『モテキ』 大根仁監督 インタビュー
Monday, May 14th 2012

大根仁監督、HMV ONLINEにご登場ッ!久保ミツロウさんの原作を実写ドラマ化後、パワーアップしてスクリーンに帰ってきた『モテキ』は興行収入21億超えのミラクルヒット☆ そんな『モテキ』がBlu-ray&DVDでリリース!【豪華版】のパッケージは「高級お菓子箱」がイメージされ、Blu-rayケースも通常の青ではなく、白にするというこだわりぶり!また、特典映像「The backstage of モテキ」のナレーションは最後まで観てやっと分かるあの人を起用!と大根さんらしい”心憎い演出”もお楽しみに。『モテキ』は観終わった後、人と話したくなる映画ですが、そんな「聞きたいこと」を大根さんに伺ってきました。『モテキ』のミッションは長澤まさみちゃんをとにかくかわいくエロく撮るということだったそうで☆ INTERVIEW and TEXT and PHOTO: 長澤玲美
ミッションとしては長澤まさみをとにかくエロくかわいく(笑)撮ろうというか。ここ最近みんなが忘れてた本当にかわいいっていう「長澤まさみ最強説」を今一度知らしめるってことは意識しましたけどね(笑)。
- --- 本日はよろしくお願いします。
大根仁(以下、大根) よろしくお願いします。あれ、勤務地、ゲートシティーなの?
- --- はい、大崎の・・・(笑)。
大根 事務所が近いんですよ。
- --- そうでしたか。
大根 ゲートシティーの地下に福島屋さんっていうスーパーがやってるアンテナショップでリラック(ナチュラルフードスペシャリティストア/自然派食品専門店)っていうお店があるんですけど、福島屋さんはすごくいいスーパーなんですよね。
- --- あそこはたまに行きます。ちょっと成城石井的ラインナップといいますか。
大根 そうそう。リーズナブルな紀伊国屋的ともいうかね。好きでよく行くんですよ。
- --- もしかしたらお会いしていたかもしれないですね(笑)。
大根 そうかもしれないですよね。あそこのパンとかお弁当とかすごいおいしいですよね。
- --- おいしいですよね。本社が六本木から大崎に移動したんですけど、大崎はなかなかおいしいお店がなくて(笑)。
大根 大崎はあそこくらいしかないですよ(笑)。
- --- 劇場版の『モテキ』ですが、最高に楽しませて頂きました。
大根 ありがとうございます。
- --- 大根さんが久保ミツロウさんの「モテキ」をお読みになって、「おもしろい」とブログに感想を書かれたところからドラマとして実写化される流れになったそうですが、具体的にはどんなところがおもしろいと思われましたか?
大根 最初に見たのは連載の3話か4話だったと思うんで、小宮山夏樹が出て来たところ辺りだと思うんですけど、その時は女性が描いてるって知らなかったんですよね。青年誌に載ってたんで当然男性の作家だと思いながら読んでたんですけど、女性のキャラクターがめちゃくちゃかわいくていいなっていうのと青春ルサンチマン物って男目線だけで描くものがあのジャンルだと多いと思うんですけど、恋愛の細かい部分というか、女性側も描けてるのが珍しいなあと思って。そこにまず惹かれたのかな。でも、ぱっと見は絵ですよ。僕もそこそこのマンガ読みなのでやっぱりね、オーラを察知する力はあると思うんですよね、マンガの。ぱっと見てぱらぱらめくった時に「あれ、このマンガ、何か違うな」というか、シックスセンスっていうんですかね(笑)、そういったものがありました。でも、まさかここまでの付き合いになるとは思わなかったですけどね。
- --- 幸世のキャラクターはいかがでしたか?
大根 最初に読んだ時はただイライラしながら読んでたんですけど、そのイライラっていうのはたぶん恥ずかしさだと思うんですよね。「昔、自分もこうだったな」みたいな。男の読者はたいていそんな感じで読んでると思うんですけどね。「モテキ」ってどこかで恋愛あるあるの積み重ねだと思うし、そこが共感を得てるところだと思うので。
- --- そんな幸世役に森山未來くんをキャスティングされましたが、すぐに決まったんですか?
大根 割り合いすぐ決まったと思いますね。ああいう話ですけど、ドラマにする以上はやっぱり主役クラスのネームバリューと実力があって、でもいわゆる典型的なイケメンがモテてたら物語としておかしいので、見ようによっちゃあブサイク・・・って言うとあれですけど(笑)、そんなにイケメンじゃなく見える人。あとは、最初から音楽はいっぱい使おうと思ってたし、ミュージカルシーンみたいなものもやりたかったので、ダンスも踊れるとなると一人しかいないかなと。
- --- 未來くんはすごく大変だっただろうなあと思うんですが(笑)。
大根 まあ、そんなのみんな大変で「お前だけじゃないよ!」って感じですけどね(笑)。
- --- 映画化のお話はいつ頃から進んでいたんですか?
