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【太鼓の達人】 トニー・アレン

CLUB JAZZ STORE

2011年8月18日 (木)


Tony Allen



 70年代のフェラ・クティ・サウンドの核となる「アフロビート」を創造し、今日もバリバリの現役ドラマーとして精力的に活動するトニー・アレンの傑作アルバム 6タイトルがストレート・リイシュー!

 2010年、一連のフェラ・クティ 紙ジャケ・リイシューに続き登場する、アフロビート真の創造主トニー・アレンのリーダー作6タイトル。いずれもCALMさんによる最新デジタル・リマスタリングが施され、ライナーノーツにはトニー本人への最新インタビューも掲載されているということで、日本でのトニー・アレンひいてはアフロビート人気の高さが窺えるというものです。

 今回リイシューとなるのは、隊長フェラをはじめアフリカ70全面バックアップで制作された記念すべき初リーダー作『Jealousy』(1975年)、同じくフェラ&アフリカ70が参加した、近年ハウスDJ界隈でも人気の「Afro Disco Beat」を所収する2作目『Progress』(1977年)、3作目『No Accommodation for Lagos』(1979年)、自己グループ=「ザ・アフロ・メッセンジャーズ」を率いて制作されたナイジェリア時代の最終作『No Discrimination』(1979年)、ヨーロッパに活動拠点を移して初のリーダー作となる『N.E.P.A. (Never Expect Power Always)』(1985年)、フランスのCometレーベルからリリースされ、トニーの再評価を決定付けた『Homecooking』(2002年)、以上の6タイトル。

 10年ほど前に国内メーカーから2イン1仕様などでリイシューされていたアイテムも昨今市場では中々お目にかかれない状態が続いていたのですが、今回全タイトルがストレート・リイシューという理想的なカタチでめでたく再登場。オリジナルLPがフランスのMarcury/Polygramからリリースされていた『N.E.P.A. (Never Expect Power Always)』と、アフロビートの新機軸を描いた『Homecooking』は意外や意外日本盤としては初めての登場となります。

 アフロビート信者はもとより、レアグルーヴ、クラブジャズ、ワールド・ミュージック・ファン・・・すべての濃厚音楽族を丸呑みにし文化果つる処でトグロを巻く、偉大なるポリリズミック・テンプレート群。フェラ・クティ・サウンドの真髄をさらに堀り下げ追求したい貴方、この6タイトル、言うまでもなく見逃し厳禁。リマスタリングを手がけたCALM さんのお話も含めて、トニー・アレンの魅力にいまいちど迫ってみるとしましょう! 








トニー・アレンの傑作アルバム 6タイトルがストレート・リイシュー

Jealousy

1. Jealousy
2. Hustler


 
 Jealousy
 Comet OTLCD1594 
 初のリーダー作品となった1975年作品。フェラ・クティ黄金期サウンドを支えた専属バンド「アフリカ70」を従え、御大フェラ・クティもヴォーカル&サックス+プロデュースで参加した人気アルバム。



 

Progress

1. Progress
2. Afro Disco Beat


 
 Progress
 Comet OTLCD1595 
 ソロ2作品目。こちらもアフリカ70とフェラ・クティが全面バックアップした傑作アルバム。男女のユニゾン・ヴォーカルが声高らかにシャウトする名曲「Progress」、ハウスDJにも人気の「Afro Disco Beat」を収録。



No Accommodation For Lagos

1. No Accommodation For
    Lagos
2. African Message



 
 No Accommodation For Lagos
 Comet OTLCD1596 
 1979年リリースの3枚目のリーダー作品。この作品もフェラ・クティ&アフリカ70 の強力なバックアップの元完成。全2曲共に約20分に及ぶ長尺で強力なアフロ・グルーヴを展開。




 

No Discrimination

1. No Discrimination
2. Road Safety
3. Ariya
4. Love Is A Natural
    Thing
 
 No Discrimination
 Comet OTLCD1597 
 自身のバンド「ザ・アフロ・メッセンジャーズ」を結成し制作された1979年作品。フェラ・クティと共に作り上げたアフロビートを更に発展させるべく本作を最後にナイジェリアからヨーロッパへと活動の拠点を移す、ナイジェリア時代のラスト・アルバム。


N.E.P.A.

1. N.E.P.A. (Never Expect
   Power Always)
2. N.E.P.A. Dance Dub
3. When One Road Close
  (Another One Go Open)
4. Road Close Dance Dub


 
 N.E.P.A.
 Comet OTLCD1598 
 活動の拠点をヨーロッパに移した80 年代最初のソロ作品は、フランスのマーキュリー/ポリグラムから1985年にリリース。日本盤での発売は今回が初。








 

Homecooking

1. Every Season
2. Home Cooking
3. Don't Fight Your Wars
4. Kindness
5. Jakelewah
6. What's Your Fashion
7. Crazy Afrobeat
8. Eparapo
9. Woman To Man
10. Calling
 
 Homecooking
 Comet OTLCD1599 
 フランスのCOMETからリリースされた2002年作品。今日のトニーアレン再評価を決定付けた本作は、キャリアの中でも屈指の名盤。この作品時に御年63歳、素晴らしいです。





