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HMVインタビュー: Waves

Tuesday, May 18th 2010

interview

Waves

ダンス・ミュージックをインプロビゼーションで再構築する注目のバンド・プロジェクト Wavesを始動させた Nobuhiko'Ebizo'Tanuma & Kuniyuki Takahashi 両氏にプロジェクト結成からBEAMS RECORDSよりリリースとなる1stアルバム『Encounter』についての色々を伺いました。
お二人の音楽に対する熱い思いがビシビシと伝わってくるHMV ONLINEエクスクルーシヴの貴重なインタビュー、是非じっくりとご覧ください!

Wavesのファーストアルバムは、長くリスナーの皆さんの近くで空気の様に存在していたいと思って作りました。


--- まずはアルバムの完成とリリースにあたっての率直なご感想をお願いします。

Ebizo: 作り手でありますので、作品が完成してリリースされるのは率直に嬉しいです。(率直すぎますか?)メンバーがそれぞれソロやバンド活動で第一線で仕事をしている人達なので、ここまで来るのはとても苦労がありましたが、満足の行く仕上がりになり苦労が報われたなぁと思っています。

Kuniyuki: 本当に嬉しく思います。Ebizoさんからのお誘いがなければWavesの音楽との出会いも、そしてインプロビゼーションを通じて今回の参加者との音楽での語らいは無かったので、感謝です。またリリースに向けて沢山の方々のサポートがあり、とても感謝しています。皆さんには今回のWavesの音楽で還元出来ればと思っています。

--- Wavesの結成とBEAMS RECORDSからのリリース経緯をお話いただけますか?

Ebizo: 自分の思い描いた音楽は、単純にどこかのレーベルからリリースすれば良いというものでは無く、スタジオやレーベル、メンバーというものが奇跡的にタイミングを合わせないと実現しないものでした。BEAMS RECORDSのA&Rの方から何か『良質な作品』についてのアイディアはないかと尋ねられた時、今、自分の周りにいる最高のメンバー、最高の環境(スタジオ)、最新のテクノロジー、そしてクラシックな方法論を融合させた音楽の制作を提案しました。それを実現させるために結成されたのがWavesだったのです。

--- 今回のゲストである、Ian O'brienとみどりんはどのようなきっかけで参加する事になったのですか?

Ebizo: Ian O’BrienはDJ、トラックメーカーとして良く知られたアーティストですが、ギタリスト、キーボードプレイヤーとしても、とても優れたミュージシャンです。DJやクラブシーンでの活躍でミュージシャン的な側面はあまり知られていませんが。それに彼は独特な『コード感覚』を持っています。ブリティッシュロック的というか、プログレ的なコードを使います。これは日本人はなかなか持っていない感覚なので、彼の持つ、そういうエッセンスが、このバンドにはどうしても必要でした。それで彼を口説いたのです。みどりんは、何年か前に、僕がアテンドをしていたSLEEP WALKERのヨーロッパツアーで、彼がドラムスとして参加していたので面識がありました。彼もまたSOIL&"PIMP"SESSIONSでのアグレッシヴなプレイがクローズアップされる事が多いですが、とても繊細なドラミングが出来るドラマーです。それに、僕等全員が尊敬してやまないECM作品はもとより、ダンス・ミュージックにも精通しており、彼のそういう部分を引き出す事がWavesに於けるテーマの1つだったのです。又、みどりんのリリカルなシンバルワークはKuniyukiさんのプレイととても相性が良いだろうと確信していました。

--- 今回のアルバム『Encounter』でのそれぞれの役割分担を教えてください。

Ebizo: 私は世界観を提示し、あとはベースを弾くだけです。集まったミュージシャンの特性というか、キャラはわかっていましたので、このメンツでどういう音になるかも、ほぼ想像通りです。 ですから、特に役割というのはないのです。素晴らしいミュージシャンが集まってくれたので、彼らと同じ世界を作れば良いという感じです。仕事としてあとはミックスを担当しました。