大根 ドラマの1話を放送した直後ですね。金曜の放送だったんで、その日か土曜、日曜かに東宝の川村元気さんという若い、優秀で悪魔のようなプロデューサーがいるんですけど・・・(笑)。
- --- 『告白』や『悪人』なども手掛けている方ですよね?
大根 そうです、そうです。彼とは前から知り合いではあったんですけど、仕事はしたことなくて。その川村さんから「「モテキ」観ました。ちょっと話がしたいので会いませんか?」っていうメールをもらって会ったんですけど、僕はその時は確か6話とかの編集をしてて。「おもしろいんで映画になりませんかね?」みたいな話をされたんですけど、原作も終わってるし、たぶんドラマで燃え尽きるから、映画とかはないですよ」ってお断りしたんですよね。
- --- それがどういう風に変わっていったんですか?
大根 放送が終わってDVDをリリースするタイミングで、テレビ東京≒深夜っていうところで宣伝が弱かったんでTwitterとかでもずっと宣伝してたんですけど、「インディーズツアー」って言って、僕がDVDを持って地方で手売りイベントみたいなことをしてたんですよ、カフェとかイベントスペースみたいなところに呼んでもらって。で、お客さんのリクエストでどれか1話をプロジェクターで流してコメンタリーするっていうようなことをやってたんですけど、そういう場所ですから、スクリーンとかの立派なものじゃなくて、誰かが持って来たシーツみたいなのを代用して、昔の子ども会の映画上映会みたいな感じで(笑)。でも、プロジェクターとシーツとはいえ、会場を暗くして流すとちょっとした映画を観てるみたいな感じになって。お客さんは30人とか40人とかですけどそれがすごく楽しくて、「モテキ」ってこういう風にみんなで観るのが楽しいんだなって思ったんですよね。その時にちょっと「映画に出来るかも・・・」っていう気持ちは芽生えましたけど、とはいえドラマも原作も終わってましたし、どうしようっていう時に改めてテレビ東京さんの方から「映画化してくれ」っていうお話が来たので条件を出したんです。まずはいわゆる都市型の都市部でしか観れないような映画ではなく、DVDのインディーズツアーでは結構細かい小さい街とかも回ったので、そういうところでもかかるような全国公開であること、そして東宝配給で川村元気プロデューサーでやりたいっていう条件を出して、それが通るならやりたいと。
- --- 映画化にあたり久保さんの書き下ろしになりましたが、映画にする以上、「モテキ」のドラマ版の流れも汲みつつも、スクリーンで観るということを考えられたと思うのですが、お2人の中でこれだけは外せないというような要素は結構ありましたか?
大根 1つはドラマと原作は結局ね、幸世っていう男は何一つ変わってなくて、ただ人生初のモテキが来て振り回されて成長したんだかしてないんだかみたいな感じだったんですけど、映画の中ではまたモテキらしきものが来るんだけど、今度は一人の女の子に一途に恋愛をしてそれが一応成就する、ハッピーエンドで終わるっていうことと、あとはその中でまた翻弄されたりはするんだけど、今度は何かしらの成長をさせようっていうその2つですかね。
- --- 映画として演出する上で特に強く意識した部分はありますか?
