蔭山対談 VS 陰陽座/瞬火2

2011年12月19日 (月)

interview

陰陽座

--- (前頁からの続き)
--- 蔭山豊(以下K)いや、もちろんリミックスするし、リテイクっての? 録り直ししたパートも多いよ。それに新曲も2曲追加してるわ。ミニ2枚をそのまま合体させただけは、そらアカンやろ?(笑)。リミックスでも反感買いそうなリリースやのに、そのままは誠意なさすぎるやろ(笑)。でも『LOVE & DEATH』アルバムは既にミニを持ってる人よりも、新しく興味持ってくれる人用と考えてるから。ミニ持ってる人はリミックスやリテイクに興味が無かったら買わんでも楽曲だけならそれで十分楽しめるやろうし。

瞬火(以下M) ちなみにボクからの素朴な疑問なんですけど、今回蔭山さんは対をなすものとして「DEATH」と「LOVE」と設定しているじゃないですか。単純に対義語とするなら「DEATH」ならば「ALIVE」とか「LIVE」…要するに「死」には「生」ですよね。この「生-ALIVE」を「愛-LOVE」としたのは何か重要な意味があるんですか?

--- K: まぁ、生きる事は愛する事やん? まぁ、そういう事やん(笑)。

M: なるほど、つまり愛が無ければ命は生まれ無い、というような意味ですか?

--- K: あ、それエエな(笑)。それにしよう。うん、それ(笑)。

M: いやいや(笑)。ホントのところは?

--- K: ホンマは俺が読んでた本で、中世の画家達が結局最後に描く絵は「LOVE or DEATH」というクダリがあったんよ。最終的には「愛ってなんや?」「死ぬってなんや?」みたいな事を描きたがるようになるらしくて…。どっちもカタチが無いものやし、今みたいに研究もそんな進んで無いような時代に、人は何の為に生まれて死ぬんや? みたいな事を悶々としてたんやと思うとね。今でもその事に答えが出てないんやから、当時の人なら…、って考えてたらドドーッと曲が降りて来た訳なのよ(笑)。だから「ALIVE & DEATH」じゃなくて『LOVE & DEATH』でエエねん。本のクダリからヒントを得たタイトルやから。
マニピュの新作の事は、もうええわ。これ以上喋ったらプレッシャーがデカくなるわ(笑)。
ところで、もうツレになって10年以上経ってるけど、そもそもなんで仲良くなったか覚えてる?

M: 2000年の8月にイベント『HARD SHOCK NIGHT』で共演させてもらったときがキッカケですよね。会場はBIGCATでしたね。楽屋が同じで、最初はそれはそれは「こんな恐そうなバンドと楽屋が同じになってもーた!助けて!」って思いましたけど(笑)、気さくに喋ってもらえたし、ステージも格好良かったしで、一気に印象が変わりました(笑)。それからメンバー全員、飲みに誘ってもらったりして。

--- K: せやなぁ、あの楽屋は酷かったなぁ。メンバーだけやなく、ローディやスタッフも酔っ払いで、ガラ悪かったし、バリバリ迷惑かけたなぁ。チャリンコで楽屋に突入して来たヤツまで居たもんなぁ(笑)。今、思い返すとアノ頃はホンマ悪かったわ。瞬火らは沢山の人で飲んだり騒いだりするのって苦手やったやろうに、俺、まぁまぁそんなヤツやったやん? なんか人集めてパァーって飲んで騒いで、みたいなロックライフが良いと思ってた頃やったから…。そんなヤツらばっかり周りに集まって来よるし…。

M: いやいや、バンドとレーベルだけじゃなく、バーもやってたんですし、人を集めて面倒見て、というのは、僕らとはまったく次元が違う大変さがあると思いましたし、だからこそじゃないかと思いますけどね、ウマが合ったというのも。色々お世話になりましたしね。

--- K: 世話になったんは俺のほうやけどな、実は(笑)。沢山影響受けたよ。
結局、ロックが好きでその結果騒いでるんか、騒ぎたいからロックしてるのか、2つのタイプに分かれるという事とか、瞬火見てて何となく気付かせてもらったからな。ちなみに俺、バリバリの前者で、ロックが作りたくて仕方ないねん。だから騒ぎたい為にロックを使ってるヤツとはちゃうねん。そんなこんなを考えた結果、「もうエエわ!」ってなってバーも閉めて、あまり飲みに出たりとかもせんと、作曲とかロックする事だけに集中することにしてねぇ。そういうのを前面に出してたら、ホントにロックしてるナイスな奴等以外とは縁が遠くなったわ。でもそれでエエとも思ってる。俺、ロックしたいだけやから(笑)。だから、っちゅう訳ちゃうけど、ツアーではまぁまぁ騒ぐよ(笑)。80年代メタルPVで言うたら、ホテルの窓からテレビ落とすくらいの勢いで(笑)。

M: ほうほう……って、テレビ落としちゃダメでしょうが(笑)!いけませんよ。周りの宿泊客の方に配慮しないと。ただえさえ、僕たちは見た目だけでも不愉快がられる存在なんですから、せめて素行のほうでは他人様に迷惑をかけないように!というのが僕たちのスタンスです。陰陽座の4人は、騒ぐのはステージ上だけです(笑)。マニピュもそうしてください!

