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LOUDインタビュー: Matthew Herbert

Thursday, October 28th 2010

interview

MATTHEW HERBERT

革新的なアイディアとコンセプトを持った楽曲/アルバムを次々と送り出し、その唯一無二な音楽性で高い評価を獲得している鬼才、マシュー・ハーバート。'90年代半ばから独自の音楽活動を行う、UKエレクトロニック・ミュージック・シーンきっての知性派アーティストだ。最近は、リドリー・スコット製作、ケヴィン・マクドナルド監督による、実験的ドキュメンタリー映画『Life In A Day』(2011年のサンダンス映画祭でプレミア上映予定)の仕事を行ったという。
そんな彼が、一人、一夜、一個など、“1”にまつわるモノや事象にこだわった新シリーズ、“One”三部作の第二弾アルバム、『ワン・クラブ(One Club)』をリリースした。ある一夜のクラブで、そのクラブ内にいるオーディエンスが発した音を録音し、その音素材を使って楽曲制作したという注目作だ。ハーバートならではの奇想天外な発想でつくられたその内容は、クラブ・ピープルが放つ様々なノイズが有機的に結びつき、音楽としてリズムやメロディーを奏で出すという、ユニークなものとなっている。
本作『ワン・クラブ』の内容について、マシュー・ハーバートに話を聞いた。

ナイト・クラビングという体験と、そのコミュニティーが放つ自然なサウンドを録りたかった。


--- 早速ですが、あなたがスタートさせた、“One”シリーズの第二弾、『ワン・クラブ』について教えてください。今作のコンセプトは、ある一夜のクラブにいる人々にスポットをあて、彼らが実際に発した音を素材に楽曲をつくる、ということだったそうですね。このアイディアは、何をきっかけに思い付いたものなんですか?

Herbert: シンプルなことさ。『ワン・ワン』っていう、公園を散歩しているような、静かなアルバムをつくった後だから、またクラブのアルバムをつくりたい、って思ったんだ。ただ、クラブで音を集めるといっても、問題なのは、DJが常に音楽をラウドにプレイしていることだ。だから音楽を2時間消して、オーディエンス自身にノイズを出してくれるように頼んだよ。実際のところ、一体クラブで何をやったらいいのか、僕自身もクラブに着くまではっきりしたことが分からなかったね。

--- 綿密に計画や構想を練っていたわけではなかったんですね。

Herbert: クラブに向かうために車を運転しながら、“一体何をしよう?”って思ってたよ(笑)。会ったこともない600人と、“この水曜の夜に何ができるかな?”って。大きな意味では、みんなにノイズを出してもらって、それを録音しよう、とは思っていたけど、あとはすごくオープンっていうか、その場に任せようって思ってたね。それで、まずはただマイクを立てて、人が出すノイズを録音した。“隣にいる人にキスして”、とか、“自分が生まれた場所の名前を叫んで”とか、指示を出しながらね。あとは、曲を覚えてもらって、みんなで歌ってもらったりもした。

--- 録音は、1曲目の曲名にもなっている、ドイツのフランクフルトにあるクラブ、Robert-Johnsonで行ったんですか?

Herbert: そう。このクラブのことは完成当時から知っていて、3、4回プレイしたこともあったから、分かってる感じがあってね。リキッドルームでやっても面白かったと思うし、モスクワ、パリ、ロンドン…いろんなところで録音しても面白かっただろうね。この1曲目は、まだ人が入ってくる前のクラブのノイズで、だんだん人が入ってくる様子を表現したものだね。

--- ちなみに今作の曲名は、「Jenny Neuroth」や「Alex Duwe」など、全て人名になっていますね。

Herbert: 曲名はみんな、あの晩クラブにいた人達の名前なんだ。セキュリティの人だったり、店員だったり、踊っていた人だったり…。このアルバムの曲は、そこにいた人たちのドキュメンタリーになっているんだよ。その人に取り付けたマイクが拾った音、ってことでだけどね。このアルバムを地図に例えると、小さな町である彼ら一人一人が全部合わさって、一つの大きな国を形づくっているようなイメージだ。