Kuniyuki: 僕はローズのピアノ、ピアノ・シンセ、パーカッションを担当しました。Wavesの根本はインプロビゼーションなのでスタジオに入り、皆の音を聴きながら感じたままに楽器を奏でた感じです。その他はマスタリングを担当しました。

--- レコーディングはどのように行われたのですか?またその中での変わったエピソードなどがあればお願いします。

Ebizo: 今回、レコーディングを行ったのは、札幌にある芸森スタジオという所で、札幌郊外の小高い丘の上にあります。とても良いスタジオで、環境や設備も理想通りでした。Wavesの様なサウンドは都内のスタジオで作るのはとても難しいと思います。開放感があり、機材もヴィンテージのものを使用し、ある意味、70年代や80年代的な空気感を持っています。こんな素晴らしいスタジオが札幌にあると言う事をKuniyukiさんから伺い、それならばWavesの目指すサウンドが作れるかもしれないと感じたのが最初の一歩だったかも知れません。特に変ったエピソード、というわけではありませんが、レコーディングは30時間くらいぶっ続けで行いました。昼の12時から翌朝の6時までほとんど休む事もなく、演奏しつづけました。これはちょっとキツかったですね。でも、誰もが一瞬たりともテンションを失わず音楽をやり続けたことは素晴らしいことですね。

Kuniyuki: Ebizoさんと回答が重なりますが、札幌には、音楽を作る上で素晴らしい環境のスタジオが幾つかあり、EbizoさんがWavesのレコーディングするスタジオを色々と探している時に、芸森スタジオのことをお伝えしました。すぐにその場所で決定し、日程を決めて録音という流れになりましたが、本当に芸森スタジオの良さを知ったのはレコーディング時の時間の流れでした。札幌の町から離れた場所で自然に囲まれた環境の中にあり、芸森スタジオは音楽の本質が現れる場所なんです。僕達演奏者は音楽と真摯に向き合うことが出来ました。思考ではなく、何か自然に生まれるべくして奏でた30時間の音楽の旅でしたね。長くもあり、あっと言うまでもありました。曲のテーマを決めてインプロした曲もあり、またテーマに沿ったインプロを録音した後に、皆のテンションが終わらずにそのまま違う曲調を演奏して出来た曲もありましたね。レコーディングエンジニアの坂本さんがそれを感じ取ってくれていて、常にその時には録音を続けてくれていて、本当に嬉しかったですね。

--- ずばりインプロビゼーションの魅力とは?

Ebizo: 自分が持っている音楽的引き出しがどこまであるのかを自分自身で知ることが出来る機会だと思います。技量も音楽に対する想いも、どれだけ自分の中で消化できているかを自分自身に問いかけながら、メンバーと会話していく様に演奏することは、お互いの生き方なり哲学を知る機会でもあります。

Kuniyuki: 僕もEbizoさんとほぼ同意見ですね。自分自身が、今まで音楽と共に過ごした時の固まりが皆と演奏するとまったく知らないことが起きる。そしてその後にお互いを感じ合うんですよね、それが本当にたまらなく好きです。自身の音楽ではあり得ないハーモニーや偶然の喜びもありますし、何よりも最高な気分にしてくれるんですよね。Ebizoさんのベースのグルーブも心地よく、力強く、ボトムがしっかり安定しているので僕は安心感があり心地よく演奏出来ました。みどりんは皆の音をよく聴いていて、1つ1つの音の狭間を正確なリズムとしてだけではなく、僕らに曲の流れを与えてくれました。全ての要素が重なってアルバムとなった時に、インプロビゼーションの素晴らしさを改めて感じましたね。

--- 今回のジャケットやアートワークはドイツの名門ジャズ・レーベルECMのスタジオや周辺の風景写真を起用されていますね。(※ECM関連の写真を起用した理由)

