トップ > 音楽CD・DVD > ニュース > HMV × ストレンジ・デイズ No.5

HMV × ストレンジ・デイズ No.5

2010年11月14日 (日)


HMV × STRANGE DAYS

 HMV ONLINEと月刊音楽専門誌「ストレンジ・デイズ」の合同企画ページ。発売前の「ストレンジ・デイズ」誌最新号のコンテンツがチェックできるのはここでだけ! 第5弾特集は、『ポセイドンのめざめ』と『アイランズ』のデビュー40周年記念エディションが到着したばかりのキング・クリムゾン。ロバート・フリップとスティーヴン・ウィルソン(ポーキュパイン・ツリー)による最新ステレオ・ミックスのHQCDに、5.1chサラウンド・リミックスによるDVDオーディオをはじめ、レアな別テイク、リハーサル音源など既発40周年記念エディションのそれをはるかに凌ぐ大量のボーナス・マテリアルを追加した超豪華なる意匠。目下、師走間近のロック・リイシュー市場の話題を独占中。 誌面掲載関連アイテムの特濃HMVレコメンドと併せて、おたのしみください。

キング・クリムゾン
 

 2009年秋、キング・クリムゾンの結成40年を記念して『クリムゾン・キングの宮殿』『リザード』『レッド』の3作の、5.1サラウンド・ミックスやボーナス・トラックを含むリマスター盤が発売された。08年のアメリカ・ツアー以降、グループは何の動きもない状況で、活動休止中とも言える現在にフラストレーションが溜っていたファンにとっては、大きなプレゼントとなり、大いに盛り上がりを見せた。そしてこの秋、その第二弾として『ポセイドンのめざめ』『アイランズ』がリリースされた。両作品には、第一弾同様、多くのボーナス・トラックが収録され、激しいメンバーチェンジで揺れた当時のキング・クリムゾンの試行錯誤がうかがえる。これを機に、名作の名高いこの2枚の作品について改めて触れるとともに、関連作品を通して、2枚の作品が制作された70年代初頭のクリムゾンについて今一度検証してみた。キング・クリムゾン40周年記念特集のパート3。



キング・クリムゾン


 
キング・クリムゾン
40周年記念エディション 第2弾


 キング・クリムゾンの名作がDVDオーディオ付きでよみがえる、デビュー40周年記念エディション。『クリムゾン・キングの宮殿』『リザード』『レッド』に続き発売された『ポセイドンのめざめ(In The Wake Of Poseidon)』(1970年)と、『アイランズ(Island)』(1971年)がついに到着。

 今回もスティーヴン・ウィルソンポーキュパイン・ツリー)とロバート・フリップによる2010年度新ステレオ・ミックスと、5.1chサラウンド・リミックス(MLP Lossless 5.1 Surround / DTS 5.1 Digital Surround)音源を採用。

 『ポセイドンのめざめ』のCDにはボーナス・トラックとして、「Cat Food」のシングルB面曲「Groon」や「Peace: An End」の別ミックス、グレッグ・レイクがガイド・ヴォーカルを担当した「Cadence and Cascade」を収録。またDVDオーディオにはCDと同じボーナス・トラックに加え、リハーサルや別ミックスなども収められています。

 また、『アイランズ』のCDにはボーナスとして、レコーディング・セッションやリハーサル音源、そして未発表の「A Peacemaking Stint Unrolls」などを収録。またDVDオーディオにはCDと同じボーナス・トラックも含め、およそ90分におよぶレア音源が収められます。

 国内盤はHQCD、DVDオーディオを別々の紙ジャケットに収納したダブル紙ジャケット仕様。『ポセイドンのめざめ』は英国初回仕様ジャケットとワーナー・パイオニア版国内初発売時のA式見開きジャケットを再現、またレアな「ロック・エイジ花帯」も付いています。『アイランズ』は英国初回仕様ジャケットとアメリカ盤仕様のA式見開きジャケットを同梱。アメリカ盤ジャケットには曲目表記に入ったグリーンのステッカーも添付されています。


