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『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』 代々木忠 インタビュー MOVIE インタビューへ戻る

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2011年9月5日 (月)

interview
代々木忠


AV販売本数累計7000万本、監督作品数536本(現在も更新中!)、“ヨヨチュウ”こと代々木忠監督のドキュメンタリー『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』が劇場公開され、そのDVD(映像特典約119分というフルヴォリューム!)のリリースを記念して、代々木監督にお話を伺った。こちらの目をじっと見つめながら優しく力強くお話して下さる姿にあのセクシーな声が相まって、自分が面接をされているような錯覚に陥るほど、夢中でそのお話に聞き入ってしまった。代々木監督がAV作品を作ることにおいて試行錯誤を繰り返す最終的な目的は、「人はどうしたら幸せになれるか?」という永遠の課題を実現すること。セックスについて各々が見つめ直して頂くきっかけになるようなインタビューになっていると思います。3.11の震災後、特に多くの方に”ヨヨチュウ”作品を観て頂きたいと願いながら。また、HMV ONLINEでは限定特典として、ご購入の方に先着で【非売品】 劇場用ポスターもプレゼント中!です。数に限りがありますのでお早めに! INTERVIEW and TEXT and PHOTO: 長澤玲美

目合(まぐわい)という先人達が作り上げたいいセックスをして欲しいと思いますね。それだけで本当に人生が変わりますから。たくさん見つめ合って欲しい。


--- 本日はよろしくお願い致します。

代々木忠(以下、代々木) よろしくお願いします。

--- 『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』をご覧になって、改めて、どのようにお感じですか?

代々木 試写会で1回観て、(第5回 ローマ国際映画祭 に正式出品された)ローマで上映された時も慌しかったのでまだ客観的に観られていないんですけど、自分の約40年の歴史を振り返ってみて、とにかく「幸せな男だったよなあ」という感じでしょうか。自分にしてみればあっという間の出来事で、あまり考えず衝動的に生きてきたような気もするんですけど、結果として今日までこうして仕事が出来てるっていうのは、やっぱりいろんな人に支えられたおかげだし、「自分を生きてる男達、女達と出会ったなあ、出会えたなあ」と思いますね。例えば南智子、栗原早記、加藤鷹、日比野達郎、太賀麻郎というね、実に個性的で自分を出している人達と出会えたことは本当にラッキーでした。あとは、娘がまだ少女時代に聞かせた性の話をちゃんと受け止めてくれてるのかどうか気にかかっていたんですが、映画を観たら、娘が「目を見てするんだよ」って言ったことを覚えていてくれて、本当にうれしかったですね。それとまあ、妻(渡邊和子・元女優 真湖道代)があそこまで言うかと(笑)。

南智子 風俗店に勤めながら『性感Xテクニック』の主役となる。現在はコミックの原作者や性セラピストとしても活躍。

栗原早記 代々木監督の中期を支えた元AV女優。『いんらんパフォーマンス』の中心メンバー。

加藤鷹 代々木監督に育てられ師と仰ぎ、出演作6000本以上を誇るAV界を代表する男優。

太賀麻郎 代々木監督に育てられた元AV男優。『いんらんパフォーマンス 恋人』に出演。

渡邊和子 代々木監督夫人。元女優 真湖道代。


--- 石岡正人監督から「代々木さんの歴史を映画にしたい」というお話があって本作が生まれたんですよね?

代々木 いや、最初はね、「アダルトの現在までの流れを映像として記録するのは今しか出来ない」という考えを石岡くんは持ってまして。当時活躍していた日活のプロデューサーや関係者がみんなご高齢で70代に入っているんですね。そして、現実にプリマ企画の社長をやっていた藤村(政治)さんも日活のプロデューサーの奥村(幸士)さんもこの映画の完成を待たずして亡くなってしまったっていうこともあるんですけど、タイミング的に「文化史として残したい」という熱い想いを、彼から話をもらった時に感じたんです。でも、ご存知のように村西(とおる)くんやイセリン(伊勢鱗太朗)、(バクシーシ)山下くん、(カンパニー)松尾くんといった優秀な監督がたくさんいるわけですから、僕も一監督として取り上げられるんだろうと思っていた。だから「いいよ」って軽い気持ちで受けたんですよ。当時はまだ僕が鬱から抜け切れていないこともあって、「ちょっと外に出るいいきっかけだし・・・」くらいに考えていた。それが妻にも「出演してくれ」って言うし、「おい!ちょっと話が違うじゃないか」と(笑)。