大根 ミッションとしては長澤まさみをとにかくエロくかわいく(笑)撮ろうというか。ここ最近みんなが忘れてた長澤まさみの本当にかわいいっていう「長澤まさみ最強説」を今一度知らしめるってことは意識しましたけどね(笑)。それはやっぱり、さっきの幸世が一途に気持ちを貫くっていうこととつながってて、彼女が魅力的じゃなければそこが揺らいじゃうわけですから。未來くんとかほとんどのスタッフはドラマをやってきたチームなのでそんなに細かい話はしなかったんですけど、映画から参加する女の子達、特に軸となる(松尾)みゆき役のまさみちゃんと(桝元)るみ子役の麻生(久美子)さんのヒロイン2人は、ここがブレたらたぶん映画もブレると思って、2人に関する演出はちゃんとやったつもりではあるんですけど、演出って言ってもね、まさみちゃんには毎日「かわいいね、かわいいね」って言って、麻生さんには冷たくしてるっていう感じだったんですけどね(笑)。
- --- まさみちゃんがもう本当にかわいかったので、あのかわいさだけでも観てよかったなあと思います(笑)。
大根 そうですね(笑)。女子から特に言われますね、「無理、あれは無理!好きになってもしょうがない」って(笑)。女性が見てもかわいいしエロいんだから、それは男はたまらんだろうっていう。
- --- まさみちゃんは何となくぼんやりしていた時代が続いていたと思うので・・・(笑)。
大根 ぼんやりね(笑)。でも、昔から好きだったんですよ。だけどやっぱり、東宝シンデレラっていうところでの仕事のチョイスもコンサバになってしまうというか、そこは事務所なり本人のいろんな考えがあるでしょうから良い悪いは何とも言えないんですけど、出て来た時の輝きがちょっと鈍ってるなっていうのは感じてたんですよね。でもやっぱり、それは年齢とかキャリアの中で誰だって悩んだりして、ずっと上向きなままっていう人はいないわけですから、そういう時期なのかなって思って、いずれ機会があれば一緒に仕事したいなとは思ってたんですよね。まあ、だからと言って僕がどうにかしてやるっていうことでもないんですけど(笑)。一番ダメだったのってどの辺だったっかな・・・『曲がれ!スプーン』とか?(笑)。あの映画は観てないんですけど、そのキャンペーンでめちゃイケ!(めちゃ×2イケてるッ!)とかに出てた時にすっげえかわいいなって思ったんですよね。もったいないってずっと思ってて。でも、結果的には僕がどうこうっていうよりはたぶんね、本人としても自分の殻が窮屈になって来て、ばーんってぶち破りたい時期にたまたま『モテキ』がタイミングとして合って、僕はその殻をちょっと突っついてヒビを入れたくらい。中から出て来たのは自分ですからね。
- --- 毎日、「かわいい、かわいい」と(笑)。
大根 そうですね(笑)。現場に入って来た時から盛り上げるっていうか。脚本を作る時点でほとんどあて書きだったんですよね。こういう役だったらやりやすいし、本人も今までにない素の自分というか、そういうのが出せるんじゃないかっていう感じで。だから、キャスティングで一番最初に決まったのがまさみちゃんだったんですよ。『モテキ』はドラマから共通してるのは、僕の勝手な妄想なんですけど、その女優さんのパーソナルな部分を重ねて見るというか、こういう部分を持ってるんじゃないかなっていうのを照らし合わせて脚本を各キャラクターにはめ込んでいるので。
- --- 麻生久美子さんには結構冷たかったんですか?(笑)。
大根 冷たくっていうかね(笑)、僕もどこかで幸世に自分を重ねて作ってる部分があるので、ヒロインに対しても幸世的態度で接するっていうのが演出の一つになっちゃうんですよね。ドラマの時は「俺、誰が好きなんだろう」っていう話ですから、野波(麻帆)さんが来れば野波さんが好きになるし、満島(ひかり)が来ればかわいいなって思うし、(松本)莉緒ちゃんが来ればフラフラするし。監督の姿勢が幸世の姿勢にそのままつながって、それが映像に現れるっていうのが『モテキ』なのでどうしようもないんですよね(笑)。
- --- 幸世のるみ子に対する目や態度、ひどいですよね(笑)。でも、るみ子に共感する女の子が多かったと聞きました。
大根 女子の特に30超えくらいの人達は共感するだろうなって思って作ったキャラクターですし、麻生さんにもそれは意識してもらいましたね。麻生さんには言いましたけどね、「大丈夫ですよ。絶対に女子に共感を得られるキャラクターですから」って(笑)。仕上がって公開されていろんな人の評判を聞いて麻生さんもそろそろ、「やってよかったかもしれない」くらいになってると思うんですけどね(笑)。
- --- 大根さんの中で最近の麻生さんのイメージには何か違和感がありましたか?