【トラックリスト】


『ポセイドンのめざめ』40周年記念盤


【HQCD】
Original album - 2010度版ステレオ・ミックス
1. Peace: A Beginning
2. Pictures of a City
3. Cadence & Cascade
4. In The Wake of Poseidon
5. Peace: A Theme
6. Cat Food
7. The Devil's Triangle (part I)
8. The Devil's Triangle (part II)
9. The Devil's Triangle (part III)
10. Peace: An End
ボーナス・トラック
11. Groon
12. Peace: An End - Alternate mix
13. Cadence & Cascade(Greg Lake guide vocal version)

【DVD-オーディオ】
MLP Lossless 5.1 Surround/DTS 5.1 Digital(Surround - 2010 mix:)
1. Peace: A Beginning
2. Pictures of a City
3. Cadence & Cascade
4. In The Wake of Poseidon
5. Peace: A Theme
6. Cat Food
7. The Devil's Triangle (part I)
8. The Devil's Triangle (part II) 
9. The Devil's Triangle (part III)
10. Peace: An End
11. Groon

【DVD-オーディオ】
Original album - 2010度版ステレオ・ミックス
1. Peace: A Beginning
2. Pictures of a City
3. Cadence & Cascade
4. In The Wake of Poseidon
5. Peace: A Theme
6. Cat Food
7. The Devil's Triangle (part I)
8. The Devil's Triangle (part II)
9. The Devil's Triangle (part III)
10. Peace: An End
11. Groon


【DVD-オーディオ】
30周年記念リマスター(現行CDマスター)
1. Peace: A Beginning
2. Pictures of a City
3. Cadence & Cascade
4. In The Wake of Poseidon
5. Peace: A Theme
6. Cat Food
7. The Devil's Triangle (part I)
8. The Devil's Triangle (part II)
9. The Devil's Triangle (part III)
10. Peace: An End
ボーナス・トラック
1. Cat Food (single version)
2. Groon (single b-side)
3. Cadence & Cascade (unedited master)
4. Cadence & Cascade (Greg Lake guide vocal version)
5. Cadence & Cascade (instrumental take from Wessex Studios)
6. Groon - Take 1
7. Groon - Take 5
8. Groon - Take 15
9. The Devil's Triangle (rehearsal version from Wessex Studios)
10. Peace: An End (alternative mix)



『アイランズ』40周年記念盤


【HQCD】
Original album - 2010度版ステレオ・ミックス
1. Formentera Lady
2. Sailor's Tale
3. The Letters
4. Ladies of the Road
5. Prelude: Song of the Gulls
ボーナス・トラック
7. Islands (studio run through with oboe prominent)
8. Formentera Lady     (original recording sessions - take 2)
9. Sailor's Tale (original recording sessions - alternate mix/edit)
10. A Peacemaking Stint Unrolls (previously unreleased)
11. The Letters (rehearsal/outtake)   
       12. Ladies of the Road 1. Formentera Lady (Robert Fripp & David Singleton remix)

8 - 11 mixed by Steven Wilson 4. Ladies of the Road       from the original session reels

【DVD-オーディオ】
『アイランズ』オルタナティヴ・アルバム
1. Formentera Lady - Original recording sessions - take 2
2. Sailor's Tale - Original recording sessions - alternate mix/edit
3. The Letters - Rehearsal/outtake
4. Ladies of the Road - Rough mix
5. A Peacemaking Stint Unrolls - Previously unreleased
6. Islands - Studio run through with oboe prominent

1-3 & 5 mxed by Steven Wilson from the original session reels.

【DVD-オーディオ】
MLP Lossless 5.1 Surround/DTS 5.1 Digital
1. Formentera Lady
2. Sailor's Tale
3. The Letters
4. Ladies of the Road
5. Prelude: Song of the Gulls
6. Islands

Mixed & produced from the original multi track tapes by Steven Wilson. Executive producer Robert Fripp.a

【DVD-オーディオ】
MLP stereo / LPCM stereo - 2010度版ステレオ・ミックス
1. Formentera Lady
2. Sailor's Tale
3. The Letters
4. Ladies of the Road
5. Prelude: Song of the Gulls
6. Islands