石岡正人  1960年8月静岡県に生まれ、1983年明治大学政治経済学部卒業。1984年から約6年アテナ映像の社員として助監督、制作担当として代々木監督の現場に付く。1989年5月廣木隆一監督、冨岡忠文監督と制作会社ヘブンを立ち上げる。1995年5月には自身の制作会社ゴールド・ビューを設立。以後、映像製作や日本映画の海外セールスを行なう。2008年4月より京都精華大学マンガ学部アニメーション学科の教員教授も務める。

藤村政治 元プリマ企画社長。ワールド映画所属時に代々木を誘ってプリマ企画を設立するが、日活ロマンポルノ裁判の時に倒産させる。2010年10月死去。

奥村幸士 元日活プロデューサーで、日活時代の代々木監督作品を担当。2010年9月死去。

村西とおる 元ダイアモンド映像社長。ビニ本の世界からビデオ業界に参入したAV界を代表する監督でありプロデューサー。


--- 代々木さんの思っていたところとは違っていたんですね(笑)。わたしは本作を拝見した後、『目かくしFUCKお尻もいじめて』、『いんらんパフォーマンス特別編 密教昇天の極意』、DVD化済みの『ドキュメントポルノ 発情族を剥ぐ』(1973)、『(秘)追跡レポート 初夜の性態』(1974)【共に11.5.6リリース】、『いんらんパフォーマンス 恋人』、『ザ・面接Vol. 112』、『ドキュメント・ザ・オナニー Part1 主婦斉藤京子』を拝見させて頂いたんですが、代々木さんの作品の企画の新しさと作品の持つ大人っぽさ、そして何よりも代々木さんのような方がいらっしゃるということに驚きました。


YOYOCHU SEXと代々木忠の世界


代々木 僕の場合は企画を立ててやるんじゃなくて出会いなんですよね。ビデオに出たい、あるいはスカウトされてプロダクション経由で来られる方達と出会って「何が撮れるのか?」っていうことですから、企画ありきじゃない。そうなると出会いによって変わっていくんです。『オナニー』シリーズは正直に言うと、僕も衝撃を受けたわけですよ。「こんなかわいい子にここまでして欲しくないな」っていうのも半分あるし、でも「なんとしても見たい」という好奇心もあるし。それまでは日活の下請けをやっていたわけですけど、性を扱っていると言いながら僕やライターの一方的な観念、わずかな自分の性体験を元に男の都合で作って来てるわけですよね。でも、「女性のオナニーは撮りたいな」って思った。それは監督仲間とも話してたんですけど、「男と女がセックスするよりも女のオナニーの方がいやらしいよね」って。「絡みよりも何で女のオナニーの方がいやらしいんだろう」って考えた時にそれはきっと女が自ら欲情して自分でやるっていう、そこが男としてはすごくドキドキするというか。その頃はまだふつうの女性は絶対オナニーなんかしないよな」っていう風に思ってましたからね。だから、オナニーを撮った時はその後しばらくは電車に乗っても街を歩いていても、「ああ、この人もオナニーしてるんだ」って思ってました(笑)。

--- この人も・・・と(笑)。

代々木 それまでにもオナニーシーンはあったけれど、台本があって女優が演じてたわけですからレールを引いていくわけですよね。レールを引くということは起きてくるであろう真実をある意味、「取り逃がす」っていうことでもあるわけですよ。その辺で自分の中に葛藤があった。でも、『オナニー』シリーズで衝撃を受けたことをきっかけに「性を表現する」作業から「性を探る」という方向に自分の創作活動が変わっていったような気がします。

--- 『オナニー』シリーズは代々木さんの中でとても大きな転機になったんですね。

代々木 そうですね。そして『いんらんパフォーマンス』シリーズですが、自分で言うのも何ですけど、脂が乗っていて一番パワフルに現場へ臨んでいた時代だったと思うんですね。その頃は一般の人達がアダルトビデオに出るっていう時代でもなかったし、風俗の経験を持っている人達にお願いをするというのが多かった。そして、そこでまた女の凄さを見せ付けられるわけです。いわゆる「いんらんブーム」です。豊丸を始め、咲田葵、栗原早記、沖田ゆかりという風俗の現場から来た人達に、僕は初めて絡みじゃないセックスを撮らされるわけです。それはある意味、女が受身のようでありながら実は主導権を握って能動的になれるセックス。だから、『オナニー』シリーズで衝撃を受けて、『いんらんパフォーマンス』シリーズで本当のセックスが撮れるようになった。

