【PickUp】DJ KAWASAKI 『PARADISE』

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2010年8月30日 (月)

いよいよ発売!DJ KAWASAKI 3rdアルバム『PARADISE』。
今回コチラの特集ページでは、本作の共同プロデューサーであるKyoto Jazz Massive・沖野修也さんによるアルバム『PARADISE』のライナーノーツおよび楽曲解説を掲載。
さらにご本人によるアルバム参加アーティストのアルバムレコメンドも執筆していただきました! それではドウゾ!



DJ KAWASAKIさんから動画コメント!  ※プレーヤーが起動します
商品ページへ     【3年ぶり待望の3rd アルバム】

  DJ KAWASAKI / PARADISE

    [ 2010年09月01日 発売 / 通常価格 ¥2,500(tax in) ]

    



2008年に発売された『You Can Make It』以降、オリジナルアルバムとしては3作目となるアルバムをリリースするDJ KAWASAKI。アルバムのコンセプトは“ロマンテック(Roman Tech)”。 “ロマンティック+テック(テクノ)”を意味するこのコンセプトから、従来までの流麗なメロディーはそのままに、ディープハウスとデトロイトテクノが融合したエレクトリックなサウンドに進化していることが伺えます。 今作では初の日本人ヴォーカル、クラブ・シーンで絶大なる人気を誇る東京ナンバーワンMC・COMA-CHIを起用し、日本語詞の楽曲を制作。DABOとともにカヴァーした「つつみ込むように・・・」など、歌モノでの評価も高いCOMA-CHIがDJ KAWASAKIのトラックに歌を乗せるという意外性にも驚きです。
また、ジャケットのモデルには加治マヤを起用。 これまでも藤井リナや大屋夏南など、ブレイク直前のモデルを絶妙なタイミングでセレクトしてきた鬼才・米原康正が今作もフォトグラファーを担当。





ライナーノーツ Text by 沖野修也(Kyoto Jazz Massive)


 進化と変節。僕はその違いを常に考えている。僕にとって変わり続ける事は進化だ。音楽性にブレがなく、それでいて、サウンドはヴァージョン・アップして、進歩を志向する。当然の事ながら、音楽のトレンドは視界に入れている。プロデューサーたるもの、時代というものに対して敏感であらねばならないから。でも、流行を追随する事は避けなければならない。ポリシーを捨てた変化は、変節でしかないのだ。作りたいものよりも受けるものを優先させたとたんに、僕達は市場の動向が気になって不眠症に陥る、にわか投資家の轍を踏む事になるだろう。人の後を追うよりも、人の先を行きたくはないのだろうか?既に売れているものを真似て、リスナーに見限られ、右往左往する人々を見て、僕は審判が下される日が近い事を感じている。僕達の音楽に対する愛が、本物であるかどうかが裁かれる時が来たのだと・・・。

 DJ KAWASAKIの待望の3rdアルバムが発売された。ジャパニーズ・ハウス・ムーブメントの牽引者の一人であった彼が打ち立てた音楽的な方向性は、少なからず波紋を投げかける事になるであろう。メロディアスでソウルフルな従来ディープ・ハウス的な世界感にデトロイト・テクノの影響を大胆に導入し、大幅なモデル・チェンジを実現したのだ。しかも、それは、ヨーロッパで猛威を奮うテック・ハウスとは全く方法論の異なるテクノへのアプローチであった。

 おそらく、多くの人が予想したのは、従来のスタイルを踏襲し、既に獲得したファンに安心を供給する保守的な手法ではなかっただろうか?実は、共同プロデューサーとしてこの作品に関わった僕は、このアルバムのプリ・プロダクション(デモ音源を作成する事)開始直後に、彼にこう提言したのだ。「弦とピアノは、禁止するように」と(笑)。

 いわゆるジャパニーズ・ハウスを象徴する音源として用いられる事の多かったストリングスとピアノをプロダクションに持ち込まない事で、僕はきっと何らかの工夫が産み出される事を期待したのだった。時に不自由は、想像力を掻立てる。安易な方向へ進めないように退路を経つ事で、今まで使う事のなかった潜在能力を引き出す狙いもあった。勿論、このアルバムで彼が最終的にそれらの楽器を使わなかった訳ではない。しかし、結果的には、攻撃的かつ実験的なアプローチの中で必然的に選ばれたマテリアルとしての起用であり、リスクを取らなかった結果の予定調和な引用ではなかった。何故なら、彼が見出した進路は、自分らしい上に、まだ試みた事がなく、新たな世界へと続く未知の領域に向けられていたからだ。

