2012年2月6日 (月)
【レポ】【GET BACK SESSION】 bloodthirsty butchers<大阪公演>@梅田Shangri-La (2012/1/26)<東京公演>@渋谷WWW (2012/1/27)
Photo by 田中慎一郎
【GET BACK SESSION】 bloodthirsty butchers 2012.1.27 (wed) @ 渋谷WWW ライブレポート過去の作品を音源どおりに演奏するという趣旨の元に行われる“HMV GET BACK SESSION”その記念すべき第一回に登場するのがbloodthirsty butchers。作品は99年発表の『未完成』。会場は渋谷のwww。元々映画館だったこのライブハウスは、フロア部分が階段状になっているため、どこの場所からもステージが見渡せる。 スタート前から90年代のオルタナナンバーが会場に流れ、雰囲気は最高潮。20時を少し過ぎて始まったステージ。歓声と共にメンバーが普段とかわらない、リラックスした様子で登場した。不協和音のアルペジオを奏でる吉村秀樹のギターが鳴り、田渕ひさ子のギター、射守矢雄のベース、小松正宏のドラムが重なり、『未完成』の1曲目「ファウスト」が鳴り響く。 この“HMV GET BACK SESSION”、通常のライブと大きく違う点はセットリストが全てわかっているということ。ライブの楽しみの一つでもある、次は何の曲をやるのだろう?という期待感がここには存在しない。がしかし、これが想像以上に楽しい。1曲目に「ファウスト」をやるということを完全に知っているのに楽しい。予想以上の“くるぞくるぞ”感、そして実際に「ファウスト」が鳴り響いたときの高揚感はたまらないものがあった。 ハイ気味の吉村秀樹と、ミッド気味の田渕ひさ子、異なる音域のギターが絡み合い、心地よいノイズの海に体をゆだねる。ギターフレーズの隙間をぬうように奏でる射守矢雄とベースと、手数の多い小松正宏のドラム。本当に見事なアンサンブルはブッチャーズを特別なバンドにしている大きな要因であろう。 今日来ているお客さんは、それぞれに『未完成』という作品に思い入れがあるだろう。それぞれが、1曲1曲をじっくりと確かめるように、普段のライブとはまた違った雰囲気の中ライブは進んでいった。MCも一切なく進行していったこのライブは、本当に何か特別な時間をすごしているような不思議な感覚におそわれた。 10年以上も前に発売されたこの作品。現在入手困難のこの作品(※このイベントに合わせて紙ジャケにてHMV限定復刻!)が、いまだにこれだけのパワーを持ち、多くの人をひきつける。発売された当時は田渕ひさ子はまだメンバーではなかった。彼女が加わることで、現在のブッチャーズとしての『未完成』、単なる過去音源の再現ではなく、進化した『未完成』を聴かせてくれた。アルバムのハイライトでもあり、このライブの最大の見せ場でもあった、アルバムラストナンバーの△。永遠に続くかのような後半のカオスパートは、ループするリフレインと空間を埋め尽くすノイズギターで、磁場が狂いだすような感覚に襲われる。会場の雰囲気もさらに熱を帯びこの日一番のカオスな空気感は、日本のオルタナティブの雄であるブッチャーズの凄まじさをまざまざと見せ付けられた。 演奏が続く中、一人一人メンバーがステージから去っていく。去り際に吉村秀樹がみせたピースサインがこの日のライブの充実度を物語っていたように感じる。最後までステージに残された射守矢雄の印象的なベースのリフレインがやみ、『未完成』再現ライブは終了した。 そして鳴り止まない拍手の中、ブッチャーズが再登場。シングル「△」の中から2曲、そしてシングル「happy end」の中から1曲をこの日のボーナストラックとして演奏。さらにダブルアンコールではミニアルバム『△』に収録されている「襟がゆれてる。」を披露。『未完成』と双子のような関係性をもつ『△』、そして同時期の楽曲をボーナストラックとして選んだことにより、本編であった『未完成』ライブをより深いものにしてくれ、またとても贅沢な時間を過ごさせてくれた。 ライブ終了後、エントランスでたむろする人達の顔は皆ほころんでいた、 あの時代の空気を感じながらも、現時進行形で進化を遂げる。決して懐かしさだけではない、未来へと続く意志を感じたライブだった。発売からどれだけ年月が経とうとも決して色褪せない、そして常に新鮮な何かを感じることができる、それが名盤と呼ばれるものだとあらためて感じた。
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