--- オーガズムを探究されていた頃ですね。

代々木 まさにそこで女性のオーガズムを目の当たりにしていくわけですが、自分なりにオーガズムの定義が出来るようになった時に「物理的な射精で終わるのではなく、男にもオーガズムは起きるはずだ」と思ったんですね。オーガズムは精神的なところが極めて重要なので、そこを突き詰めて見ていけば女と同様に男にも起こるはずだと。そして、『密教昇天の極意』を撮ることになるんです。当時、加藤鷹が男優の中では一番こだわりがなくて開いていたので、彼に「男にもオーガズムが起きるはずだと思うんだけどどう思う?」っていう話を振ったんですよね。そしたら、「僕もそう思います」と。あの時、鷹が「いや、それは・・・」って言ってたら挑戦しなかったと思うんですけど。その後、青木達也、日比野達郎、平本一穂、チョコボール向井といった多くの男優が実際にオーガズムを体験していきました。そこで男にもオーガズムが起こるという自分の中の仮説が実証されましたよね。でも、男のオーガズムばっかり撮っててもね、商売にならないし(笑)。だから当時、「鷹がいたから出来たな」っていう気はしますよね。本当にそういう人達に恵まれていたし、そして何よりも当時、「いんらん女優」と言われていた女の子達が僕に明け渡して見せてくれた。それによってAV監督としての基礎が出来たのかなっていう気がします。

--- 代々木さんが演出していったというよりは元々の彼女達の素質に撮らされたといいますか。

代々木 そうですね。今思えば、男の一方的な観念で「女はこうなんだ」って決め込んでいたと思うんですけど、それをことごとく覆されて、「参りました」というか。ですから、彼女達がそこまで見せてくれたことに感謝ですよね。そして、彼女達が何故そこまで見せてくれたのかを振り返ってみると、僕が監督という上から目線で命令したんではなくて、むしろ教わるという姿勢があったんだろうと。それは意識して自分が謙虚になったんじゃなくて、『オナニー』シリーズを通して、自分は「性のことを何も知らなかった」と心底感じさせられた、見せ付けられたっていうことが根底にあって、そういう姿勢が彼女達に通じたんだと思うんです。だから、ある意味、「女に育てられた代々木忠」という。それはお世辞じゃなくてね。


YOYOCHU SEXと代々木忠の世界


--- やはり「監督上位主義」といいますか、「女はこうあるべき」というような、極端に言ってしまうと「道具」として女性を扱っているような監督も多いような気がします。

代々木 僕もそれはすごく思います。ただし、撮影現場は監督が神じゃなきゃ、絶対じゃなければ、事が進まないという一面も確かにあります。だから、監督というのはついつい命令するし、怒鳴ったりもするし、必然的にそういう風になっちゃいますよね。でも、僕はそれを少しは切り替えられた。そのきっかけは日活ロマンポルノ裁判だったと思うんです。裁判で闘っていくうちに「僕は性のことを何も分かってないな」と気付いたのが大きかったですね。現場で命令されたら女の子は服従はするけど、本当の自分は出さないし、明け渡しは起きないですから、その人の本当のコアは見えない。

--- 代々木さんのそのような想いが男優さんのオーガズムまでも導いているのかもしれないと今思いました。代々木さんの作品を拝見していると「人間ドキュメント」といいますか、常識で捉えられていない、生々しさをすごく感じます。

代々木 「社会性が欠落してる」って言われ続けて来たのでね(笑)。自分としては、好奇心に忠実に生きてきたんだと思うんですけどね。(きっぱりと)でも確かに常識ないですよ!

