『HORO2010』 小坂忠 インタビュー 3
Friday, March 12th 2010

- --- 狭山での生活についても少しお伺いしたのですが・・・今現在も狭山にお住まいなのですか?
15年ぐらいに前に狭山を出て、今は所沢に住んでいるんですよ。それまでは、狭山の米軍ハウスに住んでいました。
- --- (註) ザ・バンドの『Music From The Big Pink』さながらのお住まいですよね。
そうそう。本当にああいった感じでね。 今は航空自衛隊の入間基地になっているんですけど、昔は“ジョンソン・エア・ベース”っていう米軍基地だったんですよ。だから、日本にいながら、フェンスひとつ向こうには「憧れのアメリカ」がある(笑)。僕が住み始めたときは、まだ米軍がいたんで、そういった人と友達になると一緒に基地の中に入れるわけ。もうさぁ、かっこいいんだもん(笑)。

(註)ザ・バンド 『Music From The Big Pink』・・・ジョン・サイモンのプロデュースで制作されたザ・バンドの68年の1stアルバム。裏ジャケットに載っている「Big Pink」と呼ばれたピンクの外観の一軒家(写真)は、当時のレコーディングの際に使用したウッドストックにあるスタジオ兼住居スペース。もちろんその間、メンバー5人はそこで共同生活を行っていた。表ジャケットの画はボブ・ディランによるもの。 - --- (笑)洋服から、レコードから、おもちゃから・・・
そこにボーリング場もあってね。(註) ブランズウィック社の古いヴィンテージの造りでさ。投げたボールって今は地下から戻ってくるじゃない? じゃなくて、上のトイみたいなところをグルグルグルーって渡って戻ってきて・・・かーっこいいんだ(笑)。 フィフティーズみたいな感じね。そこにウーリッツアー社製のジュークボックスもあってさ。
(註)ブランズウィック社・・・アメリカでビリヤード台やボーリング場の設備品などを製造していた会社。1916年からは蓄音機も造りはじめている。 - --- テンションあがってしまいますね(笑)。
ねぇ(笑)。そこで『Whiter Shade Of Pale』(プロコル・ハルム)とかが、かかっているわけですよ(笑)。
- --- その頃にはすでに、細野さんや林さんなどもご近所にお住まいだったのですか?
(註) フォー・ジョー・ハーフのメンバーは、最初はウチに居候していたんですよ。そのうちに細野くんがこっちに来たいって言うんで、「じゃあ、隣が空いたんでどうぞ」っていう感じで引っ越してきてね。
(註)フォー・ジョー・ハーフ・・・72年から1年間だけ、小坂忠のバックを務めていた、林立夫(ds)、後藤次利(b)、松任谷正隆(key)、駒沢裕城(g)によるバンド。72年の郵便貯金ホールでのライヴを収めたアルバム『もっともっと』を残して解散した。バンド名は「四畳半」をもじったもの。 - --- かなり安く借りることができたのですか?
安いね。その当時で、月2万8000円だったかな。一軒家だよ。しかも庭付き!
- --- 安い!
(高さん) コールマンの大きなストーブなんかも備え付けで。
- --- かなり広かったんですねぇ。しかも、大音量でレコードを聴いてても近隣からおとがめなしと?
全然問題なし! だって、フォー・ジョー・ハーフのバンドの練習、ウチでやってたぐらいだもん。
- --- 現在の狭山やその周辺というのは、小坂さんやはっぴいえんどがいた残り香のようなものは?