 このディープ・ハウスとデトロイト・テクノの融合は、戦略的な思考によって産み出された訳ではない。実は、彼が、アルバムの全体像が姿を現して行く過程の中で自ずと切り開いて行った活路であったと言える。僕はその制作期間中、彼の現在地を常時確認する事を怠らなかった。後退を禁じ、変節を断じ、進化を促す。彼が進むべき道は、彼自身が画策して来たものの、未だ完成を実現した事のなかった異なる要素の統合であった。振り返れば、その予兆は1stアルバムにも2ndアルバムにも見出せる。但し、その両者はアルバムに混在し、全体を貫く統一感としては機能していなかった。つまり、どちらも、DJ KAWASAKIにとって不可欠な要素であったにも関わらず、個々の楽曲として作品の中で完成していた為、組み合わせを試される事がなかったとも言えるのだ。

 DJ KAWASAKIは、確かにジャパニーズ・ハウスの代表格ではあったが、そのキャリアを紐解けば、彼の現在に至る宿命とも言える音楽的変遷が理解できる筈だ。そもそも彼は、ジャパニーズ・ハウス・ブーム以前に、NYで見出されている。Timmy ResisfordやDanny Krivitといったディープ・ハウスの大御所達が彼の楽曲をヘビー・プレイした事が、デビューのきっかけになっている。そして、僕の人脈の中から、MoodymannやTheo Parrishとも所縁の深いPirahnaheadとの交流を育み、Underground Resistance一派のDJ 3000に評価される事で自分の中のデトロイト・テクノの影響を再認識して行ったのだ。

 DJ KAWASAKIが、このニュー・アルバムで実現したこの2つの強力な音楽の統合は、彼を異なるレベルに押し上げる事だろう。しかも、話題のアーティスト、COMA-CHIをフィーチャーし、初の日本語詞へのトライまでをもやってのけた。歌心とギャラクティック(銀河系)なトラックのミス・マッチは、ファンを挑発するものの、決して裏切る事はないだろう。それは、進化だ。1stアルバムでは複雑なリズムで4つ打ちの可能性を拡張した
“KAWASAKI BEAT”を開発。続く2ndアルバムでは、軟弱な歌ものと決別するかのように“KAWASAKI SOUL”なるコンセプトを打ち出した。そして、この3rdアルバムでは、ロマンティック+テクノ=ロマンテックという唯一無二の“KAWASAKI WORLD”を確立。そのステップ・アップには、常に一貫性があり、同時に、意外性が伴っていた。彼のリリースは、単なる積み重ねなどではなく、まさにアーティストの成長のプロセスであり、音楽シーンを触発する華麗なる進化であったのだ。

 関わった人間による賞讃は、時に自画自賛と混同されかねないので控えなければならないが、最後にこれだけは言っておきたい。DJ KAWASAKIは誰にも似ていないし、誰も追いかけていない。彼の武器は、未来を切り開く意思と音楽を愛する心。革新的なトラック・メイクと美しいメロディーの蜜月がその強さを既に物語っているではないか。魂を失わずして、変化し続ける事で、彼はまた一つ新たな境地に達したのだと思う。







楽曲解説 Text by 沖野修也(Kyoto Jazz Massive)


1. Galactic Love    [試聴]
 世間の予想を裏切るアンダーグラウンドでカッティング・エッジなサウンドは、DJ KAWASAKIの新境地を象徴する1曲。既にダンス・フロアーに狂喜の渦を巻き起こし、国内外のDJ達から絶賛されている。インストなのに、激しく精神を高揚させるパーティー・チューンは、歴史に残る名曲となるに違いない。

2. Paradise feat. COMA-CHI    [試聴]
 今や、J-POP界で圧倒的な存在感を放つ女性ボーカリスト兼ラッパー、COMA-CHI。渋谷のクラブ、The Roomから 産み出されたこのリアルなコラボは、DJ KAWASAKIにとって大きなチャレンジとなった。初の日本語。そして、彼が敬愛して止まないデトロイト・テクノへのオマージュとも言えるエレクトリックなトラック。その両者の融合は、かつてない音楽の誕生を実現した。

3. Say You'll Stay feat. Andrea Love
 兼ねてからアルバムの中に分散されていたディープ・ハウスとデトロイト・テクノの影響を、アルバム単位で融合させるというDJ KAWASAKIのトライが見事に成功した事を証明したのが、この「Say You'll Stay」。コズミックな世界観とAndrea Loveのソウルフルなボーカルが完璧にマッチしている。

4. Heaven
 従来までのDJ KAWASAKIのファンを魅了しながらも、弦楽器とピアノにダーティーなベース・ラインとテクノ的なシーケンスを組み合わせた実験的楽曲。美しいストリングスは、1st、2ndにも参加して来た朋友、Kirill Kobantschenko(ウィーン・フィル・ハーモニック・オーケストラに所属するストリングス奏者)とDJ KAWASAKIとの華麗なるコンビネーションは健在。