--- K: すんまへん。善処します(笑)。
ところで『鬼子母神』の話しに戻すけど、瞬火は今回も少しくらいギター弾いてる? 俺は、「啾啾」のギターメロディは瞬火が弾いてるな、って思ったよ。瞬火が弾くギターの定義ってのが俺の中にあるんやけど、それに「啾啾」はハマッてたからね。まぁ、招鬼や狩姦が、瞬火に近いニュアンスで弾いてたら、節穴の俺には分からん事やけどね(笑)。

M: そこはおっしゃる通り僕が弾いてますね。お目が高い!と言うべきでしょうね(笑)。

--- K: あ、当たった? やっぱり(笑)。フレットが擦れるほど力強い音が聴こえるねん、瞬火のギターからは。なんやろ、ベンド(チョーキング)のスピードとかも「おっ、他と違う。」って気付いてしまう時があるねん。フィーリングっての? その雰囲気みたいなんが聴こえてしまうんやわ。重箱の隅みたいな聴き方で悪いけどな(笑)。 あと、ブレイクの音の消し方とか、俺とのアプローチの違いがあって凄く興味深く思えたわ。例えば、「産衣」のイントロは、アタマのブレイクはキッチリと音を切ってるけど、リズムが入って来たあとは、無音というギターを聴かすという感じでキッチリは音を切ってないやん? あえてギターの息づかいを聴かす、みたいな感じで、凄く興味深かった。俺、そういうのもノイズと考えてバシッと切るからね。

M: それ、まさにMEGADETH『COUNTDOWN TO EXTINCTION』の頃のデイヴ・ムステインですね。

--- K: あ、そうやな。それ、瞬火がプロデュースしてくれたマニピュの2nd(『THE LEGENDARY BLACK JADE』)の時も同じ事を俺に言うたな(笑)。今、思い出した(笑)。 俺、マジでその頃よりも、その傾向が強くなって、今ではヴォーカルのブレスまでバンバン切るよ。

M: えぇ〜、もったいな〜(笑)。サウンドアプローチとしては、ボクは真逆ですね。ギターにしても弾き始めや、弾き終わりに鳴る「ギュッ」って音は余程のことがない限り残します。それじゃないと弾き手のニュアンスが完全には出ないですし、僕の個人的な考えでは、楽譜にしたときの表記上の音符の長さだけが演奏なのではなく、その前後の息づかいというか、空気感まで含めたものが演奏だと思っていますので、それを切るという発想は、何か意図があってギミック的にやる以外では浮かばないですね。もちろんヴォーカルのブレスは絶対に活かしますよ。

--- K: 俺、自分でもおかしな方向へ向ってるとは分かってるんやけど、病気みたいなもんで、これを追及すれば整合感が増すと考えてて、人間味を出すより、むしろ無機質で良いと思ってるような所があるねんな。もちろん演奏自体や、曲には魂込めてるよ。

M: まぁ、それはどっちが正解っていうわけではなく、目指すサウンドの方向性の話ですから、もちろんしたいようにするべきだと思いますよ。聴く人にもよるでしょうから。そういうヴォーカルの吐息やギターのギュッって音が好きな人も居れば、そういうのが一切ないのが好きな人も居る訳ですから。

--- K: そうやなぁ。俺は結果的にそういう音が好きで作りたいんやけど、時間とカネをかければ綺麗に音が整ったレコードが作れると思い込んでいるトラウマみたいなものがあるかも知れないわ。長く低予算での制作を余儀なくされて来た俺としては…。
今は自分のプライヴェートスタジオで、7割くらいの作業を完結させてるから、時間はかかるけど、予算は気にせず作業に没頭出来るから、過去に出来なかったノイズ消しをやりまくってんのかも知れないなぁ。ベードラとベードラの間にスネアの音とかが入り込んでたりするやん? あんなんも消しまくってる。まさにとりつかれたようにノイズ切ってエディットもしまくってるわ(笑)。

M: それは何というか、とりつかれてますねぇ、何かに(笑)。でも、もちろん陰陽座だって結成当時は予算なんてないも同然でしたし、今でも厳格なコスト意識を持って録音に臨んでいますから、別にマニピュと条件が違うとは思いません。