大根 麻生さんは何かもっとね、ドロドロした業の深い女性の部分があるんじゃないかなっていうのはずっと思ってたんですけど、最近はほんわかした役というかそういう雰囲気の役が多いじゃないですか。僕はそれを「アロマ系」って言ってるんですけど(笑)。もっとかっこ悪い麻生さんを見たいというか、そういう気持ちはありましたね。麻生さんは元々ものすごい力のある方ですから、多少無茶な(脚)本を作っておいても絶対そこに合わせて来てくれるなって思ってたし。現場では冷たかったですけどね、信頼はしてたんです。逆にまさみちゃんの方が危ういって思ってたからずっとキープしてあげなきゃいけないっていうのがあったんですけど、麻生さんは放っておくことで力を出すタイプなんじゃないかって思ってたんですけどね。
- --- 『モテキ』がいいなと思うことの1つは観終わった後、いろんな人と話したくなりますよね。「あの子のあのセリフ、分かる」とか「みゆきとるみ子、どっち?」とか(笑)。でも、わたしはるみ子の気持ちが全く分からなかったです。幸世が好きだから、彼の好きな音楽を聴いて、自分の好きな音楽はもう聴かないとか・・・相手がたとえ同じ趣味じゃなくても「自分はこれが好き」って言える女の子の方が魅力的だと思う方なので、何であんなに幸世のことを好きって言うんだろう、ただ淋しいだけなんじゃないかなって思ってしまいました。実生活で特にあの「るみ子ゾンビシーン」(詳しくは特典映像をご覧下さい!)みたいなああいうシチュエーションを想像すると、あれは麻生さんだからかわいいし、成り立ってると思うんですよね(笑)。
大根 まさにその通りですね(笑)。「幸世は何であんなかわいい子を振るんだ」って声も結構あるんですけど、それは麻生久美子だからですよね(笑)。実際にああいう人はもっとこう・・・幸薄感があるというのかな(笑)、幸薄な感じがあるというか。でも幸世の事を好きになった理由はわかりやすいですよ。初対面で自分の仕事を褒めてくれたから。「そのミニカー、ヤバい!」って。
- --- るみ子のキャラクターを描く上で参考にしたキャラクターはありましたか?
大根 いや・・・そんなにないですね。僕はOL好きなんで、OLっていう設定は最初から決めてたんですよね。実際にOLに知り合いなんてそんなにいないですけど、仕事が出来る人ほど恋愛が下手みたいなのがあって、その感じはちょっと入れ込んでみましたけどね。『モテキ』は共通して、女優さんに、具体的に「誰のこの役を観て参考にして下さい」みたいなのはないですね。基本、その人のあて書きで作っているので。ただ、幸世にフラれて次の日の朝、洗面所で自分の顔を鏡で見るっていうところだけは、『SEX AND THE SITY』の映画版の1でキャリーの結婚がダメになって、メキシコ旅行に行って、泣いたすっぴんの顔を鏡に映して見せるシーンがあるんですけど、そこは例外的に麻生さんに観てもらったかな。
- --- みゆきとるみ子のそれぞれのキャラクターに対する服装や持ち物もすごくリアルですよね。
大根 スタイリストは伊賀大介くんですね、麻生さんの旦那さんでもありますけど。伊賀くんと話したのは、みゆきに関してはまさみちゃんの武器、圧倒的なスタイルと足と笑顔を最大限使おうっていう。だから、季節はいつでもいいからとりあえず露出っていう(笑)。
- --- あの衣装がまさみちゃんをさらにかわいく見せていたと思います(笑)。
大根 かわいかったですよね(笑)。ただあんまりエロくし過ぎないでくれっていうことは言ったかな。
- --- あと、るみ子がDEAN&DELUCA(ディーンアンドデルーカ)のバックを持ってる感じとかすごくリアルでした。ああいうOLさん、あのバック結構持ってますもんね。
大根 ディンデルはマストアイテムですよね(笑)。Perfumeの3人がダンスリハに来た時に3人ともあのバック持ってたのはびっくりしましたけどね(笑)。
- --- 意外ですね(笑)。
大根 「わあ、OL!」って(笑)。でも、そこがいいんだろうなって思いましたけどね。
- --- 幸世もドラマ版に比べて成長している、社会人になったというところから、洋服や持ち物にも変化がありますね。
大根 1年経って就職もして、もうニートじゃないぞ、フリーターじゃないぞっていうのは意識して。ドラマの時も本当はスタイリストの伊賀くんにお願いしてたんですけど、スケジュールでダメになって、伊賀くんのお弟子さんにやってもらったんですけど、ドラマを観て自分がやれなかったことを「これは俺の仕事だったのに!」って本当に悔やんでて。でも、映画になるって時にそのお弟子さんに「もう1回よろしくね」っていうのが筋だと思うんですけど、伊賀くんに「どうする?」って聞いたら、「俺がやります。アイツには俺が言っておきますから」って言ってやってくれたんで、伊賀くんにとっても並々ならぬ気合いが入っていたというか。映画の幸世をどう見せるかっていうのはたぶんすごい意識してたと思うんですよね。でも、女の子を立てなきゃいけないので、幸世が衣装でそんなに目立ってもしょうがないっていうのもあって、いい頃合いのところを持って来てくれたなっていう。あとはTシャツとかブルゾンとかスニーカーとかは僕も含め、演出部、助監督とかの私物だったりもするので(笑)、その辺がいい具合にMIXしてたかなって。
- --- 衣装合わせの映像も特典映像に入ってますよね。
大根 どう観られるのかな、あれ(笑)。本当適当だなって感じに見えるんですけど、でもああ見えて結構ちゃんと考えてるんですけどね。
- --- 墨さん役のリリー・フランキーさんは、ドラマ版の時から「「モテキ」には出演したくない」とおっしゃっていたんですよね?