--- 今作を実際に聴くまでは、いわゆるクラブ・ミュージックっぽいアプローチのアルバムか、もしくはもっと明確な歌や会話などが入ったアルバムなのではないか、と想像していたんですけど、そういった想像とは全く異なる内容で、驚きました。

Herbert: 600人がどんなノイズを立てるかなんて想像できなかったし、僕のポリシーから言っても、僕の命令に従って、歌詞のある曲を全員で歌ってもらうようなことはしたくなかったんだ。全員にチョイスがあるべきだと思っていたからね。基本的には、ナイト・クラビングという体験と、そのコミュニティーが放つ自然なサウンドを録りたかったんだ。だから、あまり自分自身のヴィジョンを前に押し出したくはなかった。

--- 曲づくり自体はどのように進めていったんですか? 今作のサウンドは、まるでどこかの国の民族音楽のようにも聞こえますね。

Herbert: 今のダンス・ミュージックって、ただドラムマシンとシンセを使ってつくられていると思うから、音の使い方自体を完全に違うものにしたかったんだ。でも、失敗もあったね。600人に“ドゥッ!”って叫んでもらって、その音をキックドラムに使おうと思ったんだけど、まとまった音には全然ならなかったよ。だから曲をつくる時は、サウンドが進むままに任せていった。このアルバムは、僕にとってはダンス・ミュージックなんだけど、まぁ、君が言っていることも分かるよ。視野の狭い音楽にはしたくなかったし、いろんな変化を入れて、聴いた人が驚くような音楽にしたかったからね。より演劇的というか、ドラマティックなものになったかな。

--- あなたは今作を通じて、かつてのレイヴ・パーティーにあったインディペンデントな側面を何か発見できないか、とも考えていたようですね。現在のクラブ・シーンに対して、どんな危惧を抱いているんでしょうか?

Herbert: 僕がパーティーに行きはじめた頃って、レイヴはみんな無料で、屋外でやってたんだ。森の中とか、海岸とかさ。みんな、ボランティアでパーティーを運営していた。でも、そういったパーティーは、サッチャー体制下でなくなってしまい、クラブでパーティーが行われるようになった。でも、クラブってすごく商業的だから、今ではすっかり、ただただ現実逃避ができる場所になってしまった。何か理想や信念があってやっているパーティーなんて、なくなってしまった。かつては、政治的で、コミュニケーションできる場所だったはずなんだけどね。

--- 今作を制作してみて、クラブ・コニュニティーから、何かメッセージや意味を感じ取ることはできましたか?

Herbert: 何ていうか…すごく楽しめた夜だったよ。大変だったけど、本当に楽しかった。音楽が人を一つにするような感覚もあったし、すごく感情的に揺さぶられる瞬間もあった。やった甲斐があったと思う。別の場所でも、ノイズの聖歌隊みたいなことをやってみたいね。


新譜One Club / Matthew Herbert
自身名義での3部作完結の「ONE」シリーズ第2弾!今回のテーマは「One Club」という事で、ドイツのとあるクラブにて一夜に起こる様々な音やオーディエンスが発する音をサンプリング。すっかり商業化してしまった現代のクラブ・シーンへの痛烈なメッセージ性も込められた、ハーバート流クラブ・ミュージックを展開!やはりさすがのセンスと独創性を感じる面白い一枚に!!
profile

ハーバート、ドクター・ロキット、レディオボーイ名義の作品や、リミックス、DJなどで披露されるその非凡な才能は、リスナーのみならずビョーク、マイケル・スタイプ(REM)やトム・ヨーク(RADIOHEAD)、コーネリアス、くるりなど、ジャンルを跨る国内外のビックアーティストを魅了してやまない音楽家、マシュー・ハーバート。ダンス・ミュージックから、ジャズ、ビッグバンド、ポップス、と幅広く活躍中。

<メーカー資料より>

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