【DVD-オーディオ】
30周年記念リマスター(現行CDマスター)
1. Formentera Lady
2. Sailor's Tale
3. The Letters
4. Ladies of the Road
5. Prelude: Song of the Gulls
6. Islands

【DVD-オーディオ】
『アイランズ』への道
1. Pictures of a City - Early rehearsal by Islands lineup
2. Sailor's Tale - Early rehearsal by Islands lineup
3. Islands (fragment) - Robert Fripp reference cassette -mellotron on vibes setting
4. Formentera Lady - Rough mix from album recording sessions
5. Sailor's Tale - Rough mix from album recording sessions
6. Drop In - Early rehearsal by Islands lineup
7. The Letters - Live at Plymouth, mastered by David Singleton
8. Sailor's Tale - Live at the Zoom Club, mastered by David

【DVD-オーディオ】
『アイランズ』 追加トラック集〜「レディース・オブ・ザ・ロード」バリ
1. Ladies of the Road - Robert Fripp & David Singleton remix
2. Ladies of the Road - Original recording sessions - take 5
3. Formentera Lady - Original recording sessions - take 1
4. Formentera Lady - Original recording sessions - take 3
5. Formentera Lady - Original recording sessions - take 4

2 - 5 mixed by Steven Wilson from the original session reels.




 
In The Wake Of Poseidon: ポセイドン のめざめ 〜40周年記念エディション

ロック・エイジ 花帯
 
国内盤 『ポセイドンのめざめ』
40周年記念盤

In The Wake Of Poseidon
King Crimson
 

 DVDオーディオ・ディスクにはロバート・フリップ&スティーヴン・ウイルソン(ポーキュパイン・ツリー)による2010年度版 5.1.chサラウンド・ミックス(MLP Lossless 5.1 Surround/DTS 5.1 Digital Surround)、2010年度版新ステレオ・ミックス、30周年記念エディション・ステレオ・ミックス(現行マスター)ボーナス・トラックを収録。またCDの方は、今回も日本盤のみHQCD仕様。アートワークは先に発売された『宮殿』、『レッド』、『リザード』同様、HQCD、DVDオーディオを別々の紙ジャケットに収納したダブル紙ジャケット仕様。英国初回仕様ジャケットとワーナー・パイオニア版国内初発売時のA式見開きジャケットを再現。先発同様、レアな「ロック・エイジ花帯」つき。





Islands: アイランズ 〜40周年記念エディション

アメリカ盤デフ・ジャケ w/ ステッカー
 
国内盤 『アイランズ』
40周年記念盤

Islands
King Crimson
 

 仕様などは上掲の『ポセイドンのめざめ』に同じく、DVDAにはこれまで発売された40周年記念エディションの追加マテリアルを凌ぐ大量のボーナス・マテリアルを追加。近年再評価著しい同作研究に新たな1ページが加えられることは間違いない。アートワークはHQCD、DVDオーディオを別々の紙ジャケットに収納したダブル・紙ジャケット仕様。英国初回仕様ジャケットとアメリカ盤仕様のA式見開きジャケットを予定。アメリカ盤ジャケットには曲目表記の入ったグリーンのステッカーを添付。





「クリムゾン・キングの宮殿」
40周年記念 200g アナログ・エディション


クリムゾン・キングの宮殿 〜40周年記念 200g アナログ・エディション
 
In The Court Of The Crimson King
King Crimson
 

 200g重量盤での久々のアナログ再発。最近のアナログ再発は海外一括プレスの輸入仕様が多く、輸送の途中等で新品にもかかわらず盤面にヘアラインやすれがあるものが多く日本のコレクターから不評を買っていることを鑑み、ディシプリンよりプレス用ラッカー盤を輸入。国内盤は東洋化成でプレスします。ジャケットに関しては英国初回仕様に準ずる仕様でというディシプリンからの要請により、英アイランド盤初回仕様のE.J.Day社制作のジャケット仕様に準じたものを予定しています。 また、MP3ダウンロード用のコードが印刷されたカードを封入。海外ダウンロード・サイトからMP3の楽曲データがダウンロードできる特典が付きます。




