。 -
無人島 〜俺の10枚〜 【Akira Kosemura編】
音楽好きには超定番の企画『無人島 〜俺の10枚〜』！第62回目のお客様は当サイトの連載コラムでもおなじみのAkira Kosemuraさん！
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