もう完全に残ってないね。僕らが住んでいたところっていうのは、そういった米軍ハウスが50軒ぐらいまとまっていて、「アメリカ村」って呼ばれていたんですけど、僕らが住み始めてしばらくしたら米軍は帰って、自衛隊の基地になっちゃったから。
(高さん) アメリカ村には、ミュージシャンやデザイナーなんかがたくさん集まっていましたよ。
それはもう、楽しかった。当時まだ米軍の人がハウスに住んでる頃っていうのは、家と家との間に塀がなかったの。ひとつの大きな庭地に3軒ぐらいの家が建ってる感じで、広々してたんだよね。ところが、日本人がたくさん住み始めたら、とたんに「自分の領地はここからここまで」って塀を建て始めるわけさ。それでもう雰囲気が全然変わっちゃったんだよね。- --- てっきり現在も狭山にお住まいだと思っていました。 しかも当時の名残も全くないんですね。 隠居したら狭山もちょっといいかなと思い始めていたところだったんですが・・・
隠居するんだったら、沖縄の方がいいね(笑)。沖縄って結構、教会が多いんですよ。その関係で呼ばれて行ったりもするんだけど。
(高さん) 以前は、スウェーデンの刑務所などにも行ったんですけど、ゴスペルを歌いに世界中色々なところを回るんですよ。- --- そういった場所では、歌の他にプリーチ(牧師による福音の説教)などもされるのですか?
刑務所によってはプリーチできるところもあれば、できないところもあるんだけど、音楽はそういった制限がないじゃない? だから、どこにでも行けるんですよ。
(高さん) 欧米諸国などと違って、ゴスペルの世界を日本に定着させるっていうのは、なかなか難しいんですよね。30年やっていても。- --- それは、どうしてなのでしょうか?
(高さん) 音楽的には違和感はないと思うんですが、やっぱり言葉じゃないでしょうか。例えば、英語で「Jesus」って言うのと、日本語で「イエス(キリスト)」って言うのとでは、伝わるニュアンスが全く違うと思うんですよね。
- --- 宗教一般に対する認識の違いなどもありそうですね。
日本人の宗教観というか、そうしたものの影響もあると思うんですよね。宗教そのものに対して、「ある程度はいいんだけど、あまり深く入り込むと危険だ」というような印象を持っている人が多いと思うんですよ。
(高さん) 欧米では、ミュージシャンであろうと政治家や実業家であろうとクリスチャンだって人は大勢いるでしょ? 日本ではやっぱりまだまだ、マイノリティーな印象が強いのかもしれないですよね。ミッション・スクールはあるんですけど。
ただね、そうした信仰心っていうのはすごく大事なものだと思うんですよね。その人が立っている土台が何なのかっていうところでね。信仰心はその土台みたいなものだから。土台が判るとその人が判るじゃない? 今、わりと精神的に弱っている人が多いっていうのは、その辺が影響しているんじゃないかなって。しっかりとした土台の上に立っていないと、精神的にも不安定になっちゃうと思うしね。
日本人が外国に行った時によく、「日本人って何を考えているのか判らない」って言われたりするのは、やっぱりその人の考えの基準が判らないからなんだと思うのね。その基準がどんどん変わっていっちゃう。例えば、僕らは「聖書」というのが土台にある。聖書って変わらないわけ。2000年前も今も同じ。基準というものがブレない。だから、話がすごい判りやすいんだけど、基準があちこち変わっちゃうと、やっぱり生きていくこと自体が難しくなっちゃうと思うんですよね。- --- 小坂さんは、91年に牧師に就任されていますが、牧師という立場で、そうした様々な悩みを抱えている人たちとお話をされる機会も多くあるかと思います。
カウンセリングという形でね。その中で、自分の価値観を見失っているのかなって感じることが多い。世の中には、何に価値観を見出すべきか教えてくれるところがないわけね。その人の本質ではなく、例えばどういう大学を出たかっていう経歴みたいな付随した部分で価値観を大事にしている。その付随した部分でどれだけ自分の価値を高めようかっていう競争。でもそれは違うでしょ? そういうものって、環境が変化したりすればすぐに取り去られていくものだから。そうした時に、そこにしか価値観を見出してなかった人は、本当に不安だよね。自分の価値がなくなっていくって感覚に等しいわけだから。だから、自分自身の中に価値観を持たないと。それを見出す必要があると思うんですよ。そうしたら人間ってもっと強くなれるはずだって、『Chu’s Gospel』にはそういったメッセージがいっぱい入っているんですよ。