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Tony Allen


 「アフリカン・ファンク」、または、「アフロ・ファンク」と聞いて誰もが思い浮かべるのが、やはり帝王フェラ・クティのあの勇姿であり、ジェイムス・ブラウンをはじめとするアメリカのソウル、ファンクの要素を色濃く反映したあの延々と続く反復性の強いビートとフレーズであることは大方の意見の一致をみるところでしょう。1969年のアメリカ・ツアーからナイジェリアに帰国したフェラが、自身のバンドを「フェラ&ナイジェリア70」、「フェラ&アフリカ70」と名乗り、それまでのハイライフ・ジャズを進化させた形で独自のアフリカン・ファンクである「アフロビート」を確立したのが1970年。「Black President」の名を欲しいままにしたフェラの快進撃はここから始まることとなります。そして、フェラのバンドの音楽監督を務め、ドラマーとしてもアフロビートの骨格を形成する強靭且つ柔軟なビートを叩き出していたのが本稿の主役トニー・アレンなのでした。

トニー・アレン
 音楽一家であった父親の影響で幼い頃から様々な楽器に興味を持つも、アート・ブレイキーフィリー・ジョー・ジョーンズマックス・ローチらアメリカのモダン・ジャズ・ドラマーのレコードをラジオで耳にし、ドラマーになることを決意。地元ナイジェリア・ラゴスのローカル・バンドでドラマーとして活躍した後、1964年にラジオDJとしてジャズ・レコードをかけていたフェラと出会い意気投合。クーラ・ロビトスという名でフェラとバンドを組んだ当初は、ナイジェリアの隣国ガーナで発展した民族音楽とジャズを組み合わせた先述のハイライフ(・ジャズ)やストレート・アヘッドなモダン・ジャズを主にプレイしていました。ちなみにこの当時の音源は、『Lagos Baby 1963-1969』『Koola Lobitos 64-68 / The '69 La Sessions』で聴くことができます。

 その後のアメリカ・ツアーでのジェイムス・ブラウンおよびJB'sとの交流により「アフロビートが確立された」というのはひと昔前までの通説でしたが、むしろ近年は、JBからの精神面におけるインスパイア(さらには、黒豹党員たちとの交流による黒人解放、パン・アフリカニズム思想への傾倒)こそあったものの、ドラム・スタイルやリズム・パターンにおいてはJB一座との邂逅以前に「オレだけのビートを生み出していた」と後のインタビューでトニー本人が語っているとおりの見解に着地を見ているようです。また、JBとバンドの面々が、1970年のナイジェリア・ツアーの際に現地のとあるクラブで目にしたトニーの壮絶なドラミングに度肝を抜かれた(特にクライド・スタブルフィールドブーツィ・コリンズが!)、などという逸話が付け加えられようものならば尚の事。「アフロビートの生みの親」がトニー・アレンであるとすることに、これっぽっちの迷いも生じることはないでしょう。

トニー・アレン
 欧米的なファンクというよりは、モダン・ジャズ的とも言える複合的なリズムのアクセントをクールに重ね合わせるスタイルで、直線的なものになりがちなアフロビート・サウンドに深みや奥行きを与えながらフェラ・クティ・サウンドの肝要を長きにわたり担ったトニーのドラム。そのルーツは、先述のブレイキーやローチからの影響も勿論ですが、「アフロ・ジャズ」という言葉が登場するより以前にセロニアス・モンクらと交流しながら、ジャズ的なイディオムを含む革新的なトーキング・ドラムやパーカッションを操ったガーナの打楽器奏者ガイ・ウォーレン(aka コフィ・ガナバ)の演奏・レコードから吸収し培った部分が大きいようです。

 1960年のナイジェリア独立以降、ドロ沼状態で繰り返された軍事クーデター、内戦、政治腐敗によって、アフロビートを楯に「闘争」を余儀なくされたフェラとトニーですが、ことさらトニーにおいては攻撃型のファンクでアジテーションするというよりは、技巧的にも精神的にも革新性に長けていた当時のモダン・ジャズのエッセンスを、新しいアフリカン・ミュージック=アフロビートの核に据えて、世界に飛び出すことを目論んでいたのではないでしょうか。そんなクレバーなブレインによって、フェラの快進撃は1979年まで支えられていました。

 1979年にアフリカ70を脱退したトニーは、『No Accommodation for Lagos』『No Discrimination』というソロ・アルバム2枚を残した後、活動の拠点をヨーロッパに移し、85年に『N.E.P.A. (Never Expect Power Always)』を発表。レゲエやキューバ・ラテンなど昔から所謂ワールド・ミュージック体系の音楽に強い関心を示すヨーロッパ圏での活動はまさに吉と出たと言えるでしょう。99年には、パリ在住の新進気鋭のトリップ・ホップ・アーティスト、ドクターLのプロデュースにより、トニー自身初めてのワールドワイド・リリースとなるアルバム『Black Voices』をリリース。フェラ・クティの再評価や研究は熱心に進められる中、半ばおざなりにされていた「アフロビートの”真の”生みの親」にようやくスポットライトが当てられることになったのです。


トニー・アレン



 近代音楽の基幹クラブ・フィールドからの再評価も大きな追い風となり、トニー・アレンの第二の黄金期はここから幕を開けたと言っても過言ではないでしょう。デトロイト・テクノの要人カール・クレイグ然り、ベーシック・チャンネルの奇才モーリッツ・フォン・オズワルド然り、みなトニーのドラムに夢中になりました。もちろんクラブ系アクトだけではありません。現在に至るまでに、ロイ・エアーズデーモン・アルバーン(ex-ブラー/ゴリラズ/モンキー)シャルロット・ゲンズブールアンプ・フィドラーロッキン・スクアットジミ・テナーヒプノティック・ブラス・アンサンブルなど世界各国の多岐にわたるアーティストたちとの共演を行なっています。

 今年8月で御年71歳を迎えるトニー・アレン。すでに伝説の偉人となってしまったフェラとは対照的に、 ”リヴィング・レジェンド”として偉勲を更新し続けるその頼もしい姿をまたいつか我が国で拝みたい・・・2008年以来の来日ステージ、さらには2009年の 『Secret Agent』以来となるオリジナル・フルアルバムの完成を渇望しつつ、雄大なアフロビートの大海原にいまいちど躊躇なくダイブされたし。