--- そうですか?(笑)。

代々木 やっぱりね、常識的に生きるっていうのはつまんないじゃないですか。今の時代それはシステム化された制度の世界の歯車になるということでもあるわけですよ。僕にはそれが出来ない。だから、社会で言う常識からは外れてると思います。だってね、女を裸にさせてバイブ突っ込んだり、めちゃくちゃやってるわけですから。時々思うんです、「これ、アダルトの現場じゃなかったら絶対犯罪だよなあ」って。だから、アダルトの監督って常識人では出来ないんじゃないかなって思いますよ。今はおじいさんになったので少しはわきまえるようにしてますけど(笑)。

--- 代々木さんの作品は特に女性に観て欲しいと思うのですが、それは出てくる女の子の明け渡してするセックスの気持ちよさみたいなものからさらに超えたところで、彼女達は本当にどんどん赤ちゃんみたいにつるんとしていきますよね?その表情や姿を観ていると神々しささえ感じますし、セックスをして赤ちゃんを授かって出産するというその流れが全て代々木さんの中で見えてしまっている感じがするといいますか。

代々木 鋭いですねえ、その視点は。だからね、「オーガズムこれ再誕なり」と言ってもいいと思うんですよ。社会に合わせて培ってきた自分というのがありますよね?オーガズムを体験するにはそこが1回死なないといけないわけです。そういう意味では「社会性の死」であり、同時に「本当の自分の再生」でもある。なので、生まれたばかりのような顔にならないとオーガズムとは言えないと僕は思いますね。「オーガズムはまさに生まれ変わり」であると。で、そこを体験した女性は「あげまん」ですよね。彼女達のような人と一緒になると男はねえ、出世するよねえ(笑)。あげまん女性はすべてを許して包み込んでくれるじゃないですか?どんなものも中和してくれる。そうすると男は社会でまたがんばれます。だから、多くの女性がオナニーの延長線上のようなセックスをしないで、男とちゃんと向き合って心を開いて自分を見せてあげて欲しいですね。そうした時にご褒美がもらえますから。だから大袈裟なことを言うようですけれども、日本に「あげまん」女性が増えると世界も羨む豊かな国になると僕は思ってるんです。昔はきっとそういう、男を育てていくような女性がいっぱいいたんだろうなあって思いますね。


YOYOCHU SEXと代々木忠の世界


--- 「相手の目を見てセックスしなさい」というのは、どういうことがきっかけで言い始めたんですか?

代々木 『いんらんパフォーマンス』の初期の頃、男優が休憩の時間に「目を見てくれないと感情移入出来ない」って言ってたんですね。彼女達はそっぽ向いて、「もっと奥」とか「もっと突いて」とかって言ってるわけですけど、男優にしてみたら、「俺は張り形かい」ってことじゃないですか?そういう淋しさみたいなものを語っている時に、「かつて日本には目合(まぐわい)という言葉があったんだ」と、目を見ることの大切さを強く意識するようになったんです。目を閉じるとね、「この人、上手いとか下手」って分析しちゃうんですよ。ともすると元彼とセックスすることをイメージするんですね。ということは、その人は「そこにいない」っていうことなんです。感じるって概念は0.1秒先にも後にも存在出来ない、今この瞬間ですよね。でも、目を閉じるとその瞬間からズレちゃうんです。これでは絶対にオーガズムは起きない。今、この瞬間にいてオーガズムが起きるのであって、目を閉じると頭の中を旅しちゃうんですよ。そこから「自分は今にいないのにあなたは誰を愛せるの?そんなあなたは誰からも愛されないんじゃないの?」っていうようなことを女優さんにもよく言うようになったんですね。だから、「相手の目を見ろよ」と。見つめ合ったら何も考えられない代わりに、今を感じることが出来る。見つめ合うことによって下半身の感覚が胸に上がって来るし、相手と向き合うことで一体感が生まれるから心がイク。そこで初めて溶け合えるんです。目を見ないと下半身で快感を貪ろうとするし、下だけが気持ちよくてイッちゃうんです。肉体同士の摩擦という部分的な快感ですよね。肉体と肉体とは混ざり合わないんだけど、見つめ合う時に実体同士が混ざり合って、「あたしだったけどあなただった」っていう発見すらある。