大根 そうですね。「ドラマで散々な目に遭った」っていうことはよく言ってますけどね(笑)。まあ、でもね、幸世に対する墨さんは僕とリリーさんとの関係でもあるので・・・と言いつつも、どこかでちゃんと応援もしてくれてたし、映画も「出たくない、出たくない」と言いつつ、最後には「やるよ」って言ってくれたし。出来上がればね、すごく遠まわしには褒めてくれるし(笑)。
- --- すごく遠まわしに(笑)。どうして出演はNGとおっしゃっていたんですか?
大根 まあ、1つはポーズですよね(笑)。「映画になりますんでよろしくお願いします」、「よし、分かった」っていうキャラクターではないので、まずは断ってみるっていう。あとは「ちゃんと(脚)本見せろ」っていう風にはずっと言われてて、とりあえず第1稿を作った時に自分でも全然ダメだと思ってたんですけど、それをリリーさんに見せたら、「これ全然おもしろくない。こんなんじゃ俺は出ない。(脚)本がおもしろくなるまで出ない」っていうのは一貫しておっしゃってて、自分がピンと来たのは第8稿とかそれくらいだったんですけど、その辺をまた見せたら「これだったら出てやってもいい」って。
- --- いろんな意見を近くで素直に言って下さる先輩でもあるといいますか。
大根 そうですね。だから、墨さんっぽいですよ、やっぱり。リリーさんとの飲み屋の会話とかも入ってますからね、リリーさんが言いそうなことっていうのは。「忙しくなるぞ〜」とかね(笑)。
- --- すごく絶妙なバランスでいろんなJ-POPが映画館のスクリーンで流れるのが本当に楽しかったです。いろんな選曲がされたと思いますが、特にこだわった曲というのは?
大根 えーっとね、レミオロメンかな(笑)。あれは結構悩みましたね。ああいうカラオケの場でみんなでバカみたいに盛り上がってる曲って何だろうなって。最初はね、ヱヴァンゲリオンの「残酷な天使のテーゼ」とかもいろいろ考えたんですけど、最終的には「粉雪」になりましたね。あのくらいのおっさんがよく歌ってますよね。ただサビが歌いたいだけっていう(笑)。
- --- 特典映像(【墨さんの部屋】に収録)を観て爆笑したんですけど、「粉雪」をあの長さで観ちゃうとヤバイですね(笑)。
大根 爆笑ですよね(笑)。
- --- あんなにヒートアップしてたんだって思いました(笑)。どんどんテンションが上がっていくあの様子は本編では観れないので。
大根 誰もあそこまで頼んでないんですけどね(笑)。
- --- 大根さんもカラオケに行かれたりしますか?
大根 そんなに行かないですよ。年に4〜5回くらいじゃないですかね、キライじゃないですけど。久保さんもそうだと思うんですけど、カラオケって行くと発見があるじゃないですか。「この曲何にも引っかかってなかったけど意外といい」みたいな。B’zとか典型ですけど、人が歌うことによって解釈が変わって、カラオケボックスに行くと歌詞とか意外とちゃんと見るじゃないですか。「ああ、こんなにいい歌詞だったんだ」みたいなこととか。だから、『モテキ』になぜカラオケが必要かっていうと、そういうところもあるんですよね。普通のBGMとかミュージカルとかライヴシーンとかだけだと僕好みというのかな、いわゆるちゃんとしてる・・・まあ、全部ちゃんとしてますけど(笑)、自分の趣味に偏りがちというか。そういうところで自分が今まで何にも思ってなかったB’zとかが、意外といいなと。竹内まりやはずっと好きだったんですけどね。ああいうところで観る人達も受け取り方がまたちょっと広がってくるし。『モテキ』においての音楽要素ってすごく大事なんですけど、そこはサブカルに偏らなくていいというか、それこそカラオケ的に楽しんでもらいたいというか。
- --- キャラクターが歌うことによって、急に曲がリアルに響くといいますか、近く感じますよね。
大根 そういうのはありますよね。女優さんがお芝居の中で他の女優とか芸能人の名前を言うだけでちょっとリアルになるとかね。
