カーティス・メイフィールドは、70年代前半において、神懸り的に何枚もの名盤を生み出したが、中でもソロ名義第1弾、1970年の『Curtis』は飛び抜けている。
実際、その後の『Superfly』や『There's No Place Like America Today』等も、この時代のソウル・ミュージックを代表するような、かなり凄い内容のアルバムである。
が、やはり1枚選べとなると『Curtis』に敵うアルバムはない。
特に、2「The Other Side Of Town」から3「The Makings Of You」、4「We The People Who Are Darker Than Blue」と続く3曲は、ソウル・ミュージックという範疇を完全に超えている。
スティーヴィー・ワンダーなら、僕は『Music Of My Mind』。
一般的には、この『Music Of My Mind』の後の3枚(『Talking Book』〜『Fulfillingness' First Finale』)や76年の『Songs In The Key Of Life』辺りが有名で人気もある。確かにそれらも充実した内容のアルバムである。
まあなんでしょう。この人の場合、どの時代も変態的に凄くて、楽曲はいつの時代も素晴らし過ぎるものを作っているので、70年代前半に絞って語る必要もないのですが、でも音と演奏が一番良いのはこの頃なんですよ。
そこは間違いないので、続けますね。
74年の『Fulfillingness' First Finale』あたりになると、サウンドもしっとりとしてきて、音も上手くまとまってきているんだけど、この『Music Of My Mind』は生々しさや粗さが違う。
若さ故の熱が音で感じられる作品なのです。
そして、2「Superwoman」の出来が半端じゃない。この曲は、二部構成になっており、前半も後半もそれぞれで完全に独自の世界を作り上げている。すごく気持ちよくてポップなんだけど、そこら辺のポップスとは全然違う。これはこの人にしか作れなかった。そう思わざるを得ない出来なわけです。
これを、21歳で発表しちゃったわけですからね。
それは天才と呼ばれるわけだ。
僕の好みを言えば、このアルバムでも、元気でファンキーなセブンス系の「Love Having You Around」や「Keep On Running」などはそんなに興味がなかったりする。
「Superwoman」もそうだけど、「Seems So Long」や「Happier Than The Morning Sun」、「I Love Every Little Thing About You」など、ポップでメロディーがきれいな曲の方が好きなのだ。
繰り返しになるけど、70年代以降のスティーヴィー・ワンダーのアルバムはどれも凄いので、気に入った人は調べてどんどん聴いていってもらいたい。
マーヴィン・ゲイは、どれか1枚となるとちょっと迷う。
『What’s Going On』(1971年)と『Let’s Get It On』(1973年)、『I Want You』(1976年)。この3枚はどれも甲乙付け難い出来。
有名度で言ったら、それはもう『What’s Going On』の圧勝なんだけど、これは、歌詞の内容や作られ方が画期的だったという理由で評価されている向きもあり、音だけを聴くならば、『I Want You』の方が何度も聴いてしまうような深みがある気がする。
と言いつつ、僕、『What’s Going On』も気持ちよく聴いているんですけどね。
この際、『Let’s Get It On』含め、どれも凄いアルバムだと言い切ってしまったほうがいいかな。
いや、でもせっかくこういう機会なので、無理にでも1枚選んでおきます。
というわけで、76年の『I Want You』ですね。
「76年って、70年代の前半じゃないじゃん」とか細かいことは言わないでくださいね。