在庫残りわずか!
40周年記念エディション完全限定盤 ボックス


In The Court Of The Crimson King 〜40周年記念エディション完全限定盤 ボックス
 
In The Court Of The Crimson King
King Crimson
 

 2009年12月に発売40周年を記念してリリースされた『クリムゾン・キングの宮殿』ボックス・セット。30cm LPサイズにて、ブックレット、ポスター、バッジ等が同梱されています。箱および特典物は海外生産で、CD、DVDのプレス、紙ジャケットは国内生産となっています。ボックス内のCD、DVDAが紙ジャケット仕様なのは日本アセンブル盤のみ。海外版は通常仕様となります。




 
11月20日発売

ストレンジ・デイズ No.134 2011年1月号
   ストレンジ・デイズ No.134 2011年1月号

《contents》

【特集1】 キング・クリムゾン デビュー40周年記念[パート3]

・クリムゾン・キングの死と再生
・『ポセイドンのめざめ』デビュー40周年記念エディション
・『ポセイドンのめざめ』関連アルバム解説
・統制と暴発がせめぎ合う初期クリムゾンの最終型
・『アイランズ』デビュー40周年記念エディション
・『アイランズ』関連アルバム解説
・キング・クリムゾン初期4作品のリマスターについて

【特集2】 アップル・レコーズ

・ビートルズ関連アルバム解説
・バッドフィンガー&その他のアップル・アルバム解説
・アップル・レコーズ所属アーティストと管理楽曲
・シングル・リスト
・関連コンピレーション解説

◆ジミ・ヘンドリックス
 アンソロジーで浮かび上がる孤高のアーティスト像 / ニュー・ディスク解説
◆エリック・クラプトン
 究極の趣味性と個的体験を止揚させたクロスロード・ギター・フェスの意義 / クロスロード・ギター・フェスDVD解説
◆鈴木慶一/小島麻由美 インタヴュー
◆ブライアン・イーノ インタヴュー
◆エルヴィス・プレスリー33年ぶりのニュー・アルバム
◆エディ・ジョブソン インタヴュー
◆ギターウルフ
 狼たちの純なロックンロール人生 / インタヴュー / アルバム解説
◆湯川潮音 インタヴュー
◆スーパースターたちが参加したジェリー・リー・ルイスの最強アルバム
◆日本ロックの豊饒な宇宙を集大成した画期的CDコレクション
 ほか
 

> 「ストレンジ・デイズ」 バック・ナンバーはこちら

 


そのほかの注目【特集】は


アップル・レコーズ
 昨年の『ザ・ビートルズ・ボックス』に続き、この秋には、究極のベスト・アルバム“赤盤・青盤”のリマスター盤ジョン・レノンのボックス・セットやベスト盤ポール・マッカートニーの『バンド・オン・ザ・ラン』のスーパー・デラックス盤の発売・・・と、リリース・ラッシュが続くビートルズ。そして今度はバッドフィンガーメリー・ホプキンなど、ビートルズが設立したアップル・レコーズの作品がリリースされる。アップル所属アーティストの作品や、管理楽曲についてなど、アーティスト・レーベル第1号として知られるアップル・レコーズの特集!!


ジミ・ヘンドリックス West Coast Seattle Boy: The Jimi Hendrix Anthology ジミ・ヘンドリックス アンソロジーで浮かび上がる孤高のアーティスト像 / ニュー・ディスク解説  不世出の音楽家ジミ・ヘンドリックスの隠された秘密を、サウンドとヴィジュアルから迫るアンソロジー! ジミ・ヘンドリックス没後40周年記念リリースと銘打った、空前絶後のスペシャル企画となる完全生産限定盤『West Coast Seattle Boy: The Jimi Hendrix Anthology』は、4枚のCDに、未発表音源をぎっしりパッケージ、さらにDVDは、ビートルズの「アンソロジー」などで有名なボブ・スミートン監督によるもので、この天才音楽家の魅力にあらゆる側面からアプローチしていく映像は、ファンならずとも必見と言えるでしょう。