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    アフリカン・グルーヴ / アフロビート人気高まる中、フェラ・クティの作品の数々が紙ジャケ国内盤仕様にてリリース・・・

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    世界中で最も信頼される音楽誌『waxpoetics』の日本版のNo.09とHMVオンラインのコラボ・ページ! 表紙はフェラ・クティ・・・・・・

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    2010年のカンヌ映画祭を最も熱くさせた『ベンダ・ビリリ!』の全国劇場公開を記念して、監督のルノー・バレ、フローラン・ドラテュライ両氏にお話を伺いました・・・・・・

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    列島を震撼させたアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの1961年初来日公演盤が新装ジャケ+最新リマスターにてThink! より完全復刻。中平穂積氏による当時の秘蔵写真もたっぷり掲載・・・・・・



 
ゲスト参加主要作品


 トニー・アレンがゲスト参加した作品から特にオススメできるものをいくつか厳選してご紹介。まずは日本人アーティストではおそらく初めての共演録音となった、国内最強アフロビート・バンド、キングダム☆アフロックスの1st スタジオ・アルバム『Fanfare』。「日本のアフロビートの夜明け」と宣言するにふさわしいタイトル曲への御大の参加。さかのぼること3年前の2008年8月に、東京・月見る君想フで御大とのライブ共演を果たしたアフロックスは「世界中のアフロビート・バンドを見てきたが、彼らが一番だ」とベタ褒めされていたんだから大したバンドだ。今後の活躍がますますたのしみ!


Fanfare
Kingdom☆Afrocks
「Fanfare」


 サン・ラー楽団に在籍していたマルチ奏者フィリップ・コーランの8人の息子たちから成るシカゴのブラス・ファンク・バンド、ヒプノティック・ブラス・アンサンブルの2009年初のメジャー盤『Hypnotic Brass Ensemble』でも御大の老快なドラム・ブレイクが数曲で聴ける。彼らの歌心とブルーズ・フィーリング溢れたふくよかな演奏は、昨今一本調子のファンク・バンドが多い中でアタマひとつ抜きん出ている。リリースはデーモン・アルバーンのHONEST JONSから。


Hypnotic Brass Ensemble
Hypnotic Brass Ensemble
「Hypnotic Brass Ensemble」


 20世紀初頭にかけてアフリカ北部、西部、中部と次々に植民地を拡大していったフランス。今でも北部チュニジアではアラビア語に加えて、また中央アフリカ共和国ではサンゴ語と併用してフランス語が公用語として話されている。文化面においても互国の交流は盛んで、ことさらフランス人のアフリカ音楽好きというのは世界的にも有名だ。トニー・アレンほか良質なアフロビート関連作品を多数リリースするCOMET RECORDSが本拠を構えるのももちろんフランス。マヌ・ディバンゴサリフ・ケイタらが活動の場を求めて母国のカメルーンやマリ共和国からパリに移住したのをはじめ、最近ではフランス人映画監督ルノー・バレとフローラン・ドラテュライによる映画「ベンダ・ビリリ!」が世界中で話題を呼んだことも記憶に新しい。ということで、かのシャルロット・ゲンズブールがアルバム『5:55』(2006年)でトニー・アレンをゲストに招いたとしても、それは何ら違和感を憶えることではない。おそらくプロデューサーのナイジェル・ゴドリッチのオファーによるものだろう(翌2007年にプロデュースを手掛けたエール『Pocket Symphony』にもトニーはゲスト参加している)。タイトル曲と「Night-Time Intermission」という2曲に参加している御大。アンニュイな歌伴でのドラミングもお見事なり。


5:55
Charlotte Gainsbourg
「5:55」


 そのほかフランス勢作品への客演としては、モンペリエを拠点に活動するアフロビート・バンド、ファンガのデビュー作『Natural Juice』、フェラ&エジプト80の屋台骨を支えたデレ・ソシミ(key)も参加したパリジャン・アフロビートの新旗手アワ・バンド「Bababatteur」(『Beginner's Guide To Afro Lounge』所収)、さらにはフレンチ・ヒップホップの雄ロッキン・スクアットことマティアス・カッセルの『Confessions Dun Enfant Du Siecle 3』などが主だったところか。


Natural Juice
Fanga
「Natural Juice」


Confessions Dun Enfant Du Siecle 3
Rockin' Squat
「Confessions Dun Enfant Du Siecle 3」


 ほか、デトロイト・ファンク貴公子アンプ・フィドラー『Afro Strut』(2006年)収録の「Heaven / Afro Butt (Skit)」、スウェーデンのベテラン・サックス女史ソフィ・ヘルボーグ『To Give Is To Get』(2006年)収録の「Wouldn't That Be Fun」、ベンジャミン・ハーマン率いるオランダの新世代ジャズ・コンボ、ニュー・クール・コレクティヴ『Trippin'』(2005年)収録の「One More Time」、ザップ・ママのHEADS UP 移籍第1弾『Supermoon』(2007年)や次作『Recreation』(2009年)などにゲスト参加。いずれもここ5年ぐらいの作品ということで、御大の近年における心・技・体の充実ぶりが窺えるというもの。


Afro Strut
Amp Fiddler
「Afro Strut」


Trippin'
New Cool Collective
「Trippin'」


Supermoon
Zap Mama
「Supermoon」




--- まずは、今回トニー・アレンのリイシュー 6タイトルのデジタル・リマスタリングを手掛けることになった経緯からお聞かせいただけますか?