Ebizo: 単純な理由ですが、憧れと尊敬からです。ECMのプロデューサーのマンフレート・アイヒャー氏の提示した世界観に、我々なりに答えたかったのです。また、澁谷征二さんの写真が、あまりにもWavesの目指すサウンドと一致していたので、澁谷さんの作品と出会った時に迷う事なく起用させて頂こうと思いました。

Kuniyuki: Ebizoさんから澁谷さんの作品を見せて頂いた時に、僕が想像していたWavesの世界感と一致していましたし、レコーディングに参加したメンバー4人全員が、ECMの作品を愛する者として、澁谷さんのECMスタジオの写真は、Wavesが目指す音楽の行方そのものでした。マイクがあり、空間があり、色があり。。。。本当に素晴らしい写真だと思います。

--- 今現在のご自身に最も影響を与えた音楽は何だと思いますか?

Ebizo: いろんな音楽から影響されまくっているので、絞り込む事はとても難しいのですが、、、Wavesに関して言えばやはりECMの一連の作品だと思います。Wavesはダンスミュージックという表現を取っていますが、私にとっては音楽はどういうスタイルであるかというよりも、どういうサウンドかという方が大事なのです。 ECMのアーティストで挙げるとすればジョン・アバークロンビー、エバーハート・ウエーバー、初期のパット・メセニーのサウンドにとても影響を受けています。

Kuniyuki: 音楽は幅広いので選ぶのは難しいですが、僕もECMの作品には本当に思い入れも大きいですし、ピーターガブリエルが主催するREALWORLDも大好きですね。
また、アフリカ音楽とは、長い時を共に過ごしてきましたし、Ebizoさんとは、アフリカ音楽に関して数え切れない程楽しい話をしましたね。尊敬するアーティストは沢山いて、常に自分自身の心にありますが、それと同時に、僕等は今を刻む事をしなければ、「明日の音楽」は生まれませんし、今を生きるアーティスト達と共に演奏し、完成した音楽に影響を受けることは、自分にとって大切なことだと思っています。それに、演奏してきた音楽は僕自身の明日を作ってくれるんです。そのことを踏まえて、今1番影響されているのは、今回のWavesの音楽なんです。

--- 最後にこちらをご覧の方にメッセージをお願いします。

Ebizo: Wavesのファーストアルバムは、長くリスナーの皆さんの近くで空気の様に存在していたいと思って作りました。是非、Wavesの音楽と出会って欲しいと心から願っています。

Kuniyuki: 僕にとってのWavesは友情と信頼、そして愛があって生まれた大切な音楽です。是非皆さんに聴いて頂けたらと願っています。



新譜Encounter / Waves
Ebizo&Kuniyukiによるインプロビゼーション・バンド・プロジェクトの1stアルバムがBEAMS RECORDSよりリリース!Ian O'brienとSOIL & "PIMP" SESSIONSのみどりんをゲストに迎え、ジャズ/ハウス/ディスコ/ヒップホップ/アンビエントといった様々なスタイルの音楽をインプロビゼーションで昇華。それぞれの才能が見事に融合した極上サウンドを味わえる一枚です!
profile

ダンスミュージック・シーンで世界的な活動を展開してきたNobuhiko 'Ebizo' TanumaとKuniyuki Takahashiの2人が、次なるステップとして始動させたインプロビゼーションのバンド・プロジェクト。プレイヤーとしての側面も持ち合わせる彼等が、自分達のサウンドのルーツである"ジャズ"からの影響を、ディスコやハウスなどのダンスミュージックをはじめとする様々なスタイルの音楽に昇華していく。1stアルバムでは、ダンスミュージックの域には留まらない多彩な音楽性を発揮する、Ian O'brienをギターに、日本のクラブジャズ・シーンのパイオニア、SOIL & "PIMP" SESIONSのみどりんをドラムスに迎え、4人の卓越したミュージシャンシップを基に、インプロビゼーションでダンスミュージックのダイナミズムと豊かな叙情性を紡ぎ出している。そのサウンドは、リスナーを陶酔へと誘い、様々な心象風景を鮮明に浮かび上がらせる。

<myspace より>

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