                                              
フリップを魅了した、キース・ティペット



キース・ティペット・グループ(右端がティペット)
 キース・ティペットというピアニストについてすこし触れたい。イアン・マクドナルドマイケル・ジャイルズが離脱するとともに訪れたキング・クリムゾン第1期の終焉。その結果、ロバート・フリップ主導によるプロジェクト的性格が強くなったクリムゾンは、様々な外部入力を必要としながら、その後1971年のアルバム『Islands』における布陣が揃うまで、実質的にパーマネントなバンドとしての形態は存在しなかったとされている。つまり、2作目の『ポセイドンのめざめ』制作以降の話ということだ。

 メンバーの脱退に加え、『クリムゾン・キングの宮殿』で音楽的蓄積を出し尽くし、新たな革新的創造に求向していたフリップ。「ロック」と「ジャズ」との融合に何らかの可能性を見出し、それを新たなるエネルギー源として外部入力を行なうために目を付けていたミュージシャンの中に、そのキース・ティペットという若く感性豊かで才気迸る、インプロヴァイザー型のピアニストはいた。ブリストル出身で、10代の頃からビバップへの接点を持ち、ブライアン・オーガー・グループとの活動でも知られる女性シンガーで後の奥方となる、ジュリー・ドリスコール(ジュリー・ティペット)の作品で伴奏を務めるなど、すでに英国ジャズ・シーンでは広くその名が知られていた。また、エルトン・ディーン(as)、ニック・エヴァンス(tb)、マーク・チャリグ(cornet)ら3管フロント・ラインを擁する自己のグループ(キース・ティペット・グループ)は、当時の同シーンで最も先鋭的と言われており、その後彼らがソフトマシーンクリス・マクレガーのブラザーフッド・オブ・ブレスなどと接触していく様は、英国ジャズ/ジャズ・ロックの歴史そのものと連動していると言えるだろう。1970年10月には、ジョルジオ・ゴメルスキのプロデュースで初のアルバム『You Are Here・・・I Am There』を発表している。

 1970年当時、ロンドンのマーキー・クラブにレギュラー出演していたティペットは、とある晩のギグ終演後、ドリスコールを介してフリップと話をする機会を得て、『ポセイドンのめざめ』の録音セッション、その終盤から参加することになったという。折りしも、ティペットの自己セクステットがちょうど『Dedicated To You But You Weren't Listening』を発表した時期でもあった。

 『ポセイドンのめざめ』におけるティペットの参加楽曲は、「Cadence And Cascade」、シングル・カットされた「Cat Food」となるが、特に後者は、当時のクリムゾンが生んだ最も斬新なサウンドと評価が高い。ややもするとビートルズ「Come Together」の二番煎じにとどまりそうなところを大きく飛躍させた要因のひとつが、オーバーダビングされたティペットの煌くピアノ・インプロヴァイズ、としても言い過ぎではないだろう。また、「Devil's Triangle」での組曲構想、そのインスピレーションの源はティペットが持ち込んだもの、とフリップはしている。このアルバムが、例えば、同年に発表されたマイルス・デイヴィス『Bitches Brew』に呼応するものと言えるとするならば、ティペットがクリムゾン(正確にはフリップか)にもたらした、閉鎖的なカテゴリーからの脱却と、そこに矛盾するかの如く潜む正統的なジャズ・イディオムとの複合感覚は、マイルスのそれと同じくあまりにも絶妙で革新的なものだったのではないだろうか。

キング・クリムゾンとティペット(左から2人目)
 ティペット参加によるクリムゾンの進化は、その後の『Lizard』『Islands』でより明確となる。前者には、自己グループからニック・エヴァンス(tb)、マーク・チャリグ(cornet)、後者にはチャリグのみを引き連れ全面的なサウンド・コンセプションの形成を担っている。特に、ジャズ・ロック的な複合性を緻密なアンサンブルで完全に昇華した『Islands』では、ティペットらに加え、マイク・ウェストブルック・バンドのハリー・ミラー(contrabass)らの参加によって多彩なヴァリエーションを持ったサウンドが弾き出され、彼ら英国ジャズ・シーンとのシナジー、もしくは「ジャズとロックの不可分」をより強く印象付けた。ちなみに、20年後においてもフリップは「キースとの仕事はいつでも気持ちを高揚させてくれる。彼と一緒にいて興奮しないほうがおかしい」と、ティペットの音楽・音楽観への変わらぬ傾倒ぶりが窺える発言を残している。がしかし一方で、ティペットは「フリップ個人から音楽的な影響を受けたことは一切ない。優秀なギタリスト、プロデューサーではあるが、彼のコンセプトにはまったく影響されなかった」と同時期のインタビューで答えている。こうした発言を含めても、当時のフリップが、ティペットの持つ実際的な演奏技術の高さや、(すくなくともロックの側面から見て)斬新なアイデアをクリムゾン・サウンドにいかに必要としていたかは想像に難くない。現に、『Islands』と、ティペットが関与していないその直後のツアーを収めたライヴ・アルバム『Earthbound』とのサウンド的なギャップはあまりにも大きく、この時期のスタジオ作品のコンセプトにおいてティペット(と彼のグループ)の役割はかなり重要な位置を占めていたということに否が応でも気付かされてしまう。