--- そういう意味では本当のセックスをしていない人が多いと思うんですが。

代々木 してないと思いますね。最近のビデオに出る人は主婦の方も多いですけど、話を聞くと「3年してない」、「今年は全然してない」とかって言うんですね。5日前に撮った女性は40歳の主婦ですが、上の子が17歳、下が14歳のお子さんが2人いて、「もう6年半してないんです」と。性生活をいろいろ聞かせてもらうと、していた頃でさえ旦那さんはパジャマの下だけ脱いで、目も見ないでちょこちょこっと触って入れて出して終わりみたいなそういう感じだと。だから、「結婚して20年近くになるんだろうけど、あなたは1回もセックスしたことないよ」って言ったんですよ。「6年半してないんじゃなくて最初からセックスしてない」って。多くの夫婦は「セックスもどき」はしてるんですよね。それは目も見ない、相手の体を使ったオナニー。それをセックスと思い込んでやっている。それはつながらないですよ、相手と。いずれ別れが来ますよね。だから、奥さんがビデオに出る、恋人がビデオに出る人っていうのは、もう最初からセックスしてない。

--- 昔と今でビデオに出る女性に変化は見られますか?

代々木 かなり変わりましたね。ビデオの初期の頃と比べると今は女性達がかつて男が虚勢を張っていたように突っ張ってる感じがするんです。外見は美しくなったけれどその美は造花的ですね。メスの匂いがなかなかしなくなって来た。かつて僕がやっていた『いんらんパフォーマンス』辺りの女性には情緒があった。恥じらいがあった。男が「ああ、いいなあ」って思う色香があった。でも、今はそこが本当に足りないし、感じられないんですよね。大胆だし、アクティブだし、結構おしゃれだし(笑)・・・でもね、「これじゃあ、ミツバチも寄って来ねえよなあ」というようなね。それはちょっとキツい言い方ですけれども(笑)、20年、30年前に出会った女性と今を比べるとそういう感じを受けますね。

--- 特にどのようなところから感じますか?

代々木 面接する段階からですよね。当時は女性がビデオに出て裸を人前に晒すということ、しかも、自分の一番見せたくないところ、見られたくないセックスを晒すということは、相当勇気のいることだったと思うんです。それだけにセックスに向き合っていたし、受け止め方も真剣だった。だけど、今はそれが全くなくてバイト感覚なんですよ。「ちょっと海外旅行したいから」とかね。中には、「男が草食系になってつまんないから、男優さんだったらいいセックスが出来るかも・・・」って思ってる子もいる。でも、「それはちょっと軽すぎるんじゃないの?」って思いながらも、片方では「この人達が出てくれないと僕の仕事は成り立たないし・・・」ということもあって非常に複雑な心境なんですけど、そんな軽いものを撮っても全くおもしろくない。僕自身にときめきがないんですよね。「イヤ!恥ずかしーい」って思いながらも、「でも、エッチしたい」っていう相反するエネルギーがその人の中で葛藤してる、そこがものすごく色っぽいし、そこを落としていく醍醐味に男側はドキドキするし興奮するのに、今はそれが本当にない。「今日、どんなパンツ履いてるの?」って聞いたら、「え・・・」みたいな感じだったんですよ、昔は。でも、今は(股を開いて下着を見せるジェスチャーをしながら)「赤!」とかってさらっと言うの(笑)。「今日、生理なんだ」、「うん、生理。今、タンポンしてる」、「ナプキンじゃなくてタンポンなの?」、「うん、タンポン。見る?」とかって言ってね、「見せてくれ」なんて言ってないのにタンポンの紐を見せてきたりするんですよ。それってもう全然色っぽくないでしょ?(笑)。

--- そうですね・・・(笑)。

代々木 でも、それは本当の自分じゃないんですよ。世間に合わせて「こうすれば社会は、男は反応するんだ」っていうのを知ってしまったわけですよね。だから、情報に洗脳されてるとまでは言わないけれど、振り回され過ぎて自分がいないというか、自分のやってることがよく分かっていない。「本当の自分が何をやっているのか」ということを少しは自覚して欲しいし、そこからスタートして欲しい。「恥ずかしいことだけど、人間ってセックスしたいんだよねえ」っていうその辺がおもしろいので、「何でもOK」で来られちゃうともう撮る必要がない。だから、最近は「恥ずかしくなってもらうためにはどうしたらいいか」っていうことをやっていくわけです。恥ずかしさを、本来の自分を出してもらうためにはいろんな呼吸法もやるんですけど、ある時期からそれで違う人格が出て来るようになった。「団塊ジュニア」と言われる人達の中から心に大きな傷を持ってる女の子達がビデオにたくさん出るようになった。これはすごい時代だと思いますよ。社会では人間が人間として扱われていないんですよね。「心は価値を失ったんだな」ってしみじみと感じますね。


YOYOCHU SEXと代々木忠の世界


--- そんな彼女達は代々木さんの作品に出た後、変わったりしますか?