- --- そのリアル感でいいますと、幸世がnatalieに就職したとか、みゆきはEYESCREAMの編集者をしているとか、『モテキ』には具体的な固有名詞が結構出て来ますよね。
大根 ドラマを作った時にネットはNatalie、紙媒体はEYESCREAMが一番応援してくれた2媒体だったんですよね。だから、そのお礼というかね(笑)、共犯というか。前も盛り上げたんだから、映画も付き合えっていう感じで(笑)。あとは幸世が何らかの自分の趣味を活かして就職するっていう時に雑誌編集部っていうのも一瞬考えたんですけど、「あいつじゃ務まらんだろうな」っていうのはリアルに思ったんですよね。で、Natalieの人達とか会社とかを見てると「ここだったら幸世でも務まるかもしれない」っていうのがあって(笑)。Natalieは仕事はすごくちゃんとしてるんですけど、社長の大山卓也を含め、独特のヌルさというか、ルーズなというか(笑)・・・何て言ったらいいんだろう、どう言っても悪口になる(笑)。癒し系?うーん、違うな(笑)。まあ、そういうノリがあって、ここだったら務まるかもしれんなって思いましたけどね。あとEYESCREAMには内藤さんという美人編集者がいて、彼女がみゆきのモデルになってますね。
- --- 幸世とみゆきの出会いはTwitterだったりと、映画ではTwitterが多用されていますね。
大根 Twitterはね、僕より久保さんですね。今も結構使ってらっしゃいますけど、久保さんがすごくハマってた時期がちょうど映画の原作を描くタイミングだったんだと思いますね。あともう1つ言えないエピソードがあって、それを言えば「なるほど!」って思って頂けると思うんですけど(笑)、これは言えないんですよ。
- --- そう言われてしまうとかなり気になります(笑)。
大根 最近の若い子達はTwitterを映画モテキばりに使ってますよね。普通にデートしたりとか、「じゃあ、会いますか」みたいなことはあるみたいですよ。だから、僕はそれを「後ろめたくない出会い系」って言ってるんですけど(笑)。「Twitterで知り合った」って言われると「そうなんだ」って、何か納得しちゃう感じがありますからね。「出会い系じゃねえか」って思いますけど。
- --- 「「今夜はブギーバック(以下、ブギーバック)」の使用許可が下りたところから、「これはイケる!」と思った」と大根さんが何かに書かれていたような気がするんですが・・・。
大根 書いてたかな?(笑)。スチャダラパーは友達だし、苦労して許可取ったって記憶はないんですけど・・・N’ 夙川BOYS(ンしゅくがわボーイズ)かな?「物語はちと?不安定」の話かもしれないですね。ラストに何をかけるかっていうのが第7稿とか第8稿とかその辺りまでずっと決められなくて。っていうのは、ドラマのラストのクライマックスはイースタンユース(「男子畢生危機一髪」)だったんですけど、川村プロデューサー曰く、「映画はこれだけのメジャー展開なので、イースタンユースっていうわけにはいきませんよ」っていう話があって。「それなりにみんなが知ってるアンセムでいきたい」と。でも全然決まらなくて、最終的にあの曲しかないなって思って、そこの脚本を当て込んでYoutubeのURLを張っておいて、「この曲を聴きながら読んで下さい」って川村さんに渡したら返事が来て、「これしかないですね」って。「お前が言ってたのは何だったんだ!メジャー、メジャーって言ってたのに」って(笑)。
- --- N’ 夙川BOYSって、知らない人の方が多いですもんね?(笑)。
大根 ましてやオープニングのフジファブリック(「夜明けのBEAT」)とかテーマ曲の女王蜂(「デスコ」)より長くかかるっていうね(笑)。
- --- いいシーンで流れますしね(笑)。
大根 うん、2回もかかってるしね(笑)。むしろあれがテーマソングなんじゃないかって。
- --- 「ブギーバック」がエンドクレジットに流れたり、電気グルーヴの瀧さんが出ていたり、TOKYO No.1 SOUL SETのライヴ映像が流れたりもして、90年代プレイバック感もありましたが、あれは意図としてですよね?
