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【レポ】 宇宙人と透明雑誌

Friday, November 4th 2011

【レポ】 宇宙人と透明雑誌

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(1〜5 . oono yuuki / 6〜8 . 宇宙人 / 9〜20 . 透明雑誌)
PHOTO : 田中慎一郎
http://shinichirotanaka.net/

HMV THE 2 MAN 宇宙人と透明雑誌 ライブレポ

10月31日、ハロウィンのその日に渋谷CLUB QUATTROにて開催されたHMV主催のライブ企画「HMV THE 2 MAN〜ジャパンツアー(仮)編〜」。好評を博した第1弾「ももくろとかまってちゃん」に続く第2弾。「感覚的に新しい組合わせ」というキーワードのもと、今回ブッキングされたのは「宇宙人と透明雑誌」。どちらもHMVが今最も注目している二組の新人バンドだ。

18時のオープンから、徐々にお客さんの数も増え始め、スタート予定であった19時には渋谷CLUB QUATTROは、ほぼ満員の状態に。この日の出演アーティストへの注目度の高さが伺える。

そしてフロアもざわつく中、まず登場したのがopening actのoono yuuki。「2MANって言ってるのに3バンド!?」というツッコミもあったかと思うが、昨年4月にリリースされた初フル・アルバム『stars in video game』の際、バイヤー激押し企画「HOT PICKS」に選出するなど、HMVがどうしても紹介したかったアーティストだったのでご理解頂きたい。事実、この日の演奏も素晴らしい出来であったので、本当に価値あるものであったと思う。この日のライブはチェロ、フルート、スティールパンを含む大所帯仕様。CDで聴くよりもずっとずっとアグレッシブな演奏に驚かれた方も多い事だろう。MCでoono yuukiが語った「かつて毎年年末には渋谷CLUB QUATTROにイースタンユースを見に来ていた」というエピソードも大いに納得のいく、エモーショナルなインストロックだったと思う。アイリッシュトラッドのカバーなども交え、oono yuukiという人の音楽的な懐の深さを、バンドが感情的に、そして立体的に表現していく。そんな魔法のような30分があっという間に過ぎていった。

続いて登場したのが、宇宙人。そのバンド名然り、いまだ実態は謎だらけのバンドだ。東京でのライブもほとんどやっていないため、ほとんどの方が初見だったのではないだろうか?不穏な電子音からスタートしたこの日のライブ。やがて、脱力した無機質な女の子ヴォーカルが中毒性の高いメロディーをうたい始める。異常に高い演奏力で奏でられる熱く人間的なロックサウンドと、その無機質な女の子ヴォーカルの対比が妙に癖になるようだ。相対性理論と比較される事も多いバンドだが、やはり明らかに違う。この日のライブで最も感じられたのは、このバンドのサイケデリックな部分だった。ダークなサイケデリックなサウンドとポップなメロディーが渾然一体となって陶酔感を煽ってくる。LIVE前、透明雑誌に宇宙人のCDを聴いてもらい、その感想をもらったのだが、その中で彼らは「もしかしてゆらゆら帝国の血が流れているかも」と表現してくれた。まさにその感想は的確で、宇宙人はゆらゆら帝国の系譜で語られるべき存在なのだろう。一切のMCもはさまず、見事な演奏を聴かせ、あっさりと去っていく宇宙人はかっこ良かった。中にはポカンとしてしまったお客さんもいるだろうが、中毒性の高いメロディーと異質なサウンド構成は、きっとどこかに刻み込まれている事だろう。ちなみに余談だが、ヴォーカルの女の子は、ペットボトルの水をコップに移しかえて飲むタイプのお行儀の良い宇宙人だった。

この日のラストを飾ったのは透明雑誌。アジア・オルタナティブの新星from台湾。既に一部では大きな盛り上がりとなっており、2度目となる今回の来日を心待ちにしていたファンも多かった事だろう。ステージに登場する前からフロアには人が溢れ、異様な熱気すら感じられるようだった。演奏が始まるや、そのあらくてむき出しな演奏に反応した身体が自然と動き出す。ギターかき鳴らして、声が枯れても叫び続けるストレートで熱いロックンロールに、単純に胸高鳴らずにはいられない。興奮状態の観客がダイブを決める姿は美しいほどに必然としか言いようがないのだ。透明雑誌は「台湾版ナンバーガール」というキャッチーなフレーズで紹介されているわけだが、決してナンバーガールをそのまま模倣した類のバンドではない事は、音を聴いた方はご存知のはずだ。確かにナンバーガールを初め、PixiesやSonic Youthなど、多くのバンドからの影響は伺える。それらに対する憧憬とリスペクトを含みながら透明雑誌オリジナルなサウンドを表現し存在感を放っている。あえて似ていると言うならば、それは「匂い」なのだろう。それこそナンバーガールがシーンに登場した90年代中盤のあの「匂い」。ここから始まろうとしている全く新しいムーブメント、今までとは違った価値観に対するドキドキするような緊張感、時代の高揚感。それらが透明雑誌のライブに確かに含まれていたんだ。拙さが愛らしくもある日本語でのメンバー紹介の後、「性的地獄」等の楽曲でこの日最高潮の盛り上がりを見せるフロアの一体感を感じながら、僕は激しくそう感じていた。本編最後ではヴォーカルの洪申豪が客席にダイブ。そんな所作のどこを切り取っても絵になるようなロックンロールな奴らだった。アンコールに応じ再びステージに上がる透明雑誌。最後に演奏した楽曲は「世界はやはり滅びたらいい」。刹那的に終幕するその感じも、どこまでもかっこいいバンドだった。

大好評のうち幕を閉じた「HMV THE 2 MAN〜ジャパンツアー(仮)編〜 宇宙人と透明雑誌」。三者三様にオーディエンスの気持ちに入り込むような、感情的な演奏が印象的だった。今後のシーンへの広がりが非常に楽しみなバンドたちだ。

「HMV THE 2MAN」次回はがらりと趣向を変えて「しょこたんとゴールデンボンバー」をブッキング。11/20にSHIBUYA-AXで開催されるこちらもお楽しみに!

文:松井剛

セットリスト

oono yuuki

? 光
? saginomiya counterpoint
? S/N
? +−
? kesh jig(トラディショナル)
? haruno
? サハラ




宇宙人

01. おばけ
02. キンバリー先生と朝食
03. ふりかえる、フレネミー
04. あこがれのネクタイ
05. エイのうらみたいないきもの
06. 脳がかゆい
07. ヤノコーイチ
08. アメーバダンス
09. 点
10. ある日のできごと

透明雑誌

01. 夜明け晩餐
02. DICTATOR GIRL
03. 君は僕が見た自殺回数最も多い女の子
04. ANORAK
05. 僕たちのソウルミュージック
06. 透明雑誌FOREVER
07. 九月教室
08. 性的地獄
09. YOUNG HEART GUITAR
10. 時速160kmのギター、ベースとドラム
アンコール : 世界はやはり滅びたらいい

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