少年院にいる子たちをただ楽しませるためだけに歌いに行くんだったら、何の意味もないと思うんだよね。お互い時間を潰すだけだからさ。だから、彼らに、本当の価値っていうものがどこにあるかを伝えたいと思うわけね。彼らは一度犯罪者としてのレッテルが張られて、少年院を出た後もみんなにそういう目で見られるんだよ。でも、どんなレッテルを貼られようが、何を失おうが、「その存在だけで価値があるんだよ」っていうことをもし知ることができたら、彼らのこれからの人生って変わるかもしれないじゃない? そうなったら、うれしいなって心から思いますよね。- --- 小坂さんのそうしたゴスペル・シンガーとしての活動をあまりご存知でないという方は、『HORO2010』とご一緒に『Chu's Gospel』を聴いていただければと思います。
こういう世界が日本にあるって、おそらくみんな想像もつかないと思うんですけど、是非、これも色んな人に聴いてほしいですね。
- --- 本日は長いお時間お付き合いいただきましてありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
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エイプリル・フール - 1969年発表
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春一番ライブ '72 - 1972年発表
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- レコードコレクターズ 2009年4月号
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小坂忠 (こさか ちゅう)
1948年東京生まれ。本名・小坂正行。68年、モンキーズ・ファン・クラブの公募オーディションから生まれたGSグループ、ザ・フローラルの一員として日本コロムビアよりデビュー。その後、細野晴臣、松本隆らとエイプリルフールを結成。日本のロック黎明期において例を見ない本格的なサイケデリック・ロック・サウンドで注目を集めるが、アルバム1枚(『エイプリル・フール』)を発表したと同時に解散。その後は、ロック・ミュージカル「HAIR」に出演。71年には、川添象郎、村井邦彦、ミッキー・カーチス、内田裕也が設立した日本最初のロック・レーベル「マッシュルーム」の立ち上げに参加し、同年、初のソロ・アルバム『ありがとう』を発表。72年には、フォー・ジョー・ハーフ(林立夫、松任谷正隆、後藤次利、駒沢裕城)とのライヴ録音盤『もっともっと』、73年に『はずかしそうに』をリリース。75年、細野晴臣を軸とするティン・パン・アレイ・ファミリーの全面的なサポートを得て完成させたアルバム『HORO』は、それまでのカントリー〜S.S.W. フレイヴァ溢れる作風から一転、本格的なソウル・ミュージックのエッセンスを取り込み、小坂忠の現在までのヴォーカル・スタイルを確立した点においてもターニングポイントとなる1枚になった。和製R&B、ソウルのバイブル的名盤として、今なお多くのミュージシャンに影響を与え続けている。 76年、クリスチャンとなり、78年、日本初のゴスペル・レーベル「ミクタムレコード」を設立し、キリスト教音楽に新風を吹き込む。91年に牧師就任。「Singer&Pastor」として世界を舞台に精力的にゴスペルを歌い、語り続けている。2000年よりティンパンとの活動を再開。2001年には25年ぶりのポピュラー・アルバムとなる『People』を細野晴臣のプロデュースで制作。その音楽性と歌の力に多方面からの注目を集めた。2004年にデビュー35年を記念したアルバム『き・み・は・す・ば・ら・し・い』をリリース。デビュー40周年を迎えた2009年には、佐橋佳幸をプロデューサーに招聘したアルバム『Connected』、さらに、ソロ・キャリアを集大成したボックス・セット『Chu's Garden』(8CD+2DVD)をリリース。2010年3月、35年前の『ほうろう』の16chマルチトラックのマスターテープが発見されたことを機に、新たにヴォーカルのみを録り直した『HORO2010』(アナログ盤LPも同時発売)、2009年春のビルボード東京公演を収録したDVD+CD『Soul Party 2009』、クリスチャンの洗礼を受けた76年以降のゴスペル・シーンでの活動を纏めた2枚組ベスト『Chu's Gospel』を同時リリースする。