 ロバート・フリップがプロデュースしたキース・ティペットの作品。中でも、1971年、総勢50余名からなる巨大ユニット=センティピードの『Septober Energy』、72年のソロ名義作『Blue Print』、73年のインプロ型トリオ・ユニット、オヴァリー・ロッジ『Ovary Lodge』などは、同時期〜それ以降のクリムゾン作品としっかり連動していることを忘れてはならないだろう。ただ、ティペットにとって、クリムゾンまたはフリップとの活動は、単に可能性を追求する場のひとつでしかない、つまりは、一介のセッション・ミュージシャンとして共演したまで、ということのようだ。72年当時においてもフリップはティペットに、「きみのグループも含めて、正式にキング・クリムゾンとして一緒にやってもらえないかな?」とラブコールを送ったそうだが、「自分の音楽をもっと発展させたいし、可能性を追求したい」という理由で見事にフラれている。90年代初頭にも「ヒュー・ホッパーらとモダンなロック・バンドを結成しよう」と持ちかけたそうだが、こちらも実現はしておらず、ティペットとアンディ・シェパードの共作アルバム『66 Shades of Lipstick』のプロデュースのみにとどまっている。

キース・ティペット
 キース・ティペットと彼のグループは、『Islands』発表後にはすでにクリムゾンを離れ、その志向を、よりフリージャズ的な方角に向いた内的追求に移行させ、また西洋音楽の伝統への訣別を強く表した創作活動に打ち込むようになる。先述の『Blue Print』、奥方ジュリー(vo)らを含む即興ユニット=オヴァリー・ロッジ、あるいは、「映画のない映画音楽」をポスト・モダンの中で捉えたキース・ティペットズ・アークの『Frames』、90年代以降のカルテット=ミュージシャン(Mujician)、ソロ・ピアノ作品、さらには膨大な数にのぼるサイドメン・セッションなど、現在に至るまでのティペットの活動にそれは顕著だ。1997年の6月に初来日を果たしており、ソロ・ピアノによる即興演奏1曲のみ(およそ50分)を演奏した。

 時代時代で様々なクリムゾン・フォームを提示するフリップだが、とりわけ「フリップ=ティペット」の軸により創造が成されていった時期のサウンドに対しては、今(とはいっても2008年あたりまでの)もかなりの拘泥を持っているような・・・という気にさせられる。逆に、むしろクリムゾンという観点からは語られまいとする近年のティペットの活動は、だからして、あの当時クリムゾンに参加したという合点に行き着く。コンサバなロック、コンサバなジャズに辟易とした英国のリベラリストふたりは、こうした互いへの関心の温度差を保ちながら、この先どういうカタチで再邂逅を果たすのだろうか?