 「waxpoetics JAPAN」の日高(健介)さんたちが今回の作品をまたCD化しようっていうところからそもそも始まって。それが、僕のMusic Conceptionの作品もディストリビューションしてもらっているウルトラヴァイブからリリースすることになったんですよね。でまぁ、その昔「ウルトラ 3」 (かつて渋谷区宇田川町にあったウルトラヴァイブ直営のレコード・ショップ) で僕がウルトラヴァイヴの人達と一緒に働いていた時期もあって、「よかったらマスタリングやってみない?」って声を掛けてもらったんですよ。

--- 日高さんはライナーノーツも書かれていますが、これだけのテキスト資料というのは本邦初なんじゃないかなと思うぐらい充実していますよね。

 いやこれはホントすごいですよね。でもまずは資料を読まずに聴いてもらいですね。その後に資料に目を通してもらって、また聴き返すと新たな発見があるかもしれないっていう。

--- 今回リマスタリングする上で、ポイントになった部分というのはどのあたりだったのでしょうか?

 露骨に色んなところを変えすぎないようにしようかなっていうのはまずありましたね。昔のマスターでそんなに音が良いとは言えなかったんで。10年ぐらい前に出た再発盤なんかを今聴くと、やっぱり “何年か前の音”がしているんですよね、当然のことなんですけど。だからそれを今の音になるべく持っていけたらなって。

 あとは、1枚1枚をどうこうしたというよりは、6枚全部の統一感をどうやって出そうかなっていうのがいちばん考えた部分ですね。ようするに70年代のめちゃくちゃ古い音から、結構ハイファイな最近の音までが並んでいるんで、そこに統一感を持たせたかったんですよ。

 その中で、あくまで主役はトニー・アレンのドラムの音にしていこうと。ただし、逆に主役の音を目立たせすぎて曲の雰囲気が壊れても意味がないので、トニー・アレンの存在を頭に入れつつも、アルバム1枚、その中の1曲1曲を今風の要素を加えながらどれだけ良く聴かせるかっていう部分ですよね。でさらに、6枚の統一感をいかにして出すかっていう。

--- 素人には想像を絶するような匠作業ですね・・・

 (笑)少なくとも“気持ち的には” そういう感じでやったということであって、あとは聴いた人の判断に委ねるしかないのが実際のところではあるんですけどね。

 やろうと思えば何でもできるんですよ、マスタリングって。低音を過剰に効かせるとか、ハイファイなものをちょっと粗めの音に仕立てるだとか、全然可能なんですけど、そこまでやる必要が正直なかったんですよね。

--- なるべく素材のままで。

 そうですね。素材の良さを生かして、変えすぎないっていう。やっぱりアーティストのその時の意思っていうものがあるじゃないですか? そこを尊重するのはもちろんのことなんで。僕もそこまで精密にできる方じゃないんですけど、マスタリングってかなり奥が深いんですよね。普通のミックス・ダウンとはまた違って、既存のステレオ素材をいかにして微妙に変えていくかっていう作業なんで。

--- CALMさんは、2003年にファラオ・サンダースのベスト盤の監修もされていますが、60年代、70年代あたりの欧米のジャズの音と、トニー・アレンのような70年代のアフリカ録音作品の音とでは、マスターの段階でその音の性質にかなり違いがあるようなものなのでしょうか?

 いや、結構似てましたよ。使ってる録音機材が似てるんで自ずとそうなるとは思うんですけどね。「あぁ時代の音だなぁ」って。あとは、ファラオにしろトニー・アレンにしろやっぱり演奏の技術がとてつもなく高いんですよね。マスタリングで聴いてると、演奏技術の高さっていうものもはっきりと出てきますから。だから、演ってる音楽がちょっと違うだけであって、どちらも演奏のクオリティ自体は変わらないんですよね。

--- ちなみに、原盤のアナログもお持ちだとは思うんですが、オリジナルの音質や音圧というのはどの程度のものなんでしょうか?

 何枚か持ってますけど・・・さすがにそこまで質のいいものではないですよね。演奏技術とは別に録音状況なんかがやっぱり元々良くないんで。だけど、ハイファイにはないその粗さが逆にいいかなっていう。

 これはトニー・アレンに限った話じゃないんですけど、60年代、70年代、80年代ってスタジオの技術が変わってきているんで、音そのものがまったく違うんですよ。響きもまったく変わってくるし、そこでグルーヴも変わってくる。ただ、トニー・アレンの場合は意外とグルーヴが一貫しているというか、良い意味でも悪い意味でもあんまり変化していないのかなって(笑)。

--- (笑)ブレがないというか。

 多分細かい技術的なところは進歩しているんでしょうけど、大きなグルーヴで見るとそんなに劇的な変化はないのかなって感じますね。

--- 1975年の『Jealousy』と2002年の『Homecooking』あたりを較べても、四半世紀以上グルーヴ自体には大きな変化がない。

 ドラムに関してのグルーヴ感はほぼ一緒ですね。ただ周りのメンバーが違ってきますから。例えばホーン・セクションのメンバーがまったく違うとか、シンセサイザーがけっこう使われていたりとか。そうすると、トニー・アレン自身が本当に欲しかったグルーヴっていうのがそこにあったのかな? っていう気はちょっとしますね。

 『Jealousy』や『Progress』みたいな初期の作品だと、まだフェラ・クティがドラム以外のアレンジメントをちょっと手伝っていたりするわけですから、その点はやっぱり“御大”の力でもってるようなところもあるんじゃないかなって。

--- ナイジェリア時代の作品(『No Discrimination』)まで、フェラはかなり口酸っぱく指示を出していたんではないかなと。

 ドラム以外の部分はかなり細かくチェックを入れていたと思います。そういう意味で、この時期までの作曲やアレンジ方法に関してはフェラ・クティの作品とそれほど極端に違いはないって言えるんでしょうね。


Tony Allen


--- トニー・アレンという名前が色々なところで話題に上がってきたのは、やっぱりフェラ・クティの再評価とほぼ時を同じくしてという感じなのでしょうか?

