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【対談】三浦信×小西康陽 pt.2

Monday, November 1st 2010

interview

古いレコードとかを掘り返して楽しくサンプリングする、その快感



-- 今回のアルバムはいつ頃から制作されたんですか?

三浦  今年1月から始めて8月末に完パケしたんで、構想10年、制作8ヶ月って感じですね。 でもアルバムを作ってみて、10年経っても「結局自分は自分のままなんだな」っていう部分があるのを完成と同時に思いましたね。それは残念な気持ちでもなんでもないんですけど。

小西  音楽と全く関係ないことなんだけど…、昨日「自分は小学生ぐらいの時からやってること変わらないんだ」って改めて気付いてさ。結局そういうのを受け入れていくしかないんだよね、人生はね。

三浦  そうですよね。それとは別で、前に小西さんが話してくれたんですが、「20代までっていろんなことを蓄積する時期で、30代になるとその蓄えられたものが立体的に表現出来るようになるんだよ」と。 今回CDを作るにあたって「立体的に、っていうのはこういうことかもしれない」って感じれたことは、自分の中で大きな収穫だったんですよね。

小西  僕もさ、15歳ぐらいから曲を作りたいって思ってて、ギター弾いて練習したりとかするんだけど出来なくて、 25歳ぐらいから突然普通に曲が出来るようになって。それからはあんまり苦労しなくなったっていう。 そのぐらいの時期には何かあるんだよね。

三浦  脳科学的な何かなんですかね?

小西  かもしれないね。

-- 今回の三浦さんのアルバムをお聴きになって、小西さんはどのように感じましたか?

小西  まず「三浦君らしいな」と思ったのと、ある意味懐かしさを感じたかな。 自分もかつて「こういう音楽を作りたい」と思っていたものの1つだったし。

-- そういうところを意識されて作っている部分っていうのはあったんですかね?

三浦  うーん…、「懐かしい」と思ってもらうという意識はなかったんですけど、それは結局、僕は90年代に影響を受けてその価値観で音楽を作ってきたし…、別に僕にとっては懐かしいことではなくて、自分が良いと思っているものをやった結果ですね。ただ、今流行っているような音楽を「新しい」とするならば、新しくなくてもいいや、とは思いますね。

-- そのお話に少し繋がるかもしれませんが、小西さんがこのアルバムのブックレットに寄稿されているコラムの中で、三浦さんの制作スタイルに対して「自分にとっても覚えのあるものだ」と書かれてらっしゃいますが、もう1つ、「まだ大いに可能性があるとも思う」とも書かれてます。その「可能性」という部分について詳しくお伺いしたいのですが。

小西  要するに、古いレコードとかを掘り返して楽しくサンプリングする、その快感っていうかね。 その多幸感みたいなものに重きを置く音楽。で、古い音楽はもう粗方掘り尽くされたって言ってるけど、まだ全然そんなことないと思うし。あるいは、このやり方自体が古いっていう言い方をする人もいるけど、それに取って代わった音楽が面白いかどうかっていうのも、まだ判らないとこだし。

-- なるほど。ではそのサンプリングする時の基準みたいなものって何なんでしょうか?

三浦  サンプルを組み合わせる時に、キーが合うだけだったらいくらでもあると思うんですけど、 音が違和感なく並ぶモノってやっぱり少なくて。音楽として成立する組み合わせ、かつ表情が変わらないものを見つけるそのパズルゲームって、ものすごい快感を覚えるっていうか。そこですかね。

-- 小西さんはいかがですか?

小西  1番大きいのは「そこに愛があるのかどうか」ってことだと思うんですよね。
今、サンプリングCDとかあるでしょ?

-- ああ、ネタ用の。

小西  そうそう。そういうのでスイスイっと音楽作る人もいるしさ。 レコード掘って発見して「このフレーズ良い!」って喜んで…っていうのがあるのとそうじゃないのとでは、やっぱり違うと思うんですよ。だから三浦君のアルバムにはそれがあったんじゃないかな、と思ったんですね。

-- 愛が。

小西  愛がね。

三浦  あと、アルバムを作る時にこだわりたかったのが「DJが作った」っていう痕跡を残したかったんです。 DJが作る音楽ってそもそもが、古いレコードをサンプリングしてその上にラップを乗せて…っていうのが一番原始的な部分なのかな、っていう思い込みが僕にはあって。かたやDJの人でもミュージシャンをたてて作る、っていうような作品も世の中には沢山ありますが、後者の方って今僕にはリアリティがなかったんですよね。
それで、以前小西さんがインタビューの中で「これから音楽をやる人はライヴが出来ないと難しいんじゃないか」 ということを仰られていたんですが、今回僕がアルバムでやったことって真逆のことなんですよ。