 
 
Dedicated To You But You Weren't Listening
 
Keith Tippet
Dedicated To You But You Weren't Listening

 キング・クリムゾン『Lizard』とほぼ同時期に録音された、ティペットの1971年2ndリーダー・アルバム。エルトン・ディーン(sax)、マーク・チャリグ(cornet)、ニック・エバンス(tb)らフロント3管のホーン・アンサンブルが、バップ・イディオムとフリー・インプロをまぜこぜに構築しながら唸りを上げていく。ほか、ソフト・マシーンからはロバート・ワイアット(ds)、ロイ・バビントン(b)、さらにはゲイリー・ボイル(g)も動員され、当時のカンタベリー系の流派と英国ジャズがシンクロした時代そのものが反映されている。ジャケットはロジャー・ディーンが担当。


 
 
Curiosities 1972
 
Command All Stars
Curiosities 1972

 キース・ティペットを中心に、当時のブリテッィシュ・ジャズ・シーンの精鋭達が結集した幻のプロジェクト・ユニット=コマンド・オールスターズ。ティペットが、センティピードからオーヴァリー・ロッジへと進化してゆく過程を克明に記録したこのロスト・セッションは、ロバート・フリップのプロデュースのもと遂に陽の目を見た。ティペット以下、ソフト・マシーンのエルトン・ディーン、ニック・エヴァンス、マーク・チャリグらおなじみの3管部隊と、ハリー・ミラーとジョニー・ダイアニ(b)、キース・ベイリー(ds)というメンバーによる1972年2月ロンドン・コマンド・スタジオにおける録音。


 
 
Septober Energy
 
Centipede
Septober Energy

 エルトン・ディーン(as)、ニック・エバンス(tb)、ジュリー・ティペット(ドリスコール)(vo)、イアン・マクドナルド(as)らファミリーに加え、カール・ジェンキンス(oboe)、イアン・カー(tp)、ドゥドゥ・プクワナ(as)、ロバート・ワイアット(ds)、ブライアン・ゴッディング(g)、ハリー・ミラー、ロイ・バビントン(b)、ズート・マネー(vo)など総勢50名を超えるソロイストを集結させたプロジェクト、センティピード。フリップのプロデュースの下1971年に制作された本作は、様々な音楽要素を汲み取っているため、「ロックとジャズの不可分」をテーマとしているような向きで捉えられがちだが、わりと純然たる「モダン・ジャズ」の歴史の中で語られてもよいのでは?


 
 
Blueprint
 
Keith Tippett
Blueprint

 ティペットのフリー・インプロヴァイザー的側面が振り切れた1972年の作品。ジュリー・ティペット(ドリスコール)の歌と東洋的な旋律のリコーダー、そしてフランク・ペリー、キース・ベイリーによる肉体的なパーカッション。プロデュースを担当したフリップは、『Islands』や、ジェイミー・ミューア(per)を迎えた『太陽と戦慄』において、ここでの音響・音楽的要素を連動的に取り入れている。






 In The Court Of The Crimson King: クリムゾン キングの宮殿
In The Court Of The Crimson King    1969年に発表されたキング・クリムゾンの1stアルバム。「プログレッシブ・ロック」というジャンルを確立した記念碑的な作品で、その後のロック史にも多大な影響を与えた1枚。クラシックやジャズの要素を巧みに取り入れ、深遠なロックの世界を構築。また、ピート・シンフィールドの叙情的な詩によるコンセプトも抽象的・神秘的な世界観を招き入れた。今でこそ「キング・クリムゾン=ロバート・フリップ」という図式だが、デビュー当初はイアン・マクドナルドが主導権を把握し、マイケル・ジャイルズ、グレッグ・レイクとの力関係の均衡のうえにグループが成り立っていた。ギターのリフを前面に押し出したヘヴィ・ウェイトな「21世紀の精神異常者」の邦題は、2001年「倫理上の」理由から「21世紀のスキッツォイド・マン」と改題された。
 In The Wake Of Poseidon: ポセイドンのめざめ
In The Wake Of Poseidon    『クリムゾン・キングの宮殿』からわずか7ヶ月後に発表された2ndアルバム。レコーディング途中に、バンドの主導権をロバート・フリップと二分していたイアン・マクドナルド、グレッグ・レイク、マイケル・ジャイルズら主要メンバーの脱退が相次いだため、演奏はロバート・フリップを中心としたセッション的な色彩が濃い。しかし、内容的には前作のサウンドを確実に踏襲した上で、フリー・ジャズ・ピアニストのキース・ティペットの参加がこれまでにない感覚を生んだ「Cat Food」など、新たな魅力も加えた高水準な作品となった。