 そうですね。まずはフェラ・クティを聴いて、で「この独特なドラムを叩いているのは誰だ?」ということになって、そこで初めてトニー・アレンという名前を耳にするわけですよね。

--- CALMさんは、学生時代の80年代末にロンドンにいらしてた時期がありましたよね。

 その頃、向こうではジャズのムーヴメントがある程度落ち着いてきて、ちょうどワールド・ミュージック的なものに注目が集まり始めていた時期だったんですよね。アフロ・ジャズとかブラジル音楽とか。その中にはもちろんフェラ・クティのようなアフロビートやアフロ・ファンク系の音楽もあって。レコード屋にバーッと並んでいましたからね。でもフェラ・クティはそれ以前にもすでにロンドンとかでは再評価されていましたから、厳密には“再々評価”っていう感じでしょうね。

--- ヨーロッパでは20年ぐらい前に“二度目の再評価”があった。日本でフェラ・クティやトニー・アレンが本格的に盛り上がってきたのは今から10年ぐらい前でしょうか?

 『Jealousy』や『Progress』が最初に日本盤でCD化されたのがそのぐらいでしたから・・・そうですね、10年ぐらい前なんだと思います。90年代後半。その時期に小林径さんあたりがしきりに「フェラ・クティ、フェラ・クティ」って言っていた記憶はありますね。『Zombi』とか『Upside Down』とか、有名な作品もごっそりアナログで再発されたりして。ちょうど僕が「ウルトラ 3」で働いていた頃ですね。

 10年から15年前って、フェラに限らずいわゆるレアグルーヴ系の稀少作品が、USのアナログ盤で安く再発されるっていう流れがあったんですよね。音はそんなに良くなかったんですけど、そういう類のものが次から次へと再発されていたんですよ。1500円前後で。

--- それでもフェラやトニー・アレンの音楽は、欧米のファンクやレアグルーヴ系の作品などとは一線を画していたという。

 フェラ・クティの音楽って、ドラム以外に関して言うと、それこそアメリカのファンクからの影響がすごく判りやすく反映されているものだとは思うんですけど、そこにトニー・アレンのドラムが入るのと入らないのじゃまったく違うものになってくるんですよね。あのドラムがあって初めて独特のサウンドになるっていう。あそこにJBズのようなドラムがタイトに入っちゃうと、それはただのファンクなわけで、アフリカ人が欧米的なファンクを真似て演っただけっていうことになっちゃいますからね。

--- こういったグループというのは、70年代、80年代のアフリカに他にも存在していたんでしょうか?

 掘り出せばそれなりにいたんじゃないかなとは思うんですけど、さすがにトニー・アレン クラスのドラマーが在籍しているグループっていうのはほとんどいなかったんじゃないですかね。あとはもっと民族音楽寄りになっちゃうような気がします。

 言い方悪いかもしれないですけど、トニー・アレンとかフェラの作品って、ようするにポップスだと思うんですよ。民族音楽のようなネイティヴなものと較べるとやっぱり大衆音楽寄りというか、すごくとっつきやすい。それでも欧米圏で俗に言う産業ポップスとはもちろん違うわけですから、独特って言えば独特ですよね。

--- 流れは汲んでいるけど、ハイライフ (1950年代にガーナで発祥した大衆的なダンス・ミュージック) ともまた違う。

 とにかく、すごく土着的な民族音楽しか聴いていないような人たちの音楽ではないですよね。ある程度西洋の音楽を聴いていないとここまでは昇華できないと思います。だから、そういった純粋な民族音楽しか周りにない部族のところなんかに行くと、多分すごく変わった面白いリズムとかあると思うんですけど、でもそうなるとあまりにもディープで、聴く人がだいぶ限られてきちゃうんですよね。


Fela Kuti and his Africa 70 in 1975


--- 実際にライブをご覧になられたことというのは? 2008年の「METAMORPHOSE」でご一緒でしたよね。

 そのときに一度観たぐらいですかね。強烈って言えば強烈でしたけど、こっちもある程度予想をして観に行っているところもあるんで・・・正直そこを超える程ではなかったかなっていう(笑)。やっぱり予想を超えてこそナンボかなっていうか、「カッコいいけどこんな感じなんだ」みたいな。

--- 先ほどのリイシュー盤リリース・ラッシュの話ではないですけど、最近アフロビート系のリイシューもひっきりなしですから、ちょっと辟易しているというか、それなりに抗体も付いてきたところはあるかもしれませんよね。

 だから逆に、こういったものにまったく接したことがない人たちが観たらすごいインパクトはあるんじゃないかとは思うんで、今回の再発もむしろそういう人たちに特に聴いてもらいたいなっていうのはありますね。



へつづきます)

--- フェラ・クティ、トニー・アレンの楽曲はDJでも頻繁にかけているんですか?