小西  でもまぁ、DJにとってはレコードかけたりCDかけたりさ、選曲してDJすることがライヴなんじゃないの? 「生演奏」っていうことはいろいろ捉え方は違うかもしれないけど、DJにとってはDJすることが生演奏でしょ。それで良いんじゃない?
ただ、そのインタビューの時に言った「ライヴが出来ないと…」っていうのは、今自分ではあんまり憶えてないんだけど、たぶんそれは「音楽業界が求めてること」っていう感じで言ったんだと思うのね。 僕も今後、自分が何かを作って発表するとして、それに対してライヴが出来るかどうかなんてことは二の次だからね。考えたこともないし。

三浦  なるほど。たしかに以前「どの曲をかけてもそのDJの曲のように聴こえればそれでいいじゃない」って書かれてらっしゃいましたが、つまりはそういうことですね。

小西  そうですね。三浦君もDJしてれば「あ、三浦がやってんな」って判るよ(笑)。

三浦  ホントですか(笑)。そう言っていただけると嬉しいです。

小西  なんかさ、DJでもホントに職業的なDJっているんですよね。
例えばどこでもいいんだけど、どこの大都市でもリゾート地に行っても、そこには四つ打ちかけてるDJがいてさ。 で、新しい曲がいっぱい入っててみんな知ってる曲がちょっと入ってて、それで誰がどう繋いでるかも判らないみたいな感じで。もしかして、実際にかけてる人はいなくてそういうロボットみたいなのがかけてるかもしれない…と思う時もあるぐらいに、もう世界中に同じような曲をかけるDJがいて。
それはそれで何ていうか…グローバルな感じっていうことなのかもしれないけど、僕はDJでも思いっきりその人のパーソナリティが出てるものの方が好きなのね。 1回その人を通して出てくるものだからさ、その人らしくないと嫌だっていうのはある。DJも作品も。

三浦  テクニック的に上手い人はいっぱいいるんですよね。ギタリストからもよくそういう話を聞きますけど。 それもやっぱり、愛を感じるのかどうかってことですよね。

小西  あと音楽の面白いところはさ、すっごい嫌なヤツなんだけど音楽は最高!とかってことがあってさ(笑)。そこが良いところだよね。

-- 音楽が良いからしょうがねぇかぁ、みたいな(笑)。

小西  うん(笑)。作家ってどっかそういうところがないとダメだよね。



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      Makoto Miura / Je suis snob
    2010年11月03日発売

    90年代後半から活動し、現在は小林径が主宰するRoutine Jazzなどを拠点、初の制作楽曲はreadymade internationalのブレイクビーツコンピに収録という、DJ/トラックメイカー・三浦信(Makoto Miura)がいよいよ1stアルバムをリリース。各曲タイトルからも分かるとおりボリス・ヴィアンの小説をモチーフに作られたという本作は、サンプリングによるジャズ愛・フレンチ愛を詰め込んだ現場感溢れるスウィンギンな1枚。 10年以上というキャリアで培われたそのDJ的ネタ感覚は、須永辰緒、谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)らも賛辞を送るという確かなモノで、前述のreadymade関連作品やRoutine Jazz諸作品などのファン、クラブジャズ・リスナーにも是非チェックしていただきたい作品です。
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三浦 信 [MIURA makoto]

90年代後半よりDJ活動をスタート。トラックメイクの処女作はreadymade internationalのブレイクビーツコンピに収録され、以後岩村学、中塚武が監修する各オムニバスアルバムに参加。自身の主宰するcomedy tonightレーベルからはソロ名義monsieur mieuraxでEP盤をリリースした後、Emi Kawano Trio、Yoshioka Kerouac等のプロデュースを手掛けた。座右の銘は「スイングしなけりゃ意味がない」。

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小西 康陽 [KONISHI yasuharu]

作編曲家。DJ。1985年、ピチカート・ファイヴとしてデビュー。 バンド解散後も作詞、作曲、編曲、プロデューサー、DJ、リミキサーなど音楽活動に加え、アート・ディレクター、映像監督、文筆業など多方面で活躍。 現在は前園直樹グループの一員としても活動中。

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