大根 うーん、まあ・・・そうですね。90年代サブカルに後追いでハマってる幸世っていう設定があるので、そこは必然で出て来て然るべきだと思ってますね。僕はリアルタイムで体験してきた世代ですけど、その辺を懐かしむつもりで作ってはなくて、ソウルセットも電気もスチャも知り合いですけど、そこを単純に出したっていうことでもないんですよね。一応、幸世がそういった設定があるっていうのとあとはそこだけじゃなくて、在日ファンクとか女王蜂とかそれこそ夙川とかね、ちょっと新しい今のニューカマーをちゃんと出してるっていうところでのバランスは取ってるつもりなんですよね。でもやっぱり、ドラマと映画で共通してやってきたのは90年代以降のJ-POPとかJ-ROCKのアンセムを串刺しにしていくってことだったので、そういう意味で一番最後は「ブギーバック」だろうっていうのはありましたよね。邦画ってどうでもいいエンディング曲が流れるじゃないですか?(笑)。
- --- 流れますね(笑)。
大根 東宝作品にもありますけど(笑)、「え、急にEXILE!?」みたいな(笑)。いい感じでに終わったけど急に上手いんだか下手なんだか分かんないような曲が流れたりするのが本当に大ッキライなので(笑)。ああいうのって本当にどうしたいんだろうなって思うんですよね。最後まで見せたくないのかっていうね。だから、最後まで絶対席を立たせないエンドロールっていうのを意識しましたね。
- --- 【豪華版】に付く先着予約購入者特典DVD「みゆきの部屋&るみ子の部屋」は、豪華版に入っている特典とは結構違いますね。
大根 全然違いますよね。本当にここでしか観れないので、「絶対予約した方がいい」ってTwitterとかでも結構言ってるんですけど。あとで手に入らなかった人から絶対クレームが来ると思ってるんですよね(笑)。
- --- あれはクレームが来ると思います・・・ちょっとズルいです(笑)。
大根 でしょ?(笑)。観れなかった人から絶対クレームが来ると思いますよ。後々、ヤフオクで高値取り引きされるのは避けたいですよ。だから本当にね、絶対予約した方がいい!ってことはちゃんと書いておいて下さい(笑)。本当は僕はあの映像も特典映像の中に入れたかったんですけど、東宝の守銭奴が「先着予約購入特典にして予約を稼ぎたい」って言うので(笑)、まさみちゃんのさらにエロいシーンとかね、るみ子の寿司とかすごいですから!
- --- かわいい女の子がお寿司を食べるシチュエーションってちょっとエッチですもんね?(笑)。
大根 そうそう。麻生さんがスローモーションで4分間寿司食ってますから(笑)。
- --- 『モテキ』の【豪華版】Blu-ray&DVDをご購入予定の方は今のうちにご予約して頂くように(笑)ということで・・・本日はありがとうございました。
大根 ありがとうございました。
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© 2011 映画「モテキ」製作委員会
『モテキ』 Blu-ray&DVDリリース インタビュー記念! 大根仁監督直筆サイン入りプレスシートを3名様にプレゼント!
ご希望の賞品を選択後、「コメント欄」には本インタビューの感想、気になる公開予定作品等を全角でご記入下さい(いくつでも可)。続いて、必要項目をオンラインにて登録し、ご応募下さい。
※応募締切 2012年4月22日(日)
※1. 応募には会員登録が必要になります。
(新規会員登録は⇒コチラ)
※2. 会員登録のお済みの方は、詳細と応募フォームへ
※応募の受付は、終了いたしました。たくさんのご応募、ありがとうございました。
※当選は賞品の発送をもってかえさせて頂きます。
【豪華版】は超豪華映像が収録された特典DISC付きッ!!!
【Special BOX+豪華デジパック仕様】
【仕様】2枚組(本編(118分)BD1枚+特典DVD1枚)
【映像特典】 〜超豪華映像が収録された特典DISC付き〜(184分)
■The backstage of モテキ・・・大根仁監修!映画『モテキ』オリジナルメイキング映像!
■モテキ secret room・・・ありえない!?未公映像一挙公開!!
1.【幸世の部屋】 バナナマン取材/神聖かまってちゃん取材/漫画家山下先生取材/幸世カラオケ「衝動」
2.【墨さんの部屋】 ナタリーおっぱい会議/墨さんの乳輪講座/墨さんのカラオケ「粉雪」
3.【みゆきの部屋】 「S#87 みゆきの部屋」フルバージョン/【るみ子の部屋】 るみ子カラオケ「カムフラージュ」
■Live house モテキ・・・ライブシーンを完全収録!
1. ジョニー大蔵大臣「安みぐみのテーマ」/2. ナキミソ「友達じゃがまんできない」/3. 女王蜂「デスコ」/4. N'夙川BOYS「物語はちと?不安定」
■extra モテキ・・・ファン垂涎のスペシャル映像集!
1. LOFT/PLUS ONE(吉田豪+杉作J太郎+掟ポルシェ)/2. LOFT/PLUS ONE(吉田豪+杉作J太郎+掟ポルシェ+森山未來+長澤まさみ+麻生久美子)/3. オープニングテーマ:フジファブリック「夜明けのBEAT」-モテキ mix-/4. 完成披露パーティー&完成披露試写会舞台挨拶/5. 初日舞台挨拶
■モテキ spot 7ver.