代々木 全く変わらない人もいますけど、オーガズムを体験した人は激変しますね。夫婦関係、子供との関係・・・今まで「子育てをしていて子供の気持ちが読めなかったし、分からなかったけど、撮影が終わった今は子供の気持ちが手に取るように分かる、共有出来るようになった」って言う人は結構いますね。その日のうちに彼氏と別れたっていう人もいます。「全て見えちゃった」って。今までは夫婦関係、親子関係、恋人関係が依存の関係だったんですね。その依存関係からオーガズムを体験することによって自立が起きたんだろうと思うんです。自分の目でちゃんと物事が見られるように、判断出来るようになってきて、感情も今まで閉じ込めてたものが解放されますから、直観力が磨かれてくるし、洞察力も高まるんです。例えば、僕とあなたがオーガズムを一緒に体験すると、あなたは場になって、あなたの中に僕がいるというような状況になるので、相手の気持ちが分かるというより、相手の気持ちそのものを自分が感じているような状態が続く。だから、子供とも夫とも気持ちを共有出来るようになる。そして、何よりもお母さんが自立することによって子供が変わるんですね。一番印象に残っているのは、秋田の女性で「子供が3歳になるのにオムツが取れないし、上手くしゃべれないから知恵遅れかもしれない」ってとても心配してたんです。彼女は東京に出て来て、ビデオを立て続けに3本くらいやったと思うんですけど、そこでオーガズムを体験して秋田に帰った。その後、1ヶ月そこそこで彼女から手紙が来ました。「子供は知恵遅れじゃありませんでした。あの後、変わりました。問題は私でした」と。僕は今ね、人間の意識階梯を勉強してるんですけど、今みんなほとんど概念思考に縛られてるというか、もう思考停止状態なんですよね。会社勤めをしていると自分の感情を出せない。そうすると感情をある程度封印してしまうから本能の出る幕がないっていう状態なんです。いろんな知識を入れて、それにも縛られているから、知識のフィルターを通してしか物事を判断しない。例えば、そういう男優の場合、専門的な技能動作は持っているので、潮を吹かせたり、駅弁やったり、いろんな技を持ってるんだけど全く心がない。あとは、「わたし、Mよ」って言う子がいるでしょ?でもね、Mは自らの意思でセックス出来ないんです。されないと出来ないの。男と同等で向き合うことが出来ない。だから、Mの方が楽なわけですよ。でも、それは依存なんです。そして、クリトリスでしかイケない、「あたし、外派よ」っていう女の子は社会性がしっかりしてるので心が開けない。イクってことは服従ではなく、相手に心を開くっていうことですから。

--- 震災を経た今、セックスの回数が増えたり、結婚を真剣に考えるようになったカップルが増えたと聞きます。人との繋がりを本能的に求めている傾向もあって、それはある意味ではすごくよいことだと思っているのですが、代々木さんはどのようなお気持ちですか?

代々木 3.11以降、日本は変わりましたよね。仰る通り、繋がり感を大切にするようになったし、血縁、地縁、人の縁というものをもう1回見直し出した。これはとてもいいことだと思いますよね。ここ10年くらい、「このままでは日本は本当におかしくなっちゃうよな」と思っていた。救いがないというかね。こういうことをすれば他人が不愉快になるとかそういうことを理解出来ない人が増えたし、人間が感情をなくしてロボットのようになっていた。それがますます加速していってバラバラになり、繋がり感が全く感じられなかった。そういう知性の文化の行き詰まりに、手放しの受容の時が来ていたし、「本当の幸せって経済的な豊かさなのかい?」っていうことをみんなが考えていた時に、あの震災が起きた。特に東北地方はもう1回原点に戻って、生活の文化を開花させ、豊かな対人的感性を育んでいくんだろうなっていう期待はすごくあります。