 必ずかけているってわけじゃないんですけど・・・かけるタイミングがなかなか難しいんですよね。それぐらいインパクトが強くて独特なものではあるんで、「たのしむぞ!」っていうよっぽど前向きな気持ちで来た人の中でかけないと、シラけさせちゃう危険性はありますね(笑)。だから、上手くかけれて、なお且ついいお客さんが来てるっていう好条件が揃っていないと難しいんですよ。

--- とは言え、クラブ・フィールドでは根強い人気がありますよね。DJプレイだけでなく、近年も『Lagos Shake』といったリミックス・アルバムや、Strutからジミ・テナーとの『Inspiration Information』がリリースされたり、その手の方面からかなり引く手数多というか。

 結局ダンス・ミュージックに寄ってるってところなんだと思いますよ。テンポが遅かろうが早かろうが結局はグルーヴに依るわけですから。そのグルーヴを生み出すっていうところがすべてにおいてダンス・ミュージックとしての共通項。ヒップホップにしろハウスにしろ。ただ、トニー・アレンのやってることは複雑ではありますよね。現在のアフロ・グルーヴはもっとシンプルで、判りやすいんですよ、リズムの構造が。

--- 特にドラム・パターンが、ということですね。

 アクセントの位置がすごく独特ですよね、トニー・アレンは。僕らにはない、彼らにしか判らないようなアクセント。フラメンコなんかもそうですけどね。アフロ・ジャズとかアフロ・ハウスとかアフロっぽい要素を簡単に取り入れたものって、大体ちょっと聴けばパターンは判るんですよ。その上澄みだけを取ってきて、それを繰り返しているものが多いんで。それがトニー・アレンになると、その“繰り返し感” からして変わっているんですよね。だから正確にリズムを取りづらいっていう。レゲエも同じですよね。判りやすそうなんだけど、実は微妙なズレがあって、それが独特のグルーヴ感を生んでいるっていう点で。もちろん意図的にズラしているってわけじゃなくて、彼らの間合いでやると自然にズレていくっていうことだと思うんですけど。そのルーズさですよね。変な話、真面目にやったら出ないものなんで。

 ようするにそこなんですよね。トニー・アレンのいちばんの魅力って。この人にしか出せない音だったりグルーヴだったりするんですよ。真似しようと思ってもできない。表面的なパターンを真似することは簡単だと思うんですけど、そこから、その意志を継ぎつつ新しい何かを作り出すっていうのはなかなかできないんじゃないですかね。簡単に真似できて昇華できて新しいものを生み出すことができるような人たちの音楽も世の中にはいっぱいありますけど、このクラスの人たちのやってることはそうはいかないですよね。ホントに表面的な部分だけ。例えばドラム・パターンを学んで一生懸命練習して、叩けるようになりました。大抵そこまでですよ。その先になかなか進めないっていう。叩き方は理解できても、「何でそういう風に叩いているのか?」「何でそういうグルーヴなのか?」 っていうのは半永久的に理解できないと思うんですよね。で、そこにみんな惹かれるんですよ。 

--- トニー・アレン自身「ドラム・スタイルに関しては、アート・ブレイキーマックス・ローチからの影響が大きい」と語っているようですが、CALMさんから見てもそういったモダン・ジャズ・ドラマーからの影響というのは明らかですか?

 ジャズのパターンというよりは、アクセントの付け方とか強弱の付け方みたいな部分だと思うんですよね。ドラムってリズム・パターンだけだと思われがちですけど、もっと細かいニュアンス的なところが実は大事だったりするんですよね。バスドラの強弱の付け方だったり、バスドラとスネアの音量の差だったり、そういう部分を微調整するだけでグルーヴってかなり変わってくるんですよ。自分で曲を作っていたり、他の人のドラム録りしていてもそう思うんですけど。例えば、70年代後半のディスコ全盛期になるとやっぱりキックを意識的に強く叩いたりしていて、そうするとあのグルーヴが出てきたりするんですよね。

 そういうのと一緒で、パターンはもちろん練習しているとは思うんですけど、結局は強弱や音量だったりのフィーリングに影響を受けていたんじゃないかなって。どちらかと言えばアート・ブレイキーのフィーリングに近いような気がします。多分あのビッグバンド感でしょうね、共通点があるとしたら。ビッグバンドの中で自分のドラムをどれだけ目立たせるか、みたいな。

--- CALMさんがもしリミックスを手掛けたり、実際に共演をすることになったら、色々とアイデアなんかも豊富にお持ちなんじゃないかなと思うのですが。

 とにかくアクが強いですからね。料理に例えたら、すごいインパクトの強い食材を扱うようなものなんで、ホントによく考えて手を付けなきゃなとは思いますよ。もちろん共演できたり、リミックスやサンプルを使わせてくれたらいいなって思いますけど、よっぽど考えて手を尽くさないかぎりは、単純に向こうのアクの強さに呑み込まれて終わりっていうのがオチですからね(笑)。だから、むしろトニー・アレンのプロダクションに参加するほうが面白いかもしれないのかなっていう。自分の曲の中に取り入れるっていうのは結構難しいと思います。何と言うか・・・ “なんちゃってアフロ”みたいなものになるのが恐いんですよね(笑)。

--- 日本人でトニー・アレンと共演して実際に作品を残しているアーティストは、たしか先日アルバム(『Fanfare』)をリリースしたキングダム☆アフロックスだけでしたよね?

 ライブで共演だけっていうのは何組かいたと思いますけど、音を残しているっていうのは、彼ら以外ではちょっと聞いたことないですよね。まだトニー・アレンが現役のうちにもっと実現してくれたらいいなとは思うんですけどねぇ・・・

--- CALMさんも共演される可能性が高いんじゃないかなと・・・

 いやぁ、チャンスがあれば是非とは思いますけど、そういうのも総じてめぐり合わせですからね。

--- 具体的にリミックスしてみたい曲っていうのはあります?

