【HMV インタビュー】 SHINGO★西成 page3
Thursday, October 27th 2011
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人との関わりの中で、最も大事にしている事?
絆と思いやりですね。深い言葉ですよ。
- --- 「できたかな?」という楽曲。子供にもわかる言葉で描かれていて、HIP HOPのアルバムの中にこういう楽曲が収録されているというのもSHINGOさんらしいと感じました。
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是非、広めるのにご協力下さい。ホンマにこの曲を入れてる意味をわかってもらいたいですよ。HIP HOPやってるヤツも、コレぐらいの音も乗りこなせるし、コレぐらいの内容でもラップ出来るよっていう同業者に対する提示っすよね。同時に子供たちには、ルールも教えながら、音楽の可能性、言葉の力、絆とかも教えたいなと思って作りましたけど。だから出来るだけ多くの人に聴いてもらいたい曲の1つですね。
- --- 実際、こどもの里という施設で歌を披露したりという活動もしてらっしゃいますが、”子供達の未来”というのもSHINGOさんのラップの大きなテーマなのでしょうか?
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そうですね。「カクテル」って曲でも「子供達に未来を」って言うてるんですけど、ほんまそう思てるんで。今の時代の俺らがあんのは、上の世代の人が頑張ってくれたり、未来を見せてくれたと思うんですよね。だから、今度はそれを俺らが伝えていかんと。「今がよければ」とか思てたらいけませんやん。政治や政策も「今がよければ」。どんどんどんどん借金ばかり子供達に作って「はい、俺ら死ぬからバイバイ」みたいな。結局、金持ってるやつだけが、はぶり良い流れになって、貧乏人はずっと貧乏人みたいな国って未来が無いし、夢もないし。そんなやったらみんな日本捨てて出て行ったりね。
ホンマはこんな素晴らしい国はないと思うんですよ。そこの部分をわかって貰えたら。「あいつのあの曲があるから、日本っていいなあ思たわ」「それきっかけでHIP HOP聴くようになったわ」「それきっかけで、日本の音楽っていいなあ」とか、そう言ってもらえたらホンマに嬉しいですよね。 - --- 「ひとりぼっち」は孤独を感じさせる面もある楽曲ですよね。僕の漠然としたSHINGOさんのイメージは、兄貴肌でいつも周りに慕っている人がいるような印象だったので、こういう孤独感というのは意外な感じもしたんですけど。
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ホンマっすか?有り難うございます。それは嬉しいです。
- --- そういう孤独を感じる事も多いのでしょうか?
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そうですね。やっぱり付き纏うんじゃないですか?音楽だけじゃなくて、何かを一生懸命やってる人にとって、孤独と言うのは、やればやるほど付き纏うもんやと思うんですけどね。それをどう理解して、自分の人生の1ページとして、位置づけられるかどうかは大事やと思うんですよね。先輩方でそれを見せてくれてる人もおるんで。
あと「ひとりぼっち」っていう言葉の、それだけの意味じゃなくて、前後に温かいものを感じてもらえれば。4分間歌って”ひとりぼっち”しか言うてないんで。16小説のヴァースが3つあったんで、あえて削ぎ落として。ラップをするより、この曲の伝えたい事は「ひとりぼっち寂しいやろうけど、お前ひとりぼっちちゃうよ」って言うのを最後に込めて歌った曲ですね。 ひとりで呑んでるおっちゃんの背中って哀愁あったりしますよね。それとか、おかんがパートをしている背中とか見ると「ひとりでおるけど、なんかそんな感じもせぇへんな」みたいな。「帰って息子、娘のご飯作らなあかんねん」っていう生活が見えたりしたら全然ひとりぼっちじゃないですやん。そこの部分、俺は大事やと思いますよ。言葉で伝わらない事を、伝えようとするのが俺の仕事やと思いますんで。 - --- ハードなメッセージもありつつ、温かさを感じさせるラップって言うのはSHINGOさんの魅力だと思います。それってSHINGOさんの人柄が出ているんだと思うのですが、SHINGOさんが人との関わりの中で、最も大事にしている部分って何ですか?
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絆と思いやりですね。今この歳でそれを思ってて、それはこの先、歳をとる毎に重みを増すんやろうけど。そういう言葉やと思います。この絆と思いやりという言葉は。これがあったら今もめてる問題とかも解決すると思うんですよね。国同士でも、政治家同士でも、仕事で悩んでる事も、小さい事も。深い言葉ですよ。これをアイドルが言うとったら「ちょっと来い」って言いますけど。(笑)
- --- 「缶コーヒー」もそうですよね。
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バブルが弾けて家庭が大変だった時期とか、理不尽な理由で「何で俺、学校行かんでええんやろ」とか、みんなが遊んでる時間に「どうしても俺、金稼がなあかん」とか、そういう事を経験してた。それが今になって歌になった感じですね。それがどっか残ってたんでしょう。この曲とかはパーティーの曲を作ってる時期に、このトラックを聴いた時にふと浮かんだんで。どっか俺の引き出しにあったんじゃないですか?IKEAより引き出しは多いと思うんで。(笑)
- --- ホントここで表現されている以上に引き出しの数は多いんでしょうね。だからこそ、説得力があるというか。
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そうなりたいですね。その言葉の力、音楽の力と出会いの力、信じるしかないですね。
- --- 一方で「ラパッ」「バッチバチ」のような言葉のセンスが面白い楽曲もあるじゃないですか。こういう言葉っていうのは、SHINGOさんが日常的に交わす会話から生まれるものなんですか?