5. Feel The Music feat. Tasita D'Mour
 「You Can Make It」や「Elevate Your Mind」でお馴染み、Tasita D'Mourが参加した、フューチャリスティック・ブギー。ベースにKyoto Jazz Massiveファミリーの一員として積極的な活動を続けるROOT SOULこと池田憲一をフィーチャー。ソウル・ミュージックでありながら、日本人の琴線に触れる憂いのあるメロディーが秀逸。

6. Journey
 ハウス・ビートを排した、インストゥルメンタル・トラック。テクノ/フュージョン/ブラジリアンを消化したその作風は、師匠筋に当たるKyoto Jazz Massiveに通じるものがある。歌が無くとも、ここまで説得力のある楽曲は非常に珍しい。本アルバムの大部分をサポートする45ことSWING-Oのキーボード・ワークも見事。

7. Love Crash Down feat. Fyza
 アンビエント・ソウル風の佇まいをみせる極上のボーカル曲。透明感溢れるトラックに、Fyzaの流麗な歌声がハマっている上に、随所に散りばめられたテクノ的なアプローチが心憎い。本作の中でも最後にボーカルを録音した事もあって、本人の思い入れも強かったりするのだとか。名曲、「Beautiful」に引けを取らない美メロ・ハウスでもある。

8. Reach Out feat. Tasita D'Mour
 デトロイト・テクノが黒人音楽の進化系であったならば、そこにディープ・ハウス的ボーカルとの親和性がない訳がない。このファンキーなベース・ラインにきらびやかなシンセが絡み付く漆黒の近未来的ソウルに、DJ KAWASAKIが潜在的に持つブラック感覚を読み取る事ができはしないか?ここでも、常連、Tasita D'Mourが存在感をいかんなく発揮している。

9. Star Force
 DJ KAWASAKIの1stアルバムから一貫して伺えるデトロイト・テクノへの憧憬。逆に、デトロイトのDJ達が彼の曲を評価しているというのに、彼は決して謙虚な姿勢を忘れない。テクノから受けた恩恵を、彼なりにダンス・フロアーに還元しようという気持ちは変わらないのだ。そう言う意味では、アルバムの中で最もハードな形でその思いが結実したのが、この「Star Force」なのかもしれない。

10. Searching feat. Daniela Bates
 アルバムの最後を飾るのは、”カワサキ節"が炸裂する正統派のボーカル・ハウス。どんなにトラックが進化しようとも、彼は決して歌心を忘れてはいないのだ。いつも、DJ KAWASAKIが聴き手にもたらすのは、哀しみを抱えながも、決して希望を失わないアンビバレントな感情。それは、単なるダンス・ミュージックのカタルシスではなく、人生のサウンド・トラックとして人々に受け入れられているに違いない。







『PARADISE』参加アーティスト アルバムレコメンド Text by DJ KAWASAKI


ROOT SOUL / ROOT SOUL

『PARADISE』に収録された「Feel The Music」でベースを弾いてくれた池田憲一ことROOT SOULのデビュー・アル バム。シングル曲でもある「Spirit Of Love」は、あのAshley BeedleのミックスCDにも収録されています。ま た、その内容の素晴らしさに感動したJoey Negroから直接連絡がきて、「素晴らしいアルバムだ!」と絶賛されるなど、国内外問わず数多くのDJも評価する名作です。


2009年07月08日 発売
45 a.k.a. SWING-O / The Revenge Of Soul

『PARADISE』で10曲中7曲を共作した45 a.k.a. SWING-O。このアルバムに収録されている、「I Believe」をまだデモ段階でを聴かせてもらった時は、そのメロディの素晴らしさに正直鳥肌が立ったのを覚えています。朝方にかかるダイアナ・ロスやスティービー・ワンダーといった往年のソウルとの相性がぴったりのメロウ・チューン!永遠のクラブ・クラシックスとなることでしょう!


2009年05月13日 発売
COMA-CHI / RED NAKED

『PARADISE』のタイトル曲を歌ってくれたCOMA-CHI。JazzySportチーム全面プロデュースのこのアルバムは、ヒップ・ホップという土台でありながら、ジャジーでクロスオーバーな素晴らしい内容です。エッジ感のあるトラックにCOMA-CHIのラップとヴォーカルが流れるようにハマっていく。特に「Material World」を聴いた時には、僕の楽曲(ハウス)で彼女とコラボレートするイメージが直ぐに湧きました。ちなみにインパクトのあるこのジャケットのデザインを手がけているEDA(bal inc.)さんは、僕と同郷で友人でもあります。


2009年02月04日 発売




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