 例えば初期の曲なんかは、僕の中では完成されているものっていう感じがあるんで、イジりようがないんですよね。リミックスするときは「絶対、元曲を超えるぞ」っていう気持ちでやるタイプなんで。むしろ後期の曲ですよね。「ドラムはいいけど、曲自体が完成されてないな」っていうものがポツポツあるんで、そういうのをイジってみたいなとは思いますね。

 だからまぁ、この『Homecooking』の中にある曲とかになるのかなぁ・・・個人的にはちょっと残念だなって思うような曲もあるんですよ(笑)。ドラム以外の部分で。シンセがチープすぎたりだとか、「もうちょっとラップも考えた方がいいんじゃないの?」みたいなものとか(笑)。

--- 『Lagos No Shaking』や『Secret Agent』のような最近の作品に対しても、ところどころでそういった“しょっぱい”印象があったりも?

 逆にそのあたりのごく最近のものになると、より判ってる人がプロダクションに参加しているんで、クオリティはすごい上がってるんじゃないかなって思いますよ。中途半端さがなくなってるっていうか。割りきってやりつつも、それを理解したプロダクションの人たちが付いて来てるなっていう印象ですね。

--- そうすると2000年前後あたりの作品が・・・

 いちばん中途半端な感じになっちゃってるかなって・・・2000年ぐらいって、「何かと何かをミックスしてみました」っていうのが色々なところですごく中途半端に行なわれていた時代だったと思うんですよね(笑)、今振り返ってみると。それと、その時期にトニー・アレン自体にもちょっとパワーがなかったのかなって。だから、呼び込める運も呼び込めなかったり、出逢うべき人と出逢えなかったりって、そういうのは結構あると思うんですよね。パワーがあってしっかり行動していたら、さっき言ったような理解あるプロダクションとの出逢いもあったんじゃないかなって。

 まぁでも、最近来日した時なんかでも判ってる人たちが呼んでるっていう感じはありましたからね。で、共演者もしっかりトニー・アレンのことを理解している。そういう意味で、現在のトニー・アレンを取り巻く状況っていうのはかなりいい流れにあるんじゃないですかね。あとは本人の体力的な部分が安定していれば、今後もいい作品がどんどん出続けるんじゃないかなって思ってますよ。



【取材協力:ウルトラヴァイブ/聞き手:HMV 小浜文晶】



ネイティブアフリカンではないミュージシャンが、実は本能に埋め込まれている故郷「アフリカ」へ回帰する瞬間を捉えたアルバムを紹介します。

selected&text by Calm

Omar Sosa
『Sentir』 (Ota Records)
一般的にはキューバのイメージでしょうが、確実に肉体と精神はどのアルバムをどう切り取ってもアフリカ。そこにキューバのエッセンスを振りかけているだけ。フレージングどうこうと言った表面的な部分ではなく、心に響く何かを感じるべきだと思う。60年代〜70年代のアフリカ回帰をうたったアメリカのジャズミュージシャン達とも肩を並べることができる数少ないピアニスト。
渡辺貞夫
『ムバリ・アフリカ』 (CBS/Sony)
日本代表と言っても過言ではない大物中の大物。アメリカのストレートなジャズ → ブラジル音楽 → フュージョンなど幅広い音楽性を誇っていますが、中にはこんな作品も。さすがは第一人者だけあって参加ミュージシャンも盤石の布陣。アメリカのアフリカ回帰スピリチュアルジャズにも決して負けることない演奏と楽曲と志。
V.A.
『Le Festival au Desert』 (Creon Music)
グルーヴのみでアフリカを見てしまうと痛い目にあうよ、と忠告されそうな濃厚なミクスチャーミュージックライブショーケース。アフリカ民族音楽と西アジアやブルース等様々な音楽が融合される奇跡の祭典を収めてある。トニー・アレンも言っていたように、彼の真似をしても何も生まれない。彼のように様々な音楽を吸収したアフリカンこそ最高なのだと気づかされる。
Alice Coltrane
『Transcendence』 (Warner)
ジョン・レノンの精神を支えたのがオノ・ヨーコだったように、コルトレーンの精神を支えたのは彼女だったかもしれない。夫の死後様々な音楽をやってきたけれども、一度基本に立ち返り「アフリカ」という精神へ回帰する瞬間を絶妙のタイミングで録音できたのがこのアルバムだと思う。トラディショナルだけではなく、自分たちの原点を見つめ直したかのようなオリジナルも秀悦。ゆるいけれどグルーヴはまさにアフリカそのもの。
Between
『Dharana』 (Wergo)
様々な音楽を吸収 → 発散するのがプログレの醍醐味だと思うけれど、こういった偶然性もまた面白さの一つだと思う。一聴するとインド音楽に根ざした精神性を感じるかもしれないけれど、グルーヴはアフリカ、まさにトニー・アレンがパーカッションをプレイしているよう。温度はかなり低いけれど、淡々とグルーヴを積み重ね、そして静かに高揚していく様はまさにフェラ・クティが残した音楽と同一ベクトルを向いている。


profile
CALM (カーム)

 ジャンルにとらわれず、全ての良質な音楽を軸として唯一無二の音を放つサウンドクリエーター。 あえてカテゴリーにあてはめて表現するならば、チルアウト、バレアリック、アンビエント、ジャズから、ブラックミュージック、ダンスミュージックに至るまでの要素を絶妙に調合し、自らのエッセンスでまとめあげて世界に発信している。97年のデビュー以来、Calm、Organlanguage、K.F.、THA BLUE HERB/BOSSとのユニットJapanese Synchro Systemなど、様々な名義を使い分けて幅広い楽曲を生み出し、現在に至るまで実にほぼ毎年フルアルバムなどをリリース。勢力的な活動を続けている。代表曲には、Light Years、Shining of Life、EGO-WRAPPIN' 中納良恵をVoに迎えたSunday Sunなどがある。またDJとしてのキャリアも重ね、ダンスフロアに笑顔を育むをテーマに活動。つくり出す楽曲同様あらゆる良質な音楽から貪欲に選曲し、解放している。2つのレギュラーパーティー、Bound for Everywhere とMonday Moonを中心に各地へ。 可能であれば出来る限りの機材を持ち込んでの音づくりをし、心に届く音でのプレイを信条としている。