 Lizard
Lizard    前作『ポセイドンのめざめ』に引き続きキース・ティペット・グループ、イエスのジョン・アンダーソンなど多数のゲストを招いて制作された3rdアルバム。20分以上にも渡る組曲表題曲が最大の聴きもの。フリップの弾くメロトロン、ティペットらのインプロヴィゼーション、ピート・シンフィールドの詩の幻想性が融合。オリジナルLPではB面すべてを占めていた。ゴードン・ハスケル(vo,b)とアンディ・マカロック(ds)が、本作のレコーディング終了後に脱退している。
 Islands
Islands    前作発表後から参加のボズ・バレル(vo.b)とイアン・ウォーレス(ds)といった新メンバーを含む編成で制作された4thアルバム。キース・ティペット・グループのメンバーらも前作に引き続きゲスト参加し、クリムゾンにとって過渡期的な作品となった。デビュー以来、フリップと共にクリムゾンの代名詞的存在だった作詞・映像・美術担当のピート・シンフィールドはこの作品をもってクリムゾンと訣別。サウンド的にはよりインプロヴィゼーションの比重が増し、抽象性とリリカルさが微妙なバランスを保ちつつ、美しく散りばめられている。レギュラー盤のジャケット・デザインはシンフィールドが担当し、「いて座三裂星雲」の写真が使用されている。

 Earthbound
Earthbound    ピート・シンフィールド脱退直後、1972年2月から3月にかけてのアメリカ・ツアーの模様を収めたライヴ・アルバム。マスターが客席からのカセット録音のため音質劣悪(それゆえロバート・フリップは長年本作のCD化を許可しなかったが、2002年に「30th Anniversary Edition」と銘打ったリマスターCDが発売)ながらも、凄まじい迫力の「21世紀の精神異常者」などを収録。90年代に発掘された怒涛のお宝ライヴ音源でその存在価値はやや薄らいだ感もあるものの、発表当時は大きな話題を呼んだ。
 Larks Tongues In Aspic: 太陽と戦慄
Larks Tongues In Aspic    第3期クリムゾンのスタートを飾る作品で、イエスからビル・ブラッフォード(ds,per)を引き抜き、さらにファミリーからジョン・ウェットン(vo,b)、ヴァイオリンにデヴィッド・クロスを迎えて制作した1枚。「太陽と戦慄 パート2」は、現在でも人気の高いレパートリー。エスニックな要素など、ジェイミー・ミューアによるパーカッション・プレイにも注目。

 Starless And Bible Black: 暗黒の世界
Starless And Bible Black    1973年『太陽と戦慄』参加のメンバーからジェイミー・ミューア(per)をのぞくメンツで翌74年にレコーディングされた本作は、ライヴ録音が多く持ち込まれており、各人の演奏技量が十二分に発揮されている。またクリムゾン独自の文学性も堪らない。リリース後の米ツアーを最後にデヴィッド・クロス(violin,viola,melotron)が脱退する。
 Red
Red    「オリジナル・クリムゾン」による最終作。1974年9月26日解散発表の翌日にリリース。デヴィッド・クロスが脱退し、ロバート・フリップ、ビル・ブラッフォード、ジョン・ウェットンの三人+イアン・マクドナルド、メル・コリンズらが参加しレコーディングが敢行された。ヘヴィで荘厳なムードに包まれている。

 USA
USA    『Red』レコーディング前の1974年、最後のアメリカ・ツアーからの音源が収録されたライヴ・アルバム。「太陽と戦慄パートU」、「21世紀の精神異常者」、「人々の嘆き」においてエディ・ジョブソンによるヴァイオリン、ピアノがダビングされている。また、CD化に際して「Fracture」と「Starless」が追加収録されている。
 The Nightwatch: 夜を支配した人々
The Nightwatch    ライヴ・アルバム『Earthbound』、『USA』よりもはるかに完成度の高い、『太陽と戦慄』発表後の1973年キング・クリムゾン最強の瞬間を捉えた名作。もともとはBBCラジオ音源だったものを丁寧なノイズ・リダクションを施したもので、オフィシャル・ブートレグとしてアナログ時代からベストセラーだった有名音源の全長版。