--- 期待の方が。

代々木 大きいです。逆にそれをものにしなきゃいけないですよね。これから原発の問題がもっと深刻にじわじわ広がってくると思いますけど、我々はもっと謙虚になるべきだし、人間は自然界の一員なんだから、そこをもう1回見直すチャンスを与えられたと考えてみるべきじゃないでしょうか。マスコミの数字を見てもね、自殺者が毎年3万人以上、虐待件数も去年は5万件を超えたし、鬱の率も引きこもりの件数も増えた。他にもいろんな悲惨な事件が起きていますよね。そういう状況の中である程度反転したかなっていう気がします。だから、これからきっと日本は本当の意味での豊かな国になっていく、そんなメッセージをぜひとも世界に発信出来るような、そういう国になって欲しいなと。それにはきっと東北が中心になっていくんだろうと思いますね。


YOYOCHU SEXと代々木忠の世界


--- 最後にこれだけはということがありましたら、ぜひお聞かせ下さい。

代々木 先ほどもお話したことですけど、男と女がもっと仲良くするべきだと思うし、本当の意味での自立をして欲しいですね。そして、協力し合って一つの社会、家庭を作って欲しいなと思います。それから、型にはめられないでリスクを恐れずにもっともっと自由に生きて欲しいと思いますよね。本当の自分、感性を働かせて欲しい。そうじゃないと楽しくないですよ。同じ人生だからね、「僕のように生きろよ」とは言わないですけど(笑)、もっともっといろんな体験をして、傷付くことも絶対に必要だと思います。そして、特に申し上げたいのは、「セックスは目を見てしなさい」と。「目を見ない相手とはもう2度としない方がいいよ」と。だから、ぜひともヨヨチュウのビデオを観て(笑)、目合(まぐわい)という先人達が作り上げたいいセックスをして欲しいと思いますね。それだけで本当に人生が変わりますから。たくさん見つめ合って欲しい。そして、相手の気持ちを共有出来るような人が日本に増えると真に豊かな国になれるよなって考えてます。

--- 人生に触れる深いお話をたくさんお聞かせ頂き、とても勉強になりました。貴重なお時間をありがとうございました。

代々木 こちらこそ、ありがとうございました。

(おわり)




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本篇未収録映像 Yoyochu in 「ザ・面接」&小室友里インタビューも収録決定!約119分の豪華特典ディスク付の2枚組特別版!


『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界: 2枚組特別版』

【本編DISC】 115分

【映像特典】 約119分
【Disc1】 劇場予告篇
【Disc2】
○石岡監督編集!本篇未収録映像 Yoyochu in 「ザ・面接」 24分10秒
小室友里interview 4分27秒 
○披露試写会トークショー(代々木忠&石岡正人) 7分59秒  
○「YOYOCHUでナイト」@新宿ロフトプラスワン 55分16秒
○前夜祭トークショー(加藤鷹&石岡正人) 10分26秒
○劇場公開初日舞台挨拶(代々木忠&石岡正人) 5分35秒
○カリスマ vs 帝王のガチバトル!!(代々木忠&村西とおる) 11分


※内容はすべて予定です。商品仕様・特典等は変更になる場合がありますので予めご了承下さい。

監督:石岡正人

撮影:西川憲/椿原久平/石岡正人
ナレーション:田口トモロヲ
題字:リリー・フランキー

出演:代々木忠笑福亭鶴瓶槇村さとる和田秀樹藤本由香里加藤鷹愛染恭子村西とおる高橋がなり


© 2010 ゴールド・ビュー/スターサンズ/石岡正人

オフィシャルサイト:http://www.yoyochu.com/  

profile

代々木忠 (よよぎただし)

1938年福岡県生まれ。本名 渡邊輝男。華道家から極道を経て映画界に入り、後にAVの黎明期に立ち会い、数々の傑作や問題作で一世を風靡する。“AV界のカリスマ”とも呼ばれ、『ザ・オナニー』、『性感極秘テクニック』、『サイコ催眠エクスタシー』、『いんらんパフォーマンス』、『目隠しFUCK』、『チャネリングFUCK』、『素人発情地帯』、『性感Xテクニック』、『ザ・面接』など多くの傑作シリーズを発表し、一貫して人間の性を心の内側から切り取って表現し、AVを撮りながら愛を問い続けている。