--- K: うん、もちろん分かってるよ。

M: 僕も今回の録音から自宅にProTools HDを導入したのですべての作業が効率的に行えるようになりましたが、そこに於いても逆です。僕は本当に音楽的でない単なるノイズは除去しますが、どちらかというと弾きはじめや弾き終わりに美味しいノイズが乗るまでやります(笑)。もっとも、今はDAW全盛で、極端な話、バンドでちゃんと演奏してなくてもパーツを録ってコピペしたら作品完成、っていうようなこともかなり簡単にできる時代ですからね。一聴して分かることですが僕らはそういう作り方はしませんし、蔭山さんもそこまでやる気はないでしょうけど。でも、それを別に問題としないというか、そういう機械的に整った音源を好む人もいるくらいですから、それを求める作り手もいて良いでしょうし、それに抗って人間的な部分を整合性の中に最大限に盛り込みたいと思う僕たちみたいなのもいてもいいと思いますよ。とにかく、どんなやり方だろうと作りたいものが作れて、聴きたいものが聴ければそれでいい、と思います。

--- K: うんうん、その通りやね。
そういえば俺、今は完全に一人で作った曲をメンバーに提示して…、というような作曲方法やけど、これは元はといえば瞬火がしてたような事をしたかった結果やねん。 テープとかのMTRには限界を感じてたし、瞬火が持ってたROLANDのVS-1680見て良いなぁ、って思ったから俺は当時の最新機種やったVS-1880を買った。あれを手に入れた事で色々と可能性が広がったわ。まぁ、俺はスグにDAWに移行したんで、ほとんど使わなくなったけど…。

M: 僕の手元でドラムからヴォーカルまでフルアレンジを施したデモを作ってからメンバーに聴かせる、というのはずっと続けていますね。それが陰陽座に最も適したやり方ですし、それができるというのは、メンバー4人の結束の強さでもあると思っています。そのやり方に少しでも不満がある者がいたら成りたたないでしょうけど、全員が「それが一番良いやり方だ」と確信していれば、一切舵がブレることのない作品を作ることができますからね。それだけメンバーから信頼されるために、僕は常にそれに相応しい実績、つまり良い曲を作るために自分を追い込み続けています。…まぁとにかく、それが正しいというわけでもないですから、人それぞれ、でいいでしょう(笑)。

--- K: 俺もそう思います(笑)。 (ここでマネージャー氏からタイムアップの連絡が入る) 長くなっちゃってゴメン。『鬼子母神』のシンフォパートの事とか、そもそも何故チューニングが今までと違うんや? とか、とても興味があるし、まだまだ訊きたい事もあるんやけど、それはまた個人的に訊くわ(笑)。もしくは第2弾でもしよか?(笑)。 最後に陰陽座としての今後の予定って?

M: 来年(2012年)の春に、アルバム『鬼子母神』を引っさげたツアー『絶界の鬼子母神』が行われます。『鬼子母神』を完全再現しますので、アルバムを聴いてくださった方には絶対に観に来ていただきたいですね。その後も弛まず一歩一歩前に向いて進む予定です。今悩んでいるのは15枚目のアルバムのタイトルなので(笑)。少なくとも11から14までは決定済み、ということです(笑)。

--- K: あいかわらずやなぁ(笑)。じゃあ、とにかく応援してるわ。 あと、くれぐれも俺の悪口は言うなよ(笑)。

M: 大丈夫です。蔭山さんが帰るまでは絶対言いません!(笑)

--- K: ちょ、おい!!(笑)。
という訳で瞬火氏との対談をお届けしやした♪ 楽しんでもらえやした? 瞬火氏がとてもキッチリとした、ジェントルマンなのは皆さんもよく知っとるとは思うけど、実はフランクで楽しい男でもあるんでっせ。その辺が少しでも伝わればこの対談は成功やと思ってま。

今、自分で読み返してみても瞬火氏のレコーディングや作曲に対しての姿勢や、陰陽座というバンドの意識の高さなんかも、垣間見れて面白い対談になったと自負ってますわ。 とりあえず、皆さんはまず原作脚本『絶界の鬼子母神』、そしてアルバム『鬼子母神』を絶対に購入せなあきまへん。それくらいナイスな作品って事っす。そしてアルバムを聴きこんだ後は春のツアーに行くべし〜。

あ、2月発売予定のマニピュの新作『LOVE & DEATH』も忘れんといてや〜☆

では、また次回をお楽しみに〜♪
蔭山豊(MANIPULATED SLAVES / Lights Out RECORDS)


profile

1999年、瞬火・黒猫・招鬼・狩姦の4人により結成。男女ツイン・ヴォーカルとツイン・リード・ギターによる変幻自在な音楽性により、日本文化に徹底的に拘った唯一無二の世界観を結成時から現在まで淀みなく展開。

インディーズでアルバム2枚を発表した後、2001年、キングレコードよりメジャーデビュー。

以来、精力的な音源制作とライヴ活動を続け、新作『鬼子母神』ですでに通算10作目となる。
全都道府県を2周しているという事実が物語るように、生粋のライヴバンドとしても定評がある。

Members:
■ 黒猫(くろねこ) - vocal
■ 瞬火(またたび) - Bass/vocals
■ 招鬼(まねき) - Guitar
■ 狩姦(かるかん) - Guitar