  Calm Official Website


  • CALM 2タイトル連続リリース

    CALM 2タイトル連続リリース

    日本のクラブ・ミュージック/チルアウト・サウンドのパイオニアが、キャリア初となるベスト盤と限定ライブ盤をリリース・・・

Inspiration Information 4
 
 Jimi Tenor / Tony Allen
Inspiration Information 4
 Strut STRUT043CD 
 英Strutレーベルによる「レジェンド×ニュージェネ」のコラボレーション・シリーズ「Inspiration Information」の第4弾。トニー・アレンと、マルチに楽器を操り唯一無二なサウンドでリスナーを翻弄し続けるヘルシンキの鬼才ジミ・テナーとのサイケデリック・アフロビート・ジョイント。


 
Secret Agent
 
 Tony Allen
Secret Agent
 ライス WCR229 
 WORLD CIRCUIT レーベル移籍第1弾アルバム。近年、クラブ・サウンドに接近した活動が続いていただけに、この生々しいグルーヴにはあらためてハッとさせられる。



Lagos Shake: A Tony Allen Chop Up
 
 Tony Allen
Lagos Shake: A Tony Allen Chop Up
 Honest Jons 34 
 2006年のアルバム『Lagos No Shaking』収録曲のリミックスに新曲を加えたもの。デトロイト・テクノの至宝カール・クレイグ、ミニマル・ダブの極北ベーシック・チャンネルからモーリッツ・フォン・オズワルドとマーク・アーネスタスらがリミックスを提供。


 
Lagos No Shaking
 
 Tony Allen
Lagos No Shaking
 Honest Jons 20 
 現地ラゴスでのオールナイト・セッションの模様をレコーディングし、ベーシック・チャンネルのモーリッツ・フォン・オズワルドがミックスしたアルバム。



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 Tony Allen
Live
 Comet COMET037 
 『Homecooking』リリース後、フランス、カナダ、ブラジルなど18ヶ月に及ぶ世界ツアーから、モントルー・ジャズ祭出演時の音源などベスト・パフォーマンス 7曲をよりぬいたライヴ盤。2004年発表。



 
Allenko Brotherhood Ensemble
 
 Allenko Brotherhood Ensemble
Allenko Brotherhood Ensemble
 Shanachie SH66031 
 フランスのアフロ推奨レーベル COMETからリリースされた、トニー・アレンのドラム・サンプリング・プロジェクトによる企画盤。ヒップホップ、ブレイク、ダブ好きに特にオススメ。


Psyco On Da Bus
 
 Psyco On Da Bus
Psyco On Da Bus
 PGI/Platform 1125 
 『Black Voices』のプロデュースを手掛けたパリ在住のヒップホップ/トリップホップ・アーティスト、ドクターL とのコラボレーション・プロジェクト。



 
Black Voices (Revisited)
 
 Tony Allen
Black Voices (Revisited)
 Octave OTLCD1360 
 クラブ・シーンでアフロビートが注目を集め始めていた1999年、ドクターLのプロデュースでCOMETからリリースされた、トニー・アレンにとって初めてとなるワールドワイド・リリースのアルバム。トニーのオリジナル・セッションを新たに加え2010年にリイシューされた発売10周年記念盤。


The Good The Bad & The Queen
 
 The Good The Bad & The Queen
The Good The Bad & The Queen
 Capitol 3819502 
 ブラー/ゴリラズのデーモン・アルバーン主導による新プロジェクトのデビュー・アルバム。元クラッシュのポール・シムノン(b)、元ヴァーヴのサイモン・トング(g)に、トニー・アレンを加えた布陣でかつてない音のマジックが巻き起こる。



 
Afro Disco Beat
 
 Tony Allen
Afro Disco Beat
 Vampisoul VAMPICD090 
 スペインの辺境ビート・ディスカヴァリー工房VAMPISOUL発の2枚組ベスト。『Jealousy』から『No Discrimination』まで、初期4枚のオリジナル・アルバム収録曲を全て網羅した徳用盤。



Koola Lobitos 64-68 / '69 L.A. Sessions
 
 Koola Lobitos / Fela Kuti
Koola Lobitos 64-68 / '69 L.A. Sessions
 Octave OTCD2214 
 ナイジェリア70結成以前にフェラ・クティとトニー・アレンが在籍したバンド、クーラ・ロビトス1964〜68年のレコーディング音源に、69年米国ツアー中に行われたL.A.でのセッションを追加収録。アフロビート確立以前の貴重な初期音源。2011年紙ジャケ再発。




 
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 Koola Lobitos / Fela Kuti
Highlife Jazz And Afro Soul 1963-1969
 Pヴァイン PCD18511 
 フェラ・クティ 60年代初期の貴重音源3枚組。ディスク1には、EMI/ファーロフォン時代の初期シングル14曲(1963〜65年)を、ディスク2には1stアルバム『Rela ”Ransome”Kuti & His Koola Lobitos』(1965年)を、ディスク3には、10インチ原盤のライヴ・アルバム『Afrobeat On Stage』(1966年)とフィリップス時代のシングル8曲(1966〜68年)をそれぞれ収録。全39曲のうち33曲がこれまでナイジェリア国外ではリリースされることがなかった超レア音源。乞再発!