1. 特報/2. 予告/3. TVスポット15秒/4. TVスポット15秒“モテ篇”/5. TVスポット15秒“ラブ篇”/6. TVスポット30秒“ガールズトーク篇”/7. TVスポット15秒“観客コメント篇”
【封入特典】 ■大根仁監督書き下ろし日記
■大根仁監督書き下ろし日記 「モテ記2」掲載 ブックレット
【音声特典】 オーディオコメンタリー
■ボーイズトーク(森山未來&大根仁監督)
■ガールズトーク(長澤まさみ&久保ミツロウ)
※特典ディスク&封入特典、音声特典:DVD 豪華版と共通
【Special BOX+豪華デジパック仕様】
【仕様】DVD2枚組(本編(118分)+特典)
※特典ディスク&封入特典、音声特典:Blu-ray 豪華版と共通
※モテキ secret roomに収録されている【みゆきの部屋】【るみ子の部屋】は、豪華版先着予約購入者特典の「みゆきの部屋&るみ子の部屋」の映像とは異なります。
【仕様】BD1枚(本編118分)
【映像特典】 モテキ opening theme: フジファブリック「夜明けのBEAT」 -モテキ mix-
【音声特典】 オーディオコメンタリー
■ボーイズトーク(森山未來&大根仁監督)
■ガールズトーク(長澤まさみ&久保ミツロウ)
※DVD 通常版と共通
【仕様】DVD1枚(本編118分)
【映像&音声特典】 ※Blu-ray 通常版と共通
STAFF&CAST
監督・脚本:大根仁
原作:久保ミツロウ 「モテキ」 講談社イブニングKC
オープニングテーマ:フジファブリック 「夜明けのBEAT」
メインテーマ:女王蜂 「デスコ」 (ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ)
出演:森山未來
長澤まさみ 麻生久美子 仲里依紗 真木よう子
新井浩文 金子ノブアキ リリー・フランキー
モテキ=J-POPミュージカル!?大根マジックが炸裂する、ポップミュージックと映画との実験的かつ独創的融合!
「映画版モテキ」に取り組んだ激動の日々を監督本人が日記風に綴る!撮影秘話やキャスティング秘話など、充実した1冊!
これまでの「モテキ」は・・・
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- モテキ 豪華版 Blu-ray 【Special BOX+豪華デジパック仕様】
- 2012年3月23日
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- モテキ 豪華版 DVD 【Special BOX+豪華デジパック仕様】
- 2012年3月23日
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- モテキ 通常版 Blu-ray
- 2012年3月23日
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- モテキ 通常版 DVD
- 2012年3月23日
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- モテキ的音楽のススメ 映画サントラ
- 2011年08月31日
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- モテキ的音楽のススメ Covers for MTK Lovers盤
- 2011年09月21日
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- モテキ的音楽のススメ MTK PARTY MIX盤
- 2011年09月14日
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- 大根仁: モテ記 映画『モテキ』監督日記
- 2011年09月
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- モテキ Blu-ray BOX
- 2011年08月19日
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- モテキ DVD BOX
- 2010年11月26日
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- モテキ的音楽のススメ 〜土井亜紀 林田尚子盤〜
- 2010年09月08日
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- モテキ的音楽のススメ 〜中柴いつか 小宮山夏樹盤〜
- 2010年09月08日
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- 久保ミツロウ: モテキ 1
- 2009年03月
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- 久保ミツロウ: モテキ 2
- 2009年08月
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- 久保ミツロウ: モテキ 3
- 2010年01月
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- 久保ミツロウ: モテキ 4
- 2010年05月
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- 久保ミツロウ: モテキ 4.5
- 2010年09月
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大根仁
1968年東京都生まれ。堤幸彦監督のADとしてキャリアをスタートさせ、テレビ演出家・映像ディレクターとして、「TRICK」をはじめとする数々の傑作ドラマ・PVを演出。なかでも「劇団演技者。」、「週刊真木よう子」、「湯けむりスナイパー」など深夜ドラマでその才能を発揮し、話題作を連発。業界内外から高い評価を受ける。テレビドラマや舞台の演出を手掛ける傍ら、ラジオパーソナリティ、コラム執筆、イベント主催など幅広く活躍する先鋭的なクリエイター。脚本・演出を手掛けたドラマ「モテキ」(TX)が2010年7月より放送開始し大ブレイク。天才として映画監督デビューを熱望されてきた最後の大型新人がついに『モテキ』で映画界に参戦!
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