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そうですね。言葉選びは、人に出会えば出会うほど。今やったら格闘家の山本KID。去年の大晦日もそうでしたけど、今年も多分俺の曲で入場してくれるんで。地元西成にはハングリーなボクサーもいっぱいいますし。亀田兄弟もこないだ勝ったけど。そういうやつらに出会ったときに、口下手やけど、やっぱり身体で表現してるなと思た時に、その中の会話で「バッチバチやな、お前」とか浮かんだりとか。生きた言葉やと思うんですよ。それをただ使ったってだけで。
- --- 本なんかも読まれたりしますか?
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アホなんで、みんなが1日2日で読む本を半年くらいかかるんですけど。その代わり、一言一句、自分の体に入れていくやり方をしてると思うんで、その部分ではアホで良かったと思いますね。そこはこのラップには生かされるんかなと、信じてやってますね。
コピーライターの人のパンチライン、キャッチコピーの言葉の力とか凄いな、日本語って面白いなと思ったりしますわ。同じみんなが使う言葉やけど、ちょっとの差で面白い言葉になんねんなっていうのを楽しんでますね。 - --- その言葉の力というのは、僕がまさに今回のアルバムで感じていた事で、例えば「たとえ俺が死んだとしても」っていう曲あるじゃないですか。その中にある「負ける事を想像するよりまず行動」だったりと、本当に言葉の力を感じました。
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おおきに。
- --- そういったリスナーを奮い立たせるようなリリックが詰め込まれた楽曲だと思うのですが、その中には「人間は弱い」っていうフレーズもありますよね。弱い事を受け入れた上にある強さをSHINGOさんには感じますが、その「人間は弱い」と感じられているのは、どういった経験から得たものなのでしょう?
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自分の街がそういったことを教えてくれたのもありますし、地元のおっちゃんらが教えてくれている部分はあると思います。「Ill西成Blues」でも歌ってますけど、じいちゃんは金貸し、893とかそういう仕事をしてて、そのじいちゃんが病気で倒れたときに去っていく人の多さとか。あの無常さとか。線引きしたように去っていく恐ろしさと言うか。いつか栄えているもんも、衰えてゆくし。それを子供心に経験してるんですよね。それを自分が理解出来た時の怖さも知ってるし。
ちょっと話がずれるんですけど、子供は大人が思ってる以上にわかってると思うんですよね。そういうなんも、気付いてあげられる大人になりたいなと思って。よく、虐待されて死ぬ前に近所の人に信号を送ってるとかありますやんか。俺の歌が、その信号に気付けるきっかけになればいいと思うんですけど。
“人間は弱い”って言うのは先輩方が見してくれたり、自分自身もそうですもん。「こんな弱い人間おれへんわ」思いますし。そう思ってる人間に相談してくれる人間がおるんですよ。そん時に「こいつは俺の事、強いと思てんな」と。ほんなら一生懸命こいつの悩んでる事を聞いて、俺の経験の上から答える。さっきも言った、絆とか思いやりを意識して。「俺時間無いから」って思いやりのない行動をとるよりは、と思ってます。それでもサラリーマンの時は「忙しい」って言葉を使ってしまうぐらいの生活をしてましたけど、「それは違うな」思て、俺はそっちを辞めて、こっちに来たんで。
「カラス」の2ヴァース目の終わりくらいで言った言葉がホンマのトコですね。”そういう風になる国なら、死んだ方がええ” 危機感感じてもらいたいしというのを思ってます。俺は後悔すんの嫌やし、人のせいにすんの嫌やし、国のせいにすんの嫌やし、時代のせいにすんのも嫌なんで、自分でやる。「やったけどあかんかった」っていうのはいいと思うんですよね。やらないっていうのがあかんので。そういうのがテーマです。 - --- では最後に、SHINGOさんのラップをする目線って言うのは、西成の生活がベースにあると思うのですが、そのラップが西成を越えて多くの人の心を掴んでいるという現状をどう感じていますか?
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「こいつらも頑張って生きてんねや。俺も頑張ろ。」くらいでいいと思うんですよ。西成の街に情けをかけて欲しくはないんで。
目線は俺の16fucking7cmの体から出る目線ではないんですよね。それは腰の辺り。ガキの目線でも見てラップしたいです。ホンマに。そういうラップじゃないとタダの自我の押し付けになってまうと思うんで。
もちろん自我の押し付けラップもあって良いと思うんです。悪い事を言い続ける美学ですよ。ロックな人はずっとロックでいてくれたらかっこいいし。それを本気でやれば、日本の音楽シーンも、もっと良うなると思うんですけどね。 - --- 有り難うございます。このアルバムに込められたSHINGOさんの言葉の力は、ジャンル問わず多くの人に伝わると思いますんで。
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おおきに。是非、聴いて下さい。
- 新譜I・N・G / SHINGO★西成
- 「関西の至宝」SHINGO★西成、待望のニューアルバム完成!!!セカンドアルバムは何と!般若の昭和レコードからリリース!!!!
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- I・N・G
SHINGO★西成 - 2010年11月10日発売
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- SPROUT
SHINGO★西成 - 1st ALBUM

まるでタイムスリップしたかのように"昭和の香り"が色濃い、おっちゃんのキャップ(着用)率西日本最高の大阪のイルなゲットー=ドヤ街「西成」、釜ヶ崎は三角公園近くの長屋で生まれ育つ。10代前半でヒップホップと出会い、ラッパーとしての活動はちょうど『さんピンCAMP』で日本語ラップの新たな夜明けが見えた96年から。臭い物にはすぐに蓋をする現代社会のしわ寄せが痛々しく残るその町"西成を通じた現実"を、「今に見とけよ!」精神と冷静な視点、自らの体験を元に「間」を活かした独自のソウルフルなべしゃり芸で表現する超オリジナルな世界観は、層が厚く、キャラの濃い関西シーンの中でも突出していた('00年代前半からは420FAMILYのメンバーとしても活躍)。彼が語るストリートとは、若者しかいない場所のことではなく、生きるか死ぬかの瀬戸際さえも見える"社会の縮図"としての現実であり、「人生は苦しいのが9で楽しいのが1」という持論を展開しながらネガをポジに転写する、そして時にはお上に"MCらしく捻りを効かせて"物申す姿は、所謂ヒップホップ・ヘッズ以外からも支持を集めている。
06年3月には自己名義では初のミニ・アルバム『Welcome To Ghetto』をリリースし、同年末にはYOSHI(餓鬼レンジャー)、MISTA O.K.I、DJ FUKU、446と結成した「大阪咲かそう」さながらの"いてまえ打線"的スーパー・ユニット=ULTRA NANIWATIC MC'Sでもアルバム『THE FIRST』を発表。そして07年4月、自身初となる名刺代わりのフル・アルバム『Sprout』で、そのキャリア上での"発芽"を全国に知らしめることに。同作収録の「ILL西成BLUES」のPVは朝日新聞や産経新聞が取材、また大阪毎日放送の夕方のニュースで特番が組まれるなど、TVニュース等ではモザイクや規制が入り写されなかった「生の西成」を写した完成度の高い作品として話題を呼ぶ(YouTubeでも確認できるように、彼は地元での社会活動でも知られる"ほんまもんのフッドスター"である)。同年は、サイプレス上野&ロベルト吉野から、Romancrew、CHIEF ROKKA、DOSMOCCOS、NG HEAD、LARGE PROFITS、ARIA、INFINITY16、SHING02、大西ユカリらとのコラボ仕事も連発。中でも武道館公演でも完全ロックしたKREVA「アグレッシ部(Remix) feat. KOHEI JAPAN & SHINGO★西成」は語り草に。MSCのPRIMALとの東西ユニット=鉄板BOYZでのEP「鉄板BOYZ」のリリースもあった08年以降もその勢いは留まる事を知らず、14年ぶりに復活したMICROPHONE PAGERや、日本レゲエ界のハーデストワーキン・バンド =Home Grown、さらには"西成繋がり"の赤井英和とのユニットに、ナニワエキスプレスの清水興が指揮を執ったbjリーグ大阪エヴェッサの公式応援ソング「Go Evessa!」を香西かおり、大西ユカリと唄ったり、日本最高峰のレゲエ野外イヴェント『Highest Mountain2010』(2度目の客演参加)では2万5000人の大観衆を沸かせたり・・・と、軸のブレないスタイルながらも常にニュー・スラングやニュー・フロウを発信し続ける真の「こてこてライマー/しゃべくりメッセンジャー」である彼は、そのクロスオーバーな資質、ユニークであったかい人間性ゆえに"ジャンルを超えた存在"(にしてRep西成、HipHop)として注目され続けている。そんな今や完全なる"大阪名物"のSHINGO★西成が、前々からシンパシーを感じていたというラッパー = 般若が立ち上げた"昭和レコード"に移籍し、満を持して放つ次なる一